コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆    作者は戦闘シーンを練習中でございます。 ( No.445 )
日時: 2011/10/25 18:25
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/

『戦争』
13章     87話「水晶と予言」


 ここはどこだろう?
 私は暗い森の中を彷徨っていた。
 ―――――――――― 一人で。


「よし、準備はいいか?」

 リンさんが最後の確認として、聞く。

「準備万端!」「バッチリさ!」「私はオッケーよ」「大丈夫です」「うぅ、緊張して腹痛が……」「さて、今回は何人消せるかな」「おぉ神よ、我等に勝利を……」

 と、皆は各自自分なりの答えを返した。
 光聖君も返事はしないものの、緊張した面持ちで力強く頷く。
 そんな中、私はただ、立っていた。
 ピアが少しお腹が痛いようであったが、私に比べたら彼女などたいしたこと無いのであろう。なにしろ、さっきから胸の動悸が収まらない。次々と首筋に冷や汗がしたたり落ちる。お腹もキリキリ痛むし、目の前が真っ白のなってきた。
 やっぱり、無理なのかな……――――

「空、大丈夫か。」

 その後皆が身支度を始め、戦争まで1時間を切ったとき、リンさんが唐突に聞いた。
 私は何とか笑みを作り、頷く。

「大丈夫だよ。準備もちゃんと出来てるし……」
「嘘はつくな。」

 そんな私の言葉を素直に信じるほど、リンさんは甘くなかった。
 凛とした瞳で、私を射抜く。
 この人に一生嘘はつけないな、と私は苦笑を漏らした。

「無理はするな。駄目だと思ったらやめればいい。守ってほしければ、俺が守る。
 だから、自分に嘘をつくな。」

 リンさんが一寸の揺らぎもなく、そう言い放つ。
 その優しさが私の心に火をつけたように、温かく灯った。
 私はやっと自分の気持ちを口にする。

「……うん、本当はすごく怖いの。戦争なんて考えたくもないのに、私が戦場に出るだなんて。それに昨日急に決まったから……心の準備が出来てなくて。」
「当たり前だ。それはここにいる、皆がそうだろう。しかし、皆がそうだろう。しかし、皆それを乗り越えて頑張っている。それに……」
「え……」

 リンさんは私の言葉を正面からちゃんと受け止めてくれた。
 そして、話を区切り、私の手を握る。
 ……冷たいけれど、温もりがあって心地良い。
 何故だかその手を握ると安心できて、ずっとこのままでいたいとそう思えた。

「それにお前には俺がいる。仲間がいる。横で悲しみを、恐怖を、そして喜びを分かち合える仲間が。お前は一人じゃない。」

 リンさんは瞳を煌めかせながら言った。
 言葉の一つ一つに重さを込め、一つ一つに言葉では表現しきれない意味を込めて。
 “仲間”。
 それはいつの日か、私がリンさんにかけた言葉。
 敵でも見方でもない、それ以上に大切な意味がある、“仲間”。
 その言葉をリンさんが自ら、私にかけてくれたのだった。
 自然と笑みが零れる。心の底から熱いものが込み上げてくるような……そんな感動を味わった。
 私はリンさんの手を強く握り返した。そして上を見上げる。
 綺麗な青空が、鮮やかに瞳に映った。

「うん。私、頑張るよ。」

Re: ☆星の子☆    作者は戦闘シーンを練習中でございます。 ( No.446 )
日時: 2011/10/25 18:24
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: EZ3wiCAd)
参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/


 その後、ガルさんの咆哮のような号令のもとに、私たちは四方へ駈け出した。
 あちこちで雄叫びや銃声が轟く。
 そう、戦争は始まったのだ。

 密林に、3人の息遣いだけが響く。
 光聖君は太刀を腰に下げ、甲冑のような服を身に纏っている。足の裏に火花を散らせ、風を受けた琥珀色の髪がなびくその姿は、相変わらずいかしている。
 私の左側を走る女性、ユキさんは修道服のような黒いドレスの上に紫の薄い布を纏い、顔も同じく紫の布で隠していて、何とも可笑しい出で立ちだった。よく言えば幻想的、悪く言えば少し変である。もっとも、これが彼女のスタイルなので仕方ない。
 ユキさんは全く息を切らしていなかった。しかも走っているというのに、水晶を手に何やら呟いている。
 ……正直かなり変わっているなぁ。
 私は声にならない溜息をついた。これでも戦うととても強いのだ。世の中は本当に可笑しいことだらけである。
 走っている二人に私は必至でついていく。もともと足は速い方なので、靴に金色の翼を取り付けるだけで『アステリア』の住民たちと同じくらいのスピードは出せる。しかし何分も二人の速度に合わせ走っていると、体力的にきついものがあるのも事実であった。
 とその時、ユキさんが急に足を止め、水晶からじっと目を離さずに呟いた。

「天野さん……私達の傍から離れないで下さい。すでに悪の手が忍び寄っています。」
「え……?」

 唐突なユキさんの予言――水晶で何か見えたのだろう――に私は走るのを止め顔を顰めた。
 悪の手が何なのかもよく分からず首を傾げるだけの私に、前を走っていた光聖君が足を止め振り返る。そして動かずに眉を寄せる私と、静止したまま水晶をじっと見つめるユキさんを交互に見て、こちらへ戻ってきた。

「どうした?」

 光聖君は構わずに前を走っていたため、ユキさんの言葉が聞こえなかったのだろう。
 だからと言って、こんな予言で光聖君を動揺させたくはない。
 ユキさんの視線をあえて無視し、私は頭を振って答えた。

「あ、いや……何でもないよ。」

 光聖君は探るように目を細め私を眺めたが、「まぁいいか」と言って私たちを急かす。そしてあるところを指差した。
 
「もうそろそろ敵陣だ。油断はできない。行こう!」

 光聖君が差した先には、高く聳える大きな塔があった。
 あれが政府塔……
 私には、その塔の周りで黒いオーラが蠢いているように見えた。
 再び二人が走りだしたので、私も後を追う。東軍と私たちは少し離れていて行動しているため、今どこにいるのかさっぱり分からない。皆無事だろうか?

「あれ?」

 走っている途中、私は木々が少し揺れたのを見た。私達は触れてなどいないのに、風も吹いていないのに、動いている。
 動物かな?
 そもそもこの国に犬のような動物がいるのかも定かではないが、突如生まれた好奇心の塊が「行け」と促しているようだった。
 私は心の声に従って走るのを止め、木々の方へ足を運ぶ。

「!?」

 その瞬間、鋭い痛みと眩暈に襲われ、私はうずくまった。
 何が起こったのか、よく分からない。
 焦って前を見ると、光聖君たちの姿が消えていることに気付いた。
 その次に私を襲ったのは、自分がした行動の過ちと深い後悔の念だった。