コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.466 )
- 日時: 2011/12/10 15:57
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 4V2YWQBF)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
13章 91話「突風の狼」
西軍 洞窟――
「おい、どうする?」
セルが指を鳴らせながら言った。貪欲な表情で今にも舌舐めずりしそうな勢いのセルを横目に俺は「そうだな……」と少し考える。本当はまず、俺まで巻き込み殺しそうなお前と距離を置きたいんだが。
とそこへ、後ろをついてきていた西軍から悲鳴が聞こえた。そうか、変質科学者の有能な助手たちは西軍を後ろからストーキングしていたんだな。
完全にはさまれた。が、そんな事どうだっていい。仮にはさまれなかったとしても、逃げようなんて気はさらさら無いからな。
再度「おい」とセルが荒げた声色で俺を急かすので、俺も少々声に焦燥を混じらせながら西軍に令を下す。
「お前と西軍は後ろのロボ軍を頼む。
俺は――トルとだ。」
「はぁ? 俺も下っ端とかよ!」
俺の言葉にセルの瞳がギラギラ狡猾な光を放ちながら異議を唱えた。しかし、セルがこういう反応を見せることは俺も分かっている。
俺は慌てずにゆっくりと、抑揚のない声で言った。
「そいつは弱い」
と、“そいつ”と呼ばれたひょろひょろメガネの科学者は眉を寄せながら――顔の皺が増えた――気持ち悪い高音で文句を言う。
「な、なーんですってぇ!? この私を弱い呼ばわりするとは――」
「ふん、確かに弱そうだ。変な機械の方が殺りがいがあるな。」
「お、お前まで私を! くそぅ、行けぇロボット第2615号機達よ!!」
科学者トルはメガネを押し上げて、引き攣った笑いを浮かべた。
その彼の合図と共に西軍の後ろで待機していた大量のロボット達がガシャガシャと機械特有の音を奏でながらこちらに近づく。
耳障りなことこの上ない。
俺はセルに「頼んだぞ」と一言、前に跳躍した。そしてトルの一歩手前で降り立つ。そして冷徹な瞳で変質科学者を見据えた。
一方トルは黄色い歯を見せて気持ち悪い笑みを作る。
「私とあなたでは少々分が悪いのでは? 私はあなたの戦い方を全て記憶している――。ハズレですねぇ?」
トルの問いに俺は鼻を鳴らして答えた。
「あぁそうだな、ハズレだ。もっと強い敵と戦えるのかと思っていたんだが。」
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.467 )
- 日時: 2011/12/10 15:57
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 4V2YWQBF)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
北軍 草原 天気――強風
瞬間、何の予告も無く一人の隊員が倒れた。颯爽とした草原い突風が吹き荒れる。
突然の驚きと怒りが胸の奥底から沸き起こってきて、私は何の考えもなく見えない敵に向かい刃を向け地を蹴る。
そんな私の手首に冷えた細い手が触れた。
「キラ、落ち着いてください。敵はまだ姿を見せていません。これでは貴方も巻き添えをくらうだけでしょう。」
私は我に返って、足を止めた。嫌な冷や汗が垂れる。
「そ、それもそうね……ありがとう、危うく敵の思い通りになるところだったわ。」
「いえ、分かれば良いのです。」
そう言ってハクは微笑みながらそっと手を放した。
私は自分の手首が急に寂しくなるのを感じて、ふと疑問に思う。
どうしてとっても優しいハクの手はこうも冷たいのだろう、と――――
そして私は少年の事ばかり考えてしまう自分の脳内から、優しい笑みを隅へ追いやった。今は目の前に集中しなければ……。
倒れた隊員を遠目で観察する。どうやら息はあるらしい。胸が上下するのを見て、私はホッと溜息をついた。
どうやら北軍の敵は俊敏だが攻撃力に乏しいようだ。
と、私が数秒の間にそう分析していると、すぐ傍で誰かが光と同じ速度で走り過ぎたように強く風が吹いた。
そしてその風は大きな塊となりながら竜巻のように青々とした草を掻き回す。今では風が、どこを走っているか見えるようだった。北軍の周りを巡回するように回り、そして私たちの前で急停止する。
私たちの足は無意識に後ろへ後ろへと、後退する。
勿論誰も、竜巻の餌食とはなりたくない。
竜巻はこれ以上私達に近付こうとせず、その場で数秒とどまったかと思うとやがて輝き始めた。光を放つその竜巻は、次に何百という数の球体に分散する。まるで分身のようだったが一つ一つ大きさが違うので、さっきの竜巻は数百の球体が集まって出来たものだと容易に想像できた。
再び風が強く吹き荒れる。
――嫌な風ね。
いつの間にか草原が銀色の風に包まれていた。こういう状況じゃなかったら、さも幻想的なんだろう。
しかし、今はそんなに悠長なことは言っていられない。
「これはまさか……」
と、横にいたハクが少し声に驚愕を滲ませ言った。
ハクがこんな反応をするなんて珍しい。
そう私が思っていると、前の銀色の球体が突然ぐにゃりと歪んだ。そして形が定まらず不確定要素の多い粘土のような物質が少しずつ、着実に、獣の姿と化していく。
そんな銀色の毛皮の獣の群れに、1頭だけ白く輝く毛並みのリーダーらしき獣がいた。
その獣は鼻と思われる部分を高く上にあげる。
ウオォーン
遠吠えが薄暗い草原で響いた。
そしてその白い獣は、形が完璧に整った姿で、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
輝く毛並みに今の遠吠え……
横にいたピアがぶるっと震えた。思わず半歩下がった彼女の目が宙を泳ぐ。
特徴的な遠吠えが響いたその瞬間、恐怖の戦慄が北軍を襲った。
そしてその根本的な原因となった白い獣はゆっくりと歩を進め、口角を上げた。鋭く尖った犬歯が光る。
獣はくぐもった声でゆっくりと、言った。
「我は白純一族の末裔、メトロである。今宵は我が風狼(フロウ)軍が敵を征伐しに来た。
北軍は貴様らで間違いあるまい?」
白い狼の目はらんらんと輝いていた。
その瞳が貪婪(どんらん)な光を放っていたことは言う必要もないであろう。
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.468 )
- 日時: 2011/12/10 20:47
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 4V2YWQBF)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんばんは^^
何だか更新がすごく久しぶりです(笑)
西軍は3日で書き上げたのですが北軍でずっとストップしてまして;
やっとあげられてホッとしてます^^
これで一応13章は終わりです。
道のりが長くて大変だぁ……
まぁこれからも焦らずゆっくり更新していきますので!(おぃ
ではではノシ
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.469 )
- 日時: 2013/02/10 21:22
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: プロローグ的なのを書いてみた。
14章 92話「真実を知る者」
時は政府軍と反乱軍の戦争真っ只中。煌々とした月が明るくあたりを照らす、言わば真夜中である。
戦争、それも不意打ちをするのにこれ程いい時間はない。闇の中で敵の背を刺す。これが今回反乱軍の戦略であった。
しかし、思い通りにならないのが戦争である。
今回我等反乱軍は完全に裏を読まれていた。反乱軍が動く前に、開始合図の大規模な爆発が起きたのである。ここで注目してもらいたいのは、その爆発の発生地だ。
ここまできたら敵軍の黒幕の相当に頭が狂っていると言える。
政府はまず、反乱軍の本拠地へ攻撃を仕掛けてきたのだ。これは我等にとって深い痛手でしかなかった。
しかし、ここで大きな矛盾が生まれる。敵は何故本拠地の場所が分かったのだろうかと。
本来ならば我等の本拠地はドーム状の膜に包まれ姿が見えない筈だった。つまり、政府はたとえ空中から探そうとも、見つけ出すことは不可能なのだ。
しかし敵はそれをやってのけ、しかも誰にも気づかれずに爆弾を仕掛けたのである。
私に抜け目は無かった筈だ。敵はその様な素振りを一度だって見せなかった。
しかし現実がこれだ。今現在も、本拠地は混沌の渦である。
つまりこれは反乱軍に裏切り者がいるという証拠であろう。前から怪しいとは思っていたが、決定的な裏付けが今、出来たと言える。
爆発のせいで結界は壊れ、また反乱軍の団結力も、士気も、瓦解されてゆくようだった。
これじゃあ政府に丸見えだ。そう嘆く者も少なくはない。
ガルディメット・ジャッカル、ここを乗り切るが勝負の分かれ目かもしれんな。
しかし……後で後悔しても知らぬぞ。
黒駒よ――――
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.470 )
- 日時: 2011/12/16 17:30
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 4V2YWQBF)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんにちは^^
14章突入しました!
今回はちょっと短いです。
本拠地のことをちょっと触れておこうと思いまして^^
あ、試験期間に何やってんのって質問は無しでお願いします(笑)
で、今回私が一番気になるのは、読者様達が92話の一人称人物を当てられるかって事ですね^^
これを当てられたらすごいww
あ、一応少しだけ伏線張ってますが、どっちかっていうと分からないで欲しいです(ぇ
この人物はあんまり一人称書きたくなかったので(笑)
なんで書いたのかは私にもさっぱりww
でも他のキャラにはなさそうな文章が書いてる方も楽しかったです♪
こういうキャラすごく好みww
どうでもいいですが、明日は京都へ行ってきます☆
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.471 )
- 日時: 2011/12/22 13:20
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんにちは^^
小説は、期末試験も終わり明日から冬休みなのでこれからバンバン書きます!!
なのでもう少しお待ちを;
今日伝えたかったのは、
>>1と>>2の人物紹介を書き換えました^^
何が変わったかというと>>2にあったクラスメイトを>>1へ持ってきて、なっちゃん・琳・茜の3人をナツ・リン・ヒナ・と変えました♪
これまでよりも詳しく書いてあると思います☆
少しでも参考になれたらいいなと思って……というよりも、新キャラ登場するのに対して紹介文が追い付いてなかったので><
これからも時間あったら書きますね♪
ではではノシ
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.472 )
- 日時: 2011/12/22 14:03
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんにちはー^^ 朱雀さんの語彙力に感嘆させられました、友桃です^^
西軍と北軍やっぱいいですね……!!
どちらもかっこいいですv
なんだか新たな敵が出てきた感じで、続きが楽しみですー^^♪
それと反乱軍の裏切り者……いったい誰なんでしょう>< 気になります!!
ほんとはもっと感想いっぱいあったんですが、ちょっと今時間ないので……><
続きが待ち遠しいです。更新頑張ってください(^^)v
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.473 )
- 日時: 2011/12/22 16:51
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
コメントありがとうございます^^
って、最初から嬉しい言葉が!! ありがとうございます><
だけど私なんか感嘆するような語彙力、持ってないですよー;
でもそう言われるとやっぱ嬉しいですね♪
私がここまで文章が成長したのも友桃さんの御陰です^^
西軍は私もお気に入りですv というかリンがお気に入りなだk((
敵キャラは皆、弟と頭を振り絞って出ました(笑)
協力してくれた弟にも感謝せねば!!ww
時間が無い中コメントしてくれて本当にありがとうございます!(何回言うww
更新頑張ります☆
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.474 )
- 日時: 2012/01/01 11:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
- 参照: あけましておめでとうございます^^
14章 93話「炎と氷」
南軍 空中――
「なぁ、ウル」
「なんだ、我が相棒よ?」
敵の攻撃を俊敏にかわしながらレオは言う。
俺は何を言いたいのか察しながらも冗談交じりに聞き返した。
レオは胸の高鳴りが聞こえてきそうなくらいに命一杯の笑みを作り、手の甲で額の汗を拭った。灼眼がキラキラと輝いている。
今の俺も、きっとそんな顔をしているんだろうなぁ。
「こいつ、強い……!」
「あぁ」
俺も口角をあげながら頷く。
目に映るのは、スーツで身を纏った男と次々とこっちへ飛んでくる雷光弾。俺達相応の敵。
肌がビリビリと感電したように痛い。これは戦争の緊張感からか、強敵と対面した喜びからか、はたまた圧迫するような敵が醸し出す雰囲気からか。
あ? 敵の雷玉に当たっちまったんじゃないかって? しばくぞ、コラ。
横にいたレオは唾をごくりと飲み込む。
「やべー、超楽しい。」
「俺もさ、レオ」
と、そこで敵がしびれを切らしたようだ。
あからさまに眉間に皺を寄せ執事のような風貌には似つかわない口調で、スーツ姿のイケメン男は話す。
「なぜ俺の攻撃を避けてばっかりなんだ?これが噂に聞いていた双子指揮官か? ふん、聞いて呆れる。」
「はっ、もう飽きちまったか? すまねぇな、俺等はやっとお前に興味を持ってきたところなんだ。」
「今までお前を試してたのさ。俺等相応の敵かどうかな!」
それを聞いて敵は気分良さそうに笑みを作った。そんなもん見ても何の足しにもならんがな。
「君たちに認められたとは光栄だな。じゃあ一応名乗っとこうか。
俺は政府軍『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』最高執行部隊、ジオだ。」
「名前長くねぇか?」
「一回だけじゃ覚えられん。面倒な奴だ。」
俺等はそろって文句を言った。
ジオと名乗った男は苦笑混じりに肩を竦める。上から俺等を見下ろしているような態度をとる奴だ。癪に障る。
しかし、名前は長ったらしいが“最高”とかいうワードが含まれているところを見ると、その強さはお墨付きらしい。
つか『最高執行部隊』なんてのあったか?
すると俺の心中を察したようにジオはす、と目を細めて言う。
お前の作り笑いを見て肌寒く感じるのは、何も俺だけでは無いであろう。
「最高執行部隊が何なのか分からないんだろう? 当り前さ、裏機関だからな。『銀河の警官』でも俺の事を知っているのはほんの一握りだけだ。」
「ふーん……だから制服着てないのか?」
「つか俺等ってことは……その最高なんたらっていうのは他にもいるのか?」
男は矢継ぎ早の質問を受け、苦笑いしながら言う。
「服は……そうだな、着なくてもあんまり厳しくはない。そして、名前は一度でちゃんと覚えてくれ。最高執行部隊、だ。これで3回目だぞ。」
「おい、質問に答えてない。他にも仲間がいるのか?」
「くっくっ……他の奴らはじき会えるさ。この俺を倒したら、なっ!」
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.475 )
- 日時: 2012/01/01 11:28
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
- 参照: 微妙なところで区切ってしまった……;
鳩のような笑い方をする奴だと俺が呑気に考えていると、ジオがいきなり高く跳躍する。そいつの手には紫の稲妻が迸り――
「っ!」
身の危険を察知して俺達は瞬時に飛び退く。その瞬間、さっきまで立っていたところへ雷玉が飛んできて宙を滑空しながらそれは木々へぶつかった。紫色をした電光が四方へ飛び散り、衝突した大木は無残にも鈍い音を立てて倒れる。
何故だか寒気が全身を走る。
あの大木が倒れるなんて……!
これは笑い事じゃないかも知れん。さっきの大爆発が発生したところも、俺等の本拠地らしいしな。じいさんと連絡が全く取れない。
好き勝手やってくれるぜ。
「ウル」
レオが静かに言う。こんな冷静なレオ、久しぶりに見るな。
悪いがジオとやら、今のレオは恐いぜ?
俺は頷いて灼眼を見つめる。燃えさかるレオの瞳に何もかも鎮静させてしまいそうな俺の碧眼が重なった。
俺等は永遠不撓不屈、永久に最強だ!!
「「うおおおぉぉぉ!!」」
俺はレオの左手を強く握り、レオは俺の右手を握り返す。握られた手からは赤と青の熱くて冷たい炎が沸き起こった。俺たちの体からは殺気にも似た覇気が漲り、それが全身を覆うまでに大きくなる。
俺は左手、レオは右手にも力を込める。握られた手から迸る炎のエネルギーが全身を伝って左手に溜まるのを感じた。
その手をレオと同時に上げ、敵――ジオの方向へ掌を向ける。握られた手から互いの存在を感じとって頼もしくなった。すると、より一層炎が激しく燃え上がる。
ようやくパワー満タンらしいな。
ジオはというと面白そうにニヤニヤ笑いを続けている。その笑みがいつまで持つかな。
俺は目でレオに合図する。いわゆるアイコンタクトだな。レオも楽しげに顎を引き、ジオを鋭い眼光で睨む。
蒼い炎が俺の掌で球状となった。
「いくぞ」というレオの声を聴いて俺は左手にこれ程かと言う位の力を込めた。
一度炎の球を潰すかのように拳を作ったレオが、
「紅蓮の炎で焼き尽くせぇ!!」
拳を作ってその手の肘を後ろへ引いた俺が、
「冷獄の氷で凍て付くせぇ!!」
拳を勢いよく開きもう一度ジオの方向へ掌を向けた俺達が、
「「はあああぁぁぁぁ!!!!」」
掌から光線を発射する。
赤と青が融合した色鮮やかな攻撃は、しかし優美だとはとても言えないであろう周りで果敢に戦っていた仲間もろとも弾き飛ばしながらジオの方へ一直線に進んでいく。
しかしジオはと言うと、この凄まじい攻撃を目の前にしながらも凶悪な笑みで立ちはだかっていた。
何故逃げない……?
勿論、逃げようとしてももう手遅れだ。しかし、ジオは焦る素振りすら見せない。
俺はこの時、今までの敵とはまるで違うその敵に知らぬ間に
恐怖を感じていたのかもしれない。
- Re: ☆星の子☆ 『戦争』遂に始動―― ( No.476 )
- 日時: 2012/01/01 11:35
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
新年あけましておめでとうございます!!
新年早々小説更新しました、朱雀です^^
本当は「2011年最後に更新したい!」という身勝手な目標を立てて、昨日頑張って小説を書き上げたんですが、その後安堵からか大晦日には欠かせないバラエティ番組を見始めてしまいまして……
結局2012年になってしまったという状況でございます;
昨日の私の頑張りは何だったんだ……!?
とまぁこうなったのも自業自得なので(笑) 今さら悔やんでもしょうがないですねww
では今年もこんな作者をよろしくお願いします<(_ _)>
今年もより多くのお客様がお越しになることを願って、
また今度ノシ
- Re: ☆星の子☆ あけましておめでとうございます!! ( No.477 )
- 日時: 2012/01/11 20:18
- 名前: 朝倉疾風 (ID: yqB.sJMY)
- 参照: http://ameblo.jp/ix3x-luv/
どうも、朝倉です。
たいへん遅くはなりましたが、コメントします(`・ω・´)キリッ
朝倉のコメントは長いので…申し訳ないですが……。
天文学部は、朝倉の周りに無かったので、新鮮かも♪
綺麗な星と降ってきた(?)光聖クンのキレイさは
イメージしても美しい!
お母さんも空ちゃんも、そりゃあ驚くでしょうよ:(;゙゚'ω゚'):
そして、光聖クンの説明はなんて神秘的なんでしょう。
燃えて死んで魂が自分の体を旅立った時っていうフレーズが
なんとも…素敵です。
死んだ人間は無になるという光聖クンの意見には、朝倉も同感かも…。
朝倉も、あまりそういうのは信じない人なので。
光聖クンは格好いいから、空ちゃんに嫉妬する女子も多いでしょう。
佐藤クンも良いけれど、光聖クンの方が朝倉は好みですな。
そして、なっちゃんが…:(;゙゚'ω゚'):
恋する乙女にライバルというのはつきもの、か。
朝倉も葵ちゃんと同じく、甘いもの大好きです(*´∀`*)
チーズケーキらぶ。
葵ちゃんみたいな子が増えるといいのだけれど…。
ヒソヒソ陰口を言う女子なんて、蹴散らしとけばいいのです←
そして何か薬とか出て来ちゃってますが。
女の狂気は怖いな、と思いました。
琉斗の言葉は最もですが…光聖クンには少し酷だったかも。
生きる場所が違う、なんてある意味「ここにいちゃいけない」って意味だから…。
琉斗と光聖クンの話は感動しますね…。
友だちもおらず、孤独を共に過ごしていた琉斗を励ましたのね…。
ちょ、もっと長くなりそうなので、続きはまた今度にします:(;゙゚'ω゚'):
ごめんなさい゚(゚´Д`゚)゚
- Re: ☆星の子☆ ( No.478 )
- 日時: 2012/01/14 16:25
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: uJGVqhgC)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@朝倉疾風さん
コメ返遅くなって申し訳ないです;
長文コメありがとうございます♪
最初の話を書き上げたのはもう1年以上前の事になるので……
あんな駄文読んでくださって本当にありがとうございます><
光聖君の登場シーンはベタだったなぁ、と反省気味(笑)
そこの描写はちゃんと書きたかったのでそう言ってもらえて良かったですv
やっぱ天国とかいう話は信じられませんよね;
本当にそういうのがあったら良いなぁ、とは思うけど(笑)
この小説を書き始めた頃はほのぼの系を書きたいなぁと思ってまして、恋愛一色にしようと思ってたからなっちゃん登場したんですよねぇ。
でもどんどん自分の趣味の方向に走っていっちゃってこんな展開ですww
チーズケーキ良いですよね! 私も大好きですv
陰口を言う女子を蹴散らすキャラも出しとくか……?(笑)
薬なんか出したっけ!?
とパソコンの前で画面を睨んで数十秒。
やっと思い出しました←
なっちゃんかなり怖かったなぁ。(笑)
琉はお気に入りキャラだったりします♪
もう出番が無いのが悲しい><
番外編とかでまた光聖君との病棟生活を書きたいなぁとか思ってたり^^
コメントありがとうございました!
またいらしてくださいね^^
- Re: ☆星の子☆ ( No.479 )
- 日時: 2012/01/29 20:54
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: uJGVqhgC)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
14章 94話「ゴスロリツインの女の子」
東軍 空――
頭上から落ちてきたのは、白いうさぎのぬいぐるみ。
その人形は可愛らしい黒を基調としたゴスロリの服を身に纏い、汚れひとつないような純白のうさぎであった。
光すら差さない木ばかりの森で唯一落ちてきた人形。私にはこれがたった一つの希望のように思えた。
好奇心が勝ったのか私はゆっくりと腕を伸ばす。
すっかり血の気が失せてしまった白い指がうさぎに触れた、その時。
「ちょっとぉ! うさちゃんに触らないで!!」
「うわっ!」
甲高い声が、うさぎが落ちてきたと思われる木の上から聞こえた。
私は驚いて手を引っ込める。そして足の古江を押さえながらゆっくりと立ち上がった。
と同時に草に何者かが着地する軽い音がする。
赤紫のような長髪をツインテールにし――ここの住民の髪色は皆奇抜だ――うさぎ同様ゴスロリと呼ばれる服を着ている。彼女は厚底のブーツで地をとんとんと軽く蹴り、不満げにうさぎを拾って土を丁寧に払った。そしてそれを大切に腕の中へ包み込む。
するとようやくというところか、やっと彼女の視界に私が入った。見下したような赤紫の瞳が私を貫く。
そして私を品定めするように見下ろす彼女の不満げな唇が動いた。
「あんたが天野空? ふん、迷い星の子って騒がれるほどじゃないわね。この位で怖気づいちゃうなんてさ。孤独が怖いとか、あんたジオに怒られるわよ?」
「えっ……?」
ジオ……?
私は首を傾げた。聞いたことのない名前だ。と同時に悪い予感が体を走り抜ける。
私は高鳴る胸を押さえながら、おもむろに聞いた。
「あなた……誰?」
ゴスロリの女の子は鼻を鳴らしてギロッと睨む。
整った顔を不満げに歪めた彼女は――見た目年齢は18……つまり高校生くらいだろう――さも嫌そうに私の質問に答えた。
「『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』最高執行部隊ムマ。」
「じゃあやっぱり……敵、なんだ……」
「何よ? 敵じゃ悪いっての!?」
これ以上私が話すと機嫌を損ねてしまいそうだったので私は口をつぐむ。
と、唐突に目の前の美少女ムマが清清しい笑みになった。表情の移り変わりが激しいのだろうか、ムマはニコニコしながら言う。
「まぁ良いわ。私の役目はもう終わったし、早いとこ帰って紅茶でも飲もーっと。」
「……役目?」
ムマの上機嫌な口調から聞き捨てならぬ台詞を捕らえ、私は嫌な予感がしながらも聞く。
ムマは私を見ながら破顔一笑して言った。
「そう、役目。今日の指令は≪迷い星の子を捕らえ塔に帰還せよ≫だから。
ま、正直こんなに早く帰れるとは思わなかったけど。か弱い少女の一人や二人、捕まえるなんてお安い御用だわ。」
……迷い星の子?
やっと正常に動き出した私の脳がフル回転する。
まさか敵は、私が未だに“迷い星の子”だと思っている――!?
これは緊急事態かもしれない。敵がそう思ってるのは『捕獲』という指令でほぼ証明済みだ。私を捕らえて一体何をしようと言うのだろう。
この状況から脱出しろ。
そう私の本能が話しかける。
真実を言うんだ。
そう私の心が訴えている。
「――っ」
しかし、言葉が上手く出てこない。
その原因は、目の前の彼女、ムマによるものなのだろう。
彼女の醸し出す圧倒的な雰囲気――オーラのようなものが私を束縛しているようだった。
黒いレース服にうさぎの人形、そしてツインテール。その容姿とは裏腹に別格の威圧感を併せ持つ女の子。
そのムマの雰囲気に、私は押しつぶされそうなのだ。
しかし、言わねばならない。自分は“迷い星の子”じゃないと。
そして証明せねばならない。自分は何の力も持たない凡人だと。
それを言った上で、私は言うのだ。
それでも私はあなたの敵だ、と――――
そう、その事実に変わりはない。
私自身、ろくな戦力にならないことを承知で、ここまで来たのだから。
- Re: ☆星の子☆ ( No.480 )
- 日時: 2012/01/29 20:54
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: uJGVqhgC)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
と、私が何か言いたげな目でムマを見つめていたのか、ムマは妖しげな光を紫の瞳に宿しながら私を見下ろしこう言った。
「何か言いたげね? どうせ政府塔に行ったら誰もあんたの話なんて聞く耳持たないだろうし……ふん、良いわ。聞いたげる。」
そう言ってムマは偉そうに腕を組み、後ろにふんぞり返る。
私はほっと胸を撫で下ろした。と同時に心拍数が限度を越えるくらいに緊張し、冷や汗が垂れ始める。
しかしこの時ばかりは彼女の傲慢さに救われた。
「何よ、言うことないの?」
「あ――」
彼女に少し怒り気味な声で急かされて、私は急に背中を押されやっと水中に飛び込めた人のような気分になる。
今言わなきゃチャンスは無い――!
私はごくりと唾を飲み、口を開いた。
「あ、あの、私――迷い星の子じゃないんです!」
「……は?」
「だ、だからっその……本当の父と母は私が生まれるちょっと前に離婚して、その後輝さんが私を育ててくれて……私もちょっと前までは知らなかったんですけど――」
私は自分の首筋から滝のように汗が吹き出るのを感じた。そして、さっきとはまるで桁違いの恐怖の戦慄も。
私の脳が必死に赤い警報ブザーを鳴らしている。
その原因は、紛れも無い、ムマであった。
しかし、先程の彼女とはとても思えないくらいの気迫、圧倒的な威圧感。そして何よりも、体から燃え滾る炎のような怒りのオーラが私を包み、動けなくしていた。
「今、なんて言った?」
地を見つめながらうさぎの人形を握り締め、ムマは極めて冷静に問う。
「あんたは、私がここに来た意味が無いって、そう告げたわけね?」
カールがかった綺麗な髪が、心無しかみるみる逆立っていくように見える。
それと同時に、ムマの細い体が上へ浮いていく。
「許さない……」
いつの間にか雲から顔を覗かせた月が、私を嘲笑う様に光った。
そしてムマの整った顔も月光が反射し、私の目に映る。
その表情は――
「赦さない!」
怒りに満ちていた。
ムマはゆっくりと、右手を上に上げる。
そして、告げた。
「永遠のつきの下で朽ち果てなさい。
エンドレス・ザムーン」
ムマが手を鳴らしパチンという軽快な音が聞こえると共に、
世界が反転した。
- Re: ☆星の子☆ ( No.481 )
- 日時: 2012/01/29 20:59
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: uJGVqhgC)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんばんは^^
そして長らくお久しぶりな感じがします、朱雀です。
最近ですね、少し小説の調子が鈍ってきてまして……
前は自分でも驚くほどのスピードで小説をうpしていってたのに、ここんとこ全然進まなくて;
前更新した時から約1ヶ月間更新無しと、自己最低記録を達成いたしました(おぃ
これからもどんどん更新ペースが遅くなり、唯でさえ亀更新なのに遂にはナメクジ更新になってしまうと思いますが、こんな作者をお許しください<(_ _)>
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ ( No.482 )
- 日時: 2012/02/14 23:11
- 名前: PANDA。 (ID: 3/dSGefI)
あけすぎておめでとうございます。
製図(学校の課題)にあけくれているパンダです。
今年もよろしくおねがいします。
朱雀サマへ
お手紙、今月中に送ります。
・・・大きい封筒で来るかもねん♪www
happy valentine!!
- Re: ☆星の子☆ ( No.483 )
- 日時: 2012/02/15 19:19
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: okMbZHAS)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@PANDA。さん
ハピバ(ハッピーバレンタイン)!!(笑)
そしてあけおめですww
製図頑張って下さい♪
お手紙やったー↑
お返事書いてなくてホント申し訳ない><
次はちゃんと送ります!
大きい封筒かなり期待v
コメントありがとう♪
- Re: ☆星の子☆ ( No.484 )
- 日時: 2012/02/27 21:35
- 名前: PANDA。 (ID: tsLiapE1)
こんばんわ。
イラストが投稿できなくなりました(汗
描けなくなったじゃなくて、投稿できなくなったのですww
pixivに投稿しようとしたらエラーがでたのです。
ファイルの種類が違うのでできなかったんです。
申し訳ございません。
朱雀さん、いままでおくったイラストを送り返して
くださいませんか?
トル・双子・キラ・カラー絵など最近のものです。
また詳しくはメールで(笑
おやすみなさい☆
- Re: ☆星の子☆ ( No.485 )
- 日時: 2012/02/27 22:16
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: okMbZHAS)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@PANDA。さん
事情把握です(キリッ
何故投稿できなくなったんでしょう……><
大変ですなぁ;
最近のものがいっぱいあって困りましたね(笑)
まぁ今度の手紙と一緒に送ります☆
あ、Gチーム三人のカラー絵はどうします?
返信待ってます^^
おやすみなさい♪
- Re: ☆星の子☆ ( No.486 )
- 日時: 2012/02/28 22:12
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: okMbZHAS)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
14章 95話「鍾乳洞での戦い」
西軍 洞窟 リンVSトル――
俺の挑発を前に、トルは右の眉を上に上げた。必死に怒りを隠そうとしている事まで丸見えだ。一応聞いておくが、お前の耳は赤リンゴだったのか?
そんなトルは唇を引きつらせながらも笑みを作り、話しかける。
「大口叩けるのも今の内ですよぉ? 私の脳内には様々なデータベースが詰め込まれ、勿論その中にはお前の行動ルールも――」
俺はメガネに白衣の変人科学者から視線を外した。その話は何百回も聞かされた。もううんざりだ。
トルの熱演をよそに俺は辺りを見回す。
広大な山々に囲まれた中、唯一人々のために自然が作った洞窟『ケイヴァニア』。それがここだ。普通は山道なので巨大都市『シャイニア』――その中心に政府塔がある――までは丸い一日かかってしまうが、この自然洞窟が一番の近道となり、それを半日に軽減する事が出来た。
今やこの洞窟は国の宝のように重宝されている。そしてその理由は前者だけではない。
俺はごつごつした壁を見た。紫の結晶が数え切れぬほど埋め込まれ、それらはそれぞれと反射し、煌きあっている。そしてところどころ岩から顔を出した桃色の宝石が一際輝いていた。これらは全てここでしか採集できない。希少価値が高いし、研げば研ぐほど鋭くなるので刀の一部に使われることも多い。
そんな所で戦わねばならんとは……心が痛むな。
「コラァ! 私の話をよく聞きなさぁい!!」
ようやく俺の神経が自分に向いていないという事を悟ったようだ。トルが甲高い声で叱咤する。いつ見ても気色の悪い奴だ。
俺は無言で腰に下げていた刀を抜いた。早めに事を片付けて損する事はあるまい。
「フフン、いつにもましてやる気ですねぇ?」
トルも白衣の中からいびつな青い銃(ガン)を取り出し――どこにそれをしまう場所があるのか不思議だ――ガリガリの手で握り、構えた。
俺はフンと鼻で笑う。
「そんな銃で俺に勝てると思っているのか?」
「なっ……! あなたはまず、その減らず口を直したほうが良いですねぇ?」
「それはこっちの台詞、だっ!」
トルの皮肉めいた言葉に俺は毒づき、地を蹴った。
刀を縦に持ち、トルの頭上で下へと振り下ろす。
そんな俺の斬撃にトルは左の腕で対応する。
「!?」
キィンと刃物が擦れ合う音がした。見ると、俺の振り下ろした刀をトルは見事に左腕で止めている。そう、まるで左腕を刀のように使って。
俺は驚愕を隠せないまま後ろへ跳躍し、トルと少し距離を置いて着地した。
その時、気味の悪い笑い声が聞こえた。見るとトルが今にも腰の骨が折れてしまうくらいに後ろにふんぞり返り、メガネをキラリと光らせ笑っている。
俺は少々イラつくと同時に、悪い予感が脳裏を過ぎった。
まさか――――、
「そうっ、そのまさかなのです! この世界ではパラドーックスな事ほど起こりえる、そうじゃないとっ楽しくなぁーいのです!!」
前置きは良いから早く結論を言え。
「つまり今! この体は私であって私ではない――それは、この体が、
人体サイボーグ化第一弾 ア・メイチエクスプロージョンX! だからでぇーす!!
ヌアーッハッハッハ……」
洞窟の中、トルの自慢気な笑い声だけが響く。
それにしても、ネーミンングセンスの無さは変わってないな。大体、何故第一弾なのにXなんだ?
しかし、今はこんなことを言っている場合じゃないようだ。
- Re: ☆星の子☆ ( No.487 )
- 日時: 2012/02/28 22:13
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: okMbZHAS)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
トルは白衣の左袖を捲くり、これ見よがしに見せ付ける。その腕は最早、我等が持つべきものでは無かった。
紫や桃の無数の結晶が反射し幻想的に輝くその腕は、古ぼけた屋敷に並んであるような銀の鎧を着た古代ローマ人を連想させた。確かに見た目だけは何でも弾きそうな鋼鉄に見えるがこの惚けた科学者の事だ、期待は薄いな。
俺の呆れ顔をどう捉えたのか、トルは更に自慢げに鼻の穴を膨らませる。
「凄いのはこれからですよぉ? アッと驚く大変化、あなたも見てみたいでしょう?」
見たくも何とも無いな。もともと、お前に興味は無いのだ。俺の願いはただ一つ、
早く俺の前から消えろ。
「おやおや、何と酷い言葉を! 元同士とは思えませんねぇ?」
「お前と同士になった覚えは無い。」
「そぉーんな悲しい事は言わず! 楽しく一戦交えようじゃありませんか! そう、楽しーくねぇ?」
トルはメガネを光らせ、変色した黄色い歯を見せる。にんまりした笑みからは時折鳩のようなくっくっくという笑い声まで聞こえた。
――こいつとは一生仲良くなれそうに無い。
俺はもう話は終わりだと、刀を左に倒し地面と平行に構えた。
その相手は未だ危機感を感じ取っていないかのように棒立ちのまま立ち尽くし、俺の繰り出す一手を待っていた。
トルを過大評価するつもりは無いが、何しろ『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』一の変人科学者だ。決して甘く見てはいけない。
俺はぐっと気を引き締め、柄を強く握る。
そして足の底に力を込め、地を蹴った。加速させながら、水平にあった刀を斜め上に押し上げる。
シュッと軽快な音がした。
俺はそんなほんの一瞬で音を聞き分け、敵を討ったと判断する。
――しかし、それがいけなかった。
気がつけばトルは銃を持たない左手、そう素手で、俺の一撃を防いでいた。
まるで俺がいつ、どの方向にどんな攻撃を仕掛けてくるかを全て把握したように。
俺は目の前の状況が理解できず、思わず驚愕の色を顔に表した。
まさか、これほどとは――――!
トルはにんまりと笑い、青いガンの銃口をこちらへ向ける。
「ちっ!」
俺はすんでのところでそれをかわした。正に間一髪、飛び出した銃弾は俺の頬数ミリ横を駆け抜け、大自然が創った美しい洞窟の壁に激突する。
おいおい、自然を汚すとは感心しないな。しかし、俺の眼力も優れたものだ。長年警官をやってきただけある。
と、心の奥で自画自賛する俺に、トルが声を荒げた。
「避けては駄目ですよぉ!? せっかくの大切な私産がお前のせいで台無しです!」
「はっ、私産? 資産の間違いだろう? それに誰のせいでこうなったと思ってるんだ。」
「お前がかわさなければ、壁に穴は開きませーんでしたぁ!」
言い争っていては埒が明かないな。
そう俺は結論付け話題を変える。
「しかし、流石だな。まさかこんな正確に行動ルールとやらを覚えているとは……お前も捨てたもんじゃない。」
心にも無いことを言ってみる。褒めまくれば軽い奴だ、思わず口を滑らすだろう。
そして思ったとおり、トルはすぐ有頂天になり話し始める。
「ヌアーッハッハ!! もっと私を褒め称えなさぁい!」
「あぁ、すごいすごい。何故幾千とある記憶を全て整理できるのか、俺には考えられない!」
正直何故こんなに演技が出来るのか、それが一番考えられないのだが。
そんな俺の棒読みにも気づかず、親切にもトルは極秘情報をベラベラと口にする。
本当に期待を裏切らない奴だ。
「ンフフ、それはですねぇ、自分の脳も大・改・造! したのでぇす! 信じられないとでも言うような顔をしてますねぇ? 勿論只の人間なら出来ないでしょうが、しかーっし!! 私はなんと言っても最高執行部隊の一員っ! そぉーの実力を誰もが認める私が、自分の脳を超ハイスペックに仕上げ、個々のデータを完全収納したファイルを押し込んだのです! そして今までは何十本もの糸が絡まった状態だったのを、目で人を認識することにより一本の糸に整理する事に成功したのです!!」
またもやトルが奇妙な笑い声をあげた。
しかし自分の脳まで大改造するとは……本当に恐ろしい奴だ。
そう考える反面、俺は口角を上げ相手がトルで良かったと再び思う。
単純な奴ほど良い鴨になる。すると何故だかトルが本当に間抜け面をした鴨に見えてきて、俺は軽く笑った。
さぁ変態科学者、楽しませてくれよ?
- Re: ☆星の子☆ ( No.488 )
- 日時: 2012/03/06 20:01
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんばんは、友桃です^^
久しぶりに続きが読めましたー! 今すごい幸せですv
ウルとレオ、口が減らない感じでおもしろい……!!(←日本語へんですね;)とか、
うさぎの人形は可愛いのにムマまぢで怖……っ(泣)とか、
色々感想があったんですが、
リンとトルのおもしろさには敵いませんでした(笑
特にトル(笑
変態科学者キャラをおもしろいって思えたの初めてかもしれないです! 他の作品に出てくるそういうキャラは気持ち悪いとしか思えないことが多いので^^; もしかしたらリンとトルとの温度差がわたし的にツボだったのかも……
そしてリンはやっぱりかっこいいv 惚れますv 最後の台詞(?)とか内心キャーvって叫んでました←
続きがすごい楽しみです!
特にリンが!!←
更新楽しみにしてます♪
- Re: ☆星の子☆ ( No.489 )
- 日時: 2012/03/06 22:00
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: okMbZHAS)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
おぉっ、久しぶりです!!
幸せとか言っていただけてこっちも幸せ……(笑)
一話一話長かったでしょうね; お疲れ様です♪(笑)
ムマは一番書いてみたいと思っていたキャラです^^
ちょっとアニメに影響され……いや、何でも無いですよ、本当に。←
リンとトルの絡みは私も自信作と思ってまs(自重
何と言っても書きやすいんですよね^^ トルの暴走さ加減が書いてて飽きないですww
あと、リンの一人称だと何故か落ち着きますv
こういうのが文章アップに繋がるのかなーとか考える今日この頃。
やっぱり楽しく書くっていうのが一番大切ですね!
