コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ キャラ人気投票結果発表!! ( No.252 )
- 日時: 2010/12/22 14:18
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gWH3Y7K0)
8章 64話「敵か味方か」
『迷イ星クズ 発見 私タチノ ターゲット』
その言葉が頭の中でぐるぐると疑問の渦となって僕の頭を支配していた。
なぜ僕が迷い星クズだと知っているのだろう? なぜこの光が懐かしいんだろう? 彼等――いや、彼女達だろうか?――は僕の味方なのか? 敵なのか?
最後の疑問の答えはおそらく“敵”だろう。味方に対して“ターゲット”なんて言葉を使うのは可笑しい。でも――――…あっ!
僕はなぜ3つの光が懐かしいのか理解できた。<ホーリー・フェザー>が支配する星クズの魂の国…僕の故郷の光と似ているのだ。僕は故郷で生まれてすぐ宇宙に送られた。許可が出るまでずっと宇宙で惑星達を監視していた。そんな短時間だけ浴びた故郷の光を、僕の体は覚えていたのだ。
涙が溢れそうになった。着地に失敗し地球で暮らさなきゃならなくなってから、毎日故郷に帰りたいと祈った。祈らない日など無かった。だからこの光を見た時感じたのだ。
―――僕を迎えに来てくれた―――と。
僕は琉のことなど忘れ、ふらふらとした足取りで光に近寄った。すると3つの光は眩い光を放ちながら形を変えた。球状だった光は滑らかに形を変え、やがて人間の姿をした光になった。そこから次は粘土に色付けしていく様に青,白,黒と色を変える。最後にはさっきまで光だったと思えない程人間の姿に近付いていた。服装は青と白、そして黄色で統一している。真ん中と右側は明るい青のスーツをびしっと着こなし、警察が被るような帽子を被っている。帽子の正面には黄色で羽を広げた鳥を刺繍していた。その神々しさにはハッと息を呑んでしまうほどだった。左側は同じく青い服装だったがズボンの代わりにスカートをはいている。帽子も同じようなものを少し斜めに傾けて被っている。三者とも、顔はよくわからなかった。鼻から下を黒いスカーフのような物で覆っているのだ。帽子は深く被っているので見える部分は目のあたりだけ。どこからどう見ても怪しい。見たところ…真ん中と右側は男、左側は女だろうか? まぁ、さっきまで光の球だったこいつらに性別なんて無いんだろうけど。
でも今の僕には見た目なんて眼球になかった。僕を迎えに来てくれた――そう思うだけで息がつまりそうだった。
しかしそいつらは僕が5メートルも近付かない前にさっと瞬時に行動した。真ん中の男(?)がポケットに手を突っ込んで小さい機械のようなものを取り出した。そしてそれを口の近くまで持っていき、僕の期待を裏切る言葉を発したのだ。
「チームG 星クズ発見しました。今すぐ拉致し、そちらに運びます。」
あれ? 男にしては良い声…。優雅で、さっきみたいな機械音じゃなく、とっても滑らか。同じ人物だなんて、とても思えない。
ん……? “拉致”?
数秒たってようやく自分の冒されている状況が判断できた。これは相当ヤバいんじゃないか? 左側の女が僕に向かって構えているのが見えた。と同時に悪寒が体を走り抜けた。汗が首筋から背中に流れ落ちる。
僕は左の女をちらりと見た。すると女はこちらに向かって走ってきた! まるで獲物を狩るハンターのように目をギラつかせ白い歯を覗かせる。僕は身震いして逃げようとした。だが足はガクガク震えていて力が出ない。やっとのことで重い脚を動かせたが力が入らず転んでしまった。転んだ僕の視界に入ったのは…―――――
「琉?!」
目の前の光景が信じられず、僕は瞬きをした。でも目に映るものは変わらず残酷だった……。
琉は血を吐いていた。さっきから酷かった咳はヒートアップし、更に琉を苦しめているようだった。こんな大切なことに気付かなかったなんて…! 自分のことばかりに気を取られ琉のことをすっかり忘れていた。
僕は悲しみと衝撃に心を支配され、怪しい女から逃げることなんか頭になかった。僕は四つん這いになって琉のところまで近寄った。琉の姿はとても痛々しかったが、僕はそんな少年を凝視した。目を離せなかった。目を離したら、琉が消えてしまいそうだったから。やっとできた友達を失いたくなかった。
すると僕を捕まえようとしていた筈の女が僕の横を音もなく通り過ぎた。優美に歩き琉に近づいた女はすっと屈んで琉の手を触った。
僕は慌てて止めようとしたが、女は琉の手を触ってなかった右手で僕を制した。ただの手を挙げて止めるのとは違う、綱でぐるぐる巻きにされて身動きが取れないような、そんな止め方だった。猶も暴れる僕に向かって女は言った。
「私はこの子を助けてるだけ。そんなに慌てないで。それに、私と闘おうとか考えるのはよしなさい。あなたは私に勝てない。」
強気で威厳あるその言葉に少し怯んだ。でも勝てないなんて、決めつけるのはあんまりだ。自分に自信持ちすぎ。僕に勝てるなんて軽佻浮薄だ。僕は女を睨みつけてやった。でも女は僕の視線に気づき、もっと凄味を利かせた目で僕を睨んだ。結局僕はビクビクして目を逸らした。こいつといると、どうも調子が狂う。
僕はブツクサ文句を言いながら彼女を見た。まだ琉の手を触っている。触れている手からは青白い少し不気味な光が発生していた。琉はどんどん良くなるようで、肌は血色を取り戻し目は僕を見つめている。
やがて女はすっと立ち上がった。そして僕の横を通り過ぎながら言った。
「その子の命の灯火はもう小さい。無理矢理拉致するのは嫌いだから、その子にお別れの挨拶でもしてから屋上にきて。私たちの正体、そしてあなたが何者なのかも全て、教えてあげる……。」
そう言っていつの間にかどこかに行ってしまった2人の仲間の後を追って、女は音もなく優雅に去っていった……。