コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 『キャラ人気投票』 〆切間近!! ( No.434 )
- 日時: 2011/10/01 17:38
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
12章 84話「変化と幼き戦士」
「ほんっと〜にごめんね!!」
赤髪の美人な女の子、キラが両手を合わせて何度も謝った。私はできるだけ笑顔を作るよう努めながら、右手を押さえる。
「いいの、大丈夫だから。」
そういった私の手を、キラがぎゅっと握って「ほんとに!?」と聞く。彼女の手にはまたもや力が込められていて、私は声にならない悲鳴をあげた。
「あっ!!」とキラが口に手を当てて目に涙を浮かべながら、また謝る。
「ご、ごめんなさい!!」
「いいの、大丈夫……」
私のこめかみがピクピクと動いた。う〜ん、笑顔もこれが限界だ。
そんな私たちのやり取りを見ながら、横でハクが必死に笑いを堪えている。私が尻目でハクを睨むと、少年は透かさず目を逸らし、そそくさとどこかへ行ってしまった。
ドアが閉まる音と共に私は重い溜息をついた。
本当にここでやっていけるのかな……
とそんな私の気持ちを察したようにキラが俯いて言った。
「ごめんね……空ちゃんは今、不安でいっぱいなのに、私が困らせて。
ほら、私こんな力持っているから女友達とか作れなくて……だから貴方が来てくれた時本当に嬉しかったの。でも、また失敗しちゃった。」
キラは無理に笑顔を作る。
それがとてもいたたまれなくて、私はそんな彼女の手を今度は自分から握った。
「大丈夫! キラは優しいもん、絶対友達ちゃんと作れるよ! だって私達、もう友達でしょ?」
私の言葉に、キラは俯いていた顔をパッと上げた。
キラは今度は全身全霊の力を込めて両手を握り返すような真似はしなかった。代わりに暗い部屋を照らす光に反射して煌めくものが目のあたりに見えた。
そういえばさっきのパーティも、女子とはつるんでいなかったなぁ……
思い出す限りキラは、体格も良くて強そうな男の人たちとばかり話していたように見える。勿論それは反乱軍に女戦士が少ないという理由もあるのだが。
キラは頬を伝う水滴にやっと気づき、顔を逸らした。必死にゴシゴシ擦っている。
私は気付かぬふりで窓を見た。外は相変わらずのどんちゃん騒ぎだ。
ここの説明が遅れてしまったが、私たちが今いるここはテント……というにはあまりにかけ離れた、まさに戦士たちの為の要塞だった。確かに傍目は黄色いビニールで形作られた四角錐(つまりピラミッド型)のテントで要塞とは言い難い。しかし中に入ると一体どんな構造をしているのか、高級ホテルといっても過言ではないくらい広くて長い廊下が目の前に広がっていた。それだけ見ても何坪あるかってくらいなのに、それでもまだ廊下だ。何十個にも及ぶドアの先には何があるのだろう……。そう私の胸には期待が膨らんだが、残念なことに手を冷やす為だけに中に入ったためこじんまりした部屋にしか案内してもらえなかった。
いつか色々な部屋を案内してもらおう。最も、そんな日が来るのかも怪しいが。
私はキラに視線を戻した。彼女もやっと落ち着いたらしく、軽く微笑んで言った。
「ごめんね。歓迎会に戻ろうか。」
う〜ん、笑顔はとっても可愛らしいのになぁ。
僕達はやたら豪華な部屋でゆっくりと休んだ後、廊下を奥へ進んだ突き当りにある、訓練所へと向かった。
木造(というべきなのか?)でできたほかの部屋の扉とは違って、頑丈な鉄で造られている扉の手すりに、手を触れる。ひんやりとした感覚が体中に巡る。今更ながら入りたくないと思ったが、空もついてきているので、そうするわけにもいかない。空は昨日、ぐっすり眠れたようだ。血行の良い顔色とパッチリと開いた好奇心に溢れた瞳が、それを物語っている。
僕は一つ息を吐き出して、冷たい手すりをグッと引いた。
瞬間、冷たい冷風が僕達を包み込んだ。思わず身震いしたくなったが、その衝動を抑えて、僕は一足前へ踏み込む。
僕らを待っていたのは見たこともない器具たちが並ぶ中、広いスペースで剣を振るいながら体を動かしている、リンだった。とても大きく両手でやっと持ち上げられるくらいに重そうな大剣を軽々と振るい、可憐な手さばきで空(くう)を切り刻むリンは、悔しいがとても様になっている。
そう、僕に指導をしてくれるのは、紛れもないリンだ。こいつに教わるというのはなかなか癪に障るが、訓練を頼んだのは僕なので、そう文句を言う訳にもいかない。それにこのままだと皆の足を引っ張ってしまう。
僕らを見てリンは、やっと来たかと溜息をついた。
まぁ、少し遅かったから素直に謝るけど。
「これからお前に合った武器を探して、実際に戦う。空はそこに座っていろ。」
偉そうな命令口調に空は黙って従う。それにしても、空はここについてくる必要は無かったのに、なんで一緒に来たんだろう?
今更ながらそう考えたが、聞く必要もないし良いや。この際、空の前で格好つけてやろう。きっと目を輝かせながら称賛してくれる筈だ。
と、口元を緩ませながらぼーっとしていた僕を、リンの鋭い眼光が射抜く。
僕は慌てて咳払いをして、リンを急かした。
「えーっと、自分に合った武器を見つけるんだっけ?」
「ああ。そこから気に入ったのを取っていけ。」
リンは部屋の右端にある扉を指差した。どうやら武器を入れる倉庫らしい。
好奇心がグングン膨らむ僕に、リンは言葉を投げかける。
「見た目じゃなく、使いやすさを考えろ。選び終われば直ぐに実践だからな。」
「分かってるよ。……で、相手は?」
「勿論俺だ。」
げっ。これは頑張らないと。
僕は露骨に顔を顰めて、倉庫へと進んだ。