リンはどう書いてもカッコよくなっちゃってこっちが照れてしまいまs(黙れ
良いですね、あの口調とか冷めてる感じが私もツボです(笑)
更新遅くなっても許してください><
最近調子が……とか言ってみる(ぇ
コメントありがとうございましたー♪
- Re: ☆星の子☆ ( No.490 )
- 日時: 2012/06/07 19:39
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
14章 96話「戦う理由」
北軍 草原――
「白純一族、メトロ……!」
私は歯を食いしばり、敵の名前を繰り返す。
この名を聞いて平静でいられる人がいるのなら是非教えてほしいところね。
今私達の目の前に立ちはだかる敵は、『アステリア』では悪名高き暗殺者である。
身軽な体でターゲットの前に音も無く現れ、一瞬にして命を奪い、目撃者が出る前に颯爽と姿を消すという卑怯なやり口で、彼らは今まで何人もの善人をあの世へ葬っていた。
でも、何だろう。この異様な違和感は……?
そしてそれは自分より遥かに互換の優れているピアの方が強く感じているようだ。恐怖に慄きながらも首をしきりに傾げ「あれ? でも、何故でしょう……?」と呟いている。
横にいるハクはこんな時にも笑みを絶やさず――平静でいられる人は驚くほど近くにいた――私に問う。
「キラ、どうしますか? 相手は名高い暗殺者ですが?」
「……! ふふっ、戦うしか無いでしょう?」
あくまで北軍のリーダーは私だ。それに対してハクは問う事で示してくれた。
この軍を動かす主導権は私にある――それを再認識し、私は答える事で敵との戦闘を宣言した。
私の返答を聞き、「それでこそキラです」とハクは嬉しそうに言う。私も笑い返した。
銀色の毛並みを持つ狼の群れ、その先頭に立つ悪名高き王族の白い狼。
それが何だと言う。
こっちには大の大人でさえ根負けの怪力女に――最近は自分の自慢にしているの。ちゃんとした長所だってハクが言ってくれたから――小柄ですごく可愛い鋭敏な少女に、虚心坦懐でとっても心強い少年がいる。
負ける筈なんか無いのよ。
「クックック……その根拠の無い自信はどこから沸いてくるのだろうな? こちらには脚力に自身のある風狼軍――それに比べてそなた達は、戦闘経験も乏しいのではないか? 見よ、そこの少女は怯えて足が竦んでいるぞ?」
いきなり話を振られたピアは「ひっ」と小さく声を漏らし、私の後ろで隠れるように身を潜めた。
私は喉を唸らせ嘲笑の意を示す白い狼を一睨みする。
と、ハクがこちらを心配げに見つめ、そっと耳打ちした。
「キラ、早く始めましょう。敵は腹をすかしています。このまま長引かせると危ない――」
確かに。
メトロの後ろで荒い呼吸をしながら貪婪に目を光らせる風狼軍を盗み見し、私は小さく頷いた。私達の会話を動作だけで理解したのか、北軍に緊迫した雰囲気が漂う。ピアが後ろで背負った弓矢を手に取るのを確認し、私の大鎌を持つ右手にも力が入った。
狼の群れが腰を上げ鋭い犬歯を剥き出しにして戦闘姿勢をとる。
メトロが一歩前に出る。
そして白く鮮やかな月が雲間から覗くと同時に、咆哮のような狼特有の遠吠えが響き渡った。
次の瞬間、どちら共つかずに地を蹴り、その反動で各々の靴底に火花が飛び散る。
それが、ここでの本当の戦闘開始合図となった。
- Re: ☆星の子☆ ( No.491 )
- 日時: 2012/03/24 12:20
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /.e96SVN)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
流石、噂で聞いたとおりの移動速度だ。やはり風狼軍、侮ってはいけない。私達北軍のほうが2、3倍人数は多いのに、武器を振るうとは正に紙一重、ヒラリと軽くかわし隙を突いてくる。獣一匹に三人でも歯が立たないとは……
私は悔しさにギリ……と歯を食いしばった。
そんな間にも一人、また一人と火の粉が散り、消える。
守りたいのに、守れない。
「っ……」
そんな気持ちで胸がいっぱいになり、苦しくて私はまたやみくもに大鎌を振り回す。しかし何も考えず只放つ攻撃が敵に当たる筈も無い。これもまた、軽々とかわされてしまった。
そもそも戦争なんて、トップを討伐すれば一瞬で済む話である。
そして敵もそれを知ってか、メトロは動こうとせず戦いの成り行きを静かに見守っているだけだ。勿論、周りには防御対策かのような竜巻が渦を巻き、迂闊に近寄れなかったが。
何度かメトロに攻撃を加えられないかと試みたが、何故か私の周りだけやたらと獣が多く、完全にマークされてしまっている。
私は狼が鋭い犬歯で噛み付こうとするのをヒラリと避け、横目で仲間の無事を確認する――――
と、5メートル先でピアが悪戦苦闘しているのが目に入った。
二匹相手に四苦八苦しているピア。その背後に他の狼が大きく口を開け、飛び掛る。
「っ、危ない!」
一瞬頭が真っ白になった私の体が、一早く動いた。
ただピアを守りたい。そう、それだけの理由なのに、何故だか体の奥底から力が漲る。
そっか、戦う理由なんて簡単で良いんだ。
私はその狼目掛け、大鎌を振るう。他の敵なんて、今は関係ない。
シュッ
私の武器は大きな弧を描き、ピアへ飛び掛った狼の首筋へ振り下ろされた。
「ガアアァァッ!」
狼の悲痛な叫びが草原に響く。
やった、と私は内心喜びながらも平静を装う。
するとようやく自分が窮地に立たされていた事を悟ったピアは、瞳を大きく見開き私の無事を確かめるように腕を掴んだ。
「キラさんっ! だ、大丈夫ですかっ!?」
「はっはっ――ピアは何も無かったのね、良かった……」
私はピアの元気そうな顔を見て、優しい安堵感に包まれた。自然と笑みが零れる。
しかしまだ戦いは終わったわけではない。
周りでまだまだ熾烈な戦いが繰り広げられているのを確認して、ピアの手を解いた。
ここで休んでいる場合じゃない。私達も応戦しなきゃ。
空には絶える事無く火の粉が舞っている。胸の奥がキュッと締め付けられるのを痛感しながら、私はピアと背中を合わせた。
「っピア、私が攻めるからあなたは弓矢で対応して。風狼軍は所詮獣。知恵はそんなに無い筈よ。そこを上手く利用して――」
「はいっ!」
私はじりじりと私達が動くのを待つ狼達を一瞥し、地を蹴った。
――さっき敵を討った時、一つ得たことがある。
傷口から噴き出した火の粉、その色は銀じゃなく白だった。
火の粉が白なのは白純王族メトロだけの筈だ。何故なら彼は王族末裔。彼自身もそう名乗っていたし、グロさんの情報を聞く限りそれで合っている。
それならさっきの火の粉は――?
私は火の粉が舞い散る夜空を眺め、呟いた。
「なるほどね……」
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見下さい! ( No.492 )
- 日時: 2012/03/24 12:32
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /.e96SVN)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんにちは!
朱雀の学校は今日終業式だったであります(キリッ←
帰宅して早速更新ー♪
最近更新ペースが落ちてきてホント申し訳ないです><
3月はテストとかあったしね……
その間ずっと小説を書きたくて書けなかったものですから、春休みバリバリッと執筆しまくります!!(ぇ
あ、14章は96話で終わりです^^
次は15章……何で自分こんなに続けてるんだ?(禁句w
それでですね! ちょっとしたお知らせ(?)ですv
もう少しで「☆星の子☆」も100話を迎える事になるのですが、100話記念として短編を3つくらい載せようと思ってます♪
ショートショートみたいな感じですね……ノート1ページくらいで収められる感じの^^
それでその短編なんですが、2つはもう書く事が決まってるんです。
しかし最後の一つがまだ決められてなくて……
そこで皆さんにアンケート!!
短編――1、2ページで終わるくらいの!――で書いて欲しい事があったら言って下さい^^
採用されない場合もありますが、良い感じのがあれば書くかもです♪
では皆さんの意見お待ちしておりますv
ではっノシ
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.493 )
- 日時: 2012/03/24 14:31
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
短編いいですね^^!!
楽しみですv
私は久しぶりに日常のほのぼのな話も読みたいですねー^^
ちょっと時間ないんで今回はこれくらいで……
また来ます(^^)/
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.494 )
- 日時: 2012/03/24 17:37
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /.e96SVN)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
ほのぼのですか……φ(..)メモメモ
確かに最近そういう話無いや(笑)
よし、考えときますー^^
でも私がほのぼの書いたら事故る可能性がっ(本気w
コメントありがとうございました♪
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.495 )
- 日時: 2012/04/03 13:06
- 名前: PANDA。 (ID: tsLiapE1)
こんにちわヽ(^◇^*)/
おひさしぶりです。お手紙ちょうだいしましたヨ。
3人の絵は、一度写メして送ってくれませんか??
お手数お掛けします(w_−; ウゥ・・
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.496 )
- 日時: 2012/04/04 16:44
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: N7iL3p2q)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@PANDA。さん
おおっ、届きましたか!!
良かったよかった♪
何だかんだで送るの送れちゃってごめんなさい><
了解です☆
画質悪いかも……;
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.497 )
- 日時: 2012/04/14 17:42
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: J85uaMhP)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんにちは^^
今回は前話から二十日程開け、更新です!
もう早いのか遅いのか分からなくなってきた……(´・ω・`)
今回は南軍、レオ&ウルのお話です。
今は大きく見て東西南北と4つに分けて執筆中なので、視点とか毎度毎度変わり、分かりにくいかもです;
そんな時はお手数ですが、覚えていただくかまた戻って読んでいただくと真に嬉しいでs(黙れ
最後に、次の話は久しぶりに光聖君目線で書きます☆
光聖君の存在感がかなり薄れてきたのだが大丈夫だろうか……
ではっノシ
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.498 )
- 日時: 2012/04/14 17:43
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: J85uaMhP)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
15章 97話「孤独な強敵」
南軍 空中レオ――
おいおい、何故逃げない?
俺はジオが俺達の力が融合した攻撃を前にして、じっと立っている事に不快感にも似た疑問を持っていた。
執事服のイケメンさんよぉ、格好つけるのは良いが丸焦げになって死んじゃあ面目だって丸潰れだぜ? ほら、逃げられないんじゃ無いか。こんなんで終わっちまうとは期待外れにも程が――
ジオが動く気配も無く俺達の攻撃を受けるのを見て、勝利を確信した時。
俺等は信じられない光景を目の当たりにして、思わず目を見張った。
「「あ?」」
煙が立ち込めていて良く見えないが、そこには確かに立ち続けている男の姿が。
しかしおかしい。煙が立っているという事は、攻撃は当たり爆発したという事なのだ。
では何故、敵は生きている?それも全くバランスを崩さずに。
解ける事の無い疑問が悶々と脳内を巡る。
と、ジオの影が煙から姿を消した。
途端に背から感じる凄まじい殺気。
「!」
俺は素早く後方からの攻撃を避ける。すると、さっきまで自分が立っていた場所目掛け雷が落ちてきた。一瞬遅れ、空から雷電と共に雷特有の音が轟く。
俺は咄嗟に右腕を掴んだ。握った左手に力を込める。
俺が、震えている……
双子の最強戦士と謳われた、この俺が?
「ありえねぇ……」
「俺が無傷な事がか?」
ぽつりと呟くと、自分が落とした稲妻が木々に吸い込まれ爆発する様子を楽しげに見ていたジオが聞き返した。自信に満ちた笑みを浮かべて。
ウルはその反面顔を顰める。鼻を鳴らすが、否定しないところを見るとどうやら何故敵が無傷なのか俺以上に不思議なのだろう。
俺はもう、他の南軍を気にかける余裕が無くなっていた。漆黒の犬も相当厄介なんだろうが、こっちの方がもっと危ない。
「はっ……こんなに強いなんて聞いてねぇぞ、ジジイ?」
俺は悔し紛れに毒づいた。
何だよ、最高執行部隊っていうのはグロさんが付け入る隙も見せないような所だったのか?
俺は未だに動こうとしないジオを見る。そして意を決して口を開いた。
「教えろよ……お前の能力は何だ?」
ジオはす、と目を細めた。そして俺を蔑む様に冷たい瞳で一瞥する。
この台詞は聞き飽きている様な、そんな反応だった。
「あぁ、教えてやるとも。だが、教えたところでお前達の敗北に変わりは無い。」
「何だと?」
ウルが怒りを精一杯押し止めながらも聞き返す。
そんなウルを見て、ジオは感情のこもらない瞳で笑った。
「俺の能力は、そう、永遠なる命。外部からの攻撃に一切干渉せず、空腹などの要らぬ感情が体を満たす事も無い。
そう、俺は死なない。例えこの星が滅び、宇宙の彼方へ飛ばされても!」
俺は露骨に顔を顰めた。ジオの狂った様な高笑いが耳障りだった。
そして何より、突きつけられた今の言葉が全て真実だとは、どうしても信じられなかった。
俺は試しに軽く掌に力を込め、そこで小さく渦を巻く玉をジオに投げつけてみる。
ジオは俺の目的がわかったのか、何も言わずにその場から動かなかった。
その玉は空を滑るように飛んでいき、ジオの胴体へ当たって弾けた。赤みを帯びた光が迸る。
しかしそれも束の間、その光は爆発時の煙たい空気と共にジオの体内に吸い込まれる。
そしてそれと連動するように、先程まであったはずの傷が跡形も無く消えた。
執事服までが新品のように小奇麗に修復されるのを見て、俺とウルは揃って絶句する。
「こんな事、ありえるのか……? ただでさえ強いのに不老不死だって?」
ウルが呟いた。考え込む様に眉間に皺を寄せる。
しかし、そんなに弱気ではいられない。俺達は反乱軍の戦闘指揮官。実際、あのジジイも俺達の戦闘技術は認めてくれている。
そうやって自分を鼓舞し、俺は奮然と言い放った。
「俺達に倒せねぇ敵なんていねぇ!!」
頭上の雷音に負けない位声を張り上げ俺は叫ぶ。
すると黒い犬と戦っていた南軍まで振り返り、今の声が俺だと気付くと頼もしげに笑った。俺の自信に満ちた雄叫びを聞き、南軍の士気が高まったのだろうか。皆押され気味だった筈が、一気に形勢逆転したかの様に見えた。
ウルも満足げに微笑み、目の前の強敵へと再度目を向ける。
しかし、その宣戦布告にジオは恐れることも無く、醒めた瞳で俺を真っ直ぐ見据え笑う。
「はっ、今までだってそう言う強敵と何度も戦った事はある。だが結果は同じさ。皆俺を置いて消えていくんだ。好敵手も、仲間も、家族でさえも!
お前達もどうせ、死ぬんだろう?」
その顔には最早感情なんて存在していなかった。
何を考えているのか窺えない、隙の無い表情。
その表情はまるで仮面のようで。
その姿はただ操られる、からくり人形のようで。
しかしただ一つ、瞳だけは孤独な心を露にしていて。
これが真のジオなんだと、不器用な俺にも納得がいった。
そうか――こいつはずっと、
一人だったんだ。
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.499 )
- 日時: 2012/05/07 06:19
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんにちはー^^
みんなやはり強敵ですね……!!
ジオなんか特に>< 不老不死っていうのも考えものですよね。周りの人皆先にいっちゃうんですもんね……
最後の二行もすごいぐっときました><
敵キャラがたくさんいるけど、悪者っぽい人もいて、ジオみたいに完全な悪者には思えない人もいて、おもしろすぎる科学者とかもいたりして(笑)、すごいいいなぁっておもいますv
敵キャラにも思い入れが……(笑
あ・あと個人的に風狼軍好きですv 狼すきなんでv← なんかかっこよくてv
続きも楽しみにしてますー♪
あ・てか次久しぶりの光聖くんでしたねっ!!v
たぶん少しくらい久しぶりでも出てきたらすぐに主役の存在感出してくれる子な気がします、光聖くんは^^
また来ます(^^)/ 課題も終わったからまたすぐ来れる、はず……!!
- Re: ☆星の子☆ 皆さんの意見お待ちしております! ( No.500 )
- 日時: 2012/05/08 18:31
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: c1MPgv6i)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
コメントありがとうございます^^
いつも来てくださって嬉しいです><
ジオは強敵です。どうやって倒そうかと頭を悩ませています(ぇ
不老不死は絶対悲しいですよね……! だから私は、あんまり長生きしたくない←
トルがかなりツボな様で嬉しいです♪(笑)
個人的にもリンとトルの絡みは大好きなので、ずっとこれで良いんじゃ無いかという気にもなります(笑)
何より書いてて楽しいv
風狼軍は元々いなかったキャラです^^;
急遽作ったので、完全に後付け(おぃ
気に入ってくれて嬉しいですー!
光聖君……書いたけど結局2ページ足らずで出番終わってしまった?
完全にリン支持作者だからなぁ(( すごく申し訳ないm(__)m
コメありがとうございます♪
また来てくださいね^^
つか100話記念の話が思いつかないーっ!!
- Re: ☆星の子☆ 久しぶりのヒーローです。 ( No.501 )
- 日時: 2012/05/27 10:50
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: w93.1umH)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
15章 98話「ヘンゼルとグレーテル、そして魔女」
東軍 密林 光星――
急に、地が割れるかと思うくらいの爆発音が響いた。その爆発で発生した暴風のせいか、木々の枝や葉がゆらゆらと揺れ僕の不安を煽る。地面も心無しか揺れている気がして、僕は足を止めた。
何故か胸騒ぎがする。ざわざわと不気味に風に吹かれる木々の隙間を見て、無意識に後ろを振り返った僕は、その違和感の正体に気付いた。
「空が……いない……?」
胸が締め付けられたように痛い。止め処なく流れる冷や汗に、背を這い上がるような恐怖の戦慄。それらに負けじと僕はユキに歩み寄った。
紫のベールが顔を覆っているため表情はよく分からないが、彼女の周りには哀愁の雰囲気が漂っていた。
「空は!?」と僕がまくし立てるのに対し、ユキはあくまで冷静に言葉を紡ぐ。
「空さんは今、別次元に飛ばされています。別次元とは……そう、時間さえ干渉できない闇へ。愚かな者です……危険だと、そう言ったのに。」
「……まるでこうなる事が分かっていた様ない言い方だな。」
僕が顔を顰め怪訝そうに言い返すと、ベールの奥からくすりと笑い声が漏れた。
掌の水晶を大切そうに撫でながらユキがか細い声で続ける。
「未来は幾つもに分岐しています。人が行動する選択肢が無数にあるからです。そして私達は今、一つの道を進んでいる途中……その物語の結末がハッピーなのかバッドなのかは誰にも分かりません。」
「え、でもさっき……」
「しかし、その未来には決して定まっている訳ではない、言わば確率があるのも事実です。」
ユキは僕の言葉を遮り、畳み掛けるように言った。最後に、私はその確率が高い未来を見る事が出来る、と付け加えて。
もうこれ以上話す必要は無いと思ったのか、ユキは何も言わずに僕を黙視する。
敵地まで進むのか、空を探すのか。僕が決めろという事だろう。
しかし僕はユキの話を聞いても動くことが出来ずにいた。
別次元に飛ばされてしまった空。敵が望まない限り、見つけ出すのは不可能だろう。
しかし空の無事が分からないまま進むのは心残りがあったし、何より不安だった。
僕は目の前でじっと立っている修道服の女性に再度尋ねる。
「空は……無事戻って来られるかな?」
ユキはまるでその質問が来る事を知っていたかのように、間髪入れず答えた。
「えぇ、きっと。」
- Re: ☆星の子☆ 87話の回想がちょっぴり。 ( No.502 )
- 日時: 2012/05/27 10:52
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: w93.1umH)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
東軍 空VSムマ――
私は目を瞬かせた。
さっきまでここは森で、目の前には怒り狂った敵がいた筈。
それなのに……
「お菓子……っ!?」
目の前には甘い香りを漂わし、まるで私に手招きをしているようなお菓子の家。
屋根はチョコ、壁は全てビスケットやクッキーで出来ていて、窓の縁はキャンディ、ガラスは水飴を固体にしたらしきもので形作られていた。
私はごくりと唾を飲み込む。
これはムマの罠だと本能は告げているのに、先程から積もっていた疲労を甘い物を食べる事で晴らしたい。そう思う私の欲求が勝っている。
すると、ここぞとばかりにお腹がなった。
「そういえばお昼から何も食べてなかったっけ……」
ふらり、と私は前へ進む。『腹が減っては戦は出来ぬ』その教えに今こそ従うべきだと調子のいい事を考えて。
近づけば近づく程、お菓子の家は魅力的に思えた。かぐわしい芳香が鼻をくすぐり、私を急かす。私はドアノブへ手を伸ばした。
そして取手にようやく手が触れ、それを回したその時。
――そういえばヘンゼルとグレーテルのお話にも、お菓子の家が出てきたっけ――
ふとそんな考えが脳裏を過ぎる。
――確かお菓子の家には、悪い魔女が住んでいたんだよね――
そこまで考えて、私は手を止めた。
この家の中に、何か良からぬものがある……勘だし根拠も無いが、何となくそう感じた。
しかし、気付くのが少し遅かったらしい。
現に私の手はドアノブを回した後で、まさに今、扉に重心を掛けていたところだったのだ。ギィと古い金属が擦れ合う音がする。と同時に冷たい風が耳元を通り抜けていった。背を這うような寒気と不安、その全てが入り混じった感覚に耐えきれなくなり、私は一歩後退する。
すると突如、嗄れた声がした。
『逃げるんじゃない……』
「ひっ!?」
私は飛び上がり小さく悲鳴を漏らす。
そして気が動転してしまったのだろうか。
私は竦む足に鞭を振るい、目の前の家から距離をとる。そして足をもつれさせながら必死に反対方向へと走り出した。
先程までは確かにお菓子の家だった筈なのに。今ではすっかり錆びれた奇妙な廃墟と化している。
どうして? ここは何処――!?
後ろから、こちらへ何かが襲ってくる殺気じみたものを感じる。そしてどんどん近づく、甲高い笑い声。その声は先程と同じように嗄がれていた。
止め処なく流れる汗に、荒い息遣い。しかし足だけは、必死に動かす。
茂みを必死に掻き分けて、森の奥深くまで走った。
そろそろ大丈夫だろうか……?
ひとしきり走ったところで私はやっと止まった。後ろからは先程も気配も感じなかったので、私は大きく深呼吸し気持ちを落ち着かせる。
さっきのあれは、一体何だったの……? まさか本当に魔女が――ううん、そんな筈ない。だって魔女ならばホウキに跨って空を飛んで、一瞬で私を捕まえられるもの。
そうやって自問自答し、空を見上げたその時。
「えっ!?」
私の視界に写ったのは、毛先が乱れた箒に乗って私を追ってくる、魔女の姿だった。深い紫の三角帽子を目深に被っているので顔はよく見えない。しかし大きい鼻の下で唇が不気味に弧を描いたのを見た途端、私はまた全速力で走り出した。
どうして魔女がこんなところに、だなんてもう大した問題じゃ無くなっていた。有り得ない話だが、確かに魔女はここにいる。そして私を追っているのだから。
しかし箒に乗って私を追う老婆から逃げるのは、至難の業に思えた。
空から追跡する魔女が私を見失うはずがないし、その反面私はこの森を全く知らないのだ。それに、私は所詮人間なのだから。
すると世界がぐらりと傾き、
「も……無理っ……」
私の意志とは裏腹に、体が無残にも崩れ落ちる。
私の足が、体力が、限界を訴えたのだった。
もう立つ気力も私には残されていない。ただ足を引きずり、少しずつ退歩するだけ、
魔女の甲高い笑い声が脳天に響く。同時に私は目を瞑った。
その時、脳裏で唐突に浮かび上がる、人影。俗に言うフラッシュバックが、私を襲う。
流れる金髪に、美しい瞳をキラリと光らせ私を見つめる美少年。冷徹な眼差しも今となっては恋しく懐かしい。
『――俺が守る。お前は一人じゃない――』
何故だか右手が冷たくも温もりのある大きな手を覚えた。
私は最後の頼みの綱に縋り付く思いで、彼の名を呼ぶ。
すると魔女の乾いた笑い声が急に、ムマの動揺を隠しきれていない叫びに変わった。
「リンさんっ!!」
「ちょっ、だ、だめっ……!」
辺りを包み込む、目映い閃光――
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.503 )
- 日時: 2012/07/16 21:51
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
リンーーっ!!←
なんか「えぇ、きっと。」って答えてるユキの表情がすごい自然に浮かんでほっとしたのとか、
魔女こわっとか色々思ってたんですが、
全部最後のリンに持ってかれました(笑
かっこよすぎますvv
続き楽しみにしてます♪
更新頑張ってください^^
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.504 )
- 日時: 2012/07/17 16:00
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
コメントありがとうございます!
あとで友桃さんの小説行って投票してきます(`・ω・´)
急に魔女が出てきたりgdgdですみませんww
リンでフォローできているようで(笑)良かったです^^
駄目だ……リン贔屓が最近酷い事に?
頑張ります!
ありがとうございました♪
- Re: ☆星の子☆ 2ヶ月ぶりの更新。遅くなってすみません; ( No.505 )
- 日時: 2012/07/21 14:17
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
15章 99話「気ままな戦友」
西軍 洞窟 リンVSトル――
敵の行動パターンを全て覚えているトル。
正直、どうすれば勝てるのかは全く分からない。
しかしその必勝法は思うより難しくない気がするな。
そう、例えば無心になってみたり――
「動かないのなら、私から行きますよぉ?」
突然、眼前に突きつけられた青いガン。その銃口から褐色の光が漏れだしたのを捕らえ、危機感から俺は身を翻した。しかしその行動も既に読んでいたかのように、トルは銃口の向きを即座に変える。
やばい――!
避ける事が出来ないまま、俺は攻撃を真に受けた。
ボフッ
その時、こんな戦場に似合わぬ間抜けた音がして俺は顔を上げる。すると目の前が何故か褐色の煙で覆われていたため、その煙たさに俺は大きく咳き込んだ。苦しさに涙を溜めて呻く。
「何なんだ、一体……」
すると敵も同じく激しく咳き込んでいるのに気がついた。
「ゲホッゴホッ……どうしてこうなったんですかぁ!?」
「それは俺が聞きたい」
どうやらこうなる事はとるにも予想外だったらしい。自分で煙幕を放ったくせに、あまりの煙たさに目を回している。
しかしトルはよろめきながらももう一度、銃口をこちらへ向けた。金属がキラリと妖しげに光る。
科学者は愛用のメガネを押し上げ、唇を引きつらせた。
「っふ、次は外しませんよぉ?」
確かに、今度ばかりは流石にまずそうだ。
銃口の奥では黄金色に輝く光が漏れていて、次はレーザー線だろうかと俺は呑気に考えた。ちなみに、俺はサイコメトラー(読心術とも言う)を使えるのだからトルの心を読めば良いんじゃないかと思う奴も多いが、俺の能力はまだ力が弱いから、敵が俺の能力を知っていてある程度警戒を強めていると使えない。あまり持っていても得をしない能力なのだ。
俺は無言で太刀を構える。そして地を蹴った。
本来ならばこういう時、俺は真っ向から攻めたりなどしない。しかしトルが俺の行動データを全て把握している今、常とは変わった行動をするのが一番だろうと俺は踏み込んだのだった。
銃口から閃光が迸っているにも関わらず向かってくる俺を見てどう捉えたのか、科学者は唇を歪め渋面を作る。しかし瞳は、同時に楽しげでもあった。
俺は青いガンに狙いを定め、刀を横に薙ぎ払う。
耳障りな金属音が鳴った。太刀と青いガンが擦れ合い生まれる不協和音。
俺は顔を顰める。金属音が気分悪くてでは無い。トルが俺の行動を、予測していたからだった。
やはり、常と反対の動きをしても駄目か……
俺は軽く舌打ちをする。トルは気味の悪い笑みを浮かべ、青いガンを持つ右手に力を込めた。人体改造をした事で得た怪力が、惨くも俺を弾き飛ばす。
洞窟の壁に当たる寸前、俺は脚に力を込めて何とか止まった。
そんな俺を見て、トルは満足げに喉を鳴らす。
「ンフフ、いつもと違う行動を取ろうとしたみたいですが、私は行動パターンを全て覚えている……少し突飛な事をしたとて、その後の動作は変わりませんよぉ? 大切なのは“どう考えるか”ではなく“どう動くか”なのですからねぇ。」
- Re: ☆星の子☆ 76話の回想がちょっぴり。 ( No.506 )
- 日時: 2012/07/21 14:16
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
「――――――そうか。」
トル、お前は少し口が軽いんじゃないか?
お陰で良い鴨になってくれたよ。
俺は再びトルを狙い刀を構える。そして左下から右上へ、勢いよく振り上げた。
勿論この程度の攻撃はトルも白衣を翻し、避ける。
俺はそれを一瞥し、すかさず刀を水平に持った。そして大きく弧を描き、トルを攻める。
これもトルは紙一重で避ける。しかし先程に比べ随分と余裕が無いように見えた。
――もう一息だ。必ずチャンスは来る……!
俺はそれだけを考え、動いた。意図など無い。何も考えずに、ただ本能で。
「――っ」
トルがよろけた。
俺は瞳を光らせる。これは昔からの癖でな、何年経ってもなかなか直らない。
俺の刃の先端がトルの頬に触れた。地に鮮血が飛び散る。しかしそれも束の間、その血はすぐに赤みを引き淡い緑の火の粉となった。
トルも流石にまずいと感じたのか、急に顔を強張らす。そして大きくジャンプし、俺との距離をとった。
その時。
甲高い笑い声と共に爆発音が聞こえた。それも幾つもだ。
乱暴なその攻撃を食らったこの洞窟の壁から、パラパラと破片が落ちてきた。
トルの充血した瞳が洞窟の先を捉える。そして情けない声色で嘆いた。
「あぁ、私のロボット達……」
それと同調するように、爆発を起こした獰猛な男が斧を振り回し駆けてくる。
「ひゃっはぁ――! おい、こらリン、そこを退け!
そいつは今から俺の獲物だ!!」
セルだった。
反乱軍の中で一番争いが好きで、乱暴で、見境の無い男。そいつが次なる戦いを求めやってきたのだ。
ふ、と笑いが漏れた。さっき、セルはトルに勝てないと思いロボ軍へ送り込んだが、その選択はどうやら誤っていたようだ。
セルはいきなり、斧を横に振った。風が切れる軽快な音がする。その攻撃をトルは成す術も無く受けた。鮮やかに火の粉が舞う。
完全に警戒心をなくしたトルの心の声が、脳内に響いた。
(くっ、セルの行動データは毎日一致しないから作れなかったんだが……これは痛いところを突かれた……!)
動揺を現したトルの本音だった。
しかし、こいつこんな喋り方だったか?
声は一緒だったからトルだと分かったものの、別の肌寒さを覚える。
――と、唐突に体が光った。そして紫の光に包まれる。
「なんだこれは……?」
「……!?」
トルがセルの攻撃から必死に逃げ、俺の方をキッと見た。その瞳は戸惑いと焦燥に揺れていた。
何かあると瞬時に悟った俺は、もう一度トルに神経を集中させる。
(あの光はムマの……! まさか、これが『エンドレス・ザムーン』の特殊能力のもう一つ、取り込んだものの所望をかなえる能力なのか!? しかしこれが外部で発動するのは難しいと考えていたんだが……ふむ、研究のし甲斐がありそうだ――っと! それよりもセルをどうにかする方法を考えなければ。)
一つ発見した事がある。本当のこいつは見た目よりも些か冷静で落ち着いているらしい。そう考えると色んな意味で虫唾が走るがな。
俺の体が少しずつ薄れてゆく。どうやらムマという敵の能力は、意識だけでなく身体までも異世界へ飛ばすらしい。
ふいにある少女の声が、鮮やかな花々で囲まれた庭園の風景と共に思い出された。
『――私達は、仲間だよ――』
“仲間”だから、呼んだのだろうか。では何故俺なんだ……? 迷い星は何をしている?
しかし俺は何となく、唇で弧を描き笑ってみた。
「仲間なら、行かなきゃな。」
「……ハッ、さっさと行け。ここは俺様だけで十分だ。」
セルも残忍な笑みを浮かべ、俺の背中を押す。
そして一人相手には少し大げさな爆発が起きた。それと同時に、内側から吸い込まれるような感覚が俺を襲い、周囲が暗くなる。
セルは相変わらず乱暴な奴だ。だがそんなあいつから、一つ教わった。
たまには無心で気ままに戦うのも良いとな。
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.507 )
- 日時: 2012/07/21 16:25
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんばんは!
お久しぶりです、朱雀です。
前の更新から2ヶ月という長い歳月を経て、ようやく99話更新しました^^;
更新ペースが遅くなってて本当に申し訳ないです><
夏休みにはその分執筆頑張りたいと思います!!
今回の小説はやっと一つ戦いが終わったんですが……
何故途中でリンはトルに攻撃を加えられたか、とか何故セルの行動データだけ作れなかったか、とかの説明を小説の流れ的に入れるのが難しくて;
お分かりになられましたか?
此処で簡単に説明させて頂きますと、
トルは行動データで行動を予測して動いていましたが、それはあくまでもデータです。リンはトルの言葉により、何も考えずに一心不乱で攻撃したら、何も考えてない訳ですから普段と同じ行動、もしくは正反対の行動も無意識のうちに取れるという事を悟りました。そしてそれによりトルはデータが無効になってしまい攻撃を受けたんです。
そして同じように、セルは戦いが好きで楽しんでやっていますので、元々戦い方とかそういう型にハマって戦うのは嫌いなのです。その為毎回戦い方が一致せず、あっちに動いたりこっちに動いたり唐突に爆発を起こすのでデータが作れなかったんですね。
……と長く書いてしまいました;
まぁそう言う訳です。文中に説明加えられなくて申し訳ないm(__)m
さて、次は100話です!
短編3つという事で、その中にトルの本性もろもろも書かれているので、楽しみにしていただけると嬉しいです♪
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.508 )
- 日時: 2012/07/25 21:44
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんばんは^^
来るのが遅くなってしまいましたが、とうとう更新されましたねー! 99話!!
記念すべき100話までもう少しですね。執筆頑張ってください♪
今回は頭脳戦でしたね!
あ・でも実際は無心だから頭使わずに戦ってたのか……! なんか頭脳戦って言っていいのか難しいです(笑
私もともと戦闘シーンは苦手ですが、頭脳戦は特に書けないのですごいなぁと思いながら読んでました^^ こういうのも書けたらもっと戦闘シーンの幅も広がりそうなんですけどね。難しいです……><
自分で放った攻撃を自分でくらってるトルに吹きました(笑
続き楽しみにしてますー♪
またきますね(^^)/
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.509 )
- 日時: 2012/07/29 16:59
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
100話までもう少しですー♪
嬉しいと同時に多忙すぎて泣ける(泣) 短編3話とか思い切って言ってしまった自分が馬鹿だった……(ガクッ
とにかく死ぬ気で頑張ります(`・ω・´)
頭脳戦の方が自分的には楽かもしれないです^^
戦闘描写って本当に難しいので;
だから他の子達も多分頭脳で勝つ筈……!
トルは個人的に動かしやすいキャラだったりするので、今後も出るかも!?
コメントありがとうございますー^^
あ、あと投票ありがとうございます><
また来て下さいね♪
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.510 )
- 日時: 2012/09/02 21:39
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6kBwDVDs)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
15章 100話「光の矢」
北軍 草原――
私は離れて戦っていたハクの元へ駆け寄った。
今得た情報をいち早く伝えなきゃ……!
悠然と敵を相手にしている小柄な少年の名を呼ぶ。
「ハク! 私に案があるの!!」
私の話を黙って聞いていたハクは全て話し終わった後、柔らかな微笑みをたたえ頷いた。
「分かりました。その作戦、僕も乗りましょう。」
「ありがとう! ピアにも話しに言ってくるわ。ハクは他の戦員をうまく誘導して。合図として火矢を飛ばすから。」
そして踵を返す私の背から、ハクの声がかかる。
「キラ、気をつけて。」
「ふふっ、私を誰だと思っているの? 私はアステリア一の怪力女なんだから!」
そんな優しい言葉に、私は破顔一笑して頼もしく笑った。ハクは知らない。自分の一言がどんなに私の背を押してくれているかを。
風を切ってピアの方へ走る。その間も沢山の風狼軍が襲ってきたが、私の気迫に押されたのか、それともただ単に下っ端だったのか――しかしその可能性は極めて低い――、先程のように手こずりはしなかった。銀色の獣から迸る白い火の粉、そして普通は体が滅び完全に消えるまで数十秒はかかる所、たったの3秒で跡形も無く消える狼の群れを見て、自分の読みが正しいと私は確信した。
「キラさん! 何か分かりましたか?」
小さな丘から矢を射ていたピアは手を止め、希望を輝く瞳に宿し聞いた。
顎を引いて頷いた私は、先程ハクに話したことをピアにも伝える。
最初こそ驚きはしたものの真剣な表情で終始聞いていたピアは、何故だか憧れの眼差しを私に送ってこう答えた。
「あの違和感はそういう事だったんですね……とっても良い作戦だと思います! でも、あたしにちゃんと出来るでしょうか……。」
「大丈夫、ピアは他の人には無い力を持っているんだから。それをちゃんと活用しなきゃ!」
私は笑って言った。ピアノ察知力――それはただ敵の気配を感じ取るだけではない。時に敵の地盤を揺るがす大きな戦力となるのだ。
――――いよいよね……。
私は表情を固くし、ピアに合図を送る。
ヒュン、と軽快な音がし、燃え盛る火矢が戦場の草原を目掛け飛んだ。
多くの戦員の目を引きつけたその矢は、大きな竜巻を盾にして風狼軍を見守るメトロの前へ落ちる。その瞬間炎が他の草々へと燃え移り、メトロの目を遮るように火柱が立ち煙が上がった。
ピアは次々と矢を放つ。それらは全て私の思惑どおり、メトロを外した戦士達を覆うように地に落ち火をつけた。
風狼軍の長(おさ)メトロは、まだ自分の出る幕ではないと言わんばかりに歯をむき出し、見下したような表情を浮かべる。
「クックッ……そんな小賢しい真似をして我等に勝とうとでも? 笑わせる・
この国一の暗殺軍の恐ろしさを身にもって知るが良い!」
メトロは鼻を上げ、遠吠えを上げる。
すると突然風が激しく吹き始めた。そしてそれと比例しているかのように風狼軍の勢力も増してゆく。
しかし――
「キラさん、あそこ……大きな岩の近くで群れている4匹が弱っています。」
「了解! ピアは見つけたら火矢で知らせて。そうね……青い炎がいいかしら。」
そう言って私は丘から飛び降り、そこに向かった。
なるほど、確かに弱っている。見たところ4匹とも負傷はしていないけれど。
今気付いた事だが、メトロや生き生きしている風狼軍の瞳の色は綺麗な緑色。しかし弱っている狼達は濁った瞳をしていた。
――やはり生気が吸い取られている……。
弱った4匹は逃げようともしないまま、私の大鎌が振り下ろされるのをじっと見ていた。
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.511 )
- 日時: 2012/09/02 21:38
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6kBwDVDs)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
つまり、こういう事なのだ。
風狼軍は急に強くなったのではなく、他の狼の力を吸い取って自分のものとした。しかし当然弱った狼は少数なので、戦士たちはその事に気付けない。よって敵が強くなった、という認識しか出来ないという真理を利用した戦法だったのである。
しかし何故他の狼の力を得る事が出来たのか? それはメトロ以外の風狼軍も白い火の粉だった事で証明される。
“風狼軍は元から一匹だった”のだ。
白純一族の末裔メトロ。それが幾ら高貴で有名な一族と言えど、群れで行動する狼にとって仲間がいなくては話にならない。
そこで周りに狼がいなかったメトロは考えた。それなら自分で作ってしまえば良い、と。
こうして風狼軍が形成された。そう考えるのが一番妥当であろう。
そしたら火の粉が白かった事や、力を吸い取った事も解明される。そして、敵を倒す方法も。
そう――――
メトロを倒すのではない。風狼軍(本体)を倒せばいいのだ。
「くっ……」
メトロはもう一度、大きく雄叫びをあげた。それに続き風狼軍も唸り、体勢を低くする。そして次の瞬間、弾丸のように反乱軍に向かって走ってきた。
また何匹が狼の力を吸い取ったようだ。先程より格段素早さがあがっている。
しかし、そこには大きな欠点があった。
メトロは今、火柱によって視界を遮られている。そのため、戦場の様子も分からない。己の感覚だけで、風狼軍を操作しているのだ。
つまり、“風狼軍の力のバランスが取れていない”のである。
私に襲い掛かってきた狼は、すばやさは先程の2,3倍だが、防御が弱い。そのため峰打ちで軽く討伐する事が出来た。
その間にも次々と矢が草原に青い炎をつける。弱った狼はハク率いる戦員に任せるとしよう。
私は――
「はあぁっ!」
勢いよく向かってくる狼を斬りつけた。そしてその流れで大鎌を地面と水平に持ち、体ごと回しながら背後にいた敵を討つ。
一匹、一匹と確実に敵が減っているのが目に見えて分かる。白く輝く火の粉が闇夜に紛れ、まるで星のようだ。
――それにしても、何だか楽ね。最初風狼軍が現れたときはどうしようかと思ったけど……戦争のような緊張感が全く無い。相手はホーリー・フェザー率いる政府なのに……まるで今の戦闘が準備運動のようだわ。まさか、まだこれ以上の敵が沢山いるというの……!?
