コメディ・ライト小説(新)

それでも彼らは「愛」を知る。 ( No.75 )
日時: 2021/11/13 02:56
名前: 猫まんまステーキ (ID: aDg7zUCy)






 考えていなかったわけじゃ、ないんだ。








 Epsode23『  再会  』


 「あ、今日もだ」


 街へミラと買い物に出かけている途中、中央の方で煙が上がるのを見た。


 「あの煙が上がるってことは誰かが亡くなっているってことなんだよね」
 「うん……この街では火葬が主だから、ああして亡くなった人を弔うの」


 近くまで行ってみると煙が上がって、次いでぱちぱちと焼ける火の音。それに重なるように泣き叫ぶ人がいた。


 「……最近、多いよね」
 「…………病が、流行っているから‥仕方のないことなのかもしれない」


 ここ最近、流行り病が蔓延し、次々と人が死んでいく。

 症状は様々だが皆一貫して体のどこかに赤いあざのようなものが現れるらしい。

 「私達魔族や吸血鬼なんかはあまりかかることはないと思ってるけど――勇者は人間だから気をつけた方がいい」
 「そうだな、気をつけるよ」

 誰にも聞かれないような小さな声でミラが話す。治療方法がまだ見つかっていないこの病はかかると症状が重いものはほとんど治ることはないと言われている。


 「――お、シュナにミラじゃない」

 ちょうど歩いているとアンナの店の前までやってきていた。初めて会った日以来何度か来ていたこともあり今ではルカやミラとも顔なじみだ。

 「‥穂積は?」 
 「今日は留守番。あたしとミラだけだ」
 「‥ふーん‥あ、そうだ!あいつ、この間会った時は話をするだけして何も買わずに帰ってったんだよ!?今度来たら絶対何か買わせてやるんだから」
 「えっ!またアンナの店に行っていたの!?最近たまに姿が見えないことがあるんだよな」
 「そうだよ。結構来るんだよね。んで、話すだけ話して気づいたらふらーっと帰っていくの!」
 「あはは!穂積らしい!よく来るんだな、よっぽどこの店とアンナの事が好きなんだ」
 「……まぁあたしも穂積と話すのは嫌じゃないし楽しいけどさ。ただ何か買ってくれないとこっちも商売にならないよ」
 それを聞いて思わずミラと顔を見合わせて笑ってしまう。
 「アンナ、可愛いのね」
 「からかうなよミラ!!――もう、あたし仕事戻るからな!」
 「あはは!機嫌直してよアンナ!今日もこの店で買ってくからさ!」
 「そうしてくれ‥――っと、」

 店番に戻ろうと踵を返そうとしたところでふらりとアンナがよろけた。

 「大丈夫か?」
 「ああ、ありがとう……ここのところ少し寝不足気味でさ、それがたたったのかな」
 「そんなに仕事が忙しいの?」
 「いや、そういうわけではないんだけど……咳き込むことがちょっとあって……まぁすぐに治るだろ」
 「だといいんだけど……養生してくれ」
 「ありがとね、シュナ、ミラも」
 にこりと笑ってまた元気に店の中へと戻っていった。


 「………大丈夫、だよね?」

 そうつぶやいた声は、誰に聞かれることも、誰に聞かせることもなく人ごみの中に溶けていった。


◇◇◇


 「じゃあ私はあっちの方探してくる」
 「ああ」

 買うものを二人で分担しミラと離れる。

 「ああそういえば千代さんがクッキーを作るための材料が欲しいとつぶやいてた気が‥予算が余ったら買ってもいいかもな――…、」








 「――――シュナ?」







 騒がしい店の中、やけにその声だけがはっきりと聞こえた。



 その次にどこかで聞いたことのある名前だ、と思って数秒。
 その名が自分のものだと理解した。




 「……?……アカリ?」
 声のした方へ顔をゆっくり向ける。








そこにはかつての友人がいた。