コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ コメントください。 ( No.107 )
- 日時: 2016/08/12 10:50
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
5章 39話「佐藤君の苦手な分野」
「遅れてごめんっ……!」
空き地から約100メートル余りの距離をダッシュし、遅刻8分で何とか着いた。
なっちゃんと佐藤君は事故にでもあったのかと心配していたらしい。迷惑ばっかり掛けてるな……と私は心のそこから反省した。
なっちゃんは白いTシャツに水色のフリルのついたワンピースを着てカンカン帽をかぶっていた。可愛い子が着るからもっとかわいく見える。文句なしだ。
佐藤君は光聖君みたいに、“今から公園に行きます”みたいなさっさと着てきた服じゃない。デニムのジーンズにチェックのシャツをはおっている。勉強も出来てファッションも完璧なのか…私は舌を巻いた。
「どうして遅れたの? 心配したよ。」
今にも泣きだしそうな顔でなっちゃんが尋ねる。これは演技なのだろうか。なっちゃんは時折作ったような表情を見せるから何を考えているのか全く分からない。
……て私がこんなこと言ったら、なんかなっちゃんを疑ってるみたいじゃん。
悪い考えを頭から振り払って言葉を選びながら説明した。
「えっと、なんかストーカーみたいな人が後ろから来て私の口の周りをふさいで、それで気を失っちゃって……。目が覚めたら倉庫みたいなところで手を縛られててさ…」
「そこを僕が駆け付けて助け出してあげたんだよ。」
光聖君が私の話に割って入ってきた。よっぽど自分の英雄伝をみんなに聞かせてやりたいのだろう。
そんな彼に、佐藤君は尊敬と疑いが混じったような顔をして言った。
「その男たちを一人で倒したの?」
「もちろんさ。僕は強いんだよ。」
それにしても傷一つないけど……と言うように佐藤君は首を傾げた。
そんな佐藤君とは裏腹に、なっちゃんは目をキラキラさせて感嘆の声を上げた。光聖君を褒めまくる。
「ほんと、遅れてごめんっ。さ、中に入ろ。」
私はもう一度謝ってから3人をせかした。
そうしないと、3人はずっと今日の光聖君の話を聞いて質問したり褒めたりしそうな勢いであった。
*
さて、今は映画が終わって喫茶店に行く途中だ。
なっちゃんと光聖君はまだ今日の英雄伝の話をしている。佐藤君と私はと言うと、なかなか共通の話題が見つからなかった。お笑いはよく知らないし、星の話をしていてもそれほど盛り上がらなかった。
そして部活の話に移り、なぜ佐藤君はスポーツ何でもできるのにサッカー部なのかと聞いてみた。
「う〜ん……特に理由はないけど、お父さんが一応サッカー選手だから小さい頃からサッカーをしてて、一番スポーツの中で得意だからかな。」
「ふ〜ん、音楽とかそういう系統の部にも入ってみればいいのに。」
私が何気なくそう言うと、なぜか佐藤君は一歩後ろに後ずさった。
私は不思議そうな顔をして首を傾げる。佐藤君はとって作ったような笑顔(というよりも苦笑い)を広げ、
「音楽は苦手なんだよ……。」
と、彼にしては珍しい弱弱しい声を出した。
その変化に気が付いた私はまた何か聞こうと口を開けると、前方からなっちゃんの声が聞こえた。
どうやら目的地に着いたようだ。