コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆    祝!! 返信300突破!!    ( No.328 )
日時: 2011/04/13 21:41
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: O/vit.nk)

10章     71話「頼みの綱と脆い手」


 “本拠地”
 その言葉を聞いて私は大きく目を見開き、光聖君は訝しげに眉を寄せる。
 ここに来てからは本当に驚くことばかりだった。実際、私は何も聞かされずに、ただ光聖君を助けるといった相手の言葉を信じてここに乗り込んだのだ。しかしさっきなっちゃんと話したことで、どんなことにも冷静に対応できるようになったから今も、平常心を保っていられている。
 そんな暗黙を破ったのは光聖君の震えた頼りない声だった。

「本、拠地…そんなところが……?」

 とてもかっこいい容姿を持つリンさんは唇の端を僅かに吊り上げて顎を引く。その肯定の意を察し、光聖君は打ちひがれ上半身だけ起こした体を後ろへ微かに倒した。
 そんな光聖君の姿を見てリンさんは再度口を開く。

「まさか噂でしか聞いたことのなかった場所が存在するとは思わなかったんだろう? しかしこの世は儘ならん…お前ひとりのために動いているわけではないのだ。」

 私には何の話をしているのか、さっぱりわからなかった。しかし光聖君の焦る表情、リンさんの得意げな顔を見て悟る。私達は窮地に立たされているということを。
 私はそっと光聖君の名を呼ぶ。まるで最後の頼みの綱に縋るように。光聖君は口をきつく結び私の手を取った。
 私も光聖君の手を握り締め、驚く。

(冷たい……)

 彼の手は今までにないくらい冷たかった。死人と受け取ってもおかしくないくらいだ。
 気が付くと光聖君は息遣いも荒かった。汗の量も尋常じゃなく顔は青ざめている。
 私はサーッと血の気が引くのを感じた。

「――――っ、どういうこと?!」
「我らがやっと捕まえた光聖に、簡単に解毒剤を渡すと思うか?」

 リンさんは冷酷な瞳で私を見る。その一睨みで私は体が動かなくなった。恐怖というよりもおぞましい――そんな感情が身体を駆け巡る。
 どうやってここから逃げる――――?
 答えは出そうになかった。ここに乗り込んだ時点でもう、私たちの負けなのだ。

「逃げ道は、ない。」

 リンさんは静かにそう告げる。

「我等は一瞬の隙も、逃さない。」

 と、途端にリンさんの姿が視界から消える。

「こうするとほら……」
「―――っ!!」

 気づくとリンさんは私のすぐ真横に立っていた。
 ひやりとした手先が私の首筋に届く。

「お前の命など容易く消せる。」

 私はゆっくりと、恐る恐る眼球を横に動かす。頭自体を動かそうとは思わなかった。身体が恐怖によって言うことを聞かないのだ。
 リンさんの細い手先が首筋から離れた。そしてその手は一瞬でピッと揃い、さっきまでは想像もできなかった恐ろしい雰囲気を放つ凶器――手刀となる。
 私が驚いて息を飲むのと同時に手刀が私の首筋に向かい放たれた。

(どうして―――――?)

 ドサッと私が床に崩れる。と同時に私の手から光聖君の脆い手が力なく滑り落ちるのを感じた。