そう考えると急に背筋に悪寒が走る。思わず後ろを振り向くと、ハクが柔らかな微笑を浮かべ立っていた。
「わぁっ! い、いつからそこに――」
「キラ、あとはメトロだけとなりました。さぁ、一緒に……」
「えっ、もう皆倒したの!?」
負傷しながらも戦士達は頼もしく頷く。自然と私も笑みが零れた。
そしてどうやら私も、考え事をしながら大鎌を振り回していたみたい。いつの間にかメトロの前で仁王立ちしていた。
白い狼は充血した目で私達を睨む。メトロ自信は戦っていないのに、必死に舌を出して息を整えているところを見ると、やはり風狼軍が彼の本体で間違いないようだった。
「ぐぬ……」
メトロは悔しげに顔を歪ませ唸った。そして次の瞬間、一目散に森林の方へと逃げ出す。
「な……! まだ走れる程の体力が!?」
私は絶句した。
流石アステリア一の暗殺軍、風狼軍と名乗るだけある。風に紛れ森林を駆け抜けるメトロを追いかけるのは、悔しいがとても無理があった。
逃げられてしまう――!?
その時、私達の後ろにある小さい丘で弓を引く、少女の姿が。
「皆さん、私に任せて下さい。」
「ピア!? 一体何を……」
小さい体で精一杯腕を引くピア。その手に握られていたのは普通の弓矢ではなく、矢を型取った――
「光!?」
「届け――――!」
ピアノ叫びと共に光の矢が勢いよく森林を駆け抜ける。そして次の瞬間狼の遠吠えが短く聞こえ、同時に光が弾けそれらは一瞬で闇夜に溶け込んだ。
ほんの数秒の出来事だった。
すこし間が空き、どこからともなく歓声が上がる。それは瞬く間に辺りを包み込み、私を温かく包容してくれる様だった。
「勝った……」
思わず涙腺が緩むのを感じ、私は慌ててそれを抑える。
涙は政府を完全に倒す時まで、とっておかなくちゃね。
そう考え私は満足げに微笑んだ。そんな私をハクが呼び止める。
何だか浮かない顔で私を見つめるハクの手には、通信機が握られていた。
「キラ、すみませんがここでピアと一緒に戦員達の手当てをお願いします。決してこの場を離れないでください。」
「……どうして? ハクは?」
「先程ようやく総司令官と連絡が取れたのですが――われわれの本拠地をやられたそうです。未だに援軍を送れずにいる状況だと。」
「そんな……」
私は口を覆った。本拠地の場所は敵の誰も知らない筈だったのに……。
ハクは珍しく眉間に皺を寄せ、渋面を作る。
「僕はレオとウル率いる南軍と合流しろとの事です。敵が強敵だそうで……南軍はほぼ全滅、と聞きました。」
「あの双子が敵に押されている!? そんな、冗談でしょ……」
ハクの目は、笑っていなかった。そして何度も何度も、念押しするように「決してこの場を離れないで」と繰り返す。
その言葉に、私はただ頷き遠ざかる背中を見送ることしか出来なかった。
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.512 )
- 日時: 2012/09/02 21:44
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
100話きたーっ!!!
……今から読んできますv
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.513 )
- 日時: 2012/09/02 21:52
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6kBwDVDs)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
皆さんお久しぶりです、朱雀です。
気付けば前の更新から1ヶ月ちょい経っていました。
それでやっと更新しましたが――
☆星の子☆100話おめでとうーっ!!!!!!
自分よくここまで頑張ってこれたな、と本当に思います。
こんなに長く一つの小説を書き続けられたのは星の子が初めてです♪
最近2周年突破しましたし^^
それも読者の皆様の声援あってこそだと思っています! 本当にありがとうございますm(__)m
短編は、一気に3本もうpしたら読む方も大変だと思いますので、2週間置きくらい(?)に上げようと思っています。べっ、別にまだ一本しか完成してないからとか、そういう事じゃないんだからね!?←
これからも更新は相変わらずスロースペースだと思います(´・ω・`)
一応、これでも受験生ですので。(勉強してないけどw←)
多忙すぎて禿げそうですが、絶対に小説の更新やめるとかそういう道は選びませんのでご安心下さい!!
では、これからも星の子応援して下さいね♪
皆様のコメントが、一番の栄養の糧ですので!!(笑)
追伸
朱雀があまりにもカキコに通っていなくて、生存が不安になった方は、ブログ(URL)書いてますのでそこで確認してください(笑)
- Re: ☆星の子☆ 返信500突破! 嬉しさに感慨無量です。 ( No.514 )
- 日時: 2012/09/02 22:03
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
“風狼軍は元から一匹だった”ってとこ読んだときに納得しすぎて感動しちゃいました……!!
こういうの考えられるのすごいなぁv
戦いに入ってからも力ばっかりじゃなくて頭を使う戦闘が多くておもしろいです^^
あと最後に敵を仕留めたピアがかっこよすぎます……!!
テンポもすごいよくてのめりこんじゃいました。
でも最後に大事件ですね><
レオとウルの活躍楽しみにしてます♪
それと最後に、
記念すべき100話更新おめでとうございます!!
これからもがんばってください^^
P.S.もう2周年なんですね!! そちらもおめでとうございます!!
朱雀さんが2周年なら私ももしかしてそろそろなのかな……? 自分がカキコに来た日を把握していないのでわかりませんが←
これからもゆるゆる楽しく小説書いていきましょうねー^^
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破!!〜更新2周年〜 ( No.515 )
- 日時: 2012/09/04 18:37
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6kBwDVDs)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
>>512
コメント気付けなかったですが、早かったですね! 小説更新してすぐじゃないですか(笑)
読む前にコメントしてくれたのが嬉しい♪
勝つには少し工夫を入れたいな、とは前から思っていたので^^
ただ勝ってしまうとあまり印象に残らない気がして、メトロや他の敵は結構前から倒し方を考えてありました!
どんな敵にも弱点は必要だと(`・ω・´)
ピアはこれからあんまり登場が無い気がするので←
ここで良い所取らせてあげようと思って!(笑)
かっこいいと言ってもらえて幸いです^^
E・Cは確か9・10月ごろ出来たと思います……!
どっちにしろもうすぐで2周年ですね♪
お互い忙しい中頑張りましょう^^
コメントありがとうございました☆
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破!!〜更新2周年〜 ( No.516 )
- 日時: 2012/09/30 10:30
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gK3tU2qa)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
〜100話突破記念 短編3本立て〜
1「冥界」 一人称:ナツ
私は今、二つ目の人生を歩んでいる。
いや……これは最早人生と言わないかも知れない。時間の流れがまるで存在せず、一度瞬きすれば地上では何時間もたっていた、という事すらある。ここではあらゆる生物と出会え、そして誰も消える事は無い。住民だけが増えてゆく一方だ。
しかし、ここほど住みやすいところは他にない。それこそ望めば何でも出てくるし、他界した人となら、会いたいと願えばいつでも会える。
そう……ここは地上で言うところの『天国』。
この世に命を持って生まれてきた者の、真の故郷だ。
「何故難しい顔をしているんだい?」
横で腰を掛けていた男が言った。
彼の名は、ラム。皆さんもご存知だろう、ガル先輩とグロ先輩のチームメイトである。
夜空を連想させる紺色の髪を長く伸ばし、大きい藍色の帽子を深く被っている。帽子のつばで顔を半分以上隠しているので、真正面から顔を見た事は未だ無い。妙齢のラム先輩は片手にワインを持ちながら、小首を傾げ聞いてきた。
「いえ……ヒナやリンの事が気になって。」
「あぁ、そうか。下界は今大変だからね……」
ラム先輩は顎に手を添え、下に視線をやる。私も同じように下を覗き、地上の様子を見た。
政府軍と反乱軍――その二つが対立し、今『アステリア』では戦争が起きていた。
私は激しい攻防戦を眺めながら、目を細める。
戦争、か……そんな風に力で押さえつけて、本当にアステリアは平和になるのか――?
私は再び口を開いた。
「私は……アステリアの政治を狂わせたのは、ホーリー・フェザー様じゃないと、思います。
H・Fとホーリー・フェザー様は、同一人物じゃない……」
(――――「私の嫌いなものの三つ目、それは……
私を忌々しいホーリー・フェザーという名で呼ぶ者だ!」――――)
薄暗い部屋に響く厳かな声。同時に私を包み込む鮮やかな光。
今でも思い出すと、その恐怖に身の毛がよだつ。
一瞬だった。痛い、厚い、その感情のどれもが体を駆け巡る前に、私は消えここに来た。
ラム先輩は帽子のつばを弄り、溜息をつく。
「気味は僕と同じ道を歩んだ、哀れな男だ……下界の様子をここから見守る事しか出来ない。伸ばした手も、生と死の超えられない壁によって掻き消されてしまう。」
そう言って彼は枯れた声で力なく笑った。
「会いたいなぁ……ガルやグロに。もう何十年も話していない。だけど、彼らがここへ来るのは、もう少し先だろうね。」
その気持ちが痛い程よく分かる私は、同じように遠い目をする。
ここの住民は幸せだ。しかし皆、言いようの無い寂しさといつも戦っている。
私がこの『待合室』を出られるのは、一体いつだろう。父さんや母さん……リンとヒナ……皆が揃ったら、前のように幸せに暮らせるだろうか。
私は椅子に腰掛け深い眠りに落ちている人々を見た。
皆がここに来るまで眠って待つのが、一番良いかもしれないな……。
そう考えていた時だった。
ふと横に懐かしい気配を感じる。同時にラム先輩が珍しく帽子のつばを上げ、「おや、久しぶり」と親しげに声を掛けた。
「……ナツ。」
その人物はそっと私の名を呼ぶ。
私は高鳴る鼓動を抑え、ゆっくり、ゆっくりと首を回した。
しかし私はその姿を見た途端、懐かしさに涙が溢れるのを止める事が出来なかった。
ここで会った時には、たっぷり皮肉を浴びさせてやろう。そう言葉を用意していた筈なのに。
自然と口から零れ出た言葉は、それらとは全く正反対のものだった。
「――おかえり!」
そして私達は互いに、しっかりと抱きしめ合った。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.517 )
- 日時: 2012/09/11 19:52
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6kBwDVDs)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
こんばんは!
番外編は如何だったでしょうか?
最近リンばっかり出ていて、じきにヒナも出番満載だな〜とか思っていたら、ナツを出したくなったので書きました(`・ω・´)
実は今回の「冥界」はかなり前から頭の中で想像を膨らませていたお話でもあったので、もう少し背景描写増やして書きたかったなというのが、正直な感想です^^;
だけど毎回本編が2分割で長いので!
番外編はあくまでもおつまみなので!
だから色々と描写は省き、本当に書きたかった部分だけ残した始末です。
今回の舞台、天国に関しては皆さんの脳内で色々想像して頂けると嬉しいです♪
あんまりに設定つけすぎると、天国に対しての夢が無くなるなぁ……と思ったのも描写を少なくした理由の一つです(*´∀`*)
新しく登場したラムですが、意外に気に入っているキャラだったりします^^
だけど本編で出る事は無いだろうなぁ……(笑) もう死んでますしね(´・ω・`)
一度ガル達3人を一緒に出したいものですね。
短編「冥界」は本編寄りで、少しシビアでしたが残り二つは(少なくとも一つは)かなりコメディになると思います(笑)
ではではノシ
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.518 )
- 日時: 2012/09/29 21:56
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: gK3tU2qa)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
〜100話突破記念 短編3本立て〜
2「科学者Xの休日」
薄暗い部屋に、カタカタと一心不乱にキーボードを叩く男の姿がある。元は書斎なのだろう、本棚に囲まれたその部屋で、彼はなにやら調べ者をしているようだった。しかしその部屋は書斎というには余りにかけ離れていた。本棚の半分はフラスコや試験管などの実験器具で埋め尽くされ、数少ない本の題名は全て奇妙な記号で記されていたからである。
ふいに彼は手を止め、息を吐いた。
仕事が一段落したのだろう、すっかり冷めてしまったコーヒーを乾いた喉に流しいれた彼の表情が少し緩む。
すると、机の上で無造作に積み上げられた資料の、そのまた上に載せられていた小さなスピーカーから声が聞こえた。
声の主が『教授』と彼を呼ぶところを見ると、どうやら彼の部下なのだろう。穏やかに彼が返答をすると、部下はきびきびと話しだす。
『銀河の警官研究舞台秘密調査チームA、無事任務遂行しました!』
「そうか……例の部品は?」
『はっ。それ等も全て揃いました。後は情報処理だけです。』
「ふむ、もうそろそろだな……」
白衣を羽織った彼は誰に言うことなく呟き、満足げに微笑んだ。そして部下に「ご苦労だった」と労いの言葉をかけ、スピーカーを切る。
するとそんな書斎の扉を叩く音が。
「あなた、入りますね?」
部屋に入ってきたのは、長身の美しい女性だった。栗色の長い髪を低い位置で一つに束ね、長い丈のワンピースで身を包む彼女は、男性ならば振り向かずにはいられない程の美貌を持っていた。
そんな彼女がそっとマグカップに入った温かいコーヒーを差し出す。男は軽く礼を言いそれを啜った。書斎にほろ苦い香りが漂う。
そんな優雅にお茶の時間を楽しむ彼も、並外れた美貌を兼ね揃えていた。切れ長な瞳に高い鼻、しゅっと尖った顎を持つ彼が着る白衣と黒縁眼鏡が、これまた似合っている。
と、彼の鋭い視線が女の服に止まった。
「キミ……街中でもそんな格好で出歩いているのか?」
「あら。」
女は小さく笑って、人差し指を唇に添えた。
「二人の約束でしょう? 本当の姿をして良いのはお互いの前だけ――そもそも、私は外に出ませんわ。」
「っふ、それもそうだな。」
男の口角を上げクスリと笑う。その光景はまるでおとぎの国から飛び出してきた王子と王女のようだった。
その時。
ピンポーン、と二人の世界から彼らを切り離すようにその場に似使わぬインターホンの音がした。
男は玄関に向かおうとした女を引きとめ、言う。
「良い、私が行こう。客人の予想はついている。」
そう言って書斎の扉まで近づいた彼は、ふいに足を止めた。咳払いをして、少し照れくさそうに彼女に向き直る。
「……?」
「最近品種改良に成功してな。髪飾りにでもするといい。」
男は白衣のポケットに手をいれ、女の掌にそれをそっと置いた。
そして頬を赤らめ、そそくさと部屋を出て行く。
女はゆっくり手を開いた。
男からのプレゼント、それは赤青黄緑で彩られた四葉のクローバーだった。
女は感嘆の声を漏らし、優しく微笑む。
「幸運の四葉……花言葉は“True Love―真実の愛―”。
ふふ、私もよ……ずっと愛しているわ――――」
耳を済ませば、微かに聞こえる彼の声。それは他人に見せる、もう一つの顔。
「やぁ、トル。久しぶりだな。」
「遊びに来るなら一言言ってくださいよぉ〜! そしたら、すんばらしい実験をご用意出来ましたのにっ!!」
「そんなの要らないから。そもそも私達、遊びに来たわけじゃないわ。」
「つかさぁ、トル出るの遅い! 何度インターホン押したと思っているの!? 今まで何やっていたのよ?」
「んふふ、ヒキガエルの体液とイモリのしっぽ、そこに何の生物の生き血を混ぜれば美味しくなるかを試していたのですよぉ。」
「「きもっ」」
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.519 )
- 日時: 2012/10/09 06:18
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
トル――!!!爆笑
こんにちは。来るのが遅くなってしまいました^^;
ナツのお話で切なくなって最後あったかい気持ちになって終わったのが、全部そのあとのトルに持ってかれました(笑
タイトルに科学者って書いてある時点でトルだろうなぁ(笑)と思って読んでいたのですが、読み進めるうちに「え、ほんとにこれトル!? や、トルだよ、トルの裏の(むしろほんとの?)顔だよ! や、でも」って一人で問答してました(笑
なんかもうトル大好きです……!! おもしろすぎる上に、なんかかっこいい……!!
久しぶりに朱雀さんの小説読んだらなんか力湧いてきましたv
就活&卒論がんばろうv
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.520 )
- 日時: 2012/10/11 18:57
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
コメントありがとうございます♪
ナツのお話、もしかして最後に出てきた人物分かっちゃいましたか?
もっと描写を減らすべきだった……!(笑)
タイトルで分かりましたか。流石です(笑)
ちょっと設定無理矢理だな、とは思いましたがトルなので何でも許されるかなと(`・ω・´)←
でも好んでくれてありがたいです^^ ほっとしました(笑)
ギャップって良いですよね。白衣と黒縁眼鏡ってのも最高ですよね。
私もトル大好きです!!←
そう言ってくれて本当に嬉しい……><
友桃さんも色々(?)頑張ってください!!
改めてコメントありがとうございました♪
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.521 )
- 日時: 2012/11/23 10:41
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
〜100話突破記念 短編3本立て〜
3「星の子学園!」 Ep1「星の子学園へようこそ!」
――これは“If”の話……。星の子に登場している人物が、皆同じ学校の同じクラスに集まったらどうなるのかを面白おかしく書いた物語である。
舞台は『銀河の学校(ギャラクシー・スクール)』。一部先生役だが、それ以外は皆空に合わせ中1設定。ちなみに描写は存在しない。
では、スタート!――
席(出席番号順) ガル(黒板)
キラ レオ セル ウル
ヒナ 空 ナツ 琉斗
ピア 葵 ハク 光聖
ムマ 楓 リン 佐藤
ガル「お主等の担任、ガルじゃ。気軽にガル先生と呼んでくれ。今日からお主等も中学生! よく学び、よく食べ、よく寝る、規則正しい生活を送ろうぞ。では自己紹介、右端から!」
ウル「ん、俺から? つか自己紹介なんていらないんじゃねーの? 読者様は皆知ってる訳だし。」
レオ「その通り! 俺は自己紹介よりも席替えをしてほしいね。ウルと席が離れているとか、ありえねー。」
ガル「ど、読者……? まぁ良い。では席替えをするかの。」
琉斗「え……席替えするんですか? せっかく光聖と近かったのに……」
光聖「僕もこんな何をしでかすか分からない奴等と琉を一緒に出来ない! 席替え反対だ。」
楓「私も席替えは嫌かなー。だって、今の隣の席が西條君なんだもん!」
リン「その名で呼ぶな。今はリンだ。」
楓「きゃー、かっこいい!!」
空「あれ……楓って本命佐藤君じゃなかったっけ……」
ヒナ「ねぇ、ナツ。あいつ(リン)っていつから女に色目使うようになったの? て言うか何であんたが生きてんのよ?」
ナツ「私に聞くな。作者の考えることはよく分からない。そしてリンのあれは確信犯じゃないと思うぞ?」
ハク「そこ、HR中に席を立つなんて非常識ですよ? ちゃんと座って下さい。」
ピア「(ボソッ)ハクさん……笑っているけど目が据わっています……」
キラ「でもそんなハクも素敵!! ……あ。べ、別に好きとかそういう訳じゃないからね!?」
ムマ「つかさぁー、席替え云々よりもこの学校の制服をどうにかしてくれない!? ダサすぎて着てられないわ。
ん、喉乾いた。ジオ、お茶。」
ガル「? ジオは教師をやっとるから、ここにはおらんぞ。それと制服は校長(ホーリー・フェザー)に言っとくれ……」
ムマ「はぁっ!? 何、あいつ教師なの!? 笑える、絶対似合わないわ。生徒に暴力振るう先生確定ね。」
葵「ぼっ、暴力……!(みっくんと隣の席になりたいよー。何だか皆見た目も性格も風変わりで、怖い……!)」
セル「ごちゃごちゃうっせーなぁ。おちおち眠れもしねぇ。とっとと失せろ、クズ共。」
佐藤「キミ、そういう言葉は良くないよ。それと、HR中であれ授業中であれ学校での居眠りは禁止だ。」
レオ「おー、セルに口答えするとは。第二の優等生ちゃんやるねぇ!」
ウル「なかなか肝が据わってんじゃん。
つかさ、疑問なんだが俺らなんで生徒役なわけ? 年齢も確か20近くだったから、どうせなら先生とかやりたかったよな。」
レオ「あー、確かに。いまさら制服着てもな。」
ムマ「あら。それを言うなら私だってそうよ、もう18歳なのに。魔法の先生とか無かったの?」
ガル「魔術だとユキが担っておる。授業内容が被ってしまうのを避けた、作者の配慮じゃな。
それよりも、席替え……」
ムマ「は? 納得いかないわね。私ちょっと校長室行ってくる。
制服のクレームも言って、せめて私のだけでもゴスロリチックにしてもらわなきゃ。」
葵「え!? ちょ、ちょっと待って――」
ピア「行っちゃった……」
キラ「ねぇねぇ、名前なんて言うの?」
琉斗「え、と……神谷琉斗……」
楓「じゃあ琉君ね! にしても可愛いー♪」
レオ「くりっとした目に長い髪、端正な顔立ち……」
ウル「どこをとってもパーフェクトッ! ねぇ、今日の放課後一緒に遊びに行かない?」
琉斗「(うる目)光聖ー、助けてー!」
光聖「何でレオとウルも琉の周りに……」
ヒナ「ナツ、死後の世界ってどんなだった?」
リン「それには俺も興味がある。俺達はこの世を去ってもまた会えるのか?」
ナツ「それは私もよく覚えていないんだ。死んだ後の記憶が曖昧になっていて……」
空「せ、席替えは……?」
セル「おい、迷い星。お前とはまだ戦っていなかったなぁ? ここの近くに実戦室がある……そこでやり合おうじゃねえか。」
光聖「望むところだ!」
ハク「クラスの人数がどんどん減っていっていますね……」
空「席替えしようよ〜!」
*
柊「――望月。何で俺等は居ないのかな?」
望月「…………」
――続く……のか!?――
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.522 )
- 日時: 2012/10/21 13:36
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
お久しぶりです、朱雀です。
地方の大会も終わり、1ヶ月ぶりのお休みだったので更新です^^
短編最後の「星の子学園!」は……ただ一回台本小説というものを書いてみたかっただけなんです(´・ω・`)
しかし、書き終わった後の脱力感が半端無いですね(笑)
そしてgdgd! 本当は席替えまで終わらせるつもりだったのに、皆が台詞あるようにしたらこんなに長引いてしまった?
それと葵ちゃんや楓、佐藤君は出したのに空の部活の先輩2人を出し忘れてしまい(苦笑)
このさい天文学とかの先生にしちゃおうかな……(笑)
まぁ皆さんにはいつも長ったらしい文章ばっかり読ませてしまっていたので、たまにはこういうのも良いかなと^^
感想お待ちしております。
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.523 )
- 日時: 2012/10/21 14:59
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
ちらっとカキコ覗いてみたらちょうど更新されてましたー♪
星の子で台本小説、すごく新鮮で面白かったです!!
こう見てみると登場人物たくさんいますね(笑
てかガル先生大変ですね(笑 こんなに個性豊かな子ばっかり集まったクラスもそうないですよ^^ みんなに好き勝手やられてちょっとかわいそうでした(笑←
リンは安定のかっこよさですねっv
あとトルが先生役出てきたりしないかなーなんてちょっと期待してたりv
だめだすっかりトルにはまってしまった;
更新楽しみにしてますねー♪
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.524 )
- 日時: 2012/10/21 17:47
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
@友桃さん
いつもの如く早い!(笑)
コメントありがとうございますー^^
そうなんですよ、登場人物多くて困ってます;
最近葵ちゃんとかそっち系の出番が少なくて……(苦笑)
ガルは優しいから皆にも叱れない、そんな立ち位置です(笑)
振り回されっぷりが最高!←
トルの出番はもう少し後だと! 勿論、教師役で出ますよ(*´∀`*)
てか続き書くのかどうか分からないけど(笑)
本編も順調に書き進めてますよー^^
またいらしてくださいね♪
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.525 )
- 日時: 2012/10/28 15:52
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
16章 101話「思わぬ敵」
東軍 密林 光聖――
空は僕の手も届かない別次元に居ると、ユキが言った。
そしてこうも言った、空は無事に帰ってこれると。
それならば。僕はここで右往左往している場合じゃない。
前に進む。そして誰よりも早くアステリアの巨大都市『シャイニア』に着いて、敵と決着をつけるまでだ。
ユキは無言で僕に着いてくる。しかしその冷静ながらも穏やかな雰囲気から――紫のベールで顔を覆っているので全て直感だが――僕の決断に満足しているように見えた。
僕は他の東軍のことを案じ、不安になる。
空に続き、行方不明者が続出していたら――――?
ここからそう遠くないところで僕と同じように政府塔を目指し進んでいるであろう東軍のことを考えて、僕は遠い目で木々の奥を見た。
するとユキが消え入りそうな声で囁いた。
「大丈夫……まだ皆さんは敵と出くわしていません。――そう、今までは。」
ユキの声と、悲鳴とも雄叫びとも言えない奇声が近くから聞こえたのはほぼ同時だった。そして声が聞こえた辺りから銃声が鳴り響き、赤い煙幕が立ち込める。
僕達は足を止め、煙幕の色を確認し表情を固くした。
赤い煙幕は――敵軍襲来の合図。そして援軍要請のメッセージだ。
顔を蒼白にした僕は咄嗟に足を踏み込んだ。
助けに行かなきゃ――!
しかし突如、体が動かなくなる。透明のクモの糸にでも絡まってしまったかのように、身動きが取れない。
犯人はなんとなく分かった。
僕はユキの方を振り返る。
「援護は、私一人で行きます。貴方は真っ直ぐ前だけを向き、進んで下さい……。
運命には誰しも逆らえない――――」
「ユキ!?」
彼女はそう言って儚く笑った(ように見えた)。
そしてすぐさま地を蹴り高く跳躍すると、目にも留まらぬ早さで闇夜に溶け込む。
体の束縛はユキの姿が見えなくなった後すぐに元に戻ったのだが、それでも僕は暗い森の中で一人、思案にふけっていた。先程のユキの言葉に、矛盾を覚えてしまったのである。
『未来は幾つもに分岐している』――そうユキは言った。
でも今の口調はまるでこれから起こる事を見通し、それには決して逆らってはならない、そう強く主張しているように聞こえた。
そして最後に垣間見た儚げな笑み。
きっと、僕はこれからつらい道を歩むのだろう。
でも、それでも、僕は前に進むことしか許されないのだ。
「未来って、何なんだろう……?」
耳を澄ませばあちこちから爆音や叫び声、しまいには笑い声や狼の遠吠えのようなものも聞こえる。煌々しい月明かりが照らす寂寞とした闇の世界には、どれも不釣合いだった。
静まらない夜に、僕は一歩ずつ歩を歩めた。のんびりとした歩調は次第に速くなる。最後には風を切って木々を駆け抜けた。
急に視界が開ける。
どうやら夢中になって走っている内に、森を抜けたようだった。抜けた先に辿り着いた丘の上から、眼下に広がる景色を見る。
僕は感嘆のため息を漏らした。
「綺麗だ……」
アステリア一の巨大都市『シャイニア』。
闇に染まった世界の中で、この街だけは眠っていなかった。建物の窓から漏れる色とりどりの鮮やかな光は、まるでイルミネーションのようである。
そしてこの美しい夜景に囲まれ、悠々とそびえ立つ塔があった。周りは塀で覆われ、とても大きな白い門が構えている。その門には華やかな装飾と共に見覚えのある模様が彫られていた。
金色の鳥が大きく両羽を広げている。
『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』の紋章だ。
僕は表情を固くした。ナツとヒナ、そして元は敵だったリン達3人に追われていた日々が鮮明に浮かぶ。
(でも、今の僕はあの頃と違う――!)
短期間だったが特訓をし、力をつけた。戦法も学び、武器もある。
そして何よりも、守るべき存在が居る。
空や反乱軍の仲間達、そして『故郷(アステリア)』。
全部、無くてはならない大切なものだ。その為にも負けられない。
僕は政府塔を睨みつけ、力強く足を踏み出す。
と、頭上で聞きなれた声がした。
「ここから先には、行かせない。」
はっとして、僕は上を見上げる。
明るい青の警官服を着こなし、僕をまるで汚らわしい物でも見るかのように顔を顰める女。少し髪が伸びただろうか、首元にかかる髪を払い除け、鼻を鳴らして彼女は名乗った。
「『銀河の警官』最高執行部隊、ヒナ。
悪いけどあなたにはここで死んでもらうわ。」
心臓が止まる思いがした。唐突に、脳内で早鐘が鳴り出す。
ヒナは右手を持ち上げた。
その手に握られた物騒な金属製の銃口から、今にも光が溢れ出しそうである。
ヒナは冷たい瞳で笑った。そして何の躊躇いも無く、引き金を引く。
「さよなら」
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.526 )
- 日時: 2013/01/10 11:49
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
東軍 空VSムマ――
目映い光が私の体を包み込む。そしてその光が一つに凝縮されはじけた頃には、すっかり冷たくなった私の手をしっかり握る温かい人物が傍に寄り添っていた。
私はそっと双眸を開く。
「あっ……!」
まず驚いたのは、目の前で箒を持った魔女――いや、ムマが悔しげに顔を歪ませ立っていた事だ。歯を食いしばり、私を指差してわなわなと震える。
「ありえない……私の魔力配下の中で、一体何をしたの!?」
「それはこっちの台詞だ。」
横で懐かしい声がした。私は咄嗟にその方を顧みる。
美しい金髪に隙の無い瞳。ムマに負けない程の圧倒されるオーラを身に纏い、月光に反射して輝く剣先をムマの眼前に突き立てる男。
「リンさん!」
「空をこんな異次元に連れ込んで、一体何のつもりだ。こんな作り物で脅すとは、随分と卑怯な真似をするんだな?」
「っ……!」
リンさんは毛先がぼさぼさになった箒を一瞥し、嘲笑した。
ムマは耳元まで顔を紅潮させ、怒鳴る。
「っ、黙りなさい! その女は私達の大切な資料なの! あんた達には渡さない!!」
リンさんはその言葉を聞いて少し吟味し、思い立ったように顔を上げる。
冷徹な瞳はそのままで、口角だけを上げ薄笑いを浮かべた。
「あの変態科学者からの入れ知恵だな?」と聞くと、ムマは頬を火照らせながら黙って頷く。
――何だか素直ね。
先程の傲慢な態度は一体何処へ行ったのやら、リンさんの前では顔を赤らめ恥じているムマの姿を見ると、無性に腹が立つ。そして何故そんな気分になるのか分からない自分自身にも嫌悪感を持ち、私はリンさんに目で訴えた。
――早く帰ろう?
「あぁ、そうだな。女、ここから出してもらおう。」
「……ムマよ。」
ゴスロリの少女はそう言って、ちらりと目の前の剣先を一瞥した。
それに気付いたリンさんは、もうムマに危険性は無いと感じたのか刃を下ろす。
その瞬間だった。
ムマのつり目気味な二重が、カッと見開かれる。目が不気味な赤い瞳へと変色したのを見て、私は小さく悲鳴をあげた。
ムマは大声で叫んだ。
「燃やせ!!」
不吉な予感がして、私は後ろを振り返る。
何の変哲も無い、暗い森。しかしじっと目を凝らすと、奥の方がぱちぱちと音を立て燃えているのが目に映った。
「火が……!」
そんな私の悲鳴と共鳴するように火の気はどんどん高まり、森を覆い尽くす。
このままじゃ私達も巻き込まれる……!
私は助けを請うように横の人物を見る。
――いない?
驚いて敵の方を見ると、リンさんがムマの後ろに回り白い首筋に短刀を添えているのが目に映った。ムマも驚愕に瞳を大きく見開く。
「い、いつの間に……!?」
「悪いが心のうちが丸見えだ。さぁ、早く帰らせてもらおうか。このままでは俺達まで燃やされてしまうぞ?」
ムマは頬を紅潮させ悔しげに唇を噛み締めた。
しかしそれも束の間、急に妖しげな笑みを浮かべ言い放つ。
「――ふんっ、良いわ。新しい指令が今届いたから。
≪天野空を抹殺せよ≫……私は死んでもここを動かない。三人で仲良く、燃え死にましょう?」
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.527 )
- 日時: 2012/11/03 16:26
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんにちは^^
今回も色々キャラのこと考えながら読めておもしろかったですv
ユキってすごく神秘的なかんじがするんだけど、なーんかどことなく怖いんですよね……。なんでだろう。思考が読まれてる感じがするからかな? あと感情出さないからかな?
わりと感情表に出してる光聖くんが一緒にいるからまた際立ってるのかもしれないですね^^
それからヒナが出てきましたね!
戦いに入ってから新しいキャラがいいかんじに入ってきてる中で光聖くんとヒナっていう昔からのキャラが対峙するとなんか感慨深いですね><
ていうかムマ(笑
いや、リンはかっこいいからしょうがないけど(笑)って思ってたら、
空もか!!って内心突っ込んじゃいました(笑
光聖くんのこと忘れちゃだめだよー!!
……次回のリンの活躍楽しみにしてます←
あ、あと光聖くんも応援しております!!
更新頑張ってください(^^)/
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.528 )
- 日時: 2012/11/04 20:46
- 名前: ARMA3 ◆80E.zojjrI (ID: KZXdVVzS)
どうも〜こんばんは!
。。。。100話っ、す、凄いっっ。
おめでとうございます!!
いつも、とあるスレでお見かけするので、どんな小説書いてるのだろかとふと思い立ち、お邪魔いたしております。(お辞儀)
突然ですが、今日から貴公の超長編拝読させていただきますね。
もしかすると最新話にたどり着く前にコメ付けるかもしれませんが、今頃何言ってやがるとかって一蹴しないで頂けるとありがたいです(汗)
全くどうでもいい話ですが、星といえば昨日北の空に流れ星見かけました。去年も3回ほど見ましたねぇ。
全然願い事唱えることできませんでしたが。。。
。。。。書き散らしてしまいました、、、それでは、また〜!!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.529 )
- 日時: 2012/11/04 22:04
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
@友桃さん
ユキは自分の中でもこわーい感じのキャラなので、そう言ってもらえるとホッとします!(笑)
ちなみに感情読めないところが作者の私のツボであったりもします(笑) でもユキやセル、ピアはこれから登場回数がめっきり減ってしまうかも……^^;
ヒナはずっと登場させたかったので、やっと書けて嬉しいです♪
空や光聖君からしたら凄く嫌な子なんだろうけど、何となく憎めないんですよね^^
光聖君の活躍、期待しといてください!
ムマも乙女ですからね(ニヤニヤ
空ちゃん完全に流されていますww ついでに作者も惚れ直しちゃいましt(黙れ
リンはこれからバンバン活躍させます(`・ω・´)
光聖君主人公の座を奪われちゃわないか不安だ……(笑)
コメントありがとうございました♪
@ARMA3さん
わ〜、珍しいお客様が!!
ありがとうございます^^ 地道に頑張っております(笑)
本当に超長編ですが、頑張って読んでいただけると幸いです!
最初の60話位までめっちゃクソ駄文ですが……(苦笑)
コメントまた下さったら跳んで喜びます(*´∀`*) いつでも大歓迎ですよ♪
なんと! 良い事あるかもしれませんね^^
私は流れ星見たことないなぁ……(´・ω・`)
ていうかあの数秒間で願い事言える人いるのでしょうか(笑) 頑張っても「金金金!」ですね(おぃ
コメントありがとうございました!!
またいらしてくださいね♪
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.530 )
- 日時: 2012/11/11 06:03
- 名前: ARMA3 ◆80E.zojjrI (ID: 7lLc0QEy)
どうも〜、お邪魔しております。
今41話まで読んだところです。
きりのいいところでコメしようと思ったんですが、、、、話の区切り方が絶妙ですねぇ。。。(笑)
ダブルデートが決まったところでコメするつもりが、あれよあれよと41話まで。。。
ダブルデート、大変でしたねぇ。
言葉にはでない駆け引きの応酬というか、この微妙な空気感、思わず唸ってしまいました。
デートのシーン以外でも空と友人たちとのやり取りの部分、言葉で以外にも目や仕草で会話してるとこまで感じられて、とても魅入ってしまいました!
今後の展開、とても楽しみです!
気が早いですが、この話の展開で「戦争」という章にどうやってつながっていくのだろうと、とてつもなく気になります。
それでは、引き続き読んでまいりますので。。。
失礼しました〜!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.531 )
- 日時: 2012/11/11 18:06
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
@ARMA3さん
コメントありがとうございます^^
話の区切り方ですか! 初めて言われたかも(笑)
41話って何処らへんだっただろう、と今確認しましたが……昔の文章見るのってとてつもなく恥ずかしいですね! 穴の中に入りたい気分です^^;(笑)
小説、順調に読み進めているようですが、途中で心が折れてしまわないか心配です(´・ω・`)
急に描写とか文字数やたら増えてきますので(笑)
『戦争』の繋がり方は……楽しみにしといてください♪
急に方向性が変わって驚くかもしれません(笑)
焦らずゆっくり読み進めていってくださいね^^
改めてコメントありがとうございました!!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.532 )
- 日時: 2012/11/23 12:04
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
16章 102話「震撼」
北軍 草原 キラ――
「ねぇピア?」
私は怪我人の手当てをしていたピアに呼びかける。
せわしなくあちこち動き回っていた少女はいったん足を休ませ、小首を傾げた。
「なんでしょう?」と尋ねるピアに、私は申し訳ない罪悪感で一杯になりながら手を合わせる。
――怪我人が少なかったのが幸いね……。
そう思って、口を開いた。
「あのね……ピア。私、どうしてもハクの事が気になるの。」
ここを去る前何度も念押しされた、あの言葉。そして去り際に見せた、寂しそうな瞳。
あんなハク、初めて見た……。
何だか、放っておいちゃいけない気がする。心なしか背筋も寒い。
ピアもその事については同感だったようで、表情を曇らせて頷いた。
「そうですね……あたしも先程のハクさんは不自然だったように思います。」
「やっぱりピアも? ……私、ハクを追って南軍の方に行こうと思う。
だからお願い! ここを任せても良いかしら?」
少女は一瞬驚いたが、すぐに柔らかく微笑んで言った。
「もちろん、任せて下さい。怪我人も少ないですし、これならあたし一人で大丈夫。それに……嬉しいんです。こんな非力なあたしに頼ってくれて。だから頑張ります!」
「……ありがとう。じゃあ行ってくる!!」
「はい。あたし達も準備が整ったら、政府塔を目指して再出発しますね。キラさん、気をつけて!」
頼もしく破顔してピアは私を見送る。
あの臆病なピアがね……。
私は小さく笑って駆け出した。目指すは南軍だが、そう遠くないようである。戦っている内に移動したのだろう、西の夜空に赤と青の火花と雷光、そしてぶつかり合う力の奔流が見えた。
そんな彼らの真上で、白く輝く満月が辺りを照らしている。
時刻は、間も無く三時になろうとしていた。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.533 )
- 日時: 2012/11/23 12:05
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
南軍 空中 ウル――
俺達は戦い続けた。遠距離で赤と青の火の玉を投げつけ攻撃し、またある時は拳や蹴りで応戦する。それに対してジオは華麗にかわし、思い出したように突然空に黒い雲を出現させ、稲妻で俺達を苦しませた。勿論傷を癒す事も忘れない。
くそっ……雷を自在に操れて、自己再生も出来るなんてセコすぎるだろ……!
