コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ キャラ人気投票結果発表!! ( No.260 )
- 日時: 2019/10/19 11:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
8章 66話「雪国から闇へ」
何処からか怪しくて不気味な紫の光が私と光聖君の間を直撃した。いや、もっと詳しく言うならば、私と光聖君の間ではなく私の脇腹に直撃した――――筈だった。
でも違う。私はどこも負傷してなかった。誰かが私を間一髪で突き飛ばしたから。本当はその光にあたるはずのなかった人が当たったから。
突き飛ばされた衝撃で私は転び砂利の上をゴロゴロと転がっていった。あちこち擦りむけ痛がりながらも私は歯を食いしばってよろよろと立った。そして私の身代わりになった人物をひたと見据え苦痛に呻いた。
「こ…うせい…くん……!!」
私の眼に映ったのは変わり果てた光聖君だった。紫の光の正体は矢で、紫色に見えたのは、矢の先に紫色をした如何にも怪しい液体を塗り付けてあったからだった。その矢が胸に突き刺さった光聖君はふらっと2, 3回揺らめいた後ガクンと地に膝をつき、焦点の定まらない目で私を見て何か呟いた。そして瞳を閉じてスローモーションのようにゆっくりと倒れた。
私は目を見開いて「光聖君…」と何度も言い頭を振った。どうして…? どうしてこんなことに…?
あまりの展開に頭がついていけなかった。そんな私の脳の機動を正常に戻してくれたのはある人物の声だった。
『お父様方、お母様方、こんにちは。今日の放送は私、安藤なつみでーす♪ 今日はここ放送室に特別ゲストをよんでいます。さぁ、出て来てください!』
「なっ……!」
なっちゃん!?
やっと我を取り戻した私は光聖君から目を逸らし、なっちゃんの方を向いた。
放送室にいるなっちゃんの声はマイクを通して運動場に響き渡った。…そういえばなっちゃんの声しか聞こえない。もっと周りが煩くてもおかしくないのに。そこで私は初めて辺りを見回した。
まるで雪国に居るようだった。雪が降ってるわけじゃない。とても寒いというわけでもない。皆が、氷の石像のように固まって動かないのだ。
私の後ろで走っていた女の子、応援席で声を張り上げて応援してる先輩達、観客席で私に向かって手を振っているお母さん―――そのどれもがじっと、そのままの形で止まっていた。
時が止まっているようだった。人も自然も風さえも。全部止まっていて、私だけが動いていて…――――。目に見えない巨大な恐怖で私はただ震えていた。泣きたかったが涙が枯れて出てこない。
そんな私を冷たい目で見つめているなっちゃんの横に2人の少女が並んだ。それを横目で確認して、なっちゃんはまた口元にマイクを近づけて口を開く。
『右の子は学校で1番の美少女 伊集院琳、左の子は勉強に関してはトップクラス。皆のリーダーの 日向茜です♪ 今からこの3人でショーの幕を開けたいと思います♪』
そう言うと3人は胸の前で手を組み同じ瞬間で口を開いた。まるで歌声かと思うほど綺麗な声色で呪文を唱える。
『サーディオ・マリエッタルネ インペチカーナ・テロソーユヘミヤ』
私はその呪文が死の前兆のように思えた。そして大声で叫んだ。助けを求め光聖君の名を呼んだ。
だがこれから起こる不吉な出来事に変わりはしなかった。
私はすでに闇への切符を、手に入れてしまったのだ。
―――――ようこそ、“闇の世界”へ―――――