コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆  連載1年突破記念!『キャラ人気投票』    ( No.398 )
日時: 2011/08/01 21:22
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 1Fvr9aUF)

11章     79話「参戦と恩人」


 今リンさんが私の事見ていたような……。後ろを振り返りながら私は首を傾げた。
 彼の視線を感じながらも、私は彼に会いたいと思わなかった。ただ単にリンさんが女の子の手紙を破り捨てたことに怒りを感じているのと、彼に平手打ちを食らわせてしまったという罪悪感が練り混ざって、まるで私が彼に近づこうとするのを止める、足枷になっているようだった。
 でもずっと気まずいままじゃ……。
 リンさんと距離を戻したいのにそうすることが出来ない、私のもどかしい心情を察したように、横にいた光聖君が言った。
 
「ねぇ、リンに自分は迷い星の子じゃないって伝えた?」
「あっ……!」

 大切なことに気付かされ、私は口に手を当てた。頭の中が一瞬真っ白になる。なぜだか首にあてられた冷たい刃を覚えた。
 そう、私は人間と迷い星の間に生まれた子供だと勘違いされているのだ。
 この前はこれのおかげで傷つけられずに済んだが、データが欲しいために捕らわれる可能性も十分ある。
 場合によっては命が奪われるかもしれない――その危険性は自分が一番よく知っていた、筈なのに。
 たまらない焦燥に襲われ、私はさっきリンさんがいたところに走り出した。
 
「光聖君もついてきて!」

 呆然と立ち尽くす彼の手首を不意に握りしめて。
 と、最初は呆気にとられ何も言わなかった光聖君が、口角を上げて私の手を振り解いた。

「ちょっとは甘えなって。」

 そう言って私の手首を優しく掴み、私の前で走る。
 私は自分の顔が火照るのを感じて俯いた。
 光聖君が私の前でよかった。危うくこの顔を見られていない。
 ホッと息をつきながら、私は笑みを作った。

「! 丁度いいところに来たな。迷い星と……迷い星の子よ。」

 リンさんの元まで走ってきた私たちをあくまで平静に――しかし私の事を遠回しに呼んだ――リンさんは迎える。
 私はリンさんとの壁を感じながらも、重い口を開いた。

「あ、あのね? その事なんだけど――――」
「お前たちに参戦を願う命が下された。一緒に戦ってくれ。」

 リンさんは私の話を聞いていないようだった。そのくらい必死に懇願する彼を、初めて見た。

「参戦って……なに? 私たちが戦う、の?」
「そうだ。無論、お前も、な。反乱軍に必要とされたのでな、俺にはどうしようもできない。」

 私の質問にリンさんはあっさり答えた。目の前が真っ白になる。
 首筋に一粒の雫がしたたり落ちた。
 驚いて――言葉では表せないくらいに――何も言えない私に代わって光聖君が問いただす。

「誰からその命令を? 上に会って話を聞かない限り、僕達が頷くことは無い。」

 やけに挑戦的な光聖君の言葉を受け、リンさんはあるところに向かって歩き出す。

「今からその方に会いに行こう。こうなることは分かっていた。彼は今、俺の基地にいる。」

 “彼”と言ったので男の人なのだろう。リンさんの言葉から伝わる、その“彼”への尊敬の心が手に取るようにわかった。
 こんなにリンさんが敬うのだから、偉大な人に相違ないだろう。
 光聖君は心配そうに私を見て聞く。

「空、行ける?」

 私はくらっと眩暈がするのを感じながらも、何とか頷いた。
 そんな私を軽く見てリンさんは歩き出す。何分か歩けばすぐ着く距離らしい。
 相変わらず強く差す日光を受けて、私の足取りは重くなっていくばかりだった。

Re: ☆星の子☆  連載1年突破記念!『キャラ人気投票』    ( No.399 )
日時: 2011/08/01 21:23
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 1Fvr9aUF)