俺達も互角にやり合ってはいるものの、強敵なだけに体力の消耗が激しい。一方執事もどき野郎は、疲れとかそういう物が一切無いらしくピンピンしてる。そんでもって不死身ときた。
こりゃあ本気でやばいな……。
俺は青い火の玉を投げつけ舌打ちする。
ジジイ達は一体なにをしているんだ? 本拠地でのさっきの爆発……援軍も遅れないくらい酷い状況なのかよ!?
「レオ! 繋がったか!?」
「いや、まだだ……何度も“思念”を飛ばしているんだが……くそっ! これだから老いぼれジジイは!」
レオは再度“思念”と飛ばし悪態をついた。ちなみに“思念”というのは自分の意思や言葉を相手に伝えられる一つの技だ。しかし互いの脳波を知る者しか出来ない高度な技術なので、使える者も限られる。反乱軍で言うと空ちゃん以外の東西南北リーダーは皆、戦争時にこれを使い、状況を把握したり情報交換をしている。ジジイとグロさんはこれでいつも会話をしているらしい。
その時、突然ブツッと音が飛んだような雑音が聞こえた。同時にレオが目を見開き、歓喜の声を上げる。
「繋がった!」
「よっしゃ!」
俺も“思念”を本拠地の方へ送る。すると脳内に懐かしい砂嵐のようなノイズ音が流れ込んできたので、俺はじっと様子を窺っているジオに構わず宙へ拳を突き上げた。
『誰が老いぼれジジイじゃ、こら。』
「聞こえていたのか……」
レオと俺は顔を合わせて苦笑した。ようやく体の力が少し抜けた気がする。
そして口を噤み表情を硬くして、心の中でガルに今の状況を伝えた。『他の戦員は?』と問われたので、ジオに最新の注意を払いながら周囲を見渡す。
少し離れた所に二匹の黒い犬と南軍はいた。しかしその空の上で様々な色の火の粉が散りゆくのを見て、俺は背筋が凍る思いがする。ざっと南軍の残った戦印を目で追ってみたところ、最初の三分の一にも満たない。その上、敵の犬はまだ二匹残っていた。
「くそっ……こっちに集中して南軍の事が頭になかった……!」
俺は歯を食いしばって歯軋りした。
家族が待っている奴らも大勢いたのに! 皆にどんな面下げて会いに行けってんだ……!?
レオも頭を垂れて悔しげに顔を歪ませる。
「俺達、司令官失格じゃねえか……!」
と、急に頭上をどんよりとした雲が覆った。
それに気付いたときにはもう遅く、稲妻が一閃、雷が俺達の体を貫く。
「「ぐあっ!?」」
「君達、俺を忘れないでくれよ。楽しませてくれるんだろう?」
そう言ってジオが不吉な笑みを浮かべ、最後の止めを刺すべく近づいてきた。
俺はというと完全に紫電を直撃し、体中感電して痺れてしまったのかあまり身動きが取れない。目の前もチカチカして、立ち上がるのがやっとだった。
やばい――――!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.534 )
- 日時: 2012/11/23 12:06
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
- 参照: ウル―――――っ!!(泣)←
その時だった。
俺の後方から小さいナイフが飛んできて、ジオの右肩に当たる。
不意をつかれ右肩を負傷したジオが眉間に皺を寄せた。しかし新しい敵の介入に喜びを隠せない様子だ。何処か楽しげな声色で尋ねる。
「……誰だ?」
「なるほど……確かに再生が早いですね。流石『銀河の警官』の最高執行部隊隊長、と言った所でしょうか?」
俺のすぐ後ろに、その声の主はいた。
流れるような白い髪をかきあげ、いついかなる時もその幼い顔に笑みを絶やさない彼を見て、俺は言い知れぬ安堵感で胸がいっぱいになるのを感じた。
ハクは苦笑しながら、それでも冷静に敵の能力を探る。
と同時に本拠地の方から再び“思念”が送られた。
『たった今北軍が第一敵軍を打ち倒した様での。そちらにハクを寄越した。援軍が来るまでの時間稼ぎに過ぎぬが……』
(ハク一人で充分。サンキュー、ジジイ!)
『うむ。これ以上兵士達を減らしてはならん。ハクと力を合わせ、頑張るのじゃぞ。』
そう言うとガルは慌しく“思念”を断ち切った。本拠地も大変なようだ。
でもあの老いぼれには感謝しなくちゃな。ここでハクが来てくれたのは、かなり心強い。
ハクは小柄だが持ち前の冷静な洞察力と頭の切れの良さで、技を外すことはほとんど無い。また、動きもすばやく敵の攻撃を華麗によける。小さいからと言って侮ってはいけない、反乱軍にとって自慢の戦士なのだ。
そんな彼はふわりと微笑んで言った。
「貴方方がところ構わず火花を散らすものですから、見つけるのにさほど手間はかかりませんでしたよ。しかし大袈裟に力を振りまくのは、やめてほしい所ですね。」
「ははっ、相変わらず優等生ちゃんはキビシーや。」
「ま、全力で戦っていた事は否定しねーけどな!」
「それと……南軍だというのに西の方にどんどん移動していますよ? まぁ、運がよければ西軍の援護を期待出来そうですが。」
ハクは溜息混じりにひとつずつ注意してゆく。しかし本気で怒っている様ではなく、むしろ楽しげだ。その顔が、不意に引き締まった。
それが合図となったかのように俺等はジオの方を向いて、再び構える。
ジオはけだるそうにそれを見つめ、何の感情も無く吐き捨てるように言った。
「どうせ一人増えた所で何も変わりはしない。」
「ハクを舐めたら痛い目見るぞ?」
俺は真剣な顔で敵に忠告する。そして地を――いや、宙を蹴り加速して走り出した。
「ハク! 作戦A、奴の心臓を狙え!」
「了解。」
俺とレオはそれぞれ左右に移動し、ジオを真ん中に挟み撃ちのような形になった。
ハクは正面から、最も良いタイミングを見計らい心臓を小刀で狙う。
双子の雄叫びが重なった。俺達は先程の雑談時からこっそり溜めていた青い火の玉を、なげるのではなく直接奴の左胸に打ち込む。
赤と青の炎が融合し、紫色の禍々しい力の奔流が弾けた。
それは僅か数秒の出来事だった。ジオは鋭い痛みに、群青の瞳をかっと見開く。しかしそれも束の間、その目を細め軽蔑した瞳で俺を見据えた。失望したような顔で、声を低くし言う。
「お前等こそ、どこに目つけているんだ?」
「なに……?」
「ウル!!」
俺はジオの言葉が理解できず、間抜けた声が出る。と、レオが驚愕に目を大きくし、俺の名を叫んだ。
何だよ、そんな大声出して……ははっ、そんな地獄でも見たような顔すんなって。
そうレオに声をかけてやりたかった。しかし上手く言葉が出ない。
自分の腹を襲う激痛に気がついたのは、少し遅れてからだった。
「――――っ!?」
突如襲った激しい痛み。まるで横っ腹全てを抉り取られたような錯覚を覚える。
やべぇ、立ってらんねぇ……。
朦朧とする意識の中、何か異質な物が腹を貫通している事だけは馬鹿な俺にも分かった。
突然、ぐらりと視界が傾いた。足に力が入らない。そのまま空中に足場を作る事すら出来ず、ただ重力に身を任せ落下していく。
意識が消えゆく狭間に見えた、レオの顔。遠ざかる双子の瞳は、怒りと憎悪に燃えていた。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.535 )
- 日時: 2012/11/29 11:53
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
ウル――っ!!(泣;
って心の中で叫びながら更新分もう一度見返そうと上の方にスクロールしていったら、朱雀さんも同じこと叫んでました(笑
やばいです、なんかみんなかっこいいですv
ウルがやられたあとのレオとか……っ
続きが気になるよぉ(泣;
てか南軍のことが頭から飛んでたレオとウル(笑 ちょ、司令官!!って突っ込んじゃいました。それだけジオとの戦いがぎりぎりの状態だったんだろうなぁと思いつつも、やっぱりそれはまずいだろ司令官!!笑
南軍どうなっちゃうんでしょうか。すごく強そうなハクが頼りですね><
それとピアが健気でかわいかったです。「……嬉しいんです。こんな非力なあたしに頼ってくれて」のところが特にv ピアがんばれ!
更新楽しみにしてます^^
また来ますねーv
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.536 )
- 日時: 2012/11/29 18:50
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
@友桃さん
今回は3つに分けて文字数もそれなりにあったので、結構読むの大変だったと思います……毎回丁寧にコメント下さって本当に感謝してもし尽くせません!!
毎回、コメントありがとうございます♪
正直言うと南軍の事はレオとウルじゃなく私が忘れていて(笑)←
でも今更書くの面倒だなぁ、それに黒い犬との戦闘シーンも増やしたら自分のネタが尽きるなぁ、という事で急遽不甲斐ない司令官のせいにしました(おぃ
レオとウルも、ジオと黒犬相手にしてたらとっくに倒れてるし(´・ω・`)
ハクは――最後の方でハクの描写が一切出ていない所がポイントです!
これから誰がこの窮地を救ってくれるんでしょうね……(遠い目←
ピアは途中で脇役にあがったキャラですが、とてもお気に入りです♪
小柄で健気なところが可愛いですよね(*´∀`*)
これからも頑張ります^^
コメントありがとうございました!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.537 )
- 日時: 2012/12/13 19:00
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
16章 103話「継承」
東軍 シャイニア 光聖VSヒナ――
「さよなら」
そう言ってヒナは引き金を引いた。
パァン――――
銃声音と共に眩い閃光が辺りを照らす。その銃弾が僕に届く僅かな間、僕はあまりの急な攻撃にそれを躱すことはおろか、身を守ることすら出来なかった。
やばい――!
その時、目の端にちらりと大きな手が見えた。光で形作られた僕の2倍程の大きさを持つ手が、僕を突き飛ばす。
「うわっ!」
その衝撃に僕は数十センチ宙へ浮き、勢いよく尻から落ちた。
と同時に、僕のすぐ目の前を弾丸がかすめた。そのスピードは落ちず、むしろ加速して先程僕が立っていた真後ろの木を貫通する。するとその木は幹がとても太かったにも関わらず、ミシミシと音を立て横に倒れた。
あれが自分に当たっていれば……そう考えると身の毛がよだつ。僕の頬を一筋の冷や汗が伝った。
ヒナは舌打ちをして苦々しげに毒づく。
「ちっ、一発目で確実に仕留められると思ったんだけど……ふん、腕を上げたようね。あれを回避するなんて、なかなかやるじゃない。」
心の底から残念そうに話すヒナの顔には、挑戦的な笑みが貼り付いていた。
次こそは。
ヒナの瞳で燃え滾る赤い炎は、そう僕に言い放っているようであった。
しかし今のあれは僕の力じゃない。強大な力を持つ何らかの者――僕にはそれが何なのか、既に察しがついていた――が干渉してきたに違いなかった。先ほどの巨大な手が僕を突き飛ばしていなかったら、きっと今頃死んでいただろう。
ヒナが弾丸を入れ替える。一度に何発か撃って僕に傷を負わせようという考えだ。
先ほどの威力を持つ銃弾が何発も……。
ヒナが再びトリガーに手をかけた。僕は盾を強く持つ。そして大気の流れを感じ取りながら力を込め、盾をもっと鋼鉄なものとした。
「くらえっ!」
ヒナがトリガーを引いた。その銃口から放った数弾が、凄まじい速度で僕に襲いかかる。
一発目は間一髪で避けた。
二発目からは盾で防ぐ。
しかしそこで、僕は信じられない光景を目にした。
「嘘だろ……!?」
盾で防いだ弾丸は全部で四つ。
そのどれもが、頑丈な盾に激突した後も地に落ちず、そのままの威力と速度でいる。つまりその圧倒的な弾圧と破壊力で、銃弾が盾に食い込んでいるのだ。
その驚異的な威力に、僕は盾から手を離しそうになる。ビリビリと大気が震えている。“戦争”という空気に、完全に飲みこまれそうだ……。
その時。
先程感じたあの温もりが、再び僕をそっと包み込んだ。その雰囲気はどことなく輝さんに似ている。
僕は確信した。
この感覚は、一度ナツ達に捕まった時不思議な声と共に体に宿ったあの力――しかしその時よりも、少し力は弱々しい気がする――だった。
何者かからの加護を受けた僕は、盾に再び力を込める。次はもっと強く、弾丸を撥ね飛ばすように。
すると僕の念が伝わったのか、盾が形を変えた。
「えっ?」
それはどちらの声だったろうか。もしかしたら、両者かもしれない。
何の変哲もなかった平凡な盾が、ほんの一瞬で見違える程立派になった。面積はさっきの三倍くらいになり、煌々とした聖なる光を放っている。
僕はそれを持つ手に手応えを感じて、満面の笑みを浮かべた。
そして銃弾を押しのけるように、腕をぐっと前へ突き出した。
弾丸は最後の抵抗とでも言いたげに、小規模な爆発を起こす。しかしその爆風も、この盾の前では無力同然であった。
「ぐっ!」
代わりにその風が跳ね返り、ヒナは全身で強風を受ける。
『――アステルよ……』
とその時、重くて厳かな声がした。
脳内から、というよりも心の奥から響くような感じ。激しい既視感が僕を襲う。同時に、ヨーロッパの街並みと教会が鮮明に浮かんだ。
『我の力も残り少ない……これを主にしばしの間授けよう――。』
勿論ヒナの声ではない。また、味方から送られてきた“思念”でもない。
教会から脱出するとき力を貸してくれた、何者かの声だった。
僕は体の奥底から不思議な力が沸き起こってくるのを感じる。圧倒的な力が漲り、心臓は高揚する。
『我が国を……我が民を助けてくれ。政府等の最上階で待っている――――』
『幸運を』。最後にそう呟いて、声はぱたりと聞こえなくなった。
きっと先程の大きな手も、盾が変形したのも、不思議な声の主の力だ。
ありがとう。僕は心の中で言う。絶対に貴方の国を守ります――。
ヒナは僕の身体から迸る力の片鱗を感じ取り、不敵な笑みを浮かべた。
「ふん、やっと本調子ってとこかしら? それに、そうじゃないと楽しくないわ。どうやら“あの力”も手に入れたようだし……こちらもやっと本気を出せるってところね!」
ヒナは楽しげに口で弧を描き、勢いよく地を蹴った。いつの間にか手に短剣を握り、僕に向かってくる。
「望むところだ!!」
僕も体内から滲み出る絶対的な力を、盾――今はもう縮小してしまったが、この力があれば変幻自在だろう――と太刀に注ぎ込んだ。
ヒナには絶対に負けてはならない。
僕にはまだ使命がある。こんな所でくたばってたまるか。
僕も地を蹴った。
武器をしっかりと握りしめ、敵を見据えて。
次の瞬間、『アステリア』に住む人々は皆、『シャイニア』近辺の小さな丘を顧みたと言う。
そしてそこには竜巻のような爆風と、その中でそれぞれの想いを乗せ刃を交わせる二つの影が――。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.538 )
- 日時: 2012/12/13 19:52
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: Uc2gDK.7)
こんばんは♪
103話どうでしたか!?
本当は空ちゃんとリンさんも書きたかったんですが、光聖君がかなり幅取りましたね(笑)
次はまたウル視点で始まります♪
ずっと私の書きたかったお話にそろそろ突入なので、筆がとても進みます(`・ω・´)
だけどテスト勉強とかで忙しくて><
てか明後日から期末だー!!(何故ここにいるw
勿論現実逃避です☆←
はい、ちゃんと勉強頑張ります゚(゚´Д`゚)゚
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.539 )
- 日時: 2013/01/10 11:58
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: ウルがカッコよすぎる件。
16章 104話「甘えと決別」
南軍 空中 ウル――
遠くなっていく意識の狭間、落下する俺の背を誰かが優しく抱きかかえた。その細い腕と俺の顔に覆いかぶさるくらいに長い髪から、女性だと分かった。
へへっ、死に際をレディーに助けられるなんてな。かっこわりーぜ。
俺は傷口を広げないように慎重に腕を動かした。横で女が何か言ったが、なにせ頭の中でけたたましく鐘が鳴り響いているもんだからよく聴こえない。
まるで得体の知れない生物の赤ん坊に触れるように、俺は横っ腹を探った。不思議と痛みはあまり感じない。人間はナイフで肉体を刺されたらおびただしい量の血を流すらしいが、ここの住民は元々光のような存在なので火の粉を散らすだけだ。
あったかい。
傷口を触って、俺は一番にそう思った。そしてまだ突き刺さっていた短剣を引っこ抜こうとする。
すると女が慌てて俺の手を払い除けた。
「駄目よ、下手にしたら傷が開いちゃう。私がやるから。」
「おう……ってぐえっ!?」
「ごっ、ごめん! 痛かった?」
痛いも何も……雑すぎるだろ。俺がやった方がよっぽどマシだったかな。
女が躊躇なしに刀を抜いたので、その激痛に再び疼く腹をさすって俺は苦笑した。と言っても苦笑いの顔になっているか非常に疑問である。表情筋までもが正常に作動していない気がする。
すると今度は、今ので少し目が覚めた俺の頬に、突然大粒の雫が降ってきた。
――雨か?
そう思って空を仰いだが、そうでは無かった。
女が肩を震わし、泣いている。ナイフをじっと見つめ、その形が見覚えのある物だという事を受け入れられずに、唯々泣いている。そんな彼女は、俺のよく見知った相手だった。
「嘘、だよね……?」
女がポツリと呟いた。まるで俺に語りかけるというよりも、自分に言い聞かせる様に。
「だって、こんなの、ただの悪い夢よ……あの子が絶対、こんな事するはず、無いもの……! 私は、いつだって、ずっと信じて――――」
「キラ。」
俺は、思考の歯止めが効かなくなって濁流のように言葉が溢れ出すキラを制した。息絶え絶えながらも意外と声が出たので、少し安心する。
腕を精一杯伸ばしてキラの肩を掴むと、彼女は何に怯えたのか体を固くした。
そしてまだとめどなく溢れる涙をもう片方の手で拭ってやり、微笑む。
「俺のことは良いから……行ってこい。あいつなりの考えがあるかもしれねぇし、もしかしたらお互い勘違いしているのかもしれねぇ。」
「でも傷が――」
「こんなんで俺様が死ぬと思うか? へっ、自力で治すよ。……だから泣くな。」
「ウルぅ……」
「ちょっ、おい、何でまた泣く――――ゲホッ、ゴホッ。」
突然息が苦しくなって俺は身をよじり大きく咳込んだ。キラは慌てて応急処置をするが、腹の痛みはむしろ先ほどよりも酷くなる一方だ。しかし俺はぶり返してきた腹痛を隠し、無理に微笑んで言った。
「……早く行けって。レオが一人で可哀相だろうが。」
「うん……。」
それでもまだ決心がつかないようだ。
俺はそんな彼女を鼓舞するため、今度は声を張り上げた。
「お前が戦場に出ることで助かる命がいっぱいあんだ!! 俺一人の命なんて安いもんだろ?
……全て終わったら、思い切り俺の腕の中で泣けって。」
「…………バカ。」
キラは複雑な笑みを浮かべた。
すると今度は俺の傷口を手当することもなく、すっくと立って俺に背を向ける。そして地を勢いよく蹴り、高く跳躍した。
吸い込まれそうな深い闇に、キラの真紅の髪が月光と共に鮮やかに目に映る。
また気が遠くなってきたので、俺は静かに目を瞑った。
最後にキラが呟いた言葉が、頭の中で反響する。
(――――「ありがとう」――――)
「ふっ……」
相棒、悪いが少しだけ寝させてくれ。代わりに頼もしい奴送っといたからよ。
あとキラ、やっぱ前言撤回。
どうやら傷がまた開いちまった。さっきは自力で治すとか言ったけど、無理だわ。
あぁ……誰か、
もっとましな応急処置をしてくれ。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.540 )
- 日時: 2013/01/09 10:58
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
めっちゃ更新されてたー!!
光聖くんかっこよかったです! すごい主人公っぽい!v
あとウルとキラににやにやしちゃいましたv←
今回もなんだか盛り上がりがあって面白かったです。ウル達のほうがこの先どうなるのかがすごく気になりますー!
更新頑張ってください(^^)/
続き楽しみにしてますv
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.541 )
- 日時: 2013/01/09 20:24
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
こんにちは。黒田奏といいます。
複雑・ファジー板の私の小説にコメントを下さり、ありがとうございました。
まだ途中までしか読めていませんが、コメントさせていただきます。
主人公の純粋さがよく伝わってきました。
良くも悪くもとても真っ直ぐな性格で、好感が持てます。
物語も、序盤から発想が斬新で読んでいて楽しめます。
描写に関しては、最初に最新話を拝見させていただきましたが、著しい成長が見て取れました。
少なくとも二年前から書かれている、ということも併せて、努力が伝わってきます。
素晴らしいと思います。
これからも、無理をなさらない程度に、更新頑張ってください。
楽しみにしています。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.542 )
- 日時: 2013/01/10 10:39
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
@友桃さん
光聖君は本当に久々に書くので、なるべく主人公らしさを出そうと頑張ってみました。そう言ってくださってホッとします^^
私もにやにやしながら書いていました←
104話は、なるべくウルを刺した人物がすぐに分からないように、控えめ(?)な伏線を貼るのにとても苦労しました……;
このまま盛り上がりが次にピークになると良いな、と思います。頑張ります!
コメントありがとうございました^^
また来てくださいね♪
@黒田奏さん
まさか読んでくださるとは……!
こうしてコメントもくれて、とても嬉しいです。ありがとうございます(*´∀`*)
てかお褒めの言葉ばっかりで、恐縮です:(;゙゚'ω゚'):
そう言ってくださると、二年頑張った甲斐ありますね^^ 描写に関しては、まだまだ未熟ですのでもっと高めようと思います。
黒田さんも、何しろ長編ですので無理のない程度に読みすすめてください^^
更新頑張ります!
コメントありがとうございました♪
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.543 )
- 日時: 2013/01/26 17:52
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
16章 105話「黒駒」
東軍 空、リンVSムマ――
森をどんどん燃やし続ける炎が、私の瞳に映った。それはまるで大きな口を開け牙を剥き、私達を食べようとする魔物のように見える。
赤い。
ただ純粋にそう感じた。どこまでも赤く広がる炎に、私は完全に気圧される。足が竦み、そこに釘を打たれたようにじっと動けずにいたがそれも数秒、ムマの後ろでナイフを構えていたリンさんが私に向かって叫んだ。
「空! 何でも良いから、身を守れるような大きなものを想像しろ!」
「えっ?」
何故だろう――?
一瞬様々な疑問が頭を過ぎったが、考えている暇もない。今の私の突破口は、リンさんだけなのだから。
火に強いもの。勝てるもの。
それはすぐに思い浮かんだ。私は迫り来る炎をじっと見据え、胸の前で腕を伸ばす。そして手の平を前に向け、お互いの親指と人指し指で三角形を作るようにし、強くそれを念じた。
何となく、出来る気がする。そう、体の奥底から未知なる力が溢れ出して……。
思った以上にそれは簡単に出来た。
炎が私の手に触れようか触れまいかの間一髪の時、私はすっと周りの気温が二、三度低くなったような錯覚に囚われる。
「やった……。」
急に力が抜けた私は、その場にへたり込んだ。その頭上を、激しい炎が舐めまわすようにして森を燃やしてゆく。
しかし私は不思議なくらいに何もない。後ろを振り返ると、同じように無傷のリンさんがとても近くに立っていて、少し驚いた。
リンさんは切れ長な美しい瞳で周りを見回す。
「まさかこんなに丈夫な氷のドームを顕現させるとは……これなら当分安心だな。」
次に私を見て優しく微笑んだ。
「空、お前のお陰で助かった。」
「で、でも私、何もしてないよ……!?」
ありえない。
私は真っ先にそう思った。
私の頭を優しくなでる大きな手。その手がリンさんの物だという事実を飲み込むのに数秒かかり、これが夢じゃないと信じるのにも数秒かかった。
そしてようやく動いた私の口がポツリと呟く。
「……リンさん、優しくなったね。」
「そうか?」
リンさんはわざととぼけた顔をした。
そこには私の学校に転校してきた時、女子の恋文を破り捨てた冷酷な面影はない。今のリンさんなら、もう二度とああいう事はしないのではないだろうか。
ふっと先程のリンさんを思い出し、まだ頭部に大きな手の温もりと感触がある事に気づいて、私は顔が熱くなるのを感じる。頬に手を当て一人動揺していると、少し拗ねたような表情のムマが目に入った。
「何よ、二人でイチャイチャしてくれちゃって……。ここは私の世界なんだからねっ! この氷だって、私が消そうと思えば消せるのよ!?」
「それは嘘だな。」
ムマの少し脅しが入った言葉に、リンさんが冷たく言い放つ。
ムマが少し「うっ……」と怯んだのを見逃さずに、彼は続ける。
「この世界で夢主はお前と同等の能力を使えるようだ。つまり空がこのドームをいらないと思わない限り、これが消えることは無い。違うか?」
「――何でっ、いつから分かったの!?」
「『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』に所属していた時から、人の夢の中に入りその空間を操れるものがいるという話は聞いていた。その情報はあくまでも信憑性に欠ける物だったし俺も信じてなどいなかったが、空にここに呼ばれた時、それが確信に変わったんだ。お前の能力の正体もな。」
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.544 )
- 日時: 2013/01/26 17:55
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
リンさんの弁舌に、ムマが唇を噛み締め俯く。
えーっとつまり……ここは私の夢の中? で、私とムマさんの思い通りに操れる、って事?
「まぁそんなところだ。」
リンさんが次に私に向き直って言った。また心を読まれていたのだろうか? そう考えるとあまり良い気はしない。
「ここはお前の夢の中だ。だがここは感覚があるし俺も実体のまま召喚されたのだから、夢に擬似した異空間が正解だな。
それと夢はコントロールできるという話を聞いた事はあるだろう? 俺がここへ来れた理由やこの氷のドームも、ようは空が全て望んだからなんだ。」
「あぁ、それで……」
妙に納得する。思えばさっきのお菓子の家や魔女も、全て自分が一瞬でも考えた物達だ。
「つまり……ムマさんは、夢に入った人達が一度は考える悪いものに化けて驚かしていたの?」
「そーいうこと。まぁ驚かすことが目的じゃないけどね。
人は誰だって、知らないところに一人でいたら悪い想像をするものよ。それに化けて主導権を握ればこっちのもの。あそこで人を召喚させるとは、思ってもみなかったけどね。」
ムマは苦笑してそう答えた。
そして急に私に近づくと、胡乱な視線で瞳の奥をじぃっと見つめる。
「それにしても……あんた本当に人間の子? 特別な力とかは今のところ感じないけど……私だってこの世界に生物をそのまま召喚させるのは難しいのに。それにこの氷のドームも、普通の人間じゃ何人いてもこんなに立派に作れないわ。
やっぱりH・F様に差し出したほうが、良いかもしれない。」
「えっ。」
「そうはさせない。」
リンさんが私の腕を掴み、自分の元へと引き寄せる。
それを見たムマは呆れたように溜息をついた。そして腰に手を当て、まるで聞き分けのない子供に言い聞かす母親のように、一言一句ゆっくり話す。
「分かってるの? ここは、私が作った、世界。その子を連れてきたのは、私。ここから出る方法を知るのも、私だけよ。」
「ぐっ……。」
「それか、ここで戦争終わるまでじっとしていようか? うん、それが良いわ!」
ムマは手を打って破顔した。どうやら本当にそれが最良だと思っているようで、パチンと指を鳴らし可愛いピンクの丸テーブルと椅子を三つ出現させる。そして優雅にお茶を飲み始めた。
そんなムマの姿に私たちが唖然としていると、ムマはなんでも無いようにお茶を勧めてきた。
「あんた達も座れば? ほら、お菓子もあるし。お腹空いているでしょう?」
「……うん!」
実はずっとお腹が減っていたのだ。耐え切れなかった私はムマの横に座って、お菓子の山に手を伸ばした。マカロンだ。
一口食べると、濃厚な苺の香りが口いっぱいに広がった。おもわず顔を綻ばせる。
すると横にいたリンさんも渋々ピンクの椅子に座り、呆れた顔で言った。
「分かっているのか? 俺たちは敵同士なんだぞ。それにこっちはこんな所でお茶している場合じゃないんだ。」
「わっ、これ美味し〜い!」
「こっちにクッキーもあるわよ。」
「……人の話を聞け。」
リンさんが顔を顰め困っているのを見ると、ムマは可笑しそうに小さく笑い「大丈夫よ」と自分の能力の説明をし始めた。
それによると信じられない話だが、ここでの一時間があちらではたったの一分なんだそうだ。
「聞いた事があるでしょ? 私達が覚えている夢っていうのは、起きる直前、それも一秒にも満たない時間に見ているの。ここも要は同じ話よ。だからゆっくりしていけば良いわ。
それに私は、あんた達を殺そうなんて思ってないし。」
「……何故だ?」
これには少し面食らった。リンさんも不思議そうに聞く。
でも確かに、さっきまでは凄いさっきで魔女に姿になってまで私を追っていたのに、今のムマからは戦意すら感じられない。考えてみればリンさんが来てから、少しずつ物腰が柔らかくなったように思う。
……何だか妙な気分だ。
当のムマは指を唇に当て、考え込むように唸る。それを見て本当は理由なんて無いんじゃないかと思った。先程からの言動を見ても、かなり気分屋のようだし。
「う〜ん……正直言うと私、この戦争どうでもいいのよね。生活に不都合があればここに来ればいいし、この珍しい能力のお陰でそれなりの待遇は受けられるし? だから別に、あんた達のこと殺す必要ないもの。」
「……じゃあ、どうして戦場に?」
「面白そうだったから。」
開いた口が塞がらなかった。
リンさんやヒナさんは仕事にとても真面目だったけれど、ムマを見ていると最高執行部隊なんて名だけで本当は能天気な人達の集まりなのかな、とか思ってしまう。本気になったら強いんだろうけど。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.545 )
- 日時: 2013/01/26 17:55
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
……そういえば、最高執行部隊って何人くらい居るのかな。
「あの……質問いい?」
「何でもどうぞ。」
「その、最高執行部隊って、何人くらい居るの?」
「えーっと……五人? あ、シャドーが三匹いるから八人なのかしら。でもシャドーは――の下僕だから……やっぱり五人ね。」
「え……?」
聞き慣れた言葉を耳にした。
その名前が、何故今ここで出たのか。しかもムマはその人が、最高執行部隊の“シャドー”とか何とか言うものの、主だと言っている。
咄嗟にリンさんの顔を伺うと、リンさんもショックが大きいようで暫くムマの顔を凝視していた。そして次に額に手を当て、重苦しい溜息をつく。
一瞬でその異様な雰囲気を作った張本人のムマは、ようやくその原因に辿り着いたようで、「あっ」と口に手を当てた。そして少しの悪びれもなく、
「ごめんなさい、これは企業秘密だったわ。でももう話しても良いでしょ? そろそろ彼も動いている頃だし。」
「え、ちょっと待って……どういう事……?」
頭の整理がつかないと言うよりも、私の体がその事実を受け入れられない。
もしかしたら単なる聞き間違いかも……。
そう思い込もうとしたが、リンさんの渋面を見れば聞き間違いでないことは容易に見て取れた。
ムマの代わりにリンさんが、重い口を開いて言う。
「……つまりスパイだったんだ。
ずっとおかしいと思っていた。何故政府軍は、反乱軍が今日戦争を決行することを知っていたのか。そして何故それが始まる前に、大規模な爆発を、それも一部の者しか場所を知らない反乱軍本拠地で起こせたのか……。」
「つまり反乱軍の情報をその人が、裏でずっと政府軍に伝えていたって事……!?」
目の前が真っ白になった。
スパイ――そんな風に彼が見えた事など無かったし、彼も私にとても親切に接してくれた。それに、あの優しい笑みでいつも場が温かくなったではないか。
それも全部、嘘だったの――――?
「ムマさん、もう一回その人の名前言って? ちょっとまだ、信じられないから……。それにもしかしたら、ただの聞き間違いかも……。」
言いながら、自分は今更何を言っているんだろうと思った。
でも、やっぱり希望は捨てきれない。
ムマは困ったように眉を寄せ、口を開く。
「だから、反乱軍の黒駒は――――――――ハクよ。」
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.546 )
- 日時: 2013/01/26 18:12
- 名前: (朱雀*@).゚. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
遂にやってしまった……あぁ、読者様の反応が怖い(;´Д`)
お久しぶりです、朱雀です。
十五日ぶりに更新です。最近ちょっと更新率高いのかもしれない。
久々にノート7ページ分書きましたぁ;
7ページともなると書く方も読む方も疲れますね。ごゆっくりお読みください^^
今回は文字数的にすると4500字ちょっとですが、台詞が多かったので読みやすいかと!
でも困りましたね。どうやら空ちゃんとムマのペアは話が進みにくいようです。リンさんを入れてもどうにもなりませんでした(笑)
それで最後の方ですが、本当は次の話で暴露しようと思っていたのですが、何か知らないうちに本編でお茶会が始まったので、じゃあもうムマがポロッと言っちゃおう! と(笑)
ムマのキャラは意外に書きやすいです。でもちょっとキャラがブレる傾向が……(´・ω・`)
どうやって夢の世界から出ようか今思案中です。本当は今回出る予定だったのになぁ。
そして相変わらずリンさんがかっこいいです♪
もう彼お気に入りなので、何でもさせたくなっちゃいます。そのまま空をお持ち帰りして欲しいくらいです←
もうね、正直言って光聖君よりリンさんと空ちゃんがくっつけば良いなぁとか思っています。光聖君の立ち位置危うし!!(((゜Д゜;)))
次はレオの方を書こうかなぁ。
キラとハクを書くのが辛いですね>< PANDA。さんお気に入りの二人なのに、最新話読んだら怒られそうだ(笑)
でもかなり前から脳内で温めていたシーンでもあるので、気合入れて書こうと思います!
そのためにももっと腕を磨かなきゃ!!
そういえば受験は丁度1週間後。
勉強もちゃんとして、定期的に小説も書きます(`・ω・´)
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.547 )
- 日時: 2013/01/27 22:52
- 名前: ARMA3 ◆80E.zojjrI (ID: KZXdVVzS)
こんばんは〜
本日は、わたくしめのスレにコメントいただきまして、本当にありがとうございますっ
前の小説紹介は戦争の章に入って間もなくのところで書いたので、全部読んだものを改めて載せる予定です。
で、話の始めのほうの記憶が怪しいので、最初から読み直してるところです。。。(汗)
先に最新の話、ざっと目を通しましたが、時間の経過と共に一話のボリュームが増えてきますねぇ。。凄いっ!
全編読みきるの楽しみですなぁ!
では、執筆も勉強もがんばってくだされ〜
文文両道っ(笑)
じゃ、また〜〜!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.548 )
- 日時: 2013/01/30 09:57
- 名前: PANDA。 (ID: q0osNPQH)
おひさしぶりです。(*´σー`)エヘヘ
しばらく留守にしていて申し訳ないです。
春休みになったら色々、イラストの更新について
対処していくつもりでいます。
それにしても・・・・ハクぅぅぅぅぅぅぅ!!
これ、キラさん大丈夫なんですか??
お姉さん心配です。早くどうにかしてあげてほしい(((切実
バレンタインが近いというのに笑
気合をいれて2人を救って下さい。(土下座
双子も忘れずに!
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.549 )
- 日時: 2013/02/02 21:54
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
ハク……!!?
驚愕の事実に二度見しちゃいましたΣ
こんばんは、友桃です^^
これ、ハクが戦ってるとここれから無茶苦茶まずいことになりそうなんですが……><!! わ〜どうなるんだろう><; 不安です><
ていうかお茶会始まった!! ゆるい!! この3人なんか可愛い!!vって思ってたら、そのあとの朱雀さんのコメントに吹きました(笑
「何か知らないうちに本編でお茶会が始まった」って(笑 でもちょっとそうなんだろうなって気はしました(笑← でも私こういうゆるいの好きですv てかムマが好きになってきたかも^^
そう、お茶会と言えば空ちゃん! この子なにか秘密があるんだろうとは思ってましたが、すごい力持ってるんですね!! これから空ちゃんがどういう風に活躍してくれるのかたのしみですv
この先色々とどうなっちゃうんでしょうね!
続きが楽しみです。更新待ってます(*^^)v
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.550 )
- 日時: 2013/02/03 14:51
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
受験、無事に終わりました^^
今週からまた執筆活動頑張るぞー!
@ARMA3さん
コメントありがとうございます♪
はい、ボリュームが増えてきて書く方も読む方も大変になってきています(笑)
あんまり1話に詰め込むのは良くないんですが^^;
紹介文本当に嬉しかったですー!
ARMA3の小説も近いうちに覗きに行きますねv
@PANDA。さん
ここではお久しぶりですね^^
キャラ絵楽しみにしてます♪ あとあと、年賀状もめっちゃ嬉しかったですよおおぉぉ\(^o^)/
ハクの件は、本当に申し訳ないです(苦笑)
でも大丈夫! きっとキラとの愛の力でハッピーエンドになるはず!!(多分!
そういえばもうすぐバレンタインですねー。番外編書きたい(^p^)
@友桃さん
ハク……!?
書いた本人も、やっちまった感で一杯です(笑) 1年以上前から温めていたネタなんですがねぇ(´・ω・`)
今までの小説でも断片的に伏線張っていたので、読み直したら多分合致がいくと思います。
86話ー>>440>>441、89話ー>>460、100話ー>>511、102話ー>>534、104話ー>>539
ぐらいかな? 主に下の辺りです^^
そうなんです、ムマをコントロールするのはかなり大変だと思い知りました(笑)
まぁ戦争の中で、たまには息抜きも必要ですので^^
てかお茶会私も参加したいーっ!
