コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 返信200突破記念『キャラ人気投票』開催中! ( No.212 )
- 日時: 2010/11/11 21:20
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
7章 57話「彼女の名前を呟いて。」
楓は後頭部を打ったらしい。辛うじて最後に落ちる瞬間体の方向を変えたのであろう。頭のダメージは思ったより少なかった。しかし後頭部からは赤黒い血が止めどなく溢れ、見ているだけで辛かった。右足も変な風に曲がっているから骨折をしていることは間違いない。
光聖は悔しくて下唇を噛んだ。
僕がもっと早く気づいていれば――――!
後悔の渦が胸のあたりにたちこめて、光聖はしばらくの間その場に突っ立っていた。まるで足と床が粘土で固まってしまったかのように動かない。というより動かそうという気力もなかった。
だが空の悲しみに暮れた一言で光聖はハッと我に帰った。
「日向…さんは……?」
光聖は瞬時に後ろを振り返った。だが当然そこに日向の姿はない。当たり前だ。来る時にすれ違わなかったのだから。
「あいつ……ッ!」
光聖は悲しみをかなぐり捨てて、脳内から楓の悲惨な姿を追っ払った。怒りに瞳を燃えたぎらせながら階段を駆け上がる。
昔の経験から日向は逃げる時高い所に行く―――それを学んだのだ。
階段を3段も飛ばして駆け上がる。靴の底に羽が付いているかのように速く、軽く。
「くそっ……!」
光聖は走り様、何度もこの台詞を繰り返した。
もっと注意すれば良かった。今日会って話した時から薄々感づいていたのにっ……!!
昔の記憶がありありと浮かぶ。
真夜中、星明りを見ながらまどろみ始めた時……。人の気配を感じて起き上ったら、光の弾を放つ銃を持って奴らが来たあの時……。あの日から逃亡が始まった。何年も追って来ないと思って油断していたら急に光の矢に狙われた。近所で仲良くしていたその人の友人が奴らだったりもした。
でも……。
「まさか同じ学校だったとは……!」
怒りの感情に身を任せ次は4段も飛ばしながら光聖は歯ぎしりした。
やっぱり学校に通わない方がよかった…!
自分のせいで楓が悲惨な目にあい、空を悲しませ、先輩達が楽しみにしていた部活動をも酷いものにしてしまった……!
光聖はこの世のものとは言えない悲鳴に近い雄叫びをあげた。叫んで、叫んで、叫んで。叫ぶことにより気持ちが少し楽になるような気がした。
しかしその雄叫びはかえって光聖の怒りの感情を煽るだけだった。
早くあいつに会ってぶん殴ってやる!!
その感情だけがいまや光聖を支配していた。
長かったのか短かったのかよく分からない時の末、光聖は屋上にたどり着いた。さっきまでは綺麗だった夕日が今やずっしりと重たい雲に隠され辺りは空気までもが暗かった。
屋上の手すりに掴まって雲空を見ている日向に向かい、光聖は憎しみと怒りに満ちた声で彼女の名前を呟いた。
「G−270……!」