コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.460 )
- 日時: 2019/10/17 12:07
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
13章 89話「合図と始まり」
北軍 草原――
風が少し強い。自慢の赤髪が風に持っていかれそうで、私はそっと横髪を押さえた。腰まで届くストレートの長い髪を、戦闘時に私はいつも一つで上に高く結い上げている。長髪って邪魔なのよね。
そんなことを思いながら私はちらっと横を見た。私よりも10 cm程背が低い、冷静沈着なハクと気の小さい女の子、ピア。
この3人で北軍を統率し、政府塔を目指している。
それにしてもバランスが良く取れている。
何にも動じず笑みを絶やすことのないハクと、緊張に弱く臆病だがピンチの時に力を発するピア、そして私……
私は無意識のうちに腰に下げていた大鎌を強く握った。男顔負けの怪力を十分に生かすため、私は国内で一番重い武器を使っている。コンプレックスも時には役に立つ。
私は再度横を見た。いや、正確に言うと一人を。そして口角を上げ微笑む。
同じチームになれるなんて幸せ……
そんな私の視線に気づき、白髪の少年は顔を上げた。そして嫌味にならない笑みを浮かべる。
「何でしょうかキラ? 顔が緩んでますよ?」
「えっ、そうかしら!? 別に何もないんだけど……」
まさか指摘されるとは思わなかった。声が上ずってしまう。
そう、この私の思いはおそらく“恋”と言われるものの類。私も恋という感情を抱いているのだ。しかしこの事は誰にも言っていない。いや、言える筈がない。
女戦士は、恋とは無縁なのだ。
私だけの秘密。叶うことのない、一方通行の思い。
私はこれで良いと思っている。こういう形の恋も悪くないよね――。
そんなことを考えていると、カールがかった栗色の髪を二つで高く結び、幼い容貌を持った愛くるしい少女、ピアが元々冴えなかった表情をさっと曇らせた。
その変化にいち早く気が付いたハクが、声をかける。
「ピア、どうしました?」
「え、いた、あの……」
ハクの質問にピアは顔を俯けた。そして地を見つめ走ること数秒、重い唇を開く。
「……敵が、ついてきています。もう少しで、政府軍の合図がある筈です。――そして、戦争が……始まります。」
ピアは小さい体をブルッと震わせた。
私には、ピアの心の悲鳴が聞こえるようだった。何せ彼女にとって“戦争”は、いまだ経験したことの無い未知なる残酷な世界だからである。
少し説明を加えると、前々から小規模の戦いに参加していた私達に比べ、ピアは今回が初めての戦争だった。というのも、ピアはたいして凄い力を持っているわけではなく、ただ察知力が並外れているので選抜チームに選ばれたからだ。
ピアは反乱軍に入るのを嫌がった。彼女には、国よりも守る対象があったからだ。
しかし、その対象は消え去った。だからピアは反乱軍に入ったのだ。
「ピア、その合図がいつ始まるか、分かりますか?」
ハクが聞いた。未だに笑みを絶やさないのは何故だろう?
ピアは考えるように双眸を閉じた。そして怯えた瞳で言う。
「合図は――あと30秒後です。」
あと30秒!? すぐじゃない!!
驚きの答えに私は目を丸くした。無意識のうちに動悸が速くなる。
私は焦る思いを声に滲ませ、淡い海の色をした瞳を見て訴えた。
「っ、ハク! 連絡を――」
「はい。伝達網を張りました。情報は行き届いています。」
間髪入れずにハクは言う。その冷静に物事を対応する姿が、私を鼓舞した。
そうよね、私も頑張らなくちゃ……!
そう自分に言い聞かせ、猶も震えているピアの背を擦る。
「ピア、大丈夫。皆ついているわ。敵は、私が全部やっつけるから――――っ!?」
その瞬間、ドンと地が真っ二つになっても可笑しくない程の音がした。
鼓膜が破れそうで慌てて耳を手で塞ぎ、反射的に後ろを振り返る。
そして戦士が全員無事なのを確認すると、皮膚がジリジリと痛むのに負けないくらい、声を張り上げた。
「北軍、戦闘用意! 戦争――開始!!」
すると、ワァァと雄叫びにも似た声があちこちで上がり、軍の士気が高まったことを再度確認――いや、確信した。
私達は何もない、だだっ広い草原で足を止める。
ここなら敵の姿も直ぐ確認出来るだろう。
そう思った、直後。
瞬間、突如、唐突に、仲間の一人が音も無く倒れた。
静かな草原に強風が吹き荒れる――――