空はこれからバンバン活躍させようと目論んでおりますので(。-∀-)
期待しててください♪
皆さんコメントありがとうございました^^
また来てくださいね(*´∀`*)
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.551 )
- 日時: 2013/02/09 22:40
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
16章 106話「総司令官の心情」
反乱軍 本拠地――
事態は思った異常に深刻だった。
戦争をこちらから仕掛ける前に、敵が動いた。これは予期すべき範囲内だ。また、政府軍の戦争開始合図が儂らの本拠地での大爆発だった。これも……まぁもっと予想しておくべきだったのじゃろう。
しかしこの場が今、混沌の渦と化しているのにはもっと別の理由があった。
儂は声を張り上げ、次々と戦員達に指示を送る。その目の前を、数人が救急箱や包帯、松明や拡声器等を持って慌ただしく走っていった。
怪我人は本拠地に残った者の、三分の一にものぼる。
彼らの手当てをしなければ援軍が送れない。一刻も早くレオ達の戦力を高めるべく、儂はここに居る者を総動員して怪我人の応急手当をするよう言った。が、ほとんどの戦員が本拠地を突如襲った爆撃に対する驚きと戸惑い、更には傷が酷い者を実際見てのショックと恐怖で、即座に動けなかったのである。
ここに居る隊員たちの大半は、普通の民だ。
儂のような元警官と違い、戦い方もまるで知らなければ経験や知識も浅い。
そんな彼らだったからこそ、この危機的状況に直面しても何も出来ずにいた。
これは儂や政府軍との、圧倒的な“順応性”の差だった。
「総司令官! ようやく配線が繋がったようです!」
「随分遅かったな……ご苦労じゃった。グロ、悪いが見に行ってくれんか。」
「……」
横で音もなく立っていたグロが、黒いフードの奥に隠れている顔を数ミリ下へ引いた。彼女なりの肯定の印だ。
儂はまるで空気のように希薄なグロの、遠ざかっていくフードの背を眺めて溜息をついた。
――あやつももっと、皆と関われば良いのじゃが。
過去にあった“あの思い出”が、今もまだ彼女の時間を止めてしまっているのだろう。この戦争が終わったら、一度話し合ってみた方が良いかもしれない。
そんな思案に耽るのも数秒、儂はまた本拠地と士気の復活に力を注ぐべく顔を上げる。と、黒いフードを被った巨人が驚くほど近くに居たので思わず声を上げて後ずさった。
「ぬぉっ!? ――あぁ、グロか。早かったのう。しかし急に現れんでくれ、心臓に悪い。」
そう苦笑して言うと、グロは身動き一つせず代わりに“思念”から脳に直接話しかける。
『同行。』
「む、何か問題でもあったのか?」
この質問には何も答えず、グロは着いて来いとばかりに通路へスタスタ歩いていく。儂も急ぎ足で後を追った。
「これは……!」
その数分後、儂はモニターの前で己の目を疑った。そんな儂を照らすように青白く光を放っているモニターには、数百とある赤と青の丸い光が点滅を繰り返している。
これは味方と敵の数、そして生死を一瞬で確認できる機械である。我々はこれを≪C・M(コンバット・ムービー)≫と呼んでいた。青い点が反乱軍、赤い点が政府軍を示していて、この光が一つ消える度に誰かが一人死んだという事になる。
先程の爆撃により一度ショートしてしまったこれだが、今さっき配線が復活し、戦員の無事を確認出来るようになったのだ。しかし……
「何故よりによってレオとウルのいる南軍が……!?」
一際光の消滅が激しい。それも青い点が秒単位で消えてゆく。
「それに比べ敵の数は三。一人減ったとは言え、こんなに圧倒的な速度で反乱軍が消えてゆくものなのか……?」
「恐らく、敵は南軍が一番戦力として堅いと知っていたのでしょう。だからそこに、それを上回る戦力を送った……。反乱軍の何者かが政府にそれらの情報を密告していたと考えれば、信じ難い話でもありません。」
横で見ていた隊員の一人が、口を開いた。
それを聞いて儂はますます頭を悩ませる。
「うむ……それはあまり考えたくなかったのじゃが……。儂が見る目を誤ったという事か? しかし一体誰が――」
『援軍用意。』
グロが珍しく焦ったように“思念”で語りかける。儂は空を仰いで唸った。
ここはまだ、援軍を送れるような状況では無い。儂が行けば一番早いのだろうが、そうなると本拠地内がまた不安定になる。
儂はちらりと尻目で≪C・M≫を見た。
「おぉっ?」
目を見開く。北軍が敵を倒したようだ。その辺り一帯、赤い点が綺麗さっぱりと無くなっていた。
北軍というと――キラやハク達か。
「そうじゃ、ハクを送ろう!」
『ハク…………!?』
儂が手を叩いてそう言うと、グロが少し身じろぎした。
「……何か問題でもあるのか?」
グロがこんなに反応するなんて、何かあるのだろうか? 少し不安になって聞いてみたが、グロは『いや……』と言葉を濁す。
そして儂がハクに連絡を送り終え、来た道を戻っていると後ろで音も無く歩いていた彼女自ら『ジャッカル』と話しかけてきた。儂をこの名で呼ぶのはグロだけである。
『我等も早急に南へ向かおう。』
その言葉にただならぬ空気を感じ取り、儂は重く頷いた。
そしてここだけの話、グロとこんなに話したのは久々であったので少し……いや、かなり嬉しかった。
- Re: ☆星の子☆ 祝! 100話突破記念〜短編3本立て〜 ( No.552 )
- 日時: 2013/02/10 21:24
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
こんばんは。無事受験合格しました^^
本当は今回、レオ達のほう書くつもりだったんですが、先にこっちを書いてバレンタインの番外編と同時に南の方を更新しよう! と^^
間に合うか不安ですが……
楽しんで読んでいただければ幸いです♪
それと、最新話の106話は92話>>469とちょっと繋がってますので、お暇がある方はもう一回読んでみてくれればなぁと思います(*´∀`*)
きっと一人称が誰なのか分かる筈!!
ではノシ
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.553 )
- 日時: 2014/01/04 19:40
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: nEqByxTs)
- 参照: 最新話107話の前にお読み下さい。
番外編「少年と少女と約束」
(――「キラさんは、バレンタインデーという行事をご存知ですか?」――)
全てはこのピアの一言から始まった。そのため私は丸一日もかけてお菓子を作り、今こうして人気(ひとけ)の無い応接間で、ある人物を待っている。
掌で大切に包み込んだピンクの包装紙から香る甘い匂いを嗅いで、私は一人虚しく溜息をついた。少しの緊張と、それ以上の気恥ずかしさが胸の中で疼く。
……やっぱり帰ろうかな。
夜になるとよくここで彼が読書をする事は知っていた。何度かその姿を見かけたことがあったからだ。しかし必ずしも彼が今日ここへ来るとは限らないし、“バレンタイン”という話を耳にしてお菓子を作ってみたのも、私の単なる気まぐれなのだ。
「そう、単なる気まぐれよ……。」
そう呟いて大きく欠伸をする。時計を見ると既に12時を過ぎていた。
もう帰ろう。
諦めて柔らかいソファから腰を上げた、その時。不意に扉の開く音がして私に声がかかった。
「――おや、先客ですか。」
「ハ、ハク……!」
心臓が跳ね上がる。
「隣に座っても?」
温和な笑みを浮かべた彼がそう聞いたので、私は動揺しながらも必死に頷いた。そして自分自身も少し端の方に寄って再び腰を下ろす。
ち、近い……!
すぐ隣にハクの手が、顔が、体がある。そう考えるだけで自分の顔が、真っ赤な林檎のように火照ったのが分かった。
そんな私の気は知らずに、ハクが不思議そうに首を傾げる。
「しかし珍しいですね、何故キラがここに? それに先程から気になっていたのですが、この甘い匂いは……?」
「あっ、そうだった!」
緊張の余り当初の目的を忘れかけていた。
私はハクの方に向き直ってピンクの小包をおずおずと差し出す。
「あ、あのね、地球では二月に“バレンタインデー”っていう日があって、自分の好きな――じゃなくて、自分が日頃感謝している人に、お菓子を渡すの!
それピアから聞いて、もう五月になっちゃうけどお菓子作りするのも良いかな、って……。」
「それでこれを僕に?」
「う、うん……。一番失敗が無いっていうクッキーを作ったんだけど、何故だか上手く焼けなくて。それ、六回目なの。まだちょっと焦げているけど……。」
無意識のうちに早口になり、余計な事まで喋ってしまった。
そんな私からクッキーを受け取ったハクは優しく微笑む。
「ありがとうございます。丁度糖分を取りたかったのですよ。」
そう言って慣れた手つきでリボンを解いた。香ばしい香りと共に、褐色の良い焼き菓子が現れる。
その一つをつまむと、ハクは何の躊躇いも無く口へ放り込んだ。私は彼がそれを黙々と咀嚼する姿を、緊張の面持ちでじっと見つめる。
――やっぱりまだクッキー黒かったような……味見したときは美味しかったけどハクの舌に合わなかったらどうしよう……。
そんな思考の輪廻から逃げ出せずに頭を悩ませていると、突然ハクが手を止めた。
「ご馳走様でした。とても美味しかったです。」
「本当!? 良かったぁ……ってもう食べちゃったの?」
「えぇ、お腹が空いていたので。また作ってください。」
「うん!」
私は破顔した。と同時に心の中でほっと胸を撫で下ろす。
気に入ってくれたみたい。また作ってあげようっと。
先程のハクの言葉を思い出すと、自然と笑みが零れる。が、彼に気付かれないよう必死に噛み殺した。
「……」
「……」
沈黙が続く。
ハクは別に気にならないようだが、私の方は何か会話を続けないと色々な意味で心臓が破裂しそうだ。
何か話題を……。そう考えていると、ハクの持っている本が目に付いた。
「それ……何の本? よくここで読んでいるわよね。」
「あぁ、勉強ですよ。」
言いながらさりげなく本の表紙を隠すのが見えた。
「勉強? もしかして、学校へ行きたいの?」
「…………逆にキラは、学校へ通いたいと思ったことはありますか? 例えば、あの有名な『銀河の学校』とか。」
「うーん……」
聞き返されたので、私は困って首を捻る。少なくともそんな感情を抱いた記憶は、あまり無かった。
その代わりに幼い頃の事を思い出し、辛くなる。
その微妙な表情の起伏を感じ取ったハクが、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「……どうしました?」
「あ……ううん。ちょっと小さかった頃思い出して。」
「キラの幼い頃、ですか。」
ハクが少し興味を持ったようだ。
――困ったなぁ。
私は苦笑する。本当は誰にも言わないつもりだったんだけどハクなら良いかなぁ……。
「ちょっと長くなるけど」と前置きをして、ハクが頷いたのを確認すると私はぽつりぽつりと語り始めた。
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.554 )
- 日時: 2013/02/14 20:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: 最新話107話の前にお読み下さい。
「あのね、私妹が居たの。私は昔から運動とか大好きでよく外駆け回っていたんだけど、妹は打って変わって大人しくて。それこそ読書とかが大好きな妹だったんだ。……あ、名前はユラって言うの。そのユラが、よく学校行きたい、って言っていた事を思い出して。」
「あの、こんな事を聞くのは何ですが……他界されたのですか?」
「うん……もう七年くらい前の話かな。妹とは、趣味こそ違ったけれどとっても仲良しだったから、その時は何日も食事が喉を通らないくらい、ショックだったわ……。」
その頃を思い出し、楽しかった記憶とこの世に絶望した日々が入り混ざって走馬灯のように私の脳内を駆け巡った。
すると次は目尻が熱くなり視界が歪んできたので、私は目をしばたかす。泣き顔は、見られたくなかった。
「……死因は?」
ハクが聞き辛そうに問う。
思い出す。
あの血塗られた日の事を。目の前で音も無く消滅した大切な家族を。政府に強い憎悪の感情を抱いた事を。また、一瞬だけ見えた、妹を殺した奴の後ろ姿を。そして……
その仇を討つため、反乱軍に入隊する事を決意した、忘れられない満月の夜を。
様々な感情が込み上げてきたが、私は一言簡潔に言う。
「政府の人間に殺されたわ。」
ハクが隣で息を呑んだ。
私は続ける。
「私の目の前で、喉を掻っ切られた……確か短剣だったと思うんだけど、肝心な敵の顔を見てないの。」
「もしかして反乱軍に入った理由も……。」
「うん、そいつにこの手で復讐するため。
――――ってこんな暗い話はもうやめよ!」
これ以上話すと自分を見失いそうで怖い。
私は無理に笑顔を作り、明るく言った。ハクはまだ何か聞きたげだったが、諦めたように口を噤み寂しく微笑んだ。
私は再びハクの手にある本に目を止める。
何故だか先程からハクは、その本を隠すように後ろに手を回していた。
「ところでさ……さっき話逸らされたけど、その本なぁに?」
「え、えっと、これは……」
ハクが目を逸らした。苦笑いを浮かべながら、さりげなく本を私の目に見えない位置へと遠ざける。
……怪しい!
私は不敵な笑みを浮かべ、本へ手を伸ばした。ハクが素早く避ける。
「逃がさないわよっ!」
そう言って私はそれを掴みにかかった。
ハクは必死に逃げるが、私の方が身体能力は上。結果、数秒後にはその本は私の手にあった。
私は獲物を狩るような目つきでその表紙をさっと確認する。
驚いて声が漏れた。
「――――心理学?」
「あまり見ないで下さい……。」
ハクが珍しく頬を赤らめる。
しかし私は可笑しさに笑いを堪えながらも、ぱらぱらとページを捲った。
と、何やら本の右端に折り目がついているページを発見する。
どれどれ……。
私は一番端にある、大きなフォント文字で書かれた題目を読み上げた。
「えーっと……『人は笑顔に騙される!? 良い人を演じたいなら笑顔は必須!』……
あはは、何これ! まるでハクじゃない!!」
ついに我慢が限界を超えた私はお腹をかかえ笑い転げた。笑ってしまうと止まらないもので、涙まで溢れてくる。
一方ハクはと言うと、私の言葉に一瞬身を硬くした。そして少し不自然な笑いを浮かべ「ご冗談はよしてください」と力なく言う。後になって考えると、あの時のハクはいつもより大分おかしかったが、私は私で笑い続けていたので別段気にならなかった。
それからしばらく経ってようやく落ち着きを取り戻した私は、少しハクに申し訳なくなり本を返した。
ソファに腰を下ろす
そんな私達を、不意に満月が顔を覗き明るい月光で照らした。窓から差し込む幻想的な月明かりを眺め、私は先程の会話を思い出す。
無意識のうちに、私は言葉を紡いでいた。
「――ハクは……反乱軍に入った理由、あるの?」
「僕、ですか。」
ハクは予想すらしなかった質問に、一瞬言葉を詰まらせる。
しかし次に妖艶な笑みを浮かべ、私に優しく囁いた。
「また機会があったら、教えますよ。――二人きりの時に、ね。」
その瞬間私の心臓が騒がしく鐘を打ち鳴らした。鼓動がうるさい。心臓が破裂しそうだった。
頬を紅潮させ口をパクパクしていると、そんな私を見かねたようにハクが忍び笑いを漏らした。腰を曲げ、クツクツと楽しそうに笑っている。
「ひ、酷い! からかったのね!」と言うと「先程のお返しですよ」と返された。確かにその通りだから文句も言えない。
そしてしばらく膨れっ面をしていた私は、「でも――」と声色を明るくする。
「戦争が終わったら、ちゃんと話してね。約束よ。」
そう言って私は右手の小指を、ハクの前に差し出した。
ハクは複雑な表情をして一瞬戸惑う。が、諦めたようにふっと笑い、自分の小指を私の小指に絡めた。
胸の辺りが温かくなり、私は幸せな気分になる。
すると私は思い出したようにまた、「あっ、それと……」と付け加え、少し強く言った。
「戦争に勝ったら、一緒にまた普通の、幸せな生活を送ろうね。これも絶対よ!」
それを聞いたハクは、いつもの微笑とは違う反応を示した。勿論笑みなのだが、泣き笑いのような……それでいて何処か寂寥感の漂う、そんな笑み。
何だか不安になった私が心配して顔を覗き込むと、ハクは今にも消えそうな優しい笑みを浮かべ頷いた。
「――――そうですね。」
この後、いつの間にかお互い眠ってしまい、起きた時には私の頭はハクの膝の上にあった。
つまり彼に膝枕されていたのだが……これはまた別の話。
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.555 )
- 日時: 2013/02/14 20:15
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
- 参照: 番外編を読み終わった後にお読み下さい。
17章 107話「笑みの裏」
南軍 空中 レオ――
双子の顔が悔しげに歪む。それが落下していくのをしばらく呆然と眺める俺の中で、激しい憎悪の感情が沸き起こってくるのを感じた。
振り返る。
目に映るのは、変わらない笑みで俺を見つめる幼い少年だけ。
拳を振り上げる。
今の俺には敵か味方かなんて関係なかった。ウルを刺した。戦う理由はこれだけで充分だ。
地を蹴る。加速する。
そして俺の拳が仮面のような作った笑みに届く、その寸前。
まるで無機質のように感情が読み取れない彼の瞳が形を変えた。ただ微笑んでいる奴の目ではない、笑みの中に今まで潜んでいた悪魔が、姿を現した瞬間だった。
「シャドー。」
何の起伏も感じられない、冷たい声が異様に響く。
そして唐突に黒い影が俺の前を掠めたかと思うと、何処までも真っ黒な獣が大きく口を開け俺に牙を剥いた。
咄嗟に体を退け反らし、その一瞬出来た隙に俺は間を取る。
遅れて心臓が思い出したように早鐘を打ち鳴らし始めた。嫌な汗が額を伝う。
――長年の勘で何とか回避したが……今のはヤバかったな。少し遅れていたら、拳ごともげ食われていたところだった。ちょっと冷静さに欠けたか?
そんな心情を悟られないよう、俺は不敵に笑い歯を見せた。
「はっ、お前の犬だったのか。随分イカした真似してくれるんだな?」
「えぇ、僕の力を具現化して作った、言わば使い魔です。よく出来ているでしょう?」
ハクは意図の取れない微笑を顔に貼り付けたまま、答える。横で大人しく控えている“シャドー”と呼ばれた漆黒の獣の喉元を優しく撫でるその姿からは、有り余るような余裕を感じ取れた。
俺は声を低くして問う。
「……何かの悪い冗談とかじゃ、無いんだな?」
「全て真実ですよ。」
「……何故寝返った?」
「寝返り? 嫌だなぁ。」
乾いた笑い声が響いた。少し前まではとても親しみを覚えたその声が、今では聞くだけで不快感を持たずにはいられなかった。
「寝返りなんて一度もしていませんよ。僕は最初から、君達の敵だったんです。いつばれるかヒヤヒヤしましたが、反乱軍の皆さんが鈍いので助かりました。」
「ね?」と小首を傾げ、俺を嘲笑うかのように笑みを浮かべる。
その瞳は何処までも深く、暗くて――あぁ、本当にこいつは俺達の仲間じゃないんだな。その真実を痛感させるには充分だった。
――じゃあ殴られても文句は言えねえよなぁ?
沸々と俺の中で燃え上がる怒りを押し込めるように、きつく拳を握り締める。感情に身を任せてはならない。周りを見失ってはならない。
それでいて、ハクをぶっ飛ばす!!
「おいハク。そいつはもうお前と戦う準備が出来たようだが、俺はどうすれば良い?」
執事服に身を纏ったジオが少し声を荒げ問う。敵をハクに取られた事が気に食わないのだろうか。
ハクは「では他の南軍の相手を――」と周りを見回すと、困ったように眉間に皺を寄せた。
「おやおや……貴方以外の戦員は全て、もう戦えないようですよ?」
言いながら下を見る。つられて俺も視線を落とす。
そこで数十人の戦員と、少し離れたところで横たわるウルを見つけた。皆が皆重傷を負っていて、他の助けを待っている。しかしそこにいる戦員は、最初の数の半分も満たしていなかった。
絶えず火の粉が舞い散る夜空を見つめる。心臓が鷲掴みにされたような錯覚を覚えるが、いい加減この感情にも慣れてしまった。
「シャドーには今朝、餌を多めにあげたというのに……使い魔は力の制御が出来ないのが難点ですね。」
大袈裟に溜息をついては、妙に哀愁を帯びた声色でハクは語る。
「しかし……一匹しか残らなかったのは残念です。烏合の衆も侮ってはいけないようだ。」
そう言うとハクは、右手を“シャドー”と呼ばれた黒い犬の頭に乗せた。すると漆黒の犬は『影』となり、ハクの右手から彼へと吸い込まれていく。
刹那、圧倒的な力の奔流が俺を襲った。
台風かと見間違うほどの、強風。それに紛れ流れ込む、絶対的な力。
異様な光景だった。
年端も行かない少年が柔らかい笑みを浮かべ、誰をも畏怖させる異常な威圧感を放っている。俺は一瞬自分の目を疑った。
俺は推測する。きっとハクは反乱軍に乗り込むにあたって、この異様な力を隠すため三匹の使い魔に自分の力を授けた。その内二匹は南軍の激闘により討伐したので、残った一匹に授けた自分の元の力を、今再び併合したのだろう。
――一匹でこの変わり様だ。三匹とも融合していたら……末恐ろしい奴だな。
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.556 )
- 日時: 2019/10/17 08:31
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: 番外編を読み終わった後にお読み下さい。
そんな彼が、不意に目を止めた。俺を通り過ぎ、遠く後ろを見ているようだ。
――何だ?
後ろを振り向きたい衝動に駆られるが、敵に背を見せてはならない。
何となく嫌な予感がする俺は、逸る焦燥を抑え言う。
「早く始めようぜ? 俺は今、お前ら二人をぶん殴りたくてうずうずしてんだ!」
「――ジオ、彼は任せます。」
「……あ゛?」
「どうやら僕にお客様のようだ。」
ハクは笑いかける。
俺にではない、俺を通り過ぎた、もっと後ろに――――
まさか――!?
耐え切れず、振り返る。目に映ったのは、今にも泣き出しそうな表情で俺らを見つめる。か細い女。赤髪が風になびき、時折彼女の顔に影を作った。
「…………ハク? 本当に、ハクなの……?」
ほとんど放心状態のようなキラの呟きが、胸に刺さる。
よりによって、何でキラがここに……!?
俺自身も動揺していたのかもしれない。掛ける言葉も見つからず、指一本も動かせず、ただその映像を客観的に見ていることしか出来なかった。
するとハクは、その隙にキラのすぐ目の前に降り立つ。そして彼女の耳に唇を近づかせると、そっと囁いた。
「だから、北軍を離れないでと言ったでしょう……?」
「――――っ!」
少し遅れて、キラは飛び退く。怒りと、悲しみと、けれどどうしようもない愛しさを映す彼女の瞳が歪んだ。
「本当にハクが、ウルを刺したの……?」
「そうです。」
何の揺るぎも無く、ハクはそう言い放つ。
それを聞いたキラの瞳が潤んだ。同時に手に持った大鎌を、覚悟を決めたようにしっかりと握り直すのが見える。
次には金色の瞳に女戦士としての決意を燃やし、残忍な笑みを浮かべる幼い少年を強く見据えた。
「面白そうだしちょっと観戦するか」とジオが後ろでぼやくのが聞こえる。
「私達は、もう味方じゃない……! 手加減はしないわよ。」
「手加減?」
ハクが首を傾げ可笑しげに笑う。
「駄目ですよ、キラ。そんな生ぬるい事言っちゃ。」
そう言うと地を蹴って、一瞬の間にハクはキラとの距離を縮めた。キラが息を呑んだ。
そんな彼女の、丁度心臓の部分に人差し指を置いて、ハクはどこか冷たさのある声色で言う。
「どうせ二人きりになったら、わざと負けて僕を逃がすのでしょう?
僕には聞こえますよ、貴方の声が。だって一番長い時間、共に居た仲ですからね――」
我に返ったキラが、乱暴に大鎌を振った。しかし動きが遅すぎるし、動作にムラがある。大きな黒い鎌は、虚しく空(くう)を切るだけだった。
「おっと、危ない。でもそれじゃあまだ足りません。」
酷く動揺し荒い息を吐くキラと再び間を置いた少年が、妖しげに微笑んだ。
体中に悪寒が走る。
やめろ、それ以上何も言うな! 何か、何かが壊れる……!
そんな俺の願いも虚しく、ハクは口を開く。
そして次の瞬間、俺は聞いた。
彼女の何かが、決定的に崩壊する音を――――。
「教えましょう。貴方の妹は、僕がこの手で殺しました。
キラ……貴方の本当の仇は、この僕です。」
- Re: ☆星の子☆ 最新話うp! ( No.557 )
- 日時: 2013/02/16 15:41
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
こんにちはー^^
頑張りましたよ、本編&番外編同時更新……流石にきつかったです。もう絶対しない。(笑)
本編は先週の日曜くらいにあがって、番外編を書き始めて4日……バレンタインの準備もあるしこういう時に試験勉強って重なる物でして(苦笑) 徹夜覚悟で頑張りました。
だけどこうして14日に無事うpできて、嬉しき事限りなしです。
ちょっと本気で疲れたので、丸一週間執筆放棄します(`・ω・´)(こらw
話を変えて、小説の個人感想(?)を言うと……
キラハクが好きすぎるっ!!><
この1週間ちょっと、二人を書きすぎて自分の小説キャラ愛が酷い事になっております(笑)
ハクを裏切り者にしたからこそ、この二人をより一層応援したいのかなぁ〜、なんて(*´ω`*)
番外編とか、書きながら一人でニヤニヤしていました∀
そうそう、番外編のページ数が実は凄い事になっていて、番外編用の一サイズ小さいノートがまたあるのですが、そのノートで11ページ半も書いてしまいました? 4日間でよくこれ書いたな!(汗) 文字数にすると4000字ちょっとです。誰か自分を褒め称えt(黙れ
最初に本編書いて、最後にいきなり『キラの妹が殺された設定』を付け加えてしまった物ですから、番外編にそれを食い込ませるのに苦労しました;
楽しんで読んでくださると嬉しいです!
楽しく読める内容でもないですがww
頑張ってキラとハクをどうにかします。
ではーノシ
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.558 )
- 日時: 2013/02/19 19:28
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: OHW7LcLj)
こんばんは〜
紹介文を直すべく、最初から読み直していたのですが、なかなか時間がとれず、ついに暴挙に出てしまいました。
....最後から読んでます(ぉぃ!)
あ、最新の番外編と最新話はご指示の通りに順番通りに読んでます。
この2話読んだだけでも、熱くなれますねぇ!
これから遡って、ハクがどれだけ空たちにとって大切な存在だったかが明らかになってくるのが実に楽しみです!!
あと、お茶会、素晴らしいです。ムマいい味出してますっ
それと、合格おめでとうございます〜!!!
それじゃ、また〜!
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.559 )
- 日時: 2013/02/26 20:45
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: jhXfiZTU)
@書き述べるさん
こんばんは^^ 返信遅れてしまいました、ごめんなさい><
最後から読みたい気持ちはよく分かります!(笑)
私もAsStory少しずつ読み進めていっているんですが、次は卒業の準備で忙しくて;
まぁ読み方は人それぞれですので、自分の楽なように読んでいって下さい♪(笑)
はい、最新話のような熱さをこれからも出していければと思います(`・ω・´)
それでいてお茶会のようなまったりした雰囲気も同時に出せるよう頑張ります!(笑)
合格しましたああ、ありがとうございます(*´∀`*)
またいらして下さいね^^
私も近々、書き述べるさんの方へお邪魔しますので!(もしかしたら卒業後になるかも……?;
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.560 )
- 日時: 2013/03/10 05:50
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: KZXdVVzS)
こんばんは〜。
星の子のスレ読んでいて気になった点がありましたので、ちょっと書き込ませていただきますね〜。
今、No0番のコメ欄に作品のインデックスを記載されていらっしゃいますが、そこのページのリンクの張り方について下記のようにしてみてはいかがでしょうか。
(現在)>>532>>533>>534
(案)>>532-534
こうすると、複数ページでも1ページにまとめて表示されるので読み落しがなくなり、読み手も書き手も幸せになれるはずです。。。。
星の子、特に長い作品である上、一話が複数ページになることが増えていらっしゃるので上記のリンクの書き方は、効果が大きいかと思います。
どうかご一考のほどを。
リンクの書き方、既にご存知であえて今の書き方にしていらっしゃるのであれば、わたくしめの差し出がましい行い、弁解の余地もありませぬ。。先に謝っておきます。。(スミマセン)
それでは、失礼いたします。。。
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.561 )
- 日時: 2013/03/10 10:06
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: z5ML5wzR)
@書き述べるさん
なるほど!
是非そうさせていただきます(*´∀`*)
また気がついた点あれば言ってください^^
ありがとうございました♪
- *大切なお知らせ* ( No.562 )
- 日時: 2013/03/10 11:11
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: z5ML5wzR)
- 参照: http://id30.fm-p.jp/354/pandmix/
「☆星の子☆」のキャラ絵を描いてくださっているPANDA。さんが、キャラ絵専用のHPを作ってくださいました!
参照に貼っておいたので、是非見に行ってくださいね♪
素敵なキャラ絵が目白押しです!!
(追伸)
最初のページにも貼っておきました^^
- 読者の皆様へ ( No.563 )
- 日時: 2013/03/22 15:14
- 名前: PANDA。 (ID: PU7uEkRW)
- 参照: http://id30.fm-p.jp/354/pandmix/
皆様、おひさしぶりです。pandaと申します。
朱雀さんの方からも報告がありましたが改めて私からも
この場をかりて報告をさせていただきます。
春休みのおかげで自分の時間がとれるようになったので
念願のホームページをつくりました。前々から考えていたこと
だったので、実現できて私としてもとても嬉しいです。
まぁ・・早くしろよ・・って話ですね(笑)
ちらちらと覗けていただければ飛んで喜びます。
コメントがあった日には全身全霊で奉公します。
不束者ですがどうぞよろしくお願いします。
p.s
私はハクキラ押しです。たまに癒しの空光・・・
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.564 )
- 日時: 2013/03/22 15:26
- 名前: PANDA。 (ID: PU7uEkRW)
107話読みました。
ここがキラのふんばりどころなんでしょうか・・・
私もいま呆然としています。orz
でも、彼を正してあげれるのは彼女と仲間しか
いないと思います。
朱雀さん、二人を幸せにしてほしいです・・・・ww
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.565 )
- 日時: 2013/04/01 16:20
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: z5ML5wzR)
@PANDA。さん
ハクを正すためにキラと私とで全力を尽くす次第でございます(`・ω・´)
どう丸め込もうか全然形になってないけど!!←
まぁでも、キラハクは書けば書くほど好きになるので、バッドエンドは無いと思います。多分……(笑)
コメントありがとうございました^^
お互い執筆と絵描き、頑張りましょうねーっ
〜どーでも良い最近の朱雀の私情〜
高校から愛知で寮生活になるなので、その準備に毎日追われています。
春休みなのに、春休みなのにっ……!!
本当はウォークマンに溜まっていた曲沢山入れたり、まだ読んでいない小説に手をつけたりする筈だったんですが(遠い目
そして今、最後に残った私物に全く手がつかず、こうして現実逃避していたり。小説も全然書けてません(泣) 前の更新からはや1ヶ月過ぎてしまった?
愛知行ったら部活動や家事や勉強で毎日もっと忙しくなるんだろうなー。
パソコン持っていけないのに、果たしてiPhoneだけでやっていけるんだろうか。小説も今までどおり更新できるかとても不安……;
まぁその時はその時で、最善を尽くすまでですね!
皆さん、これからも温かく朱雀を見守ってくださーい♪←
ではノシ
(追伸)
愛知に引っ越すのは4月4日です^^
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.566 )
- 日時: 2013/05/05 11:44
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: iXLvOGMO)
17章 108話「夢魔」
東軍 夢の中 リン――
「だから、反乱軍の黒駒は――ハクよ。」
空気が凍りついた。
俺は何も言えず、その言葉だけが延々と俺の脳内で駆け巡る。
まさか……奴が?
ハクは自分が反乱軍は入る前からいて、反乱軍の面々とも非常に仲がよかった。それに自分も『銀河の警官』に所属していた身だが、見かけたことなど一度も無い。
――最高執行部隊だったからか……?
目の前で菓子に手を伸ばすムマという女も、話は聞いたことがあったがそれはあくまでも噂で、実際に見たのは今日が初めてだ。トルは……何度か研究室に用があって訪ねた事があるので面識はあった。が、勿論研究室以外の場所で会ったのは先程の洞窟が初めてである。つまり最高執行部隊専用の、アジトのような所があるのだろう。
――しかし、ハクは俺よりもずっと幼い。すると、物心つく前からそこに所属していたという可能性も……。
悪寒が背筋を這う。嫌な汗が吹き出た。
――ハクは……確か北軍だったな。というとキラやピア達と一緒か。
(キラや他の人達は大丈夫なの……!?)
俺の思考に呼応するかのように、不意に脳髄から声がした。空の心の叫びだ。生まれながらの“サイコメトラー”という特性が、無意識の内に周囲の声をキャッチしてしまったようである。
キラ、か……。
俺は妙な不安を覚える。彼女は空と同じくらいに素直で純粋だ。それ故心に、言わば『鍵』が掛かっていないので、よく心の声を耳にしやすい。無意識の内に赤裸々な内容を聞かされる俺の気持ちにもなってほしいものだ。
キラが奴に抱く恋慕の感情は、少し前から気付いていた。言動を見ても充分分かったが――やはり決定打はキラの心の言葉を聞いてからだろう。口を開けばハクの話ばかり(と言っても心の奥で、だが)……その位彼女は純真無垢なのだ。
そんなキラが、果たして敵となったハクとまともに戦えるであろうか?
結果は見えている。
レオやウルなど数々の戦闘の場数を経た奴等ならまだしも、彼女はまだ十七の少女なのだ。情に流されるな、と言うなんてどうかしている。
一刻も早くそちらへ向かわなければ……!
俺が口を開いたのと、空が立ち上がったのはほぼ同時だった。
「行こう。」
「行かなきゃ……!」
顔を見合わせると、空の真剣な表情が窺えた。知らぬ間に随分と成長したようだ。その瞳には一抹の不安の色も無く、ただ純粋に仲間を助けたいと言う熱意が宿っている。
「ムマ。」
俺は菓子を頬張る女に向き直り、名を呼ぶ。それだけなのに何故だかムマは過剰に反応し、体を硬直させ少し上ずった声で「な、何かしら?」と答えた。
俺は簡潔に、しかし力強く言う。
「ここから出してくれないか。」
「……駄目よ。」
ムマは不服そうな顔をして、冷たく言い放った。
「私はこの戦争のことなんてどうでも良いけど、あんた達が無事だと痛い目見るの。分かるでしょう? 上は甘くないの。」
「でもっ、私達の仲間が今大変なの……!」
「……この世界は私の支配化よ。いくらあんたが出たいと願っても、私がそうはさせないわ。
――ねぇ分かってる? 私達、敵同士なのよっ!」
先程まで一緒にお茶をしていた奴の言葉か?
俺はそう突っ込もうとしたが、それは遮られた。刹那、ムマの瞳が妖しげに赤く輝いたかと思うと、白く光る鋭い槍が突如現れ空を目掛け飛んできたのだ。
咄嗟に地を蹴って距離を縮める。
左手でしっかり空を抱き寄せこしに下げた鞘から太刀を引き抜いた俺は、それを薙ぎ払った。
間一髪、鈍い金属音が鳴り響き巨大な槍は両断される。
俺は空を庇う形で地面へ背を強く打ちつけたが、空が無傷だという事が想像以上の安堵を俺にもたらし、不思議と痛みは感じなかった。ただ――怒りが沸々と静かに湧き起こり、俺の胸奥で青い炎が燃え上がる。
俺はムマを睨みつけた。
「お前……何故こんな真似を?」
「何でって――……っ。」
俺の気迫に圧倒されたのか、ムマは言葉を紡ぐことが出来ず俯いた。隣で空が「私は大丈夫だから、ほら、怪我とかしていないし……」と必死に俺を落ち着かせようとするのだが、俺の怒りは静まるどころか、寧ろ何も言わずに黙り込んでいるムマに再び矛先を向ける。
「黙っていないで何か言ったらどうなんだ?」
思った以上に冷ややかな声が響いた。
ムマが肩を震わす。
そして次の瞬間、彼女は勢いよく顔を上げると声を大にして叫んだ。
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.567 )
- 日時: 2013/05/05 11:45
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: iXLvOGMO)
「私だって、私だって一人は寂しいのよっ!!」
沈黙が流れる。
俺も空も掛ける言葉が見つからず、呆然とその場に立ち尽くした。
ムマは耳まで顔を火照らせ大きな瞳に涙を溜める。そして小さく嗚咽を漏らすと、しゃくりあげながら語り始めた。
「……っ、私は、こんな変な能力のせいでっ、ずっと友達が出来なかった……がっ、学生の頃はずっと一人で、孤独で……だけど、そんな時、私の力を見込んで政府の上の奴等が、『銀河の警官』に勧誘してきた……そこでならっ、友達も沢山出来ると思って、入ったのに……とっ、特別だからって最高執行部隊に入れられてっ、決まった部屋しか出歩く事は許されなかった……。だからっ、こっこんな風に普通の子達とお茶して喋ったのが嬉しくてっ……ただそれだけなの! 私は何も悪くなんか、ないのぉ……。」
ムマは両手で顔を覆うと、その場に座りこんで泣き始める。
まるで赤子のように声を上げなくムマの背を、空が優しくさすった。俺もムマの叫びを聞いて、胸が締め付けられた。……少しキツく糾弾しすぎただろうか。
つまり、ムマは友達を作りたかっただけなのかもしれない。だから俺たちの足止めをしたのだ。
本当の仲間が欲しい。普通の友達と平凡な日常を送りたい。
それは以前の俺も感じていた事だった。ナツやヒナとチームを組んで動くようになってからは渇望しなくなったが、俺もサイコメトラーという人の心を読む能力を持つので、周囲の人間は警戒からか気味の悪さからか近づこうとしなかった。
――でも今は。
すぐ隣に信頼出来る友がいる。彼等もまた、俺を必要としてくれる。理解してくれる心優しい奴だって沢山いるんだ……!
「ムマ、さっきは悪かった。」
俺の唇が自然と動く。
「…………?」
「俺も俗に言うサイコメトラー的な能力を持っているからな……友達は中々出来なかった。他人の心を読めたって良いことは何も無かったし、俺は人間不信になりかけていた。
――だがお前も、もう既にいるんだろう? 仲間が。」
「え。」
ムマが泣きはらした瞳を見開き、俺を不思議そうに眺めた。
――どうやら分かっていないらしい。
俺は再び言葉を紡ぐ。
「俺は『銀河の警官』に入って、ナツやヒナと出会った。同じ志を持ち同じ目標を持つ者――それは“仲間”なんじゃないのか?」
「で、でも私は、何か理由があって入った訳じゃ……」
「今の俺には空や他の反乱軍もいる。勿論それぞれ反乱軍に入った理由は異なるが、自分が今出来る事を精一杯やっている。それに助けられる奴も沢山いるんだ。」7
「なっ、何が言いたいのよ……!」
「お前の行動も、誰かの為にやっているんだろう? それはお前達の黒幕だったり、他の最高執行部隊の奴等だったり……お前の行動は決して良い事とは言えないが、それがその誰かの力になっているんだ。お前は力を貸す、借りた奴はお前の居場所を作る。そしてそこには同じような境遇の奴等もいる……。お前には充分仲間がいると、俺は思うが。」
不安そうに事の成り行きを見守っていた空が愁眉を開いた。唇で弧を描き、ムマを後押しするように必死に会釈する。
その時、俺たちを囲んでいた氷のドームがす、と霧散するように消えた。次々に周りの焼け焦げた木の幹も消え、代わりに青々と生い茂った大木が現れ始める。
「ここは……?」
「光聖君とはぐれた場所だ!!」
俺の問いに空が嬉しそうに答えた。
「良かった、戻ってこれたみたい!」
俺は大きく息を吐き出した。張り詰めていた緊張が解け、体の力が抜ける。空の温かい微笑に安堵していると、先程から決して顔を上げることの無いムマが目に映った。
彼女はフリルのついたスカートをぎゅっと握り締め、声を絞り上げる。
「っか、感謝しなさいよね……! 無事に、出してあげたんだからっ。」
「うん、ありがとうムマ!」
破顔した空に背を向けて、腕にうさぎのぬいぐるみを大切に抱え込んだムマは続ける。
「私は政府塔へ帰るわ。あのバカ――ヒナの顔も、ちょっと見たくなったし。言っとくけどね、あなた達は命拾いしたのよ? 今度会った時は、滅多打ちにしてあげるわっ!」
「あぁ、また今度な。」
俺が薄い微笑を浮かべ答えると、ムマは生い茂った木々へと進む足を速め俺達の視界から消えようとする。
そんな彼女の背を追うように、空が「私はっ」と声を上げた。
「私はっ、敵じゃなくて友達として、また会いたいな……!」
返事は無かった。
しかし満足げに鼻を鳴らすムマの気配が、森の涼しげな香りと風に乗ってやってきた。
俺と空はしばらく、ムマが消えた木々の隙間をじっと見つめていた。
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.606 )
- 日時: 2013/06/15 00:11
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
こんばんは^^
ここではお久しぶりです、友桃です!
