コメディ・ライト小説(新)
- それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.4 )
- 日時: 2019/10/13 18:07
- 名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)
この人たちは「勇者」というものがどういう存在なのか知らないのだろうか…。
普通、勇者が魔王の住む城に訪れたらこんな風に歓迎されるものだろうか…?
「おいおいおい!!はるばるよく来たな!さ!どんどん食え!!これなんかうまいぞ!」
魔王だと身構えていた奴に笑顔で迎えられ、あれよあれよと歓迎会のような雰囲気になっていた。
これは・・流されてもいいのか・・?
まぁ、でも、料理はおいしい。
お肉は口の中でとろけるし、においも香ばしい。噛むたびに肉汁がじゅわっと出てきて…
「…って!!そんな食べている場合じゃっ」
「まぁまぁ勇者ちゃん、これも美味しいわよ~」
先ほど「チヨ」と名乗った女の人に料理を勧められる。
「あっ、ありがとう…ございます‥‥」
「ふふ、可愛い。勇者ちゃんはどこからきたの?」
「えっ?」
まるで世間話をする等してかのように話しかけてくる彼女にどうにも、戸惑ってしまう。
「まぁでも、長旅で疲れているでしょう。話はあとでゆっくり聞くとして、ここにいたいだけいていいからね」
そういって女の私でも惚れてしまいそうな綺麗な顔で笑った。
どうなってんだ。
なんなんだここは。
想像していた所とまるで違う。
予想していたのとまるで違う。
これじゃあ完全に―――…
「(‥‥あれ‥?)」
一瞬、グラッと世界が傾いて。
それが強烈な眠気だということに気づいた。
始めは気のせいだと思ったそれは徐々に確実なものとなっていた。
「(変だな…睡眠はばっちりとっているはずだしさっきまで全然眠くなんてなかったのに…)」
ここまで考えて気づく。
これは、罠だ。
しまった、と思った。
こんな初歩的なこと引っかかるとは。
「(魔、王…め…)」
思考が、頭が回らない。
「あ…、は…う、」
あぁ、ダメだ。
口から出る言葉全てが息となって吐き出されていく。
薄れゆく意識の中で必死に剣を取ろうとする。
だがそれすらも叶わなく手が思うように動かない。
私はここで死ぬのか。
嫌だ…まだ何も…戦いも何もしていない…のに、
村のみんなを喜ばせていない。
じいちゃん、ばあちゃん…
そこで私の意識は完全に消えた。
最後に聞こえたのはうるさい魔王の驚いた声と、チヨという女の人の心配そうな声と。
綺麗な…黒い髪色をした男の凍てつくような目だった。