「ここだ。」

 リンが急に立ち止まった。しかしそこには空き家ばかりで立派な基地など見当たらない。
 首を傾げあたりを見回す僕達に視線を送り、「入るぞ」とリンは今にもはずれそうなドアを開けた。
 中を一望して僕達は仰天した。それは外から見た風貌を中があまりにも、矛盾していたから。中は清潔かつシンプルで、白と黒、そして茶色で壁も家具も統一している。つい最近建ったように見える、しっかりとした家だった。
 確かに基地というには相応しい。外見だけ見ると誰も寄り付かず、中は住み心地の良いからだ休めの地。
 僕もこんな基地を持ってみたいな……と呑気に考えた。
 「お邪魔します」と断って部屋に上がり、リンの後をついていく。そして一番広い部屋まで案内してくれたリンは言った。

「ガルディメット・ジャッカル総司令官、迷い星と迷い星の子を連れてきました。」

 ガルディメット・ジャッカル――なんだか聞いたことのある名だ。
 なぜだろうと首を傾げて、僕たちは一歩前へ出た。
 
 白いソファに彼はいた。
 白髪交じりの短髪――最も、地毛が白いため、白髪との見分けはつけがたい――に少々濁った青い瞳、そして左目を通過する長い傷が長い戦歴を表している。
 彼は僕を見つけ愛嬌のある笑みを浮かべた。

「久しいのう。聖なる光、光聖よ。」
 
 そう話しかけられ、やっと僕は思い出した。
 僕の命の恩人だ。

「ガル!! どうしてあんたがここに……?」
「勿論、反乱軍のリーダーとしてじゃよ。警官の仕事など、とうの昔に辞めておるわい。」

 空が不思議そうに僕を見た。命の恩人だよ、と軽く説明する。
 しかし……まんまとやられたな。彼に説得されて、断れる筈がない。
 僕が困っているのを見て、リンは瞳を光らせる。なかなか計算高い奴だ。

「そっちのお嬢ちゃんは初めまして、じゃの。元『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』のトップCチームリーダーを務めておった、ガルディメット・ジャッカルじゃ。気軽にガルと呼んでくれると嬉しい。今は反乱軍のリーダーをやっておる。」

 ガルは破顔一笑して空に話しかける。空も自己紹介を簡単に済ませた。

「もう少しゆっくり話ができればいいんじゃが、生憎そんなゆとりを持ち合わせてないのでな。…………参戦の話はもう聞いたかの?」

 僕達は頷いた。それを見てガルは悲しい笑みを作る。

「誰も戦争なんてやりたいと思わん。儂もそうじゃ。しかし、誰かが動こうとしない限り、何も変わらん。そして、何かを変えるというのは、勿論それなりの犠牲がつきもの。その犠牲を少しでも軽くするために、お主等が必要なんじゃ。」

 ガルは一言一句に重さを込めて話した。
 彼の言葉により、僕の心が揺さぶられる。
 この前の力をまた使えるのか、自信はない。確信も持てない。
 しかし、僕にも何かできることがあれば――――そう考える自分もいるのだ。

「『アステリア』を、その住民を、救ってくれ。」

 ずっと黙っていたリンが切実に言った。
 本当に故郷は今、深刻なんだ……。

(――――≪我が国を救うと誓うか?≫――――)

 あの日の、謎の人物の声がより鮮明に思い出される。
 そういうことなのか……?
 僕はもう、完全に決心を固めた。

「――――僕は行く。故郷を、守る。」
「えっ……!?」

 僕の言葉に当惑した空はたじろいだ。
 空は迷い星の子じゃないんだ、行かなくても良いんじゃ――?
 そんな気持ちに応えるように、ガルは言った。

「今週の日曜日、儂らはここを立つ。その日までに答えを出してくれるかの? 光聖はその日、『アステリア』に行こう。」
「故郷に……!?」

 僕は嬉半分困惑半分に聞き返した。

「決戦の舞台は『アステリア』じゃからの。」

 ガルはニッと歯を見せた。とうとう故郷に――――!?
 僕もニッと笑い返した。溢れんばかりの喜びを感じて。


「――――まさか二人をここへ連れてくるのが吉報とはの。」

 彼は困った風に笑った。一気に静かになった空間に、彼の笑い声が響く。
 俺は淡々と言った。

「迷い星は俺の言うことなど、耳も傾けないだろうと思ったので。」
「はっはっは、お主は本当に面白い。儂も勝てる気がしないわ。
 ……しかし、あの人間の女がどう出るのか、楽しみじゃな。」

 彼の悪戯っぽい笑みに、今度は俺も目を光らせて答えた。

「そうですね。」