コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆   祝! 参照500突破! ( No.199 )
日時: 2010/10/24 15:59
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)

7章     54話「瞳の炎」


「ねぇねぇ、それよりも2階も行ってみない? いろいろな機械やコンピューターゲームがあるんでしょ?」

 楓はさっきの一件はもう忘れたかのように振る舞った。でも私は知っている。楓の奥底ではふつふつと怒りが燃えたぎっていることを。確かにその瞳には挑戦的な炎が燃えていて、まるで今にもパチパチと音が鳴りそうだった。
 みんな2階を見て回ることに賛成して、階段を一段一段登って行った。コツコツと空たちの足音が響き、途中ある窓からは、ほのかなオレンジの光が差し込んでいる。その窓から空は、赤みがかっている空を見上げた。青色から朱色へ。グラデーションのように色の変わる広い大空はとっても綺麗だった。

「綺麗だね。」

 空は光聖君を見て言った。
 そして空はあれっ? と、首を傾げた。光聖君の顔色が悪いのだ。その心配そうな空の表情を察してか、光聖君は無理矢理笑顔を繕って「どうかした?」と聞いた。
 「ううん、何も…」空はそう答えてまた窓の方に視線を戻した。光聖君のその表情が耐えられなかったのだ。無理に笑顔を作ったり、なぜか表情に暗い影を落として……。それなのに空に本当のことを言ってくれない。
 空は泣きたくなってきた。光聖君にもっと素直になってほしかった。そんな空を綺麗な夕焼けはそっと慰めてくれるようだった。

「空! あれ、面白そうだよ。」

 楓が元気よく空を呼ぶ。空は我にかえっていろいろな悩みを振り払いながら、楓に近づいた。

「何?」

 空は楓の前にあるコンピューターのようなものの画面を覗き込みながら聞いた。
 「今日聞いた牡牛座の話のクイズだよ。やってみない?」と楓に誘われて、空は乗り気じゃないが渋々スタートボタンを押した。その時、後ろの方からハキハキとした声が聞こえた。

「そういうのが好きなの? それだったらあっちの方にもっと良い物があるわよ。」

 日向茜だった。何の用か知らないが、楓に好意的に声をかけた。さっきのことは都合よく忘れたかのように。
 楓の顔が険しくなった。明らかに険悪なオーラで目で問いかける。「あなたは何をしているの。」と。
 その楓の目が語っていることを理解したのか、日向さんは平然と言った。

「私はお客様を案内する係よ。だから行きたいところがあったら言って。」

 最後の方は営業スマイルで日向さんは言った。
 楓は日向さんを挑戦的な眼差しで見つめたあと、「じゃあトイレに連れて行ってもらおうかな。」とニッコリして言った。
 
(なぜトイレ?!)

 空は絶句した。しかし楓にも楓なりの考えがあるのだろう。多分2人の空間を作りたいのだ。
 その言葉を聞き、ちょっと戸惑ったのか日向さんは数秒黙った後、ニンマリして楓を誘導した。
 「こんなにも早くチャンスが巡ってくるとは思わなかったわ。」と呟いて。