星の子更新されててテンションあがりました!!
ムマかわいいです><v
すっごく親近感わきました。
難しいかもしれないけれど、戦争が終わった後ムマと空ちゃんが友達としてまた会えたらなぁって思います。
てかこれからが大変ですね><!
キラとハクがどうなるのかが気になります。
更新楽しみにしてますね(^^)/
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.613 )
- 日時: 2013/06/18 21:39
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 6.Nua64i)
@友桃さん
お久しぶりです^ ^
コメントありがとうございますっ(*´∀`*)
そうですね、ムマは根はとっても良い子なので、次は必ず良い友達として会えると思います♪
ムマと空が個人的に大好きーv
次の話は、忙しいながらも頑張って書いてます!
でも寄宿舎にインターネット回線が繋がるまでは、当分あげられないなー(′;ω;`)
とにかく、キラとハクが切なすぎて……書くのが辛い(´・_・`)笑
コメントありがとうございます、やる気もらいましたっ!
早いうちに更新出来るよう頑張りますo(`・ω´・+o)
- Re: ☆星の子☆ バレンタイン企画! 本編&番外編同時更新!! ( No.778 )
- 日時: 2013/11/11 21:17
- 名前: (朱雀*@) ◆Z7bFAH4/cw (ID: rMENFEPd)
お久しぶりです(*゚v゚*)
朱雀です、皆さん覚えてますか?(._.)笑
過去スレになっちゃうのが怖いので久しぶりにあげときます♪
ちなみに更新はしばらく待ってください。
こちらも訳あってなかなか筆が進んでないのです。ごめんなさい(>_<)
では時間があればまた来ますねー((´∀`*))
おやすみなさいっ
- Re: ☆星の子☆ ( No.779 )
- 日時: 2019/10/17 08:33
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
17章 109話「赤の女戦士」
南軍 空中 キラVSハク――
ユラはとても優しい子だった。
妹と言うよりも親友のような関係だった私達は、幼い頃からずっと一緒だった。私は体を動かすのが好きだったけれど、姉と打って変わって物静かだったユラはいつの日か本の虫となっていた。だから本で得た知識と、実際に目で見た体験した事を私達は分け合い共有する事によって、より豊富な知識を得ていた。
ある日突然、ユラが「学校へ行きたい」と言い出した。もっと多くの事を学びたかったのだ。しかし家には学校に送るだけのお金が無かった。
「お父さんは家に帰らず働いているのに、どうしてこんなに苦しいの?」
それが妹の口癖であった。
やがてユラはその原因を突き止めた。“政府による”不合理な強制労働、そしてそれに見合わない安い賃金。そう。全ての原因は政府であった。
それを知った日から妹は、人が変わったように動き回った。
幼い身でありながら持ち前の豊富な知識を生かし、大勢の人々を相手に政府を批判する演説を行うと、彼らを引きつれデモも行った。
――妹が殺されたのはそんな日だった。
いつものように遅くに帰ってきた妹を迎え入れようと家の扉を空けた瞬間、私の目の前でそれは散った。皮肉にも鮮やかな火花が舞う中、私を欺くように敵の背中だけが目に映る。
唯一無二の私の理解者。誰よりも大切な妹がいなくなったあの日から、私は――――
復讐のためだけに反乱軍へ入った。
いつの間にかそこが居場所となった。
理解者も増えた、好きな人も出来た。
毎日が充実していた、でも復讐心が消えることは無かった。
その為だけに戦い続けた。
戦って、戦って、戦って。その敵との戦闘に備え、戦って戦って戦って戦って――
でも、私の前に居る敵は誰?
私が彼に武器を振り上げているのは何故?
私の妹を奪ったその日から、ずっと、ずっとずっとずっとずっと、憎み妬み恨みあの血の夜に見た背中だけを追い続けていた自分は――――――
「あ゛あああああぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあぁぁあああああっ!!」
嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だハクがそんな訳無い嘘だ嘘だ、これは悪い夢よそう夢、夢夢? 私はハクが、でも何の為に反乱軍に、好きよ、復讐する為に、ユラの仇を取らなきゃ、そうだ、私はこの星を取り戻す、目の前に居る少年は敵敵敵敵、そう敵だ、だから私がやらなきゃ、戦わなきゃ戦わなきゃ戦わなきゃ――――でも。
――――――――――好きだよ、ハク……。
- Re: ☆星の子☆ ( No.780 )
- 日時: 2019/10/17 08:37
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
南軍 空中 レオVSジオ――
耳を劈くような悲鳴が辺りを包み込んだ。言い知れぬ不安が俺を襲う。
キラ――!?
悪寒が背を這った。目の前の光景はとても信じがたく、悪い夢であって欲しいと心の中の弱い自分が叫ぶ。
「理性を失っているな」
隣でジオが呟いた。俺は素早くジオの方を顧みる。
「心理をぐちゃぐちゃにかき乱すのはハクのいつもの手口だが、あそこまで壊れた奴を見るのは初めてだ」
「お前っ……!」
その嫌に沈着な態度と言葉に怒りが込み上げる。
咄嗟に俺は後先考えず地を蹴った。加速してジオとの距離を縮め、胸ぐらを掴みあげる。
俺は声を低くして唸るように言葉を吐き出した。
「今すぐ二人を止めろ」
執事服に身を包んだ男は何の表情も顔に映さず、無感情な瞳でただ俺を見下ろす。「聞こえねぇのか!?」と叫ぶと深く息を吐き出し彼は言った。
「手遅れだ。もうお前らの声は彼女に届かない」
「なんだと――っ!?」
刹那、突発的な暴風が俺たちを襲った。その圧倒的な威力にジオの服を掴む俺の手が離れ数メートル吹き飛ばされる。
その暴風を生み出して原因は、すぐ近くに居た。
キラの悲鳴が徐々に、獣の雄叫びのような物と化していく。同時に、彼女の体からまぶしい光が放たれる。
――あの光は俺たち『アステリア』の民が変化する時に放つものだ。キラは一体何になろうと――――!?
「獣化だ。」
横で悠長に見物を楽しむいけ好かない男が、好奇心の入り混じった声を上げた。
獣、化……!?
俺はキラを見た。いや、正確には、元は彼女だった怪物を。
金色の、純粋な光を放っていた瞳が、獰猛にギラギラと光っている。皮膚は黄色と茶色の混ざったふさふさの毛並みで覆われており、爪が鋭く伸びていた。唯一そのままである真紅の赤髪が、まるでたてがみの様である。
腰を低くしてキラは唸った。鋭く尖った歯が月光に反射してきらめく。
そこにはもう、華奢で明朗な少女の姿は――無い。
再度、闇夜に咆哮が響き渡った。
ジオがすかさず彼女と距離をとる。
キラは力強く宙を蹴って弾丸のような勢いで加速した。そして腕を振り上げ高く跳躍する。その鍵爪は真っ直ぐとハクの首筋へ向かって――
「やめ――っ」
咄嗟にやめろと言いかけて詰まった。
ハクは敵だ。始末しなければならない対象なのに俺は何を……。
金属同士が擦れる嫌な音で、俺は我に返った。見ると、ハクの小刀がキラの鋭い爪を間一髪で受け止めたようだ。摩擦により火花が散る。
「ふふ、はははははっ」
鉤爪を跳ね返し距離を置いて、ハクは高らかに笑った。
「そう、それだ! もっと僕を楽しませてくれっ!!」
彼の挑発が聞こえたかのように、赤髪の獣は大きく口を開け再度吠える。憤怒と憎悪、そしてどこか切なげな雄叫びが闇夜を劈いた。
全長2mほどあるだろうか、その大きな四肢を持った獣が、今度こそはと鋭い犬歯をぎらつかせ再びハクに跳びかかる。ハクも不敵な笑みを浮かべ、短刀を4つ器用に持って構える。
そして、激しく熾烈な攻防戦が始まった。
動きが早すぎて目で追う事もままならない。しかし、決着はすぐに見えてきた。
「おや」
ジオが目を見開いて意外そうに呟いた。
キラが押している。
持ち前の動きのキレの良さと粘り強さが、獣化して得た速さと強さに充分生かされていた。着実にハクの体力を削ってゆく。既に敵は傷だらけだった。
長い間彼女の中で根を張っていた復讐という名の執念が、優ったのだ。
しかし何故だ?
ハクは一向に余裕の笑みを崩さない。まるで勝利を確信しているかのように。
赤髪の獣は大きく仰け反って再度吠える。
ウガアアアァァァァァッ――――
凄まじいその咆哮は華奢な少年を吹き飛ばした。ぼろぼろになったその体は。抵抗も虚しく宙を舞い地上へ落下していく。獣化したキラもまた、ハクに飛び乗って共に降下する。鋭い鉤爪が彼の白磁のような首筋を捉えた。
キラ、頼んだぞ……! ジオは俺が――!!
俺のまた、全身に力を込めその中にある“光”を具現化させる。そして顕現させた獅子の像を背に纏い、執事姿の男を目掛け跳躍した。男も不敵な笑みを浮かべ、それに呼応するように大気には電流が走り火花を散らす。
そして再び俺とジオが拳を交わす――――その瞬間。
敵の体が、目に見えぬ何かによって遠く吹き飛ばされた。
「なっ……!?」
「――レオ、下がっておれ」
覚えのある、威厳に満ちた思い声が俺を制す。懐かしい匂いがする。
俺は驚いて背後を振り返った。すると左目の縦一文字に伸びる傷がまず目に付き、安堵に思わず俺の体の力が抜ける。
彼は「もう大丈夫じゃ」と愛嬌のあるえくぼを見せて不敵に笑った。
- Re: ☆星の子☆ ※とっても大事なお知らせ※ ( No.781 )
- 日時: 2014/02/01 16:15
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: FX8aUA2f)
お久しぶりです。
昨日約半年ぶりに本編更新しました。
そこで私から、大事なお知らせがあります。最後まで読んでくだされば幸いです。
まず、(朱雀*@).゜.は執筆活動を当分停止しようと思います。
理由は色々ありますがまず一つは、学校に通うため住んでいるとある寮に、インターネットの回線が繋がっていない事。そのため部屋にデスクトップパソコンはあるのですが、小説がまだ投稿出来ない状態です。つまり、夏や冬休みに実家に帰ってきた時しか更新が出来ません。
二つ目は受験勉強です。とある国立大学を受験しようと思っているので、これから一生懸命勉強に励むつもりです。
最後に、最近小説を書くスピードがとても落ちた事。
まず小説ノートを開く回数がとても少なくなりました。一時期学校の行事や部活動でとても忙しくて三、四ヶ月小説をまるで書いておらず、そうだ、と思いいざペンを執ると何故だか無性に苦しくなって、結局話を進めることが出来ませんでした。
つい昨日更新した108話ですが、やっぱり何となく文がぎこちない気がします。ずっと書きたかった話であるのに、自分の満足のいく文章が書けず今ももやもやしたまんまです(..) 筆の進んでいない感じが如実に現れていると思います(苦笑)
さて、この冬休みの間、最近更新した1年間の話を読みました。始めはただチラ見する程度に思っていたのに、読んでみると何だかハマってしまい(笑)自分が書いた小説だというのに時間も忘れ読んでしまいました。
誤字が思った以上にあって(直していません笑)それに少し矛盾している部分も多々ありましたが、それでも我ながら中学生の身でよく書いたなぁとちょっと感心しました。笑
やっぱり文を書くのは好きですし、読んでみたら「☆星の子☆」完結させたいと思う気持ちは強くなる一方です。
この小説を通して、素晴らしい方々とも沢山知り合えましたし、何より、初めてネット上に自分の小説を書きこんで、様々な意見を貰いながら自分の文才を高める機会を下さった小説カキコ様には、本当に感謝しています。
しかし私は執筆活動を停止する事を決意しました。
でも中学1年生から執筆を頑張ってきた、そんな強い思い入れのあるこのスレッドが過去ログに行ってしまうのは非常に残念ですので、定期的に顔は出すつもりでいます。
この小説の更新はもしかしたらもう二度としないかもしれないし、はたまた大学生になったり、成人を迎えた時にひょっこりと戻ってくるかも知れません。
そんなどんな時も温かく私を迎えてくだされば、私はとても幸せです。
今まで本当にありがとうございました。
ではまたノシ
- Re: ☆星の子☆ あげます^ ^ ( No.782 )
- 日時: 2014/04/20 18:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: CqswN94u)
こんばんはー!
お久しぶりです、朱雀です。元気にやってます^ ^
今月でこんな私も高2になりました!
勉強が去年と比にならないくらい忙しい……! 受験勉強も頑張らなきゃだし大変です(-_-)
その分高校生活充実しているけれど♪
でも日曜はやっぱり暇ですね。
雨だし出かける気にもならないこういう日は、久々にペンをとりたくなります。空ちゃんとか光聖君に会いたい……リンさんが書きたいっ
ていうただの独り言です(´∀`;)
また小説書けたらいいなぁ。
ではっ
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.783 )
- 日時: 2014/04/21 20:52
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: KZXdVVzS)
朱雀さんだー!!
お久しぶりです、友桃です。
昨日久しぶりに更新したときになんで朱雀さんが来てることに気付かなかったんでしょう(´;ω;`)
昨日すぐにお声をかけられなかったのは非常に悔しいですが、またお会いできて嬉しいです…!!
星の子また読みたいです(*^^*)
学校の方が忙しそうですが、時間ができたらぜひ! 続きを…!!
またのぞきにきます^^
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.784 )
- 日時: 2014/05/06 20:21
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
@友桃さん
わ〜! お久しぶりです!!
またこうやって覗きに来てくれて本当に嬉しいです^^
ここで会話するのも数年ぶりに感じますね。笑
あれから丁度1年たって、ほんとに時間が流れるのは早いです。私も早く勉強から解放されたい……!泣
友桃さんの小説も顔出しに行きますね♪
これからもあまりINは出来ないけれど、学校生活両立して頑張ります^^
ではーノシ
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.785 )
- 日時: 2014/05/06 20:35
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
あれ、なんか参照数がえぐい事になってる……?
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.786 )
- 日時: 2014/05/17 13:45
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: Vkpu3Lr3)
とあるスレで久方ぶりに朱雀さんをお見かけしたので、ちょっと来てみました。
一時期わけのわからない書き込みで荒れまくってましたが、すっかりきれいになって安心しました。
かなり忙しそうですねぇ(汗)
自分も大学受験を期に、長い間続けていた習い事をやめた記憶があります。。。
ま、でも小説は鉛筆と紙とキャラ愛(最後重要)があればいつでも始められますからねぇ。時間ができたらぜひ戻ってきてください!
なんか参照数、凄まじいですね(笑)。
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.787 )
- 日時: 2014/07/01 11:18
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
@書き述べるさん
わ〜、お久しぶりです!
こうしてカキコで書き述べるさんや他の方とお喋りすると、とても懐かしい気分になりますね^^笑
この凄まじい参照数は、前の悪質な荒らしが唯一残した痕跡なんでしょうか(・ω・`) 何故かこの小説だけ桁外れですよね笑
浪人だけは絶対に嫌なので頑張るしかありません。
いつかまた続き書きに舞い戻ります! その為に、このスレが過去スレになって流されてしまうのだけは阻止せねば笑
そう言う訳で暇があればここに顔は出します♪
これからもよろしくです^^
ではーノシ
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.788 )
- 日時: 2014/10/26 23:35
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: k7pNoPCO)
夜遅くですがあげます(^O^)
休みが欲しいなぁ……笑
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.789 )
- 日時: 2015/03/28 15:32
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
皆さんこんにちは、そしてあけましておめでとうございます!
2015年ですね……受験が近づいてくる嫌あああぁぁ(泣
最近無性に小説書きたいです。勉強ばっかりしているからか…? 無事大学合格したら絶対またここに舞い戻ってきます、約束です><
過去ログにいかないように気をつけなきゃですね^^;
ではまた気が向いたら来まーす♪
皆さんお元気で(^O^)
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.790 )
- 日時: 2015/08/05 16:24
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
皆さん、お久しぶりですー!
といっても一体何人このスレが上がったことに気づいてくれるのだろうか……?笑
あっという間に1学期も終わり、私にとっては受験の天王山である夏休みに突入してしまいました; 日々受験勉強に追われる毎日です(実際そんなに切羽詰まってはないかも?笑
何だかカキコに来るととっても懐かしい感じがしますねえ(遠い目
また皆さんと楽しくお喋りしたいですー><
ってそんな悠長なことも言っていられませんが笑
取り敢えず今は目先の事を精一杯頑張らねば! ですね!!
皆さんも楽しい夏休みを(*´ω`*)
ではーノシ
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.791 )
- 日時: 2015/08/05 18:31
- 名前: 日織 (ID: wgYgxarx)
初めまして。
上がっているこのスレをたまたま見つけ、惹かれ、読んでみました。
朱雀さん、天才ですか!?
私も受験生という身に関わらず(ちなみに私は高校受験ですw)読み進めてしまいました。笑
時間も忘れてしまうほど熱中してしまいました。
しばらく先になってしまうとは思いますが、続き楽しみにしてます
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.792 )
- 日時: 2015/08/05 21:21
- 名前: 書き述べる ◆KJOLUYwg82 (ID: NSxNy3Qq)
超x10 ご無沙汰しております!!
滅多にコメライ来ないのですが、久しぶりに来てみたら、なんと!(驚愕)
そいえば、最新話まで読んでなかったと思いだし(ぉぃ)、ゆらりと読み始めてます。。。
受験ってことは大学受験ですかね〜
大丈夫。。。一般受験なら本当の天王山は冬休みだ!!
だから今は思い切り遊んでしm(やめとけ
何はともあれ、いろいろ頑張ってくださいぃ〜〜!!!(ィィ加減だぁ)
あと、ものすごく暑いので体壊さないようにしてくださいね〜〜〜
じゃ!!
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.793 )
- 日時: 2015/08/06 09:26
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
@日織さん
わわっ、初めましてー!
久々の新しいお客さんだー♪ かなり長かったでしょうに…読んでくれてありがとうございます^^
いやいや、天才だなんてとんでもないです!! むしろ中学の頃に書き始めた小説なので、改めて読むと色々恥ずかしくて顔から火が出そうになります笑
日織さんも受験生なのですね! お互い頑張りましょー^^
更新はまだまだ先の話になりますが、宜しければこれからも覗きに来てください(*´ω`*)
@書き述べるさん
超×100 お久しぶりです!!笑
私も昨日何か月ぶりかにカキコお邪魔しました〜(・ω・`;) 丁度その日書き述べるさんもINするなんて、これは運命以外の何物でもありませんね!←
何てことだ、悪魔の囁きが聞こえる……!?(ガクブル
適度に休憩もはさみながら頑張ります^^
暑い夏に長野は最高ですよ。いぇす避暑地。長野万歳\(^0^)/←
ではでは、また今度♪
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.794 )
- 日時: 2015/12/01 12:48
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: rs6q0PGa)
- 参照: ちょっと修正笑
久々にカキコに来ると懐かしい方々に無性に会いたくなって、あの人まだ小説書いてるのかなーとか、どこかで偶然に名前見かけないかなーとか、記憶の片隅にしまってあった懐かしい方々見たさに、今日は久々に何時間もネット上をふらふらしちゃってました。笑
受験生なのに何してんだ自分。
それで感動したのが。
2,3年前くらいにお喋りしたことある方なんですけど(多分ここの小説にもコメント書いてくれたかな?)中々名のある人で、古参だからまさかお名前を見かけるとは思いもしなかったんですね、うむ。
それがまさかつい最近も小説を書いていらした事にまずびっくりで。
お変わりのない(ていうか寧ろ素晴らしく上達していらっしゃる)その方の文章が目に留まった暁には、それはもう読破するしかない訳で笑
時間も忘れ読み耽っちゃいました笑
言い回しから分かる通り、私がめちゃくちゃ尊敬する人達(数えきれないくらいおります笑)の中の一人です(*´ω`*)
そんなにふかーくお付き合いしたことは残念ながらありませんが。ていうか恐れ多い笑
読んでいて、いちいち感動させられました。
その反面、自分と小説の方向性が全く反対なんだよなーと思ってみたり。きっと一生かけてもあの方が考える小説のような作品は私には生まれてこないだろうな笑 だからこんなに惹かれるのかな^^
あのどことなく暗い闇で、それでも怖いもの見たさに覗きこんじゃうような、そんな独特な作品を書く方です(わかる人いるかな?笑
短編もいいなって思いましたねー。ていうか久々に小説書きたい。拙い文章でもいいから文字に色んな思いをぶちまけて(?)、日々の鬱憤を晴らしたい!
と何だかそういう気分なので気の向くままにここに綴っちゃいましたぁ;
長くなっちゃってごめんなさい、完全に自己満足です笑
ではまた今度ー
- Re: ☆星の子☆ 本編更新。※とっても大事なお知らせ※ ( No.795 )
- 日時: 2016/08/12 10:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
皆さんとってもお久しぶりです!
朱雀です^^
大分報告が遅れちゃいましたが……第一志望大学に合格しましたー!(ワーイ
いつの話だよって感じですね(-ω-;)
結果気にしてくださった方もいたのかなぁ。ずっと顔出せずごめんなさい><
あ、ちなみにバリバリの理系ですーリケジョ☆
だから大学上がってからも文学に全く触れてないんですよ笑 積極的に本でも読まない限り本当に離れて行っちゃうんだろうなぁ。中学の頃は作家さんになりたかった私は何処へ……(遠い目
それで高校生になってから本は全く読まなかったので執筆していたころの文才(あの頃も無いけれど)も0に逆戻りで、星の子はしばらく見て見ぬふりしてたんですけどね(´・ω・`) 合格したらここに舞い戻ってきますって約束しちゃってますね自分。笑
だから……
前のように書けるかわからないし途中で諦めちゃうかもしれないけれど、とりあえず執筆活動始めることにしました!!
あんまり自信はないけれど笑
大学生の特権で夏休み2か月もらっちゃったんで、しかも課題0なんで、適度にサークルしつつ遊びつつバイトしつつ、星の子も平行で進めていきますね^^
そんなわけでよろしくお願いします♪
ではーノシ
- Re: ☆星の子☆ 本編 ( No.796 )
- 日時: 2016/08/12 10:39
- 名前: 織原ひな (ID: Qz56zXDk)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
朱雀さんお帰りなさいなのです!
実は1年くらい前から見させてもらってました
織原ひなっていいます!
素敵な文たちで何度も見させてもらってました
そして大学合格おめでとうなのです
当の本人も来年には大学受験生、がんばらないとです
小説再更新がんばってください!
あといつか機会あればひなの作品の溺死桜ってのにも遊びに来てください!
- Re: ☆星の子☆ 活動再開……!? ( No.797 )
- 日時: 2016/08/13 07:44
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://From iPad@
初めましてー!!!!
前から読ませて頂いてました。
大学合学おめでとうございます!
大学生って言われた凄いなぁ……。
大好きな小説なので、何回も読み返しています( *´艸`)
更新楽しみにしてます。
無理しない程度に頑張って下さい((。´・ω・)。´_ _))
応援してます!
また来ます!(*´▽`*)
byてるてる522
- Re: ☆星の子☆ 活動再開……!? ( No.798 )
- 日時: 2016/08/16 11:16
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
@織原ひなさん
はじめまして!
1年前から読んでくださっていたのですか……感動です(´;ω;`) ありがとうございます><
ひなさんももうちょっとで受験生なんですね。頑張ってください^^
期待に添えられるか分かりませんが、私も執筆頑張ります……笑
時間があれば、ひなさんの小説も覗きに行きますねー!
@てるてる522さん
はじめまして!
嬉しい言葉が沢山……ありがとうございます^^ 何回も読んでいただけると頑張って書いた甲斐がありますね。
のろのろ運転となりますが、これからも遊びに来てください♪
コメントありがとうございました!
- Re: ☆星の子☆ 活動再開……!? ( No.799 )
- 日時: 2017/07/16 18:35
- 名前: ひなた ◆NsLg9LxcnY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=10873
はじめまして^^
更新が1年前なのでいらしてないよなぁとは思いつつ、そろそろ夏休みだと思うので(笑)またいらっしゃることを期待して、あげます。
勝手にあげちゃまずかったらごめんなさい。そしたらコメント消します^^;
- Re: ☆星の子☆ ( No.800 )
- 日時: 2019/06/26 17:26
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
@ひなた様
はじめまして! コメントくださってありがとうございます!
返信が随分遅れてしまって申し訳ないです…; 以後気をつけます(泣
更新の見通しは全くたっていないのですが(ごめんなさい)、それでもスレッドをあげてくれるのは嬉しいことです。ありがとうございます。
よろしければまた遊びに来てくださいね^^
- Re: ☆星の子☆ ( No.801 )
- 日時: 2019/10/14 17:26
- 名前: 管理人 ◆FiOOrlVc7Y (ID: QYM4d7FG)
こんばんは、管理人です。
新板へ移動しましたので、ご確認ください。
よろしくお願いいたします。
- Re: ☆星の子☆ ( No.802 )
- 日時: 2019/10/14 22:17
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
@管理人様
迅速な対応ありがとうございます。お手数おかけしました。
今後もどうぞよろしくお願いします。
- Re: ☆星の子☆ ( No.803 )
- 日時: 2019/10/14 23:15
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
こんばんは!
皆さんはじめまして、またはお久しぶりです。朱雀です。
最後に「☆星の子☆」を更新したのが2014年の1月ですね。大学入学後に執筆再開するといって、結局今まで一話も更新できなかったこと、改めて謝罪します>< 読者様からお帰りなさいと言っていただけたのに、本当に申し訳ないです……。
と、反省はこのぐらいにしておいて。
とある方の影響を受けて、またラボに縛り付けの毎日に疲れて(笑)、先月から「☆星の子☆」の続きを執筆中です。1話分完成したので、近いうちに更新できるかと思います。文章の感じは良くも悪くも5年前と変わりないはずです笑
相変わらず学業は忙しいので気が向いたときにしか空ちゃん達とは向き合えないのですが、それでも月1のペースで更新したいなと思っています……!(頑張ります)
というわけで、今後も「☆星の子☆」をよろしくお願いします^^
追記
携帯で0スレ目を見るとがったがたで非常に見づらかったので、主に目次を大幅変更しました。最近はスマホ画面でカキコを開く方が多い気がして。もしスレ番号など間違いなどあれば教えてくださると助かります。pc上では以前の方が見やすかったのだけれどどうなのだろう……
- Re: ☆星の子☆ ( No.804 )
- 日時: 2019/10/15 00:07
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
こんばんは、友桃です。
朱雀さん&星の子おかえりなさいませ!(*´▽`*)
新板でまたこのお名前が見られてうれしいです。
今少しずつですが最初から読み返していて、空ちゃんと光聖くんにきゅんきゅんしながら楽しませてもらっています。早く最新話まで追いつきたいです。
朱雀さんのペースで更新頑張ってください^^
応援しています。
(追記)
すみません、以前ものすごく失礼なことをしていたことに今気が付きました。
5個前くらい(2017年)にコメントしている「ひなた」っていう人、すみません、私ですm(__)m
当時名前変えてスレ建てしていたので、星の子読みたいなぁと思ってここに来た時に初見のコメントをしてしまっていました、大変失礼いたしましたm(__)m
- Re: ☆星の子☆ ( No.805 )
- 日時: 2019/10/15 13:14
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
@友桃さん
早速コメントありがとうございます! ただいまです(*´∀`*)
しかも、お忙しいでしょうに、星の子読み直してくださってほんとに嬉しいです泣
空ちゃんと光聖君のほわほわな感じは2幕になってからあまり書けてないので(←)、今のうちに楽しんでください笑
ひなた様は友桃さんだったのですね!笑
いえいえ、全然気にしてないです。むしろちょっと安心してます。何しろ返信を約2年放置していたものですから……苦笑 お陰様で過去スレ行きを阻止することが出来ましたm(_ _)m
続き読みたいと思っていて下さって嬉しい限りです。
確かによく見るとトリップが同じですね笑 言われる前に気付きたかった……!(悔しい
更新適度に頑張りますっ
ありがとうございました~♪
- Re: ☆星の子☆ ( No.806 )
- 日時: 2019/10/18 08:47
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
17章 110話「二人の約束と願い」
東軍 密林 空――
私はあたりを見渡した。鬱蒼とした森の中。背の高い木々が聳え立って視界を遮り、光聖君やユキさん、東軍の姿を目視することはできなかったが、戦士達の雄叫びや刃物が擦れ合うような不快な金属音が遠くから聞こえ、時折閃光が見える。その事実がここは未だ戦場なのだと、非情にも私に告げていた。
(――「反乱軍の黒駒は――――――――ハクよ」――)
先程別れた、可愛らしい黒の装束を身に纏った少女の言葉を何度も反芻する。キラや他の仲間を思うと不安が体を駆け巡った。
「走れるか」
隣でリンさんが気遣わしげに見やった。
私は唾をごくりと飲み込み、緊張した面持ちで顎を引く。身につけている靴は反乱軍特製の代物で、踵に金色の翼が取り付けられてある。そのため私は人の身であったが、『アステリア』の民と同程度の速度で走ることができた。
「この森を抜ければ首都『シャイニア』が見える。そこまで向かおう」
言って、リンさんは駆けだした。私も足に力を込め、地を蹴る。
風を切って走る彼の金髪が後ろに流れる。夜空に映えてとても美しい。
私が横に並ぶと、リンさんは淡々と言葉を紡いだ。
「ガル総司令官との連絡が途絶えている……本拠地で大規模な爆発があったことは知っているか? おそらく今はその復旧作業に追われているのだろう。
――こちら側にスパイがいて、政府に内情が漏れているとすると、レオ達率いる南軍に敵戦力も力を注いでいるはずだ。戦闘指揮官らが指示できない状況を考えると、相当厄介な相手らしい。
森を抜けた先に丘がある。『シャイニア』を一望できれば、戦況がわかるはずだ」
「……うん、わかった」
リンさんは元々こちらの住民であったから、この薄暗い森の中でも大体の方角がわかるようであった。迷いなく前を見据えて走る彼の背を追いかける。
光聖君は大丈夫かな……。
もう随分前から会っていないような気がする。悪戯な笑みを浮かべる彼をふと思い出し、胸がぎゅっと痛んだ。
私が急にいなくなって、心配しているだろう。不注意のせいで一人、ムマが操る異空間へ飛ばされたことを思うと、再び後悔の念が押し寄せた。
空、と名を呼びリンさんが立ち止まった。私も歩みを止める。何やら険しい顔で彼が黙り込むので、私もあがる息を押し殺して周りの状況を確認した。
「……静かだね?」
小声で問いかけるとリンさんは首肯した。
先程まで至るところで聞こえていた武器の擦る音や爆発音が、ぱたりと聞こえなくなっていた。宙を仰ぐと、暗闇に無数の火の粉が散りゆくのが見えた。ひやりと汗が首筋を伝う。
――ここ一帯は、決着がついたのかな……。
私の心の声に同調するように、
「そのようだな。……俺の傍を離れるな」
そう言ってリンさんは腰に下げてあった太刀を構え、木々の向こうに鋭い眼差しを向けた。私達の不安を煽るように、ザアァァッと一際強い風が吹き付け枝葉を揺らす。
――と、その奥に影が見えた。
「っ、政府軍か?」
私を守るように背に隠して、リンさんは緊張を滲ませた声で問う。するとおずおずと、彼と同様に剣を構えた甲冑の兵士が前に出た。さらにその後ろから、見慣れた修道着の女性が音もなく姿を現す。
「に、西軍隊長? 何故ここに?」
「――天野さん、戻ってこられたのですね……」
「ユキさん! それに東軍の兵士さんも!」
思わず私は喜びの声をあげてユキさんの元へ駆け寄った。ふ、とリンさんが安堵の息をついて武器を下ろし、鞘にしまった。危険がないことがわかると、ユキさんの後に続きぞろぞろと数十名の兵士が姿を見せた。
「東軍か、無事で何よりだ。俺が西軍を離れてここにいる理由は……長くなるから後で話そう。
ひとまず、敵の討伐ご苦労だったな」
彼が微笑をたたえながらキラリと瞳を光らせ、労いの言葉をかけると、わっと歓声があがった。
私はさっと東軍の面々に目を向け、琥珀色の髪が特徴の彼を探す。しかし、
――光聖君が、いない……。
「迷い星はどこだ?」
聞かれたユキさんは、薄紫のベールが顔を覆うせいで表情がよく見えない。彼女は掌に乗せた水晶を大事に撫でつつ、西方の一点を顧みて憂いを帯びた声色で答えた。
「少年は森の向こうの丘にいます。今頃――――」
「きゃあっ!?」
言い終わる前に、荒々しい突風が辺り一面を吹きさらした。思わずぎゅっと目を瞑り、片手でユキさんの修道服の裾をつかみ、片腕で顔を覆う。足に力を込めて踏みとどまらないと飛ばされそうだった。
この風は一体……!?
風の唸りがやがて消え、私はおそるおそる双眸を開く。荒れた髪を手で整える。何枚か葉が絡まっていて、思わず顔を顰めた。
「リンさん、今のは……」
「迷い星か」
眉間に皺を寄せて彼は呟く。どきり、と心臓を鷲づかみにされたような感覚。胃の中を氷が滑り落ちたような錯覚に襲われる。
他にも何か気付いたのか、リンさんの飴色の瞳が一瞬、狼狽したように揺れた。
それでもなお冷静に西軍隊長である彼はユキさん含め東軍に指示を出す。
「敵はあらかた予想がついている。俺は光聖の援護に向かおう。
ユキ、東軍を引き連れて丘を迂回して首都へ進め。道中負傷者がいたら極力手当するように。この密林にもう政府軍はいないだろうが気をつけろ。空は――」
「わ、私も光聖君の元へ行く!」
思わず彼の言葉を遮って、私は声をあげた。冷淡な眼差しを向けられて一瞬ひるんだが、じっと彼の眼を見つめ返すと、堪忍したようにリンさんは肩を竦めてみせる。小さくため息をついて仕方がないな、と呟いた彼の口の端があがった。
「ユキ、そういうわけだ。空は俺が責任を持って預かろう」
「……承知しました。ご武運を」
リンさんが命ずると、ユキさんは腰を折り曲げてそれに応じた。東軍の兵士達も「はっ」と
背筋を正し敬礼する。
それを合図に私とリンさんは再び駆け出した。
激しい熱量を持って、何者かが光聖君と対峙している。
お願い、無事でいて――――!
――迷いなく彼の元へ駆ける少女の運命を想う。
修道着を纏った妙齢の女は密林がその小さな背中を隠すまでじっと見つめ続けた。
- Re: ☆星の子☆ ( No.807 )
- 日時: 2019/10/19 12:32
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
南軍 空中 キラVSハク――
落下する。身体が重い。
僕は未だ口の端に微笑を乗せて、眼前の獣を見据えた。依然黄水晶のような美しい瞳に、爛々と怒りと殺意を燃やしている。立派な毛並みで覆われた四肢が、僕の細い胴と太腿に乗る。
さらに加速する。鋭い鉤爪が月光に反射してキラリと輝いた。
それは数秒にも満たぬ時間だったろうか。
彼女になら殺されても良いのかも知れない――ふと、そんな馬鹿げた想像をする。そう考える程余裕があるのは、勿論彼女が僕を殺めることなど出来やしないと分かっているからだ。
獣は腕を振り上げる。躊躇なく、僕の首筋を狙って、鋭い爪が振るわれる。
「――――っふふ」
この期に及んで、思わず笑いが漏れた。僕は壊れている。本当にどうしようもなく。
鉤爪が首筋に届いた。皮膚が切れただろうか、ぴりっと鋭い痛みが刺す。
しかし。
その手で復讐できる、彼女を燃やし続けた執念がようやく晴れる、あと少しで、僕の首を掻っ切ることが出来るというのに――それを前にして獣はぴたりと腕を振るうのをやめた。怒りで我を失い獣化したそれは、豹変した顔をくしゃくしゃに歪ませる。燃え盛るような美しい赤が特徴の、彼女の自慢の赤髪がなびく。
――――あぁ、つまらない。
落下する。
地上はすぐそこに迫っていた。さすがの僕も重力には抗えない。このまま地面に身体を強打しては、それこそ命が危うい。
僕は目の前の獣に向かって、冷めた瞳で微笑んだ。
首筋には依然凶器が当てられている。僕は瞬時に左手でその前足首を、右手で獣の肩――にふさふさと生えた毛――を強く掴み、腹筋に力を入れて身体を反転させた。
「ふ――っ!」
二人の影が地面に届く、その瞬間。間一髪で体勢が逆転する。
獣の身体は強く地面に打ち付けられる。
「か、はっ――――」
金色の瞳がかっと見開かれる。犬歯の並んだ大きな口が血を吐いた。鮮血はすぐさま深紅の火の粉となって闇夜に散っていく。
と、眩い光が一瞬獣の身体を包み込んだ。思わず目を細める。
光が収縮して弾け、再び辺りが暗闇で包まれるとそこには、恐ろしい異形の獣ではなくよく見知った少女の姿があった。
僕は馬乗りの姿勢で彼女を見下ろした。目鼻立ちの整った、端麗な美しい女戦士。鍛え抜かれて引き締まったその身体は、歴戦による痣や傷だらけで痛ましい。凜とした眉が今は苦しげに寄せられている。先の衝撃で満身創痍な彼女は、動く気力すら失ったのかぐったりしていた。その上、体力の消耗が激しいであろう半分意識が飛んだ状態での獣化の後だ。無理もない。
静寂の中、どちらのものとも言えない荒い息遣いだけが響いた。
ここには僕とキラしかいない――不思議な高揚感が駆け巡る。
「……決着はつきましたね」
僕は懐から小さな短剣を取り出す。月光に反射してその刀身が鈍く光る。ゆっくりと、彼女に見せつけるようにそれを振りかざした。
もとより、二人の決着はとうの昔に着いている。女戦士が反乱軍に潜伏していた得体の知れない少年に恋慕を抱いた、その時点で彼女の敗北は確定したのだ。
少女の瞼がゆっくりと重く持ち上がり、焦点の定まらない双眸が僕を捉えた。長い睫毛に縁取られた瞳の奥底に、胡散臭い笑みを貼り付けた白髪の幼い少年が映る。
僕は思わず、それをじっと見つめた。
なにもない
君の目に映る僕はこんなに虚無で、疎ましくて、浅ましいのに、どうして――――――
邪念を振り払う。僕の生きる意味。生きる理由。それを与えてくださったのは。
ナイフを持つ手をぐっと強く握り締める。こんなの、幾つも遂行した使命のうちの一つじゃないか。
彼女の澄んだ瞳が湿り気を帯びる。映り込んだ少年の影が揺れ、やがて霧散した。
それでも彼女は何も言わず、ただ曇りのない双眸で僕を見つめる。そこからはらはらと静かに涙がこぼれ落ちた。
常日頃から貼り付けた偽の笑みが崩れるのを感じる。ぎりっ、と歯を軋ませた。
「っ、だからそんな目で、僕を見るな――――!」
自分に向けられるには眩しすぎる、黄水晶のように輝く瞳に向けて、僕は凶器を持った右手を振り下ろした。
生き甲斐が分からない。何のために僕は生きているのだろう。
心底どうでも良かった、他人も、自分も。
あぁ、今すぐ僕とこの星もろとも、消えてなくなればいいのに。
H・F様はそんな僕に生きる理由を与えてくださった。
与えられた使命をこなす。それが僕の、存在意義。
「どうして……抵抗しないんですか」
そう告げる僕の右手は、何故すんでの所で金縛りにあったかのように動かないのだろう。
「僕は貴方の妹を殺したんですよ? そして今も、貴方を手にかけようとしているのに」
これでは先の獣と同じではないか。僕らしくない、みっともない。
…………そもそも僕らしいって何だ? 本当の僕って誰だっけ。
…………わからない。僕には、何もない――――――
身体が急速に熱を失ってゆくのを感じた。手足の感覚が鈍くなる。先の獣に傷つけられた痛みが、今になってじわじわと身体を蝕んでいく。腕がだらりと垂れ、はからずも彼女の眼前に突きつけられたナイフは掌から離れた。それは青々とした柔らかい芝草の上に音もなく落ちる。
キラはおもむろに持ち上げた両腕を、おずおずと僕の身体に回した。僅かに背中が重くなり、そこから人の温もりが伝わってくる。
――温かい。
それは僕には不釣り合いな感覚だった。
キラは静かに涙を零していた。だって、と絞り上げるように言葉を紡ぐ。
「せ、戦争が終わったら、一緒に、幸せに暮らすって……約束、したから――――」
がん、と頭部を酷く硬くて重い鈍器で殴られたかのような衝撃。ははっ、と乾いた笑い声が漏れた。
「まさかあれ……本気にしていたんですか?」
精一杯嫌みたらしく告げようとしたものの僕の言葉には覇気がない。
燃え盛るような深紅の長髪が眩しい。煌めく金色の瞳に射貫かれる。時折見せる彼女のあどけない笑顔が不意に脳裏をよぎった。
君はまるで太陽のようだ。
そんな君の隣にいたら、僕はきっとその正しさに耐えきれず焼け焦げてしまう。
「――――僕は……貴方の傍にいるのに相応しくありません」
思わずそう呟くと、背に回された腕に力が込められ、ぐっと前へ引き寄せられた。軽い抵抗も男性顔負けの怪力の前では虚しく、なされるがまま、小柄な僕は彼女の腕の中にすっぽりと収まる。耳のすぐ近くでトクトクと規則正しい鼓動が聞こえる。
震える声でキラは応えた。
「それでも……私は、これからもハクと一緒にいたい……っ。もちろん、ハクがやったことは許せないし、まだ怒ってる。
だから……これが、私が与える貴方への罰。
――――ハク……一緒に、生きよう?」
そこには僕のどんな弁明も聞き入れない、断固とした決意があった。
……かなわないな。
もしかして、先に負けていたのはこの僕だったのだろうか。
ようやく今、気がついてしまった。僕は君を手にかけられない。それでいて、僕の罪を、君に罰して欲しかったのだと。他でもないキラの手で、僕はこの世に別れを告げたかったのだと。なんて我が儘で滑稽な願いだろう。
ふと横を見やると、漆を塗ったように黒い犬が少し離れて大人しく座り、同様に漆黒の瞳を僕に向けていた。H・F様から与えられた力、使い魔でいて僕の半身。
シャドー、と声をかけるより先に、その犬はクゥンと喉を鳴らして闇夜に紛れるように消えた。
――――あれ……。
長い呪縛から解放されたかのように身体から力が抜ける。意識が朦朧とし景色が霞んでゆく中、素直に身体を彼女に預けた。瞼が重くなる。
僕は引きずり込まれるように深い眠りへと意識を手放した。
- Re: ☆星の子☆ ( No.808 )
- 日時: 2019/10/16 21:41
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12639
こんばんは~!
