コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 祝! 返信100突破! ( No.132 )
- 日時: 2016/08/16 11:38
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
6章 43話「葵ちゃん」
私はお礼を言おうと、また読書を始めたその子におずおずと近づいて行った。
しかしその時、タイミングを見計らったようにそこへ面倒くさいのが姿を現したのだ。
「空〜、何かみんなが僕たちのことをじろじろ見るんだけど……」
そう言って黒板を見てハッとする。
勿論この声の主は光聖君。珍しく佐藤君と一緒に教室に入ってきた。佐藤君も状況を把握したようで、顔をしかめる。
光聖君は声を荒げながら、怒鳴り散らした。
「おい! 誰だよ、誰がやったんだよ!!」
私はところ構わず怒鳴り散らす光聖君を、呆れた目で見つめた。これ以上騒ぎが大きくなったら困る。もう解決したんだけどなぁ……。
そこで今まで黙っていた佐藤君が光聖君を止めた。何やら言って彼を大人しくさせる。これじゃあまるで犬と飼い主だ。
女子たちは怒鳴り散らす光聖君を見て怯えたようで、固まってその場から動かない。そんな彼女たちをちらっと見て、佐藤君は平然と読書している五十嵐さんに視線を移す。何が起こったか大体把握したらしい彼は、五十嵐さんにお礼を言った。
「葵ちゃん、ありがとう。本当はもう少し早く僕等が来ていたら良かったんだけど……」
「ううん、いいの。ちょっと注意しただけよ」
佐藤君の言葉に五十嵐さんはほんのり顔を赤くして答えた。
私も彼女の前まで来て、一言お礼を言う。その時も「大したことじゃないわ」と小声で内気に答えた。さっきとはなんとなく雰囲気が違ったけれど、そんな心優しい彼女が私は好きになった。
その日の休み時間も私たちは交流を深めていき、帰りはカフェに一緒に行くほどの仲になった。
「ここのチーズケーキ美味しいよね、私大好き」
葵ちゃんが弾んだ声色で言う。
「私はロールケーキかな〜」と言いながら私はチーズケーキとロールケーキ、そして紅茶を2つ注文した。
「意外、葵ちゃんって甘いもの好きなんだね」
私はパクパクと幸せそうに食べている葵ちゃんを見ながら言った。
葵ちゃんはケーキを頬張りながら、笑顔で頷く。
「私、甘いもの大好きなの。洋菓子でも和菓子でも、全部食べれるよ」
その細い体によく入るなぁ。
彼女は細くて手足も長いし、背丈だって私より10センチは優に高かった。やはり、その高身長が何よりも羨ましい。
「今日は葵ちゃんがみんなに注意してくれて助かったよ」
再度お礼を言いながら、私はロールケーキをつまんだ。
「うん……。私さ、普段はあんまりものを言えないんだけど、カチンときたらいつも言えない分きつく言っちゃったりして……。普段は全然そんな事ないから、私が怒ると怖いってよく言われる」
彼女はそう言って困ったように笑った。
でもよく分かる気がする。葵ちゃんは外見だけ見ても大人しいイメージだ。本気で怒ったらどれだけ怖いんだろう。
「えーと」と葵ちゃんは言葉を濁すと、私の顔色を窺っておずおずと尋ねる。
「でも、本当に2人、盗ったりしてないよね?」
「まさか! 恋愛なんてこれっぽっちも興味無いのに」
私はおどけて、親指と人差し指を、今にもくっつきそうなほど近づけた。
クスッと笑って葵ちゃんは話す。
「もし如月君とみっ君、両方とったら女子が黙っていられないもんね」
「んー……そう言えばさ、どうして葵ちゃんは佐藤君のこと、みっ君って呼ぶの? もしかして幼馴染?」
「うん。家が近いし親同士仲いいから」
葵ちゃんはそう言って破顔した。