コメディ・ライト小説(新)
- それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.7 )
- 日時: 2019/10/13 18:30
- 名前: 猫まんまステーキ (ID: rFnjVhnm)
「お前はっ――」
「はぁ、血の気も多いし品もなさそうだ。何されるかわからない。早めに殺しておいた方がいい」
なんなんだ なんなんだ なんなんだ!!!!
「まぁまぁグージ!こいつ大したことねぇし!久しぶりの客人だし!もうちょっといいだろ!」
「そうやって油断しているといつか痛い目見ると何度言えば…」
「おいお前名前は?」
「えっ‥シュ、シュナ‥」
しまった。つい名前を言ってしまった。せめて偽名でも名乗るべきだったか。
名前を教えると何かまずいことがあるのではないかと考えてしまう。
「お前は勇者なのか?」
「‥一応。そしてお前らを倒すために来た」
「――っ兄貴、」
「わーってるって…で、勇者シュナよ。1人丸腰でここまで来て、俺らを倒せる算段は何かあるのか?」
「‥‥‥」
依然としてお互いの態度は変わらない。ただただ相手の絶対たる自信。
「――‥始めは何人か仲間はいたんだ。でも途中で怖かったのか、逃げていった。今は私だけだ」
そう、始めの頃は私以外にも仲間がいた。
しかし城へ近づくごとに、魔王と距離が近づいてくるとわかるごとに怖気図いて逃げ出していった。
――‥だなんて。あぁ、こいつら相手に何をべらべら言っちゃうんだろう。
「なるほど。結局本当に勇敢だったのはお前ひとりだったというわけかぁ…お前を置いて、今は俺らと無縁の生活を送っているんだなぁ。嫌なもんだなぁ?」
からかうような、馬鹿にしたような笑み。
事実だ。事実だけど、無性に腹が立って悔しい。
そして目をそらしていた事実を突きつけられてどうしようもなく、悲しい。
「――‥だが」
「え?」
「だが俺はお前のその勇気を買おう。歓迎するぞ勇者よ!今日からお前は好きなだけここにいて俺を倒すのに専念するといい!」
「‥‥は?」
なんとも気の抜けた間抜けな声が出た。何を言っているんだこいつは?
「紹介が遅れた!俺の名前は龍司――この世界で魔王というのをやっている者だ!!」
「あぁ!?」
部屋いっぱいに広がる私の声と、
にこにこと笑うきれいな女の人。
そしてハァ、とため息をついて私達をみつめる黒髪の男。
アタシ達の奇妙な関係はこうして幕を開けたのであった。