コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 祝! 参照500突破! ( No.191 )
- 日時: 2010/10/20 22:03
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
7章 52話「牡牛座」
≪今日は、王女をさらった牡牛について、お話したいと思います。≫
夜空に広がるきれいな星々。
それを間近で見ながら、空は幸せな気分に浸った。
ここのプラネタリウムは季節に合った星たちを詳しく説明し、いつもは見れないほどに拡大してくれる。まさに天文学部の理想の世界だ。
そして今は5月なので、牡牛座を分かりやすく説明してくれる。
空は夜空に目映く光るオレンジの星、牡牛座の主星アルデバランを見つめ、おそらく若い女性が話しているであろう、分かりやすい説明に耳を傾けた。
≪天頂に近いあたりに光っている明るいオレンジの星があります。見えますか? これがおうし座の主星アルデバランです。この牡牛座にはヒアデス星団や、プレイアデス星団などの名高い星団があります。さて、今からこの牡牛座が星座になった経緯をお話しましょう。≫
そう言うと同時に、牡牛座が拡大され、より見やすくなった。
(おお〜)と心の中で感嘆の声を漏らすと、何やら空の二の腕をちょんちょんと小突く者が。空は楓の方を向いて小声で話す。
「ちょっと、今いいところなのに。何よ?」
「ねぇ、このナレーションの人の声、なんか聞いたこと無い?」
空は知ってる人の声を思い出してみたが、誰もこの声と当てはまる人はいない。仕方なく首を振って、気のせいだよ。と切り捨てた。
≪フェキニアの王アゲノールの娘エウロペーは、無邪気で、誰にでも愛される美しい姫でした。友達は皆花を慕ってくる蝶のように、エウロペーの周りに集まってきました。その日もエウロペーは身分の高い人の娘と海辺に近い野原に遊びに行きました。そして花を摘みはじめ、花かごがいっぱいになると色とりどりの花を使い花輪を作り始めました。
この、世にも麗しい有様を、天上から見ていた大神ゼウスは、その中でも花より美しいエウロペーに、心を奪われました。
(どうかしてあの娘を花嫁にしたいものだ。)
そう思いましたが、人間の娘が素直に自分の花嫁になってくれるとは思えません。そこでゼウスは使いの神ヘルメスに頼んで、アゲノール王の牧場へ行って、牛たちを山の牧場から海辺の野原まで追いおろしました。その牛たちの中に、牡牛に身を変えたゼウスがいつの間にか混じっていたのには、ヘルメスさえも気がつきませんでした。
娘たちは野原に牛たちが増えたのに驚きましたが、みんな大人しいので安心しました。その時ふとエウロペーは、牛たちの中に輝くように真っ白な牡牛が一頭いるのに気がつきました。その牡牛はとても大きくてたくましい体つきをしていました。でも透き通った2本の角はあまり大きくなく、目は青みがかった色に優しく輝いていました。
その牡牛はゆったりと王女たちのいるところへ近づいてきました。そしてエウロペーのすぐそばまで来て立ち止まったのでエウロペーはビックリしましたが、牡牛があまりにも大人しいので牡牛の背中に乗り、友達から渡されたきれいな花輪を牡牛の角に掛けてやりました。
すると、牡牛はエウロペーを乗せたまま海岸を目指して歩き出しました。そしてたちまち海に飛び込むと、ぐいぐいと泳ぎだしました。もうエウロペーにはどうすることもできません。牡牛の角に必死でしがみつき、落ちないようにするだけで精いっぱいなのですから。
やがて2人はクレタ島に着きました。するとたちまち牡牛は消えて、そこには大神ゼウスが立っていました。そして2人はめでたく結婚し、ゼウスが変身したのを記念して、空には牡牛座という星座が作られたのでした。≫
「おうし座の話、はじめて聞いたー♪」
廊下に出て、空はウキウキでそう感想を述べた。
すると楓も空とは違う理由でウキウキしてて、空の袖をひっぱりながら話した。
「日向 茜!」
…?
空は意味が分からず困惑した表情で首を傾げた。
楓はじれったそうに足を踏みならして言う。
「ナレーションしてた人! 私がどっかで聞いたことあるって言ったじゃん。あの人、1年1組の委員長の日向茜だよ!」
楓は声の主が分かったのがそんなに嬉しいのか、口元を緩めながら喋った。