コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 返信200突破記念『キャラ人気投票』開催中! ( No.216 )
- 日時: 2010/11/14 18:37
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
7章 59話「暗闇」
私は今、悲しい気持ちをぐっと堪え、何の手がかりも持ってこなかった光聖君の袖をぎゅっと掴み、悲しみと同じくらいの虚しさと怒りを光聖君にぶつけていた。
「ねぇ! もっと詳しく説明してよ! そんなんじゃ分からない……。」
今にも崩れ落ちてしまいそうな脆い体を支え、空は叫んだ。泣き崩れたいのは、私のほうなのに!
ここは病院。楓を救急車に乗せ学校付近の病院へ運んだ。私たちは、私の心のように冷たい椅子に座って楓の状態は良いのか、良い知らせの願い、先生たちを待っている。先生の安心した表情を―――。
そうして待っている間、光聖君に屋上へ行ってからの話を聞かせてもらおうと空は躍起になっていた。光聖君の様子を見れば何かあったことくらい一目でわかる。茶色い瞳には何の感情も映ってなくて、ただ宙をぼうっと見上げていた。
日向さんに会ったこともほぼ確定だ。だって、日向さんの名前を出す度唇を小刻みに震わし、目をたちまち充血させるのだから。
それでもなんとか話させることに成功した。が……聞いていても何が何だか分からないのだ。
階段を上って屋上に日向さんがいた…ってことを話しているのに急に「琉……」って思い出したように言って、また口を噤む。その繰り返しなのだ。
(これは…光聖君がもっと落ち着いてから聞いた方がいいかも……)
そう一人で結論を下して、空はハァッと溜息をついた。光聖君も先生に突き出した方が良いかもしれない。完全に頭をやられているみたいだから。
空はまた、冷たい椅子に腰かけて姿勢を正した。
楓――――――!
――アジト――
「お帰り、ヒナ。」
椅子に座っている女の子は私のことを、慣れ親しんでいるハンドルネームで呼んだ。
照明の付いていない暗い部屋――。ここが私たちの秘密基地。いわばアジトってところだ。その暗い部屋には私と同じくらいの女の子が2人、私の帰りを待っていた。
「なかなか楽しめたわよ。見ててドキドキしたもん。」
髪を肩甲骨あたりまで垂らしている方の女の子が言う。いや、女の子じゃあないな。だって私たちは…―――
「おい、リン。その話し方はやめろ。ぶりぶりして…気持ち悪いぞ。」
そう言って椅子に座っている女の子が低い声で笑う。
そう言うあんたも、外に出たらぶりぶりしてるじゃない。私はそう言いたいのを我慢した。
「まぁそれより…。どうだ? あいつの調子は?」
「うん…元気はあるけれどココがね。」
そう言って私はこめかみの部分を叩く。目の前の女の子は満足そうに頷き、「ところで…何かやってきたのか?」と聞く。
「あのあと…私の眼にはあいつが少し弱って見えたんだが……。」
「ああ、それね。」と私は口角を吊り上げて笑った。そして2人に向かって言うのではなく、暗闇に向かって呟いた。
「私が奪ったのは“記憶”みたいに甘ったるいもんじゃないわよ……。光聖……。」