コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 『キャラ人気投票』結果発表!! ( No.436 )
- 日時: 2011/10/09 18:25
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
12章 85話「訓練と成果」
薄暗い倉庫の中へ入ると錆び臭い臭いが鼻を突いた。僕が恐る恐る歩むと、その動きに合わせて電気が一つつく。どうやら人が通過すると電気がつくらしい。よく出来ている。
ここは本当に「武器の倉庫」と言うに相応しい場所だった。いや、もうこの際宝庫と言っても良いのではないか? 右から左、そして手前から奥まで色々な武器に囲まれている。しかしところどころ、とても武器に見えないガラクタがあるのは気のせいだろうか?
電気の光に反射して武器たちが輝きを放っていた。手入れがよく行き届いている。リンの持っていたような大剣や鋭い太刀、弓や銃――これはかなりセコいので使わない――まで置いてある。
奥までじっくり見ていたら大変なので――僕には突き当りが見えなかった。どれだけ武器を保管しているのだろう――手前にあった適当な刀を手に取ってみる。
長さは1メートル少し。すらりとした形が特徴的な、太刀だ。光に照らしてみるとキラリと刃のところが光った。切れ味はよさそうだ。次に柄を見てみるとデザインにも拘(こだわ)っているようで、青い龍が鮮明に描かれている。
これだな。
僕は太刀を手に、防具は無いかな、と近くを漁る。すると軽そうでヒラリとした、いかにもヒーローが纏っていそうなマントを見つけた。
防御力は低そうだ。だけど――
僕はニヤリと笑みを作った。今度は勝てそうだ。
「遅かったな。」
リンは本日二度目の溜息をつきながら言った。
お前はあれか、究極の短気か。
そう怒鳴りたい気持ちを抑え、僕は代わりに皮肉を吐く。
「今日は銃は使わないんだ。その方が勝つ確率上がると思うけど?」
「銃は卑怯だからな。」
リンは敢えて最後の言葉には返答をせず、答えになっていない答えを返した。
つかそれ、十分前に僕も同じこと思ったんだけど。
僕は舌打ちしたい気持ちを抑えて、顔を顰めた。こいつは見ているとどうも癪に障る。あの3人の中でナツが一番マシだ。
そんな僕の気持ちに気付いたのか気付いて無いふりをしているのか――別にどっちでも良いけど――リンは表情一つ変えずに、基本を教える。
「まず、この国で上手な戦闘能力を身に着けるコツを教える。軽く地面を蹴ってみろ。」
僕は言われるままに床を蹴ってジャンプする。そして奇妙な違和感に気付いた。
浮遊時間がいつもより長い。
僕の驚いた顔を一瞥して、リンさんは違和感の正体を明かした。
「体がいつもより軽いだろう? それは『アステリア』の重力が軽いからだ。ここでは長い時間宙に浮くことが出来るし、少し足に力を籠めれば宙を自由自在に歩ける。つまり空中戦も可能だ。武器も見た目よりは軽いから、この様な大剣でも易々振れる。」
いや、どう見ても軽々とは振れそうにないんだけど。
「構えは知っているな? それなら今から実践だ。」
「は?」
え、練習は? 使い方は良いのか?
と、僕の心を察して――こういう時は便利だ――リンは至って平静に答える。
「お前には練習するよりも実践した方が効果があると思ったからな。頭で慣れるより体で慣れろ。」
そう言い放ってリンは後ろに後ずさった。どうやら僕との間を開ける為だったらしい。二人の間は約20m。僕は太刀だしリンは大剣なので、どちらにしろ近付かなければならない。
というか、さっきの後ろに飛び退くのは一体どうするんだ? 本当に何も習ってなくて不安なんだけど。
僕は眉を寄せ顔を強張らせた。危ういところで武器はちゃんと止めてくれるんだろうな。これで首が跳ねたらお前の責任だぞ。
心の中で愚痴を言いまくって、刀を鞘から抜いた。太刀を両手で握って前に構える。あれ、構えってこんなので良いのか?