実に5年ぶり!? 久しぶりの投稿です笑
いやー、我ながらめちゃくちゃ続き気になる場面で執筆ストップしてましたね……苦笑
今回はリハビリ執筆ということで、どの場面から書くかとても悩みました。選択肢としては空リン、キラハク、レオジオの3つですね(カプ名じゃないよ!?笑)。本当は空リンをもっと引っ張りたかったんですが、久しぶりに小説書くし、次いつ筆がのるかわからないから自分が書きたい場面を書こうと。笑
というわけでいつもの如く一話分なのに前半後半で一人称変えて(毎度分かりにくくてごめんなさい……)、後半メインでちょっと力を入れてみました。と言ってもほんと、文章書くの久々すぎて、こんな感じでいいんだっけ?泣
誤字脱字、アドバイスなどあれば教えてください。
投稿久々すぎてめっちゃ緊張しました。自信がないです……笑
キラハクのこの場面は、めちゃくちゃ書きたかったシーンの一つです。しかしながらこの後ハクをどう動かすか、は当時の自分は全く考えてなくて、今回プロット構成しながらとても悩みました……。ハクはもっともっと悪く書きたかったんですよ、本当は。笑 この小説で今までにない悪役キャラ! ていう路線の筈だったんですけどね。でも実際にハクになりきって書いてみたら、キラをこれ以上傷つけることはできませんでした(/_;) キラハク尊いよ……好きだよ……←
というわけで二人のお話はここで終了です。
次はついに光聖君の登場です! 準主役なのにかなり前から出番がなくて本当に申し訳ない!
なるべくかっこよく描写するね……(多分無理
久しぶりなので長くなりました。笑 ではではー。
追記
職業柄、数字や記号が全角だととてもむずむずしますね……あと’りんさん’と打つとリン酸と変換されます(泣)
- Re: ☆星の子☆ ( No.809 )
- 日時: 2019/10/17 18:23
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12639
登場人物紹介>>1-2を書き換えましたv
久しぶりに見るとナツリンヒナ三人のネタバレがもう、すごかった……苦笑
反乱軍と政府軍の子達もまとめたのでよかったら覗いてみてくださいー
(自分のためのまとめだったりもする笑)
あと本編の気になる部分何カ所か、ちょこっと修正しました。
主に瞳の色を間違えて描写してたりだとか、大切な部分の誤字脱字とか、ほんと細かいことです^^;
初期の話を訂正したい感はあるんだけど、もう何から手をつければ良いのやら\(^o^)/ て感じなので、内容はそのままです笑
ではー。
- Re: ☆星の子☆ 最新110話更新(10/16) ( No.810 )
- 日時: 2019/10/19 01:00
- 名前: ひょんくん (ID: xVgmFESq)
執筆活動頑張ってください!
- Re: ☆星の子☆ 最新110話更新(10/16) ( No.811 )
- 日時: 2019/10/19 23:10
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: E616B4Au)
こんばんは^^ 友桃です。
星の子が更新再開すると聞いて最初から読み返していたのですが、「1幕」最後まで読み終わりました!
今の興奮をうまく文字にできるか自信がありませんが、キリがいいのでコメントを残させていただきます^^
1幕、とてもおもしろかったです。
実は読み終わるまでにかかった時間はそんなでもなくて、1幕前半を空ちゃん&光聖くんにきゅんきゅんしながら一気読みして、1幕後半を銀河の警官3人組&光聖くんのかっこよさにどきどきしながら一気読みして……1回読み始めたら止まらないという感じでした……!
前半を読み終わった直後だったらたぶん2人がいかに可愛かったかを盛大に語ったと思うのですが(笑)、
今1幕後半を読み終えた直後なので頭の中3人組&光聖くんでいっぱいです笑
とくに好きなのがナツとリンです。
ナツは読んでるうちに、あれ、この子そんなに悪い子ではなさそう……?ってなっていって、途中ヒナとの(リーダーであることを軽視されてる)やりとりを見て、一気に好きになってしまいました。なんというか、人間味を感じたというか……笑 ナツ、がんばれ……!ってなったのかも。でも、1幕最後は哀しかったですH・F容赦ないな……(;´Д`) ナツがいなくなった後、残り2人がどういう行動に出るのか、2幕も今から楽しみにしてます。
リンは!! ひたすらかっこよかった好き!!(興奮) 話し方とか雰囲気とか好きです、他のメンバーに対する態度も好き。
なんかナツはなっちゃんって呼びたい感じで、リンはリン様とでも呼びたい感じだなと思いました。すみません、よくわからないです、2人とも好きです。
書く前からちょっと予想してましたが、ごめんなさい、すごい長文になっちゃいました^^;
また続き読みに来ます。
更新頑張ってください!
- Re: ☆星の子☆ 最新110話更新(10/16) ( No.812 )
- 日時: 2019/10/20 16:49
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@ひょんくんさん
はじめまして~!
ありがとうございます、頑張りますっ
@友桃さん
読み直してくださってありがとうございます……っ!
長文感想とっても嬉しいですv
警官3人は私もお気に入りです。なるべくキャラクターの個性が被らないようにしたかったので友桃さんのコメント読んで安心しました! そうなんです、ナツは悪い子じゃないんです。人間味って言葉とてもしっくりきますね笑 多分立場が違ったら3人の中で光聖や空と一番仲良くなれたはず……。残念ながらナツの出番は一幕で殆ど終わりですが、ちゃんと印象に残せたようで良かった^^
リン様! いいですねとても!!笑 今度からそう呼ぼうかしら。←
リンは私の推しなので余計描写に補正がかかってるやも知れませんね……苦笑 準主役の座を奪われそうな光聖君に少し同情してしまいます^^;
それとリンは特に、必死に過去の更新分読んで口調や雰囲気を崩さないよう努めているキャラの一人です。笑 一気読みしてくださる読者様に違和感を与えることなく書き上げたいものです><
お二人とも、コメントありがとうございました♪
- Re: ☆星の子☆ 最新110話更新(10/16) ( No.813 )
- 日時: 2019/10/21 20:22
- 名前: ひょんくん (ID: Uj9lR0Ik)
はじめまして!ひょんくんです。
友達からの紹介で☆星の子☆最新話まで読ませていただきました。
感想としては、
朱雀さんがとても文章能力に長けている方なんだと作中を通してしみじみと感じました。
特に第2幕からは戦闘描写が多く含まれており、とても楽しみながら読むことができました。
そのせいか続きが気になり、夜遅くまで読んでは寝落ちしてしまう日も多々ありました。
申し訳ございません…
キラ、ハクこの2人とてもいいと思います!
"僕の罪を君に罰して欲しかった"
ん〜いい!この2人良き!
後、個人的にガルの能力気になります。
☆星の子☆どんな形で最後を迎えるのか楽しみです!
朱雀さんのペースでいいので、執筆活動頑張ってください!
続き待ってます!
- Re: ☆星の子☆ 最新110話更新(10/16) ( No.814 )
- 日時: 2019/10/23 08:50
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@ひょんくんさん
感想ありがとうございますっ!
最新話まで読んでくださって感無量です(;_;) 最初からだと長かったですよね^^;
友達の紹介って誰なんだろう、気になるなぁ。笑
私には勿体ない言葉の数々、ありがとうございます><
第2幕は確かに戦闘シーン盛り沢山ですね、楽しんで読んでいただけて幸いです。
しかも寝る直前まで……とても嬉しいですv でも夜更かしは良くないですよー^^笑
最新話の感想待ってました!笑
キラハク気にいってもらえて良かった~。ひょんくんさんの感想読むと、二人をあの結末にして正解だったなぁと改めて思えます。
ガルは何と言っても総司令官ですからね、きっと誰よりも強いはず。楽しみにしててください^^
また遊びに来て下さい。コメントありがとうございました!
- Re: ☆星の子☆ 111話「背中合わせの二人」 ( No.815 )
- 日時: 2019/10/29 15:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
17章 111話「背中合わせの二人」
東軍 密林 リン、空――
ひしめき叢がる樹林の中を、ただひたすら走る。しばらく進んだその先で眩い光が一閃し、木々の隙間から漏れたそれは辺りを一瞬照らした。さらに前方から風に乗ってかすかに硝煙の臭いが鼻をついた。乾いた銃声が何度も聞こえる。
そろそろ丘が見える頃だろうか。静かに、ゆっくりと速度を落とす。
この先で熾烈な戦いを繰り広げていることが予想された。一人は迷い星だろう、そしてその敵は……。
唐突に密林が終わりを迎え、視界が開けた。
光聖君、と少年の名前を小さく叫んだ空の口元を塞ぐ。息を殺して、草木に身を潜め状況を確認した。
――何だあれは。
刀が燃えている。そう錯覚した。
初めに目に飛び込んできたのは、迷い星が手にする太刀と盾だった。煌々と眩い光を放つそれらは、戦いに赴く前に俺が見たものとは全く姿形が異なっていた。ピアぐらい小柄な少女であれば易々と隠れてしまえるほど巨大で重々しい盾。握った鍔から伸びる刀身には火の粉が舞っている。少年は強い炎を瞳に宿し、大きな盾を軽々と持ち上げて跳躍する。
光聖が刀を向けるその先には、紛う事なき、明るい青の警官服に身を包んだかつての同僚がいた。目深に被った帽子と胸元には、この国の象徴である羽を腕一杯広げた金色の鳥の刺繍が施されている。膝丈のスカートが風にはためいた。彼女は息を切らしつつも、手に持った拳銃をまっすぐ迷い星へと向ける。
「うあああぁっ!」
「っ、しつこい!」
パァン、と何度目かの銃声が響く。銃口から飛び出た弾丸は少年の琥珀色の髪をかすめ、夜空に吸い込まれる。女警官は振り下ろされた剣先を危うく躱し、後退して距離を取った。
互いに挑戦的な瞳でぎらぎらと睨み合うこと数秒、
「……隠れてないで出てきなさいよ」
と冷めた声色で、森に向かって彼女は言葉を吐き捨てた。長年共に過ごした俺の気配を敏感に感じ取ったようだ。俺は息を一つ吐いて空に告げる。
「空、ここは危険だ。なるべく奴らと距離を置いて身を隠せ」
「――……うん、そうする。リンさん、光聖君をお願い……」
ここは流れ弾がいつ飛んでくるかわからない。元は均等に刈られた柔らかい緑で覆われていたろうに、今は所々焼け焦げ煙がくすぶっている芝生をちらりと見た。
そんな俺の心配を感じ取ったのか、空は神妙な面持ちで素直に頷いた。夜空を塗り広げたような黒目の奥が不安げに揺れる。「すぐ戻る」と言い残し、俺はふわりと軽い所作で腰を上げた。目にかかった少し長めの前髪を手の甲で払いのける。
左腰の鞘に右手をかけ、俺は数歩前へ出た。鬱蒼とした森の中から姿を現した俺を見て、迷い星があっと声をあげた。
女警官は表情一つ変えずに、冷たい眼差しをこちらに向ける。俺も彼女から目を逸らさず、静かに腰から長い太刀を引き抜いた。月光に反射して刃が妖しげに光る。
「……ヒナ」
彼女の名を呼ぶ。信条が違えて敵対関係になってしまった、かつての同僚。願わくはこんな形で再会したくなかった――それは彼女も同意であろう。しかし、俺たちの関係は劇的に変化してしまった。唐突に訪れたナツの死によって。
張り詰めた空気が支配する中、ヒナは口の端を歪めて刺々しく言葉を発した。
「随分久しぶりね、リン。悪いけどここから先は通さないわよ」
相変わらずの高圧的な態度に、思わず心の中で苦笑する。
「ならば、一戦交えるまでだな」
「二対一ね、上等よ。そこの星クズの相手には飽き飽きしていたところなの」
ヒナは少し吊りあがった瞳の奥を爛々と輝かせ、赤い唇をちろりと舐めた。その様はまるで蛇のようである。彼女が空いた左手でホルスターにぶら下がった拳銃を取り出すと、光聖が呻いた。
「うげっ……お前二丁同時に使えるの!? あの威力の弾がまだ飛んでくるのか……」
先の勝負でだいぶ疲弊しているらしく、かなり参っているようだ。
確かに二挺拳銃は攻撃に特化しており見た目こそ派手だが、身を守る術がない。加えて銃を撃った時の反動が激しいため、最悪身体が反動に耐えきれず後ろへ吹っ飛び、弾は狙いを大きく外れることになりかねない。そう、なりかねないのだが。
「もたもたしていると死ぬわ、よっ!」
ヒナは後ろへ跳躍し、両腕を伸ばした。二つの銃口はそれぞれ俺と光聖へしっかり照準を定めている。
流石に何十年も警官をやっていれば、銃の使い方なんぞお手の物か。
「やばっ」
「迷い星、背を借りるぞ!」
ヒナは躊躇なくその引き金を引いた。少年の返事を聞くより前に、俺は素早く身を翻しその後ろへ隠れる。
乾いた銃声が聞こえたと同時に凄まじい速さで弾が横切り、そのままの勢いで後ろに聳えた木の幹を貫通した。あまりの威力に銃弾数発を盾で防いだ光聖の両足が、踏みとどまれず後ろへ後退する。光聖は歯を食いしばり、煌々と輝く盾でヒナの猛攻を耐え抜いた。
迷い星の首筋に汗が流れ落ちた。後ろを見やり、俺をじとっと睨めつける。
「リン……! 僕を盾に使うなっ」
「とっさのことでな、すまない」
瞳を光らせて口先だけで謝る。光聖から機敏に離れると、刀を水平に構え、こちらの様子を伺っているヒナに向かって踏み込んだ。彼女は相変わらず不適な笑みを浮かべ、薙ぎ払われた刀を右手の銃身で受け止める。不快な激突音が爆ぜ火花が飛び散った。互いに睨み合う。
「ふん、無断で警官の仕事を投げ出して政府に歯向かうなんて、良いご身分ね?」
「お前こそ、いい加減目を覚ましたらどうだ? 政府のやっていることは民衆のためにならない。今から謀反するのならば、これ以上傷つけないが」
「はっ――だれが!」
ヒナは絶妙な力加減で刀を跳ね返し、素早く距離をとる。敵との間合いを詰めなければ。俺は再び二太刀目へと踏み込む。銃撃戦になれば刀で応戦する我々は不利である。
俺の意図を読み取ったのか、左手にいた迷い星がすかさず前へ跳躍していた。太刀の切っ先を右後方へと大きく振って脇の構えを取ると、呼応するように剣先から火の粉が迸る。
「はぁっ!」
光聖が刀を斜に切り上げた。その軌跡を火の粉が舞う。寸前、ヒナは歴戦の勘で身を翻す。銃口が素早く光聖に向けられ、引き金に指が置かれる。俺はそのヒナの頭上へと高く跳んで両手に持った武器を、刀身を撓らせるほどの剛力で振り下ろす。
「ふっ!」
「ちっ――!」
振り下ろされた太刀が拳銃へ届いた。その衝撃で武器はヒナの手から離れ、落下する。飛び出た弾丸の軌道は僅かに逸れ、滑空して後ろの密林へ吸い込まれた。
ぞくり、と戦慄が走る。齢13の、国の戦争に巻き込まれた少女の身が心配になる。
――ヒナの持つ銃は威力があまりに強く、射程距離が長い。一刻も早く、けりをつけなければ。
瞬時に間合いをとったヒナが懐から短剣を取り出した。眼前に迫った光聖の強堅な刃と鍔迫り合う。彼女のめらめらと燃える瞳が、俺の視線の先を捉えた。
「ふうん、そういうこと」
口の端を吊り上げて、楽しそうに笑った。
「あの中学生を次は戦争に巻き込んじゃったのね? 光聖」
「っ!?」 (空が近くにいる……!?)
動揺して光聖が目を丸くする。と同時に、生まれつきのサイコメトラー能力が働いて思考がすっと頭へ流れ込んできた。
居場所を勘づかれたか……。
彼女への警戒心をもう一段階引き上げる。ヒナとは共に警官をしていたが、チーム内で実行役を任されていた彼女は誰よりも判断が早く、良くも悪くも効率的に仕事をこなす奴だった。H・Fへの盲目的な忠誠心からくる、使命遂行のための血も涙もない作戦の数々。
闇雲にヒナへ武器を振るうより、敵の出方を伺うべきか……?
「ここにいるってことは……ムマの奴、あんな小娘一人捕まえられなかったってわけ?
――ふん、まぁいいわ。私がここでまとめて消してあげるから」
「させるか!」
光聖が刀を押し切る。その反動で後ろへ飛び退いた彼女の身体は既に傷だらけであった。切れた頬や手足から絶えず茜色の火の粉が舞い散っている。それでも彼女は不敵な笑みを崩さない。
「こんな、二人が一大事の時に、お前達のリーダーは何やってんだよ……っ」
光聖が小さく毒づいた。
迷い星にとっては何でもない一言だったろう、がその瞬間、ヒナの纏う空気がより不安定で危ういものに変わったのを俺は見逃さなかった。す、と彼女から一切の表情が消える。冷徹な、暗い瞳を光聖に向けたまま、ヒナは首を傾げた。耳元で切り揃えられた茶髪が揺れる。
「――――は? ……あんた、何も知らないの?」
彼女の地雷を踏んだ、そう直感した。
ナツが絶命したことを今の今まで伝えられずにいた自分を呪う。
「 ―― 」
刹那、金属同士の衝突音が耳を劈いた。
今度こそ本物の殺意を目に宿して弾丸のような速さで襲いかかってきたヒナの短剣を、光聖が咄嗟に受け止めている。ヒナが憎々しげに吐き捨てた。
「あの時、あんたが大人しくしていれば……っ、ナツは、死ななかった――!」
「な……!?」 (ナツが死んだ……? 殺されたのか?)
光聖が絶句する。彼女の眼光に気圧され後退した少年の足がほつれ、その場に尻餅をついた。
何やってるんだあの馬鹿……!
空の安全が第一ではあるが迷い星の窮地も捨て置けず、光聖へ駆け寄ろうとして――左に踏み出した足を、止める。
敵は眼前の滑稽な少年を苦渋の表情で見下ろしていた。どこか哀愁を漂わせる彼女の姿に、3人集まった最後の夜が脳裏をよぎり心臓が痛む。
運良く訪れた間隙を縫って、光聖は瞬時に体勢を立て直し彼女から距離をとる。ゆらり、と緩慢な動作でヒナが顔をあげた。その、無理矢理に貼り付けた狂気的な笑みに思わず背筋が凍る。
ヒナの相手は迷い星に任せて俺は空を――
考えた俺の右後方の、深く茂った暗い森に向けて、ヒナは素早く黒光りする凶器を向けた。彼女が小さく何やら呟くと同時に、銃口の奥から眩い光が漏れ出すのを感じる。
刹那、ヒュンと耳元で風が吹き抜けた。光の残像を視界の端で捉える。
「なっ――――」
振り返ると一帯の木々が真一文字に焼き払われていた。
俺も光聖も、何が起きたのかまるで理解できない。目に止まらぬ速さであの拳銃から光線が噴出し、樹木を燃やしたというのか。
背の高い木々が犇めいていたはずのそこから、恐怖に慄く小柄な少女の姿が見える。パチパチと燃えて緑が灰になってゆく中、少女はへなへなとその場に座り込んだ。
「――っふふ、見つけた」
かつての同僚がにんまりと意地の悪い笑みを浮かべる――が、瞳は全く笑っていなかった。彼女の全身から沸き立つ殺意を感じ取る。迷いなくその銃口が空に向く。
「っ、光聖!」
「わかってる!!」
応えて、少年が太刀を大きく振りかぶり
「――――しね」
敵が引き金に手をかけ
俺は。
- Re: ☆星の子☆ 112話「守りたかったもの」(1) ( No.816 )
- 日時: 2019/11/04 17:45
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
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17章 112話「守りたかったもの」
東軍 シャイニア 空、光聖、リンVSヒナ――
随分長い距離を走ったので胸が苦しい。酸素を必死に肺に送りたい衝動を押し殺し、冷静に吸って吐いてを繰り返す。
「ふぅ……」
動悸も落ち着いたところで、私は近くの大木に背を預けた。湿っていてひんやりと冷たい。
リンさんに言われた通り、私は光聖君達から少し距離を置いて森の中で息を潜めていた。といっても土地勘がないのであまり遠くへ行くと迷子になってしまうし、東軍とほんの少し離れたがためにムマと夢の中に閉じ込められたのはつい先程のことである。私はヒナさんの攻撃が届かない辺りで様子を伺っていた。
二人とも、大丈夫かな……
高く生い茂った樹木に囲まれているために、3人の様子はちっとも見えない。もしものために、と私は腰元のバッグをごそごそと漁る。何かしていないと落ち着かなかった。
暗い緑褐色の軍服に肩から提げられた小振りのショルダーバッグ。その中には医療用の道具が入っている。『アステリア』に着いてから僅かの間、私は怪我人への簡単な応急術を学んでいた。しなしながら今頃超絶技巧の戦闘を繰り広げているだろう光聖君とリンさんに、果たしてこれが役に立つかわからない。
「塗り薬に消毒液、痛み止め、包帯……っと」
必要分は揃っていることを確認して私はバッグを漁るのを止め、代わりに左腰のホルダーをそっと手で撫でた。
私が唯一護身用に持つことを許された、小刀。一度も人に向けたことはないし、今だって殺傷する目的で使うつもりは微塵もない。
でも。もし大切な人が酷く傷つけられたら? 私は誰かに向かってこれを使ってしまうの?
そう考えると末恐ろしくてぞっとする。数ヶ月前、光聖君に出会う以前の私は、ありふれた平凡な中学生だった。
「――光聖君も、リンさんも、皆無事でいてほしい。誰一人欠けてほしくないよ……」
呟いた、その時だった。
樹木が悲鳴をあげる音がする。眼前に拡がっていた木々が瞬く間に一刀両断されて、重心を失った幹が燃えながら崩れてゆく。
「――――え」
一瞬の出来事だった。
何の予兆もなく私を匿っていた障害物が目の前から姿を消した。同時に、殺気立った女警官が刺し貫くような鋭い視線をこちらに向けているのが見える。
――ヒナ、さん
声にならない。こんなにあからさまに、燃えるような殺意を向けられたのは初めてだった。
足が震える。いつの間にか座り込んでしまった私を彼女の銃口がしっかり捉えた。
――……いや、私、死ぬの?
「――――しね」
低く、彼女が告げた。
とある映像を、スローモーションで眺めているようだった。
黒光りする拳銃の穴が、画面の向こうの私をじっと見つめる。
大気のありとあらゆる力が見えない引力によって引き寄せられ、小さい銃口に圧縮される。
恐ろしいくらいに燦爛たる光が漏れ出る。
頃合いだろうか、青の女警官が乗せた指に力を込める。
そこから飛び出たのはただの弾丸ではなかった。弾けんばかりに力が濃縮した、朱く燃える火の玉。
木々を切り倒したものと同程度、いや、それ以上の威力で、一直線に飛んでくる。
私はそれを瞠目することしか出来ない。
やけに現実的で、生々しくて、緊迫とした映像――――
あぁ、私死ぬんだ。と、ぼんやりとした頭で考えた。
――――とそこで、視界に鮮やかな金髪が映り、我に返る。
ゆったりとした時間の流れが戻り、瞳に映る景色が急速に色づいてゆく。
「リ、リンさん…………!?」
いつの間にか私の目の前に現れたリンさんの身体が、ぐらり、と傾いた。彼はそのまま近くの樹木に背を預ける。隠すように片腕が腹部へ回された。そこから絶え間なく、瑠璃色の火の粉が舞っている。
急いで駆け寄った。
「――!」
私をかばって……!?
恐らく先の攻撃を直に受けたのだろう、首から胴体にかけて焼け爛れ、酷く負傷している。特に腹部が大きく抉られているのを見て、血の気が引くのを感じた。思わず目を背け、救護バッグに手を伸ばす。
「ひ、酷い傷……! 待って、今手当を――」
「いい」
いつもと変わらない、静かな声色で彼は制した。額に汗が滲んでいて、その眉目秀麗な横顔は苦痛に歪められていた。
「どうして……!? このままだったらリンさん――……っ」
ぐっと喉元から熱いものが込み上げる。これ以上言葉を続けられず、私は唇を噛んだ。
そうこうしている内にも、彼の身体は恐ろしい速さで火の粉へと変わり、夜空に散っていく。
飴色の瞳が私を映す。
「――無事で、よかった」
「なにもよくないっ。リンさん、こんなに怪我してるじゃない……!」
目頭が熱くなる。これ以上彼の痛ましい姿を見ていられなかった。
リンさんは無理して口の端を上げ、軍服の懐から傷だらけの腕で何かを取り出した。それを私に差し出す。
「受け取れ。お前のもの、だ」
「……ペン、ダント?」
楕円形の金縁に、磨き上げられた綺麗な石が埋め込まれている。美しい装飾が施された小振りのそれは、きらきらと碧く光輝を放っていた。その輝きにどこか見覚えがある。ふと育て親の姿が頭をよぎった。
「これっ、お父さんの……! リンさんがどうして……」
天野輝(お父さん)が大切に持っていた、ベニトアイト――濃いブルーと眩い輝きが特徴の宝石だ――のペンダントだった。リンさんは先の質問には答えず、半ば強引に私の手を取って装飾品を手渡した。
「天野輝の形見だ。大事に、持っておけ。……渡すのが遅くなってしまって、すまない」
「っ、なんで……どうして、謝るの……ううん、謝りたいのは私のほう……うっ、ごめんね、リンさん……っ、私が弱くって、役立たずで、だからリンさん、けが、しちゃった……うぅ……っ」
嗚咽が込み上げ、ぽろぽろと大粒の涙が堰を切って溢れ出た。水滴が手元のペンダントを濡らす。その碧い輝きが、舞い散る瑠璃色の火の粉と酷似していて、胸が詰まる。
「リンさんっ、いかないで、お願い、いかないで、いかないでっ……」
リンさんの肉体が、無くなっていく。宙へ、還っていく。
苦しい、胸が痛い、体中が熱い。
涙は止まることを知らず、彼の姿が、流れるような長い金髪が、飴色の瞳が、瑠璃色の火の粉が、朧げに映る。
困ったように眉を寄せたリンさんが手を伸ばし、私の濡れた頬を優しく拭った。ひやりとした感触が伝う。
「空……もう泣くな。迷い星がいるだろう」
「だっ、だって……っ」
彼の体半分は、もう消えた。それなのに、端麗な顔立ちはまだそこにある。
身体中が張り裂けるような痛みに襲われる。肺が圧迫されて息が詰まる。
ついに頬の感覚がなくなった。碧い粉が目の端に映る。
「いやっ、リンさん……っどこにも、いかない、で……――」
綺麗な瞳を細め、彼は呟く。
「――愛とは、愚かなものだ……。故に、人はあらぬ方向へと走り、時に破滅する……。しかし、」
いつか、聞いたことのある台詞だった。出会ったばかりの彼を思い出す。
「だからこそ、儚く美しい――――――」
言って、儚げに笑った。
- Re: ☆星の子☆ 112話「守りたかったもの」(2) ( No.817 )
- 日時: 2019/11/04 17:47
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
顔面蒼白にさせて、目に涙を浮かばせる少女を見やる。
5年前、富士の山頂で拾ったこれを、やっと持ち主に返せる、か……。
不思議と痛みはない。ただ、自分だった肉体が主の元を旅立ってゆくのがわかる。身体が嫌というほど軽くなり、どこへでも飛んでいけるような錯覚を覚える。
最後まで、少女の姿を目に焼き付けておきたかった。顔に損傷がなかったのは不幸中の幸いといえよう。
元より俺は、『銀河の警官』として世界中の迷い星クズを追って、排除してきた。それは天野輝も例外でない。奴が空の義父だと知ってもなお、忘れ形見を今の今まで渡せなかったのは俺の弱さだ。ヒナの逆鱗に触れたのも、くだんの件を伝えられずにいた俺の臆病が招いたことだ。
そんな自分に救いはない。未練もない。
ただ、お前を守れる最後で良かった。それだけだ。
だから、泣かないで笑っていてほしい。無事に空がいるべき場所へ帰ってくれれば、それでいい。……ふ、俺がこの戦争に招いたくせに、我儘なことだな。
最後。ヒナの攻撃を咄嗟に太刀で受けた。凄まじい力の前では抵抗も虚しかったが。
かつての仲間に葬られるなんて、堕ちたものだ。
……このまま俺はどこへ行くだろう。
もし、“あちら”の世界があったのならば……ナツと、会えるだろうか。お人好しのリーダーは、きっと笑って再会を喜ぶに違いない。
そう考えると悪くない気がする。
――天野空、お前と出会って俺は変わったんだろう。
いつの間にか、大切になっていた。命を賭しても守りたいほどに。
この気持ちに敢えて名前をつけるのならば、そう、人は『愛』とよぶのだろうな。
空。
こんな俺を慕ってくれて、頼ってくれて、有り難う。
また会える日を、待っている――――
- Re: ☆星の子☆ 112話更新(11/4) ( No.818 )
- 日時: 2019/11/04 20:27
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
こんばんは、朱雀です。
17章は112話で終わりです。そろそろ最終章かもです。あと20話くらい書けば完結できるかも?
112話は途中から一人称が変わるので、文字数オーバーではないのですが2回に分けて投稿しました; 自分で書いておきながら、ちょっと、展開が辛すぎます……泣
復帰後やたら話が重い気がしますが、特に私の作風が変わったわけではないです>< コメライ板だし明るく書きたいのは山々ですが、今回の話はかなり前の段階から私の中で決定事項でしたので……核心部分なので丁寧に書き上げたかったんですが、自信ありません;
あと私、グロ表現等は読むのも書くのも苦手マンなので、今後もそういう表現はやんわりと包んでいきます。笑 なので星の子も流血表現×で火の粉が舞います。そういう理由です。見た目的には綺麗ですよね笑←
こんなですが今後もお付き合いください。ではまたノシ
- Re: ☆星の子☆ 111話更新(10/29) ( No.819 )
- 日時: 2019/11/04 20:28
- 名前: ひょんくん (ID: xV3zxjLd)
(朱雀*@)さんお久しぶりです!
最近肌寒くなってきましたね。
朝なんか布団から出れず、朝飯抜きが続いちゃってます💦
朱雀さんは朝ちゃんと食べてますか?
朝飯食べなければ力も出ないので、食べる事お勧めします。
ごめんなさい、どうでもいいですね!
最新話読みました!
今日最新話更新されてるかなーて覗いてみたら、丁度更新されてたのでテンション上がりました^_^
いやーここにきて番外編の謎が解けましたね。
空も悪い子です、りんさんすらも手玉に取るなんて…
多分この後、空と光聖くんどっちも死んで天国での話になると思います。
そこで空が、りんさんと光聖くんどっちとるんだ?!て話になってりんさん選びます。
ごめんなさい、嘘です。
でもりんさんがもう出てこないてことが、信じられません!!
これからどうなるんだろう、楽しみです^_^
では、また更新されるの待っています。ノシ
- Re: ☆星の子☆ 112話更新(11/4) ( No.820 )
- 日時: 2019/11/04 20:54
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@ひょんくんさん
こんばんは。コメントありがとうございます!
感想来るのが早くて、びっくりしました。嬉しいですv
朝ご飯はちゃんと食べてます!笑
寒くなりましたし、余計に布団から出たくなくなりますよね……ひょんくん(って呼んで良いでしょうか)もちゃんと起きて栄養摂って下さいね^^笑
番外編、ってもしかして冥界のお話のことですか!? 覚えて下さって嬉しいです、そうですそうなんです。伏線伝わってて良かった~(*^^*)
空ちゃんは、意外とモテモテです。大人になって、魔性の女になったらどうしよう;笑
物語の舞台が次は天国ですか笑 コメント面白すぎて笑いました笑
確かにAnother Storyで書いたら面白そう、かも……? 空には光聖君を選んでほしいですね笑
リンは私の推しなので、今後も何らかの形で登場させたいなぁとは思っています。
感想ありがとうございましたっ!
- Re: ☆星の子☆ 113話「炉心」 ( No.821 )
- 日時: 2019/12/01 23:24
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 113話「炉心」
東軍 シャイニア 光聖、空VSヒナ――
少女を守ったがために。夜空に瑠璃の粉が儚く舞っている。
――リン。貴方、なんて無様なの。
一瞬の出来事に混乱しているであろう光聖は目を剥いたままじっと動かない。悲憤の表情を浮かべたまま、その唇が小さく震えた。
「リ、ン……」
充血した目で私を睨む。
「お前……っ、どうしてそんなに平然としていられるんだ!? リンを――」
「――殺したけど。なによ? 可笑しいのはあんたの方じゃない。私達、さっきまで刃を交えていたのよ。お互い相応の覚悟があっての事でしょう?
それとも……光聖は私を生かしておくつもりだったわけ?」
「そんなこと…………」
言って少年は口ごもる。
意識的に、私は右肩に触れた。腕があったはずのそこから茜の火の粉が舞っている。
光聖の切っ先が届くより僅かに一瞬、引き金を引いたのが早かった。それでもあの時、私はあの女を殺すことで頭がいっぱいで、光聖の攻撃を避ける余裕なんてなかった。リンは助からずとも、光聖はその刃で敵討ちすることが出来たはず。
――甘いのよ、つくづく。反吐が出るくらい。
傷口は燃えるようにじんじんと痛い。右腕がなくなってしまったのだから当たり前だ。
歯を食いしばって痛みに耐える。それでも致命傷ではない。政府塔へ戻り手当を受ければ傷口は塞がるだろう。
――きっと、ナツとリンは、もっと痛い思いをしたに違いない。
だからこんなの、なんともない。
ふとそう考えると、虚無感がどっと押し寄せてきた。赤くなった目で私を睨み付ける少年を見ても、すすり泣く少女を見ても、先までの燃えるような感情が沸いてこない。
光聖がどう行動に出るか分からないけど……このまま戦闘になれば次は確実に私が不利ね。
武器は左手の短剣だけ。片腕のない状態で振るっても驚異にはならないだろう。まして光聖の持つ不思議な力は予想外だ。あの太刀や盾と渡り合えるとは到底思えない。
勿論、私はここで死ぬ覚悟だって出来ている。H・F様は光聖が政府塔の、最上階に辿り着くことを懸念している。その理由は私には計り知れないけれど――――
『G-270』
不意に脳内から声が響いた。思わず肩をびくりと震わせる。光聖が怪訝そうに眉を顰めた。
私をコードネームで呼び“思念”を送れる人物。どくどくと、無自覚のうちに厭悪が腹の底を渦巻きはじめる。
『戻ってこい。これはH・F様からの命令だ』
(……星クズをこの先へ通してはまずいのでは?)
