コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 朱雀のオススメ!本紹介 第一回 ( No.237 )
- 日時: 2019/10/17 08:21
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
8章 61話「名付け親」
サーっと群青色よりも暗い空を流星群が通り過ぎる。まるで暗い海を金色の魚が優雅に泳いでいるように。
これが僕か…―――
僕は自分を探しながら呟いた。この先はもう何が起こるか分かる。だって自分が体験した、忘れられない過去なのだから……。
無数の光の後ろをついて飛ぶ僕。その光は突然ガクンと下へ下がった後、まるでどこか目的地があるかのように真っ直ぐ一直線に急降下した。
着いた先は忘れることのできない場所のひとつ、国で一番技術が発達している病院だった。その一部屋に光は勢い良くぶつかって、身に纏っていた光の欠片が散布した。まあ、その光は紛れもなく僕なんだけど。
僕はこんな風に出会ったのか、琉に……。
僕は感傷に浸りながら幼き頃の自分を食い入るように見つめた。
すると目の前に靄がかかった。目を凝らしても何があるのかすら分からない。でもその数秒後、すぐに靄が晴れ違う場面が目に映った。しかしそれもその日の出来事だった。
白いパジャマを着た肌の青白い男の子。純粋な黒髪を腰あたりまで伸ばし、僕 光聖を不思議そうな顔で見つめる。
「君だぁれ?」
二重の目をくりっと丸くし首を傾げて光聖を見上げる。その姿は誰が見ても女の子と見間違えるほど、可愛らしかった。
「あんたこそ、誰だよ。」
僕は生意気な態度で少年に接した。輝さんに会う前だったからマナーなどを心得ていない。
少年は僕に見つめられ「僕は神谷琉斗だよ。皆は琉って呼ぶ」と肩を竦めて答えた。
「ふ〜ん…」と興味無さそうに僕は答え、神谷琉斗と名乗った少年をまじまじと見つめる。
「髪…なんで男なのに伸ばしてんの。」
沈黙の後、僕が少年の髪を指して訊く。
少年は不審そうに僕を眺め、話していいのか躊躇った後口を開いた。だが、何も言わずにまた口を閉じる。
幼き頃の僕は自分の質問に答えなかった少年が癪に障った。眉を吊り上げじろっと少年を見据える。琉は床を黙って見ていたが、ふいに視線をあげ僕の髪を見ると、目を輝かせながら言った。
「君の髪、綺麗だね! 本当に流れ星みたいだぁ…。」
「本物の流れ星なんだけど。」と呟いて僕はまた少年の髪のことについて尋ねた。
それに対し琉は眉間に皺を寄せ首を傾げたあと、少し躊躇いながらも話し始めた。
「僕は4年の時心臓の病気に罹ってしまって、余命を告げられた。もって2,3年だって。で、髪を伸ばすことにしたんだ。僕が生きた証。」
悲しい話の筈なのに少年は笑っていた。それが余計に寂しかった。
「髪はさ、月日が経つと伸びるでしょ。だから長い髪を持っていたら僕がそれだけの月日、生きたってことなのさ。」
少年は鼻を高くしてそう語った。
でもさ、琉。長い黒髪を自分の生きた証だって誇るのは可笑しいんじゃないか?
そんな僕の表情を見て琉は仏頂面をした。「笑いたけりゃ笑えばいいよ。」とでも言うように。
「笑わないよ。」
僕は自分でも気付かないうちにそう言った。
「笑うわけないじゃん。なんかかっこいいよ、あんた。自分の生きた証か…僕にそんなんあるかな。」
僕の言葉を少年は本気で考えてくれた。「君の生きた証はなんだろうね?」と腕を組み目を宙へ泳がせる。
「名前はどうかな?」
琉はそう結論を下した。
その場面を僕は第三者のようにじっと見つめながら、こんなこともあったな…と思い出に浸った。
このあと僕が黙り込むのを見て琉は僕に名が無いことを知るんだっけ。
琉が自分の名前を本気で考えてくれているのを見て、幼き日の僕は自分の顔の前で手を振りながら「いいよそんなの。」と必死で止める。その僕を無視しながら琉は僕の名前を付けた。
「聖なる光の男の子…で、光聖!! どう?」
僕はゆっくりと、でも確実に頷いて自分の名前を心の中で連呼した。
光聖、光聖、光聖……――――――
良い名だ……――――――