「つべこべ言わず早く来い!」
そうリンに一喝された。
やっぱり聞こえていたのか。しかも言うって全部心の声なんだけどね。
するとリンが凍て付く視線でこちらを睨んだ。そろそろやめた方が良さそうだ。次に何をされるか分かったもんじゃない。
僕は咳払い一つして、目の前の戦いに集中した。ここはさっさと勝って部屋でゆっくり休もう。
マントを翻して僕は再度武器を握り締める。
このマントが勝利の鍵だ。
- Re: ☆星の子☆ 『キャラ人気投票』結果発表!! ( No.437 )
- 日時: 2011/10/09 18:26
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
「よし!」
僕は足に力を籠めて地を蹴った。何故だろう、いつも以上に速く走れる。
不思議な違和感を感じて視線を下にして見ると、足の踵(かかと)に小さな火花が散った。そういえばトップチームGとの長きにわたる戦いの中で何度もそれを見たことがあった。そしてそういう時は必ず相手は加速して走るのだった。
どうやらリンが言ったことは本当のようだ。僕は戦いながら力をつけているタイプらしい。
リンも走り始めた。二人で向かい合う形となって――――
鈍い金属音が聞こえた。大剣と太刀がこすれ合う。
リンが力で押してきたので、僕は後ろへと飛び退いた。悔しいが力ではリンの方が勝っている。
「相性が悪かったな。大剣は重い分ほかの武器よりも力が強い。お前の太刀では勝ち目がないぞ。」
リンは得意げな顔で言った。確かに相手は前まで警官の仕事をしていた分、手強い。だけど僕も決して、弱くはない。
大剣の弱点は――その重さ!
「はあぁっ!」
僕は再度足に力を入れて前かがみになる。そして足に小さく火花が飛び散ったのを確認し、前に踏み込んだ地を蹴った。
防御態勢を取っているリンに、また真っ向から攻撃する程僕も馬鹿ではない。
リンと十分間を縮め、僕は踏み込み思いきりジャンプした。上空でリンの真後ろまで高速で回り込んで、下へ飛び降りながら太刀を横へ振る。
本来ならばその刃はリンの首元へと振られた筈だった。
しかしその一撃はいとも簡単に跳ね返された。リンは何食わぬ顔で大剣を弾いたのだ。そして……
「あっ!」
僕が握っていたその太刀は大剣の力に敵わず、僕の手から抜け落ちてしまったのだ。
カラン、と虚しい音が響き渡った。他に聞こえるのは僕の荒い息遣いだけ。しかしこの隙を突かれるわけにはいかない。
僕は素早くマントを掴んだ。そしてそれを力で引き剥がし、止めを刺そうとこちらへ走ってくるリンへ投げつけた。
「――――!?」
そのマントは一瞬リンの視界を奪う。ピンチはチャンス、形勢逆転はいつでも可能だ。
僕はその瞬間、再び上へ跳躍した。手にナイフを握って。
「うあああぁぁぁぁーーーー!!!!」
リンを目掛けて僕はナイフを振り上げた。
終わりだ!
その瞬間、僕の首にひやりとした感覚が走った。
「俺の勝ちだな。」
「なっ……!」
気が付くと、僕の首筋にはリンの大剣があった。
マントに隠してあった小刀はリンには届かなかった。ただ、リンの頬に切り傷があったので、一応掠りはしたらしい。
一瞬の出来事だったのでよく覚えてないが記憶を辿ると、僕の小刀がリンの大剣により弾かれ、その隙に首に大剣が添えられた気がする。
どれだけ反射神経が良いんだか。
「マントの裏に小刀を隠すとはな。如何にもお前がやりそうな作戦だ。しかし、まだその技術では俺には勝てない。もっと訓練を積み重ねることだな。」
「……分かったから剣を離してくれない?」
刀が今にも僕の首も皮を切りそうで恐いんだけど。
リンは離すのが惜しいような表情でゆっくりと手を下した。