コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.56 )
日時: 2020/06/24 20:52
名前: 猫まんまステーキ (ID: m9ehVpjx)


 
 そうして何年、何十年、何百年と時間が過ぎた。

 百を超えてからは数えていない。

 あいつの屍をずっと抱きかかえていた。
 

 気づいたら骨だけになっていた。


 俺はその骨を埋めた。


 あいつがいなくなってから何度もサクラが咲いた。

 変わらず俺はここにいた。

 時が過ぎ、どこかで新しい祠がたったという。きっと人間はそこの神を信仰したのか、徐々に俺の存在は忘れられていったのだと、本能的に感じた。
 

 それでも俺は、ここにいた。



 あいつを探しに行かなければ。



 そう思っていてもサクラを見るたびにあいつとの思い出がよみがえってきて思うように足が動かない。


 ――――『未だにあいつらが居た空間が愛おしくて、時間が愛おしくて、日々が愛おしくて、離れられない』


 ふと、いつか彼が言っていた言葉を思い出した。


 「‥ハハ、」

 思い出して、


 「アハッハッハ‥」

 笑って、


 笑って、



 「……存外、お前の言ったことは正しかった」



 涙が出た。




 俺は今も、亡霊のようにただそこに立ち尽くしている。



 ――ああ、そうだな。これは人には前を向け進めと言っていたくせに自分が一番そこにただずっと立ち止まって前に進めないおとこの、滑稽な話だ。