『黙れ。時は満ちた』
ぶつり、と一方的に言葉は途切れた。大きく息を吐き出して、少年から背を向ける。
「――不服だけど、私は一度政府塔に戻るわ」
「なっ……!? いかせるか!」
「あの女を放っておいていいの? 私を追いかけるよりも、そっちが大切なんじゃない?」
「……っ、卑怯だぞ」
正直、このまま光聖に手負いの私を追いかけられては困る。本来の目的は迷い星クズの足止めだったはず。時は満ちた、なんて言われたけれど、それでも政府塔へは極力近づかせない方が良いだろう。
さめざめと泣き続ける少女を一瞥し、光聖が悔しげに踏みとどまったのを見計らって、私は地を蹴って高く跳躍した。右の肩口が鋭く悲鳴をあげたが気付かぬふりをする。
「ヒナっ」
「光聖、あんたと殺りあうのは楽しかったわ。この先へ進むのなら止めはしない……そこの女が、もっと酷い目にあってもいいのなら、ね」
後方で光聖が何やら吠えているが、もう耳に届かない。双翼を背に広げ、滑るように夜空を飛行する。
私が外道であることは十分自覚している。何が正義で、幼い自分はどうして警官になりたかったのか、何を守りたかったのか――忘れてしまった。それでも。
向かうは政府塔。私が忠誠を誓った、あの場所へ。
☆
「おかえりー。……って、え!? 酷い怪我じゃない!!」
見慣れた扉を片手で押し開けると、耳に障る甲高い声が響いた。派手な黒い装束を身に纏った女は白いウサギを大事に抱え込みながら、珍しく私の負傷を気遣ってこちらに駆けてくる。高く二つに括った赤紫の長髪が揺れた。こちらも憎まれ口が息を吐くように零れ出る。
「もう少し静かにできない? 傷が疼くわ」
「んなっ。せっかくこの私が気にかけてあげてるのよ!? ほんっと、可愛くないわねー」
「結構よ。ムマの手を借りるほどじゃない」
「あっそ!」
女は鼻を鳴らして、ゆったりとした黒いソファに再び腰掛けた。そのままティーカップに手を伸ばして優雅に茶を嗜む。外界の混沌に我関せず、という風なその姿に、勃然と腹が立ってくる。
「――私の心配よりも、自分のことを心配したらどうなの。貴方、あんな小娘一匹捕まえられずに、のうのうと帰ってきたのよね? はぁ……一体どういう神経しているのかしら」
「うっ、それは……」
頬を紅潮させ狼狽える。彼女の大きな瞳が忙しなく宙を彷徨った。
何故こんな使えない女が最高執行部隊に配属され、今も悠々と生きているのだろうか。
――なぜ、殺されたのはムマじゃなく、私でもなく…………ナツ、だったのか。
「……ちっ」
「な、なによぅ! 文句があるなら言いなさいよ!! 私だって、面と向かって舌打ちされたら……けっこう、傷つくんだからねっ」
「もういいわよ。私は上に用があるの」
これ以上生産性のない会話は身体に毒だ。傷口を片手で押さえながら、私は広い部屋の奥を目指した。
「え、この部屋のさらに上って……」
「呼ばれたの、父様から」
「ま、まずはその傷を治しにいったほうがいいんじゃ」
「いいわ。痛くも痒くもないし」
「はぁっ!? さっき傷が疼くって――――」
薄暗い部屋の一角、冷たい床の上に半径1 m程の円が縁取られている。普段は近寄らないその輪に足を踏み入れた途端、暗い紫の光に身体を呑み込まれた。ムマがはっと息を飲む気配がする。
「最上階へ」
一寸の迷いもなく、目的地を呟いた。
軽く瞬きすると、ゴスロリ我が儘女の姿はなくなっていた。代わりに青い警官服に身を包んだ厳格そうな男が腕組みをしながら立っている。金の刺繍が施された黒いマントを羽織っていて、ただの警官よりも位の高い人物であることが姿形から窺える。
その奥で、天井に届きそうな程巨大な漆黒の炎が燃えていた。ドクン、ドクン――と脈動を繰り返しているのが目に映る。
気味が悪い。思わず眉を顰めた。
男はギョロリと冷徹な視線をこちらに向けて、厳めしい表情を一切崩さぬまま唸る。
「ようやく来たか」
「あれはなに」
中央で禍々しく燃え盛るどす黒い炎。あんなものが政府塔の最上階にあったなんて知らない。否。その実、私が最上階までのぼったことは今の今まで一度たりともなかったのだから、当然か。
「――炉心だ」
「ろしん……」
互いに中央の、“炉心”と呼ばれた炎へ目を向けた。
父様に対する耐えがたい嫌悪感もこの時ばかりは腹の底にしまう。
部屋で烈火がめらめらと火花を散らせているというのに、全く暑さを感じないどころか背筋が凍るような悪寒さえ覚える。それは規則正しく、ドクン、ドクン――と脈打っている。
生まれるのだ。
直感した。あれは胎動だ。なにか、良からぬものがこの国で産声をあげようとしている。とても長い年月をかけて “なにか” を喰らって成長してきたのだと、本能が呼びかけた。
――もしかして、
「あれが……H・F様の本体…………?」
紡がれた言葉に返答はない。沈黙が、私の問いに首肯しているようであった。
あの邪悪な塊が、私が崇敬してきた“H・F様”だというのか。
――冗談じゃないわ。間違っても『アステリア』の生の象徴である《ホーリー・フェザー》と同一視できない。むしろあれは――――
と、静かに燃え盛っていたそれが突如動きを見せた。まるで生きているかのように黒い火の手を伸ばし、床を舐め回す。一回り大きくなったそれが、私を見た。
『G-270――』
……喋った。
信じがたいことに、私に向けて語りかけている。それは紛れもない、生命体だった。
『G-270は、お前か』
嗄れた声がゆっくりと、そう問いかける。
その奇妙さに畏怖さえ覚え、気付けば私は片膝をついて漆黒の炎に頭を下げていた。「――は」と震える唇で何とか声を漏らすと、満足げにそれは笑った。
『ふ、ふふ、ふはははははははははっ』
『喜べ。私が特別に、力を分け与えてやろう』
震撼する。恐怖が体中を駆け巡った。独特な掠れ声が、その嘲弄が、耳にこびりついて離れない。とてもこの世のものとは思えないそれが、私に力を与える、とそう言う。
私は横目で、唇を真一文字に結び依然硬い表情を崩さずにいる男を盗み見た。
――どうしてこの状況で、平然としていられるのよ…………っ。
硬直した私に不満を抱いたのか、笑うのをぴたりとやめてそれは囁きかける。
『娘、不満があるなら申せ』
「――っいえ、有り難きお言葉に、感激しております」
心にもない言葉が口をついて出る。すると“炉心”は胸一杯息を吸うように大きく膨らんだ。それが萎むと同時に、真っ黒な炎心から同様に黒い塊が吐き出される。
床に転がったそれはまるで粘度のように蠢き、やがて黒い豹に変化した。しなやかな四肢で体を持ち上げる。暗闇を塗りたくったようにまっ黒な獣だ。
シャドー……ではないようね。それでも犬が黒豹に変わったことを除けば瓜二つだわ。
音もなくそれは私へ近づいてくる。美味い獲物を見つけたかのように瞳を爛々とさせ、獣は鋭い牙を覗かせた。驚いた私が僅かに上体を仰け反らすと「動くな」と男が叱咤する。男は険しい顔で私を睨んだ。
「政府軍の数も減った。最高執行部隊なんぞあてにならん。お前がこの塔の砦になれ」
「つまり、この身を捨てろと?」
「H・F様直々に力を与えて下さるのだ。光栄に思わんか」
『娘、其処の獣に手を伸ばせ』
痺れを切らした“炉心”が声を荒げた。
黒豹はいつの間にか私の目の前まで歩を進めていた。その眼光に怯み、紡がれた言葉は震える。
「っ、私、どうなるの?」
「どうもならん。強さを手に入れるだけだ」
娘が得体の知れない生物と接触しようというのに、彼は無責任にそう吐き捨てた。
……そうよね、私は生まれた頃から都合の良い人形だったわ。
再三思い知らされて、どうしようもなく惨めになる。そういえば腕の負傷についても言及がない。最後の最後まで、父様にとって私は、ただの戦闘道具なのだ。
ハクを思い出す。あの小柄な体で3匹の黒犬を手懐けていた。シャドーに比べれば目の前の黒豹は若干、いやかなり獰猛さが目立つ気はするけど……私だって、上手くやれるはず。
思い切って片腕を伸ばした。そして左手が獣の、漆黒の毛並みに、触れ――――
「う、う゛ぁ、あ゛あああああああああっ」
絶叫。
全身が燃えるように熱い。内側から針の筵で刺されるように痛い。目の奥で火花が飛び散る。
触れた瞬間“影”となった獣が体内に入り込んだようだった。ハクがそうしてシャドーを取り込むのを見たことがある。まさかこんなに苦痛を伴うなんて。
私の体が、その異物の侵入を拒否している。
『わははははははっ』
おぞましい笑い声が、私の喚き声と一緒になって部屋に響く。
視界が、細胞が、心が暗黒に塗り潰されてゆく。痛くてたまらない。自我が薄れゆくのを感じた。
私は脈動を続ける炎を精一杯睨んで必死の思いで叫ぶ。
「お前の目的は、なに……!?」
『無論、新しい世界の創造だ』
『娘にはその礎となってもらおうか』
嬉々として“炉心”は答えた。
私が間違っていた。政府が、警官が、崇め敬っていた“H・F様”こそ諸悪の根源なのだ。
力尽きて冷たい床の上にどさり、と倒れこむ。
ナツ、リン、ごめん……。また私、道を間違えたみたい――――
瞳を閉じる。一筋の涙が頬を伝った。
- Re: ☆星の子☆ 114話「紆曲する雷火」 ( No.822 )
- 日時: 2019/12/13 23:01
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 114話「紆曲する雷火」
南軍 空中 レオ、ガルVSジオ――
雷を自由自在に操る特別執行部隊とやらの隊長に、俺は苦戦を虐げられていた。ただでさえ四方八方から落雷するってんのに、敵は不死身ときた! 正直どうすれば勝てるのかさっぱりわかんねぇ。
さらに、政府側のスパイだったハクの手により、俺の相棒――ウルは戦闘不能。ハクを追って助太刀に来たキラは怒りで獣化し、二人で地上へ落下した。
俺はとりあえず眼前の敵をぶん殴ろうと、再びジオと拳を交わすところだった。しかしその寸前――敵は見えない力で遠くへ吹っ飛ばされる。
突如現れた救世主。人懐っこい笑みを浮かべる男の姿を見て俺の頬は思わず綻んだ。
「ジジイ! 来てくれたのか!」
開口一番、歓喜の声を上げるとガル――反乱軍の総司令官は細かい皺が刻まれたその顔に苦笑を浮かべた。
「待たせたの。南軍が何やら大変そうだったのでな、儂自ら足を運ぶこととした。直に援軍も到着する頃だろう。……ハクの件は儂が見誤っとった。すまない」
「謝らないでくれよ、俺たちにも責任がある。それよりキラが心配だ。そっちに行ってくれないか」
「いや、二人は心配なかろう」
「え?」
ガルがにかっと歯を見せて破顔した。つられて彼らが落下した先を俯瞰すると、二人が折り重なって倒れている。死んだ……わけではなさそうだ。キラの獣化は無事解けたようで、ほっと胸をなで下ろす。
刹那、バチッ――と空から爆ぜる音がする。雷鳴が轟き、紫電が空を切り裂いた。俺とガルは間髪後ろへ飛び退く。
「うぉっと!?」
「おいおい、無視は酷いなぁ」
黒いスーツを格好良く着こなした男が不気味に笑いながら、暗黒の空に稲光を走らせていた。その双眸が値踏みするようにガルを捉える。ガルは一転、表情を引き締めて口を開く。
「お初にお目にかかる。儂は反乱軍の総司令官――」
「ガルディメット・ジャッカル、だろ? くっくっ、まさか大将自ら俺の相手をしてくれるなんてなぁ、光栄だよ。早速、お手合わせと願おうか」
「ふうむ……政府軍も血の気の多い者が多いのぉ」
ガルがどこか楽しげにそう告げる。
ゴロゴロゴロゴロ……
空に立ちこめた暗雲から、腹の底に響く不穏な音がする。刹那、大地を引き裂かんばかりの霹靂とともに、総毛立つような稲妻がガルめがけて奔った。「ジジイ!」と俺が叫び、落雷が突如軌道を変えて遠くの森林へ吸い込まれたのは同時だった。ガルは何食わぬ顔でにこにことジオの言動を観察している。
「……ほぉ」
ジオが端正な顔を引きつらせる。男はさらに雷をガルに向かって落とすが、そのどれもがすんでの所で弾かれ、あらぬ方向へ向きを変えた。正直ジジイの能力を知っていても、見ているこっちはひやひやして心臓に悪い。
ジオは長細い指で顎をさすりながら目の前の状況を推察している。
「なるほどなるほど……」
「なにかわかったかの?」
にこやかにガルが答えを促すと、
「つまり、俺と同じくらいお前はチート能力ってことだな!」
「ぶっ」
ジオは自信たっぷりにガルを指差して答えた。
思わず笑ってしまったのを、口を覆って必死に隠す。散々考えて納得している風だったのに……こいつ、阿呆なんだろうか。
ガルは豪快に笑い飛ばす。
「そうじゃなぁ、確かに反則級かもしれんが、お主の不死身ほどじゃないわい」
そしてこちらを顧みて「レオ」と力強い声で俺の名を呼んだ。俺も気を引き締めて頷いた。
右の掌に全神経を集中させ力を込める。そこから小さな炎が渦を巻いて出現し、それは徐々に赤い火の玉となる。ガルが俺の傍へ数歩近づいた。十分な熱量を溜め込んだところで振りかぶり、
「ふっ――!」
勢いよくジオに放り投げる。炎の塊は俺の手を離れた瞬間、凄まじい速度でジオに向かっていき――爆ぜた。夜空に軌跡を残した火の粉が、恐るべき速さで玉が投げつけられことを物語っていた。煙の中から敵が身を屈め咳き込む姿が薄ら見えた。
「げほっ、ごほっごほっ……なんだ? 威力がさっきとはえらい違いじゃないか。これもじいさんの能力か?」
「儂の見た目、そんなに老いて見える……?」
ガルはその呼称に多少のショックを受けたようだった。俺は笑いを堪えながら項垂れた彼の背をぽんぽんと叩く。その実、ガルは精悍な容姿と溢れる活気から全く年老いて見えないのだが――見た目年齢は40代後半だろう――、俺とウルがからかってジジイと呼ぶのを聞いて、ジオもそう呼んだのだろう。少し申し訳ない。
ジオはそんなガルの傷心に気付く素振りもなく、先の攻撃を真っ向から受けても尚、涼しげに立っている。深い群青の瞳が輝いた。
「くっくっ、じいさんの能力は面白いんだな。もっと見せてくれよ」
言って、俺たちを覆う曇天から紫電を落とす。しかしそれは悉く軌道を変えて――無理矢理捻じ曲がったように、不自然な弧を描きながら次は男の方へ向かう。
一瞬目を丸くしたジオは、不気味にほくそ笑んで電撃をその身体に受けた。バリバリッと凄まじい音がする。男の黒髪が逆立つ。
うげっ……あいつ、本当に痛くないのか?
そんな心配も一瞬だった。もうもうと煙がたなびく中、全身に電流を這わせたジオが勢いよくこちらへ飛んでくる。一瞬にして間合いを詰め、右脚を高く持ち上げた。華麗に体を捻って半回転し、その勢いでガルの胴へ向かって長い足を斜に振り下ろす。
ガルはその見事な回し蹴りをくらった、筈であった。
「な、に――っ」
ガルは咄嗟に、打ち込まれた蹴りから片腕で身を守った。そう、傍目ではそうとしか見えない。
しかし不思議なことに、ジオの体はガルに触れた瞬間、弾かれたように後方へ跳ね返された。そのまま近傍の大木へ長躯を打ち付ける。
衝撃音。ジオがすぐに動く気配はない。追い打ちをかけるように、俺はありったけの力を込めて、両手を標的へ突きだした。そこから火炎が放射される。
ゴウッと音を立てて一帯の木々が燃え盛る中、ゆらりと黒い影が動くのが見えた。
――やっぱそう簡単にはくたばらない、か。
煤が舞う中、執事風の身なりでさえ汚れ一つ残さず、綺麗なまま修復されてゆくのは、何度見ても酷く不気味だった。
「いやぁ、たまげたよ。これじゃ総司令官様には迂闊に近寄れないじゃないか」
くつくつと笑って何てことないように言う。
「っ、ジジイ、どうする? これ以上ここで道草を食うわけには――」
「そうじゃなぁ。……レオ。戦闘司令官のお主にこの先を託してもよいかの」
「え?」
思わず呆けた声が漏れる。ガルは敵に聞こえないよう一段と声を落として俺に耳打ちした。
「直に援軍が来るじゃろうから、それらを纏めて政府塔へ突撃するのじゃ。良からぬ気配がする。こやつは儂が食い止めよう」
「それならジジイが行った方が……っ、総司令官がここにとどまるわけにはいかねーだろ」
「儂が離れれば、それこそ反乱軍は雷の格好の餌食じゃ。レオ」
力強い瞳で見つめられ、俺は喉元まででかかった言葉をぐっと呑み込んだ。そうせざるを得なかった。
「……わかった。でも本当にジジイ一人で平気か?」
「なぁに、久々の良い運動じゃよ。それに、」
ガルが目配せをしてちらっと下方へ視線を移した。俺もそれにならう。
……ん? あれは、数々の宝石が秘されたこの国の宝庫――
「『ケイヴァニア』……?」
いつの間に西の方へ移動してしまったのか、と考えた時だった。何やら遠く――そう、洞穴から、男の雄叫びのような音が聞こえてくる。その咆吼は次第に近づく。
「あー……」
そういえばいたな、俺ら双子よりも血の気の多い奴が。
思わず苦笑が漏れた。「そんじゃ、行ってくる」と軽い調子で言い残し、頼もしく頷いたガルから離れて巨大都市『シャイニア』の中央に聳え立つ政府塔へ足を踏み出すと、十分に回復したジオが颯と目の前に立ちはだかった。
「塔へは行かせない」
一閃、眩い光に視界を奪われる。が敵の攻撃もガルの能力の効果範囲内では無力に等しい。俺は振り返らず、塔へ駆け出す。ジオの舌打ちは、洞穴から出てきた嵐のような男の叫声に掻き消される。
「ひゃっはぁ――――っ! 楽しそうじゃねぇか俺様も混ぜろぉ!!」
反乱軍随一の戦闘狂。
セルが『ケイヴァニア』から飛び出て、そのままの勢いでジオに向かって斧を振りかぶるのが視界の端に映った。
執事野郎は二人に任せるとするか。
速度を上げてその場を離れる。俺は戦闘司令官としての責務を全うするため、通信機を介して――全軍に手っ取り早く伝えるには“思念”よりもこちらがよい――東西南北の反乱軍に指令を出す。
「全軍、聞こえるか! 本拠地からB軍の応援が来る。負傷者は首都に入る前に手当てを、可能ならば後方支援を頼む! 戦える奴は俺に続け! ジジイが敵軍隊長の足止めをしている間に、西から一気に攻めるぞ!」
返答があったのを確認し、俺はここから真逆の東にいる光聖に、個別に“思念”を繋ぐ。
(――光聖、無事か?)
『レオ。……うん、なんとか』
返ってきた言葉に覇気はない。しかしそれを気遣ってやれるほど、今の反乱軍に余裕などなかった。俺は夜空を軽々翔つつ、矢継ぎ早に今後の策を伝える。
(奇襲作戦だ、わかるな? 俺が残りの軍を率いて西から派手に攻撃を仕掛けるから、お前にその隙をついてほしい。ところで空ちゃんは無事か?)
『大丈夫だよ、今は僕と一緒にいる』
(そうか……。政府塔へ迂闊に近づくのは危ない。出来れば空ちゃんには、安全な場所で待機するか、救護班と一緒に後援に回ってほしいんだが)
『それが……』
(どうした?)
光聖はもどかしげに言葉を切る。
『……空が、政府塔に自分も行くって聞かないんだ。僕もB軍と合流して後方に居るよう説得したんだけど』
(そりゃまたどうして)
『塔に、黒いオーラが集まっているって。そこから……リンの、気配がするらしいんだ』
(はぁ? リンは西にいるだろ――)
言って、はたと思い出す。そういえば『ケイヴァニア』からは、セルと、その後を追うように西のA軍が数十名出てきたきりだ。俺はリンが洞窟の後方にいて、まだ出口に辿り着いていないと推測していたが……さっきの俺の指示にもリンからは返事がなかった。
いや、まさかな。
浮かんだ憶測を振り払う。脇目も振らず政府塔へ向かう俺の進行を阻むように、青い警官服を身に纏った政府の犬どもが拳銃を手に立っているのが遠く見えた。悠長に会話している場合でないようだ。
(ふむ、よくわからんが、そっちは任せていいか。俺が軍を率いて西で陽動するから、なるべく見つからないように塔へ潜入しろ)
『わかった』
(助っ人を送るから安心しろ。二人とも、大怪我すんじゃねーぞ)
それを最後に、“思念”を断ち切る。少女の言動が気がかりだが……こちらが敵を引きつけて二人の道を切り開くしかない。振り向くと真っ先に追いついた西と北の兵士達が俺の後ろを飛んでいた。にやりと、悪戯を仕掛ける子供さながらの笑みを浮かべ、彼らを激励する。
「もう一踏ん張りだ! この腐れ切った政府から、自由を取り戻すぞ!」
空を貫くように高々と佇む瀟洒な要塞へ、迷いなく進む。その周囲を、両翼を張ったように堅固な壁が覆っている。正面の巨大な純白の門には、『銀河の警官』の紋章――羽を大きく広げた金色の鳥が特徴だ――が豪華絢爛に装飾されている。
数十の警官が宙に足場を形成して立っていた。黒光りする拳銃が反乱軍に向く。
戦闘時、いつも傍にいたウルはいない。二人で戦えば百人力だった。心淋しいのも無理はない。
それでも。俺は反乱軍の戦闘指揮官だから。
片割れがいなくても、前に進むしかないよな。
全身に力を込め、血の巡りを早める。敵の銃口から弾が飛び出すよりも速く、掌から火炎を噴き出した。
――さぁ、最終決戦だ!
- Re: ☆星の子☆ 114話更新(12/13) ( No.823 )
- 日時: 2019/12/16 15:50
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: EugGu6iE)
こんにちは、友桃です^^
カキコ成分が足りない無理…と思って読みに来てしまいました。
2幕序盤を読み始めたところですが、
平和な日常があっという間に破られて「空ちゃんかわいそう…!(。>д<)」と思ったのは一瞬で←、
リンさんが戻ってきたことに大歓喜でした。
リンさんが警官をやめてたのは予想外です…!
彼がこれからどういう行動をとるのかわくわくしながらまた続きを読ませていただきます(^^)
更新がんばってください!
また来ます
- Re: ☆星の子☆ 114話更新(12/13) ( No.824 )
- 日時: 2019/12/19 14:37
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@友桃さん
友桃さん~! こんにちはっ
2幕入ってからリンの出番は光聖君を凌ぐ勢いですからねぇ……喜んでいただけて嬉しいですv 警官をやめたのもナツのことがあってなので、冷徹に見えて根はとても優しい子なんだろうなと思います。
私にとっても彼はかなりのお気に入りキャラですのでこれからも可愛がってあげてください^^
コメントありがとうございました!
- ☆星の子☆ 115話更新「蠢くモノ」 ( No.825 )
- 日時: 2020/01/28 16:28
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 115話「蠢くモノ」
東軍 光聖、空――
背から生えた金色の双翼をはためかせる。耳元で冷たい風がびゅうびゅうと吹き抜ける。泣き疲れて倒れた空を抱きかかえ、僕はレオの指示通り政府塔へと向かっていた。
なるべく見つからないようにと釘を刺されたけど……。
まだ夜明け前である。陽も昇っていないのに、敵の目をかいくぐって金色の大きい翼で飛行するのはかなり無理難題であった。それでも二人分の体重を支えようと思ったらこのぐらい立派でないと心許ない。さらに内から込み上げる謎の力によるものだろうか。僕の意思とは反して、具現化させた翼は大袈裟なほど眩い光輝を放っていた。
「なるべく早く、塔へ辿りつく……!」
天を貫かんと高く聳え立つ政府塔。首都『シャイニア』まで来るとその荘厳さに圧倒される。僕は負けじと一層速度を上げた。
追っ手はまだ来てないだろうか、と周囲に目を配る。僕の腕の中には小柄な少女が抱かれていた。その寝顔が視界に入ると、胸を締め付けられるような、切ない叫びが脳裏を掠めた。
リン……――――
目頭がかっと熱くなる。リンとは反乱軍として肩を並べた期間より、警官から逃げる迷い星クズとして追い回された期間の方が長く、仲間と呼ぶには少なからず抵抗があった。それでも、ここ数ヶ月共に過ごしたリンがこの世から消えてしまうのは――――
ぐっと胸からせり上がってきたものを押し止めるように咽喉を上下させた。
空はリンを信頼していた。どうしてだか分からないけど異空間に飛ばされた空を助け出したのもリンだったようだし。
(――「リンさんっ、いかないで……っ」――)
空の悲痛な叫びがこびりついて離れない。僕はなめらかに夜空を飛びつつ先の経緯を思い出す。
ヒナを逃がした後、とりあえず空を安全な場所へ避難させるのが最優先だった。ヒナの向かった先は政府塔。流石に敵の拠点にまで空を連れて乗り込める筈がなかった。リンが殺され、各軍満身創痍な中、少女を護りながらより強い敵と戦える自信がなかった。
しかし困ったことに、空は僕の言うことに聞く耳を持たなかった。
「私も、政府塔にいく……っ。光聖君、お願い、つれてって……!」
「空、それはできない……! ヒナよりもっと強い敵がいるかもしれないんだよ!? 空はもう十分頑張ったじゃないか。本拠地に戻って、安全な場所で休むんだ」
「いいの、お願い……」
「――っ、どうしてそんなに行きたがるんだ! 僕は空に、これ以上傷ついてほしくないっ。……リンだって、それを望んだはずだ!!」
その名を聞くと彼女は顔をくしゃくしゃに歪ませた。充血した瞳が再び潤み、彼女の双眸からは枯れることなく大粒の涙がこぼれ落ちた。泣かせてしまった僕は酷く困惑した。少し口調がきつかっただろうか、と反省し、なだめるように柔らかく彼女の名を呼ぶと、意を決したように空は告げたのだ。
(――「塔に、『アステリア』の住民だったモノが、集まってるの……そこに、リンさんもいるの……っ」――)
空が何を言っているのか、てんで理解が追いつかなかった。確かに政府塔の周囲には、黒くおぞましい靄が蠢いているような、奇妙な感じはした。
あれが元は住民だったって? まるで信じられる話ではない。
困惑する僕をよそに、空は続けた。
(――「魂を失った肉体の欠片が、還る場所を間違えてる。わかるの。私は足手まといになるだけかもしれない……だけど、リンさんを長くあそこへ留めたくないの。光聖君、お願い……!」――)
それでも、先まであんなに悲痛な表情を見せていた少女に真剣に言い寄られては、頷かないわけにはいかなかった。そうして渋々、僕は空を連れて敵のねぐらに赴くことになったのである。
僕が政府塔を取り巻く “なにか” に抱いた感情は、良いものではなかった。底の見えない深い井戸を覗き込むような不気味さがあった。まるで死地に向かっているようだ、なんて考えて身震いする。
と、大人しく抱きかかえられた空の瞼がぴくりと動いた。ぼんやりと開いた黒目が琥珀の少年を映す。
「あれ……私、気を失ってた……?」
「空、まだ少しかかるから。休んでて」
「えっ、――あ! ごめん光聖君、重いよね?」
「女の子一人どうってことないよ」
ようやく状況把握した空が焦って腕の中であたふたしたので、口で弧を描いて僕は柔和に笑って見せる。背中の丈夫な両翼が精一杯二人を持ち上げてくれているので、実質僕は空を支えるだけでいい。普段は体力を消耗するはずの変身もなんてことない。ヒナと刃を交えたあの瞬間から、ふわふわと体が軽かった。
まるで僕の中で何かが覚醒したように。
自分が自分じゃないようだった。
「……、それより。政府塔まで順調すぎて気味が悪いなぁ。レオ達が西で警官を引き付けているにしてもこれは」
「え、光聖君……」
僕の言葉に次は空が目を丸くして
「グロさんだよ、気づいてなかったの?」
何てことないようにそう言った。
「え、グロ……さんってあの、反乱軍のスパイを担っていた?」
「うん。グロさんは生物以外の自然現象にも変化できる特殊な能力を持ってるでしょ? 敵に見つからずに塔まで辿り着けるように、大きい影になってずっと私達を隠してくれてるよ」
「ぜ、全然気がつかなかった……!」
恐らく僕が疎いのではなく、空の感覚が過敏なのだろう。グロさんは敵の懐に潜り込んでこっそり情報収集していた凄い人だ。僕がちょっとやそっとで見破れる技ではないはずだ。
でもどうして、一体いつから空の感覚が――――
しかしそれを直接聞くのは躊躇われた。答えを聞くのが何故か怖かった。
空はこの国で地球からきた唯一の人間だから、『アステリア』の民とは感覚が違うのかな。
そう自己完結させるより他なかった。故郷に来てこのかた、少女に対してそう感じたことは今日が初めてだったけれど。
近くにいるらしいグロさんの気配は言われたところで全く分からないが、実際に『銀河の警官』の追っ手は来ないし、少女が自信を持って言うならそうなんだろう。
「それなら、もっと急ごうか」
邪念を振り切るように、背にぐっと力を込めて僕は意気軒昂と双翼を羽ばたかせた。
☆
(――『我が国を……我が民を助けてくれ。政府塔の最上階で待っている――――』――)
僕に力を宿してくれた謎の声は最上階で待っている、と最後にそう告げた。僕は全ての鍵が塔の最上階にあると直感し、見た限り一番高くに位置する半円型のバルコニーにそっと降り立った。役目を終えた金色に煌く翼が静かに霧散する。
着地したバルコニーは、人が4人立つのがやっとなくらいの狭さだった。すぐ目の前には塔に繋がる両開きの窓があり、内側のカーテンに閉ざされて中は見えない。
ふっと気を抜いた途端ぐらっと足元がよろけ、咄嗟に手すりにつかまった。飛行距離が長かったし、疲れが溜まっているのだろうか。耳鳴りが酷い。心なしか動悸が激しい気がした。
……それが何だって言うんだ。やっとここまできた。僕が故郷の未来を救う!
塔の頂上を見上げる。真っ白く塗り潰された塔は、やはり近づくほど不気味だった。黒雲のようにも見える得体の知れない闇が白濁とした要塞に翳りを落とす。身体の芯が恐怖で凍り付く。
と、僕の腕から解放された空が小さく呻いた。眉間に皺を寄せ、口元を手で覆う。頬が紅潮し、目尻に涙が浮かんでいた。黒い靄に近づいたことで気分が悪くなったのだろうか。
「空、辛いなら無理しないで」
「へ、へいき……」
か弱い声ながらも返事をした空が、いつか倒れそうで本当に心配だった。かといって、ここまで来た以上後戻りは出来ない。少女の憔悴しきった背中を軽く撫でる。
そしてアーチを描く大窓の取っ手に手をかけた。緊張した少年の顔が硝子に映った。
深く息を吐き出し呼吸を落ち着かせる。腰に下げた武器をいつでも抜刀できる体勢で、僕は窓を開け放った。
- Re: ☆星の子☆ 116話「仇敵」(1) ( No.826 )
- 日時: 2020/02/11 22:49
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 116話「仇敵」
政府塔 光聖、空――
開け放たれた大窓から冷たい風が内側へ吹き込みカーテンが靡いた。潜入した先に誰もいませんように、と祈りながらまるで冷気に背を押されるようにして僕らは敵の本拠地に足を踏み入れた。
………………嫌な予感がする。
途端、僕の直感が警鐘を鳴らす。警官服を連想させる紺青色の布が邪魔をしてろくに辺りを見渡せないまま、瞬時に空の一歩前へ出て盾を構える。
その間僅か一秒にも満たなかっただろうか。
斬! と空気を切り裂く音がして、同時に腕に強い衝撃を覚える。大気がビリビリと震える。運よく攻撃を受け止めたがその重圧に耐えきれず、後退する。びゅう、と一際強い風音が耳元で唸り、それは唐突に沈静した。
僕の荒い息遣いがやけに響く。二撃目は襲ってこない。
僕は全神経を尖らせたまま、鋭い一撃を放った敵を注視した。
その人物は僕より10メートルほど離れた位置で双剣を構えていた。見慣れた青い警官服を纏った黒髪の男。肩から羽織られた黒いマントは、肩口と裾に金刺繍が施されていた。皺が刻まれた顔で厳しくこちらを睨めつけている。高い鼻と吊り目気味の双眸に、どことなく見覚えがあった。
ガルと同世代に見受けられたが、柔らかい表情を一切作れないような男だった。鋭い眼光と有無を言わせない威圧感が、反乱軍総司令官のそれと全く違っていた。
「――――何奴」
暫しの静寂を破ったのは男の方だった。
侵入者の正体が分からない時点で攻撃を放つとは。なんて気が短いんだ、と僕は心の内で非難する。放たれた問いに空が答えるか否かまごついているのが背中から伝わった。
が、敵は空の答えを待たずに言葉を続ける。
「否。うちの隊服を着てないのであれば部外者で間違いあるまい。差し詰め星クズとヒトの子といったところか」
ぎくり。まぁそうだよな、バルコニーから侵入している時点で怪しすぎるし。
眉間に寄せられた皺がさらに深くなる。見ているこちらの心臓がキリキリと痛むような険しい表情で、彼は続ける。
「チッ――奴は一体どこで何をしている? まさか自我を失ったわけではあるまいな」
怒りが心頭まで達しそうな勢いであった。静かに憤る様にはらはらする。からからと口内が乾く。心なしか、耳鳴りと頭痛が先よりも酷い。内から滲み出す緊張を振り払うように、僕は武器を握る両手に力を込めた。
「……否。吾がここで打ちのめせば良いだけのこと。またも奴の尻拭いをする羽目になるとは」
告げて、男は双剣を乱暴に薙ぎ払った。
しかし10メートル先で振われた刀がこちらに届くはずがない。何故、と拍子抜けした刹那、
「……――――っ!」
風切り音が炸裂した。双剣から発生した鋭い風が襲ってくる。例えば竜巻が目視できるように、凶暴な風の纏まりになったそれは男が刀を振った方向へ弧を描き、一直線に僕の盾へと向かう。
まるでキラが所持する大鎌の、刃の部分を模したようなそれが激突する。
「ぐ、っ……!」
先程受けた衝撃はこれか。男が乱雑に刀を振っただけなのに、この威力。これでは弓兵と対峙しているようなものだ。リーチの長さからして僕の大剣じゃ適わない。敵の懐へ入り込むことさえ難しいだろう。
頬を鋭利な突風が掠めた。痺れる痛みが一瞬走る。
「ふん、耐えたか。ではこれはどうだ」
後ろではっと息を呑む声が聞こえた。
見ると男が、両腕で交差させた双剣を高く構え、刀身が撓る程の剛力で勢いよく振り下ろすところだった。次は殺すと言わんばかりに、冷徹な瞳が鋭く光っている。
――――どうする、どうすればいい?
放たれた真空刃は先とは威力が段違いだ。空を切り裂く鋭い音。大気が小刻みに振動する。こちらに届く僅かな時間。考えろ考えろ考えろ!
攻撃は振り下ろした刃の延長線上を進み、途中で軌道を変えることはなさそうだ。幸い攻撃位置は予想できるので今からでも横に転がれば直撃は免れるだろう。でもそれじゃだめだ。僕の後ろには空が控えている。盾で真正面から迎えうつか? 先程の乱暴な一振りでも防ぐだけで精一杯だったのに?
――――それでも。
「うああぁぁぁぁぁぁぁっ」
両足でしっかりと床を踏む。両手で盾を握り締める。僕の咆吼に呼応するようにそれは光輝を放ちながら一回り大きな防御壁へと姿を変えた。迫り来る2つの斬撃。後ろにはか弱い少女。
僕はどうなってもいい。それでも空だけは。
これ以上傷付けたくないんだ……!!
ゴッ! と凄まじい音が炸裂した。遅れて爆風が襲いかかり、暗い部屋に幾つかあった窓が衝撃でバリンと一斉に割れる。短い悲鳴が聞こえた。どうやら斬撃は打ち消せたらしい。僕は盾を咄嗟に手放し体を反転、身を低く屈め、怯える少女の細い腰に腕を回し、冷たい床に勢い良く押し倒した。体を伏せて頭上を掠める爆風と飛来する鋭い破片から避ける。
固く瞑った両目をそろそろ開くと、顔を真っ赤にさせた空と目が合った。女の子に覆い被さっている、というとんでもない状況に今更ながら意識し、心拍数が一気に上昇する。が、悠長に心躍らせている場合でない。空の無事を確かめ、暴風が止んだところで僕は首を後ろに向けた。
「う、げっ」
男が一人涼しい顔で剣を縦に振り下ろすのが視界の端に映る。身体が恐怖で縮み上がる。
いや、次を防ぐのは、どうやっても無理……!?
敵からすれば絶好のチャンスだ。これを逃す道理はない。それでも、もう少し手加減してくれてもいいじゃないかっ。
「空、ごめん!」と一言断って、僕は一層身を小さくし、少女に身体を近づけた。襲ってくる攻撃から少女を守るため、抱きしめるように身体を寄せる。背後から迫り来る殺気と鋭利な真空刃。
僕は、ここで死ぬのか――――?
- Re: ☆星の子☆ 116話「仇敵」(2) ( No.827 )
- 日時: 2020/02/11 22:52
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
空だけは守りたい一心で、抱きしめる腕にぎゅっと力を込めた、その時。ザアァァァ――ッと、この場に不釣り合いな音が緊迫した状況を打ち消した。
「へ……?」
二人して間抜けな声が漏れる。僕の身体を両断する筈だった風圧の代わりに、冷水が全身降り注いだ。琥珀の髪からぽたぽたと水滴が垂れ、それは押し倒されたままこちらを見上げる空の頬へ落ちる。そこでようやく、音の正体が冷たい大理石を打ち付ける大雨によるものだと合点がいった。しかしここは政府塔内部。室内で突如雨が降った、ということは――。
濡れてびしょびしょになった軍服が急速に乾いていく。逆再生されるように、少女にかかった水滴が重力に反して浮かび上がり、小さな球となってたゆたう。目を白黒させる空を抱き起こし、よろよろと立ち上がった。
宙に浮かんだ無数の水球は、敵から守るように僕らの前に移動し、一点に集まった。直径2メートル程の巨大な水の塊。そこからパンッと水風船が破裂するような音が響き、弾けた水球から黒いローブ姿の長躯がぬっと姿を現した。
「………………………………………………ヒ、サメ」
初めてその肉声を聞いた僕は目を丸くした。何年も声を出していないかのように、発せられた言葉はぎこちない。短い一言だったが、想像よりも声のトーンが高い。反乱軍随一の長身だったので気付かなかったが、グロさんは女性だったのか……。
黒に染め上げられたローブから、ただならぬ憤怒の感情が漂っている。
ヒサメと呼ばれた男は顔を歪めた。口の端を引き吊らせ、笑いとも怒りともとれる複雑な表情で低く唸る。
「グラウディア……生きておったか、裏切り者め」
グラウディア、とは恐らくグロさんのことだろう。“ガルディメット・ジャッカル”をガルと呼ぶように、『アステリア』の民は親しみを込めて名前を略称で呼ぶ習わしがある。呼ばれたグロさんは身動き一つせず、ローブで隠れて表情も読み取れない。それでいて全身からふつふつと沸き上がる怒りだけは剥き出しだった。
「ぐ、グロさん、助けてくださってありがとうございます。あの……お二人は、知り合いですか?」
「否」
間髪入れずヒサメが答えた。皮肉めいた声色で、毒々しく言葉を続ける。
「そう生ぬるいものではない。なぁ?」
刹那。
パァン――と乾いた発砲音が轟く。空の肩がびくりと跳ねた。
見るとグロさんの手に立派なライフルが握られていた。警官が普段使う小型の拳銃とは、その威力も凶暴さも異なる。グロさんは直立したまま、敵を狙ってさらに弾を撃った。
対してヒサメは、双剣を雑に薙ぎ払う。剣先から生じる風圧が弾の軌道を逸らすため、敵に弾は届かない。攻撃は最大の防御とはまさにこの事だと内心で舌を巻く。しかしグロさんは動じず、的確に銃撃を続ける。
『上へ。早急に』
僕の前に立ちはだかるグロさんから、突如“思念”が飛んできた。彼女と“思念”で言葉を交わすのも今回が初めてだ。予想に反して中性的で優しい声色だった。
さっと部屋を見渡す。部屋の一角に階段を見つけた。しかしそれは僕から見て左奥に位置してあり、上へ行くには必然的に前方のヒサメを追い越さねばならない。
(でも、どうやって――)
『時機を指示。疾走』
(えっ)
指示したタイミングで走れということだろうか。言葉足らずで意味を汲み取るのが難しいと、ガルさんが度々嘆いていたのはこういうことか。
考えている内に彼女の言う時機は訪れた。
『参、』
僕は空の小さな手を握り、さっと目配せを送る。
『弐、』
前方で恐ろしい形相をした男が再び双剣を構える。あれは殺すための構えだ。体の芯が凍える。
『壱』
合図と同時、とにかくグロさんを信じて、僕は空を連れて階段へと一目散に駆け出した。
ヒサメは双剣を全力で振り下ろす――――!
しかし放たれた鋭い斬撃は僕らに届かなかった。部屋の温度が2-3 ℃程低下したような錯覚に襲われる。二つの真空刃が形そのまま虚空で凍りつき、パキパキと割れはじめる。
グロさんの他にもう一人、部屋に侵入した人物がいた。割れた窓の縁に足を乗せ、そこから身を乗り出し
「ヒーロー参上っ!! 光聖、空ちゃん、迷わず上へ進めぇっ!!」
悪戯っ子のような笑みを見せる銀髪碧眼の青年。
必死に足を動かす。階段の取っ手に手をかけた。堰を切ったように、後方では爆発音が爆ぜる。僕と空を傷付けないために手加減していたらしい二人が、本気でヒサメを殺しにかかっていることに少しの恐怖を覚える。絶えず鳴り響く爆音に急かされるように、僕らは政府塔の更に上へと疾駆した。
- Re: ☆星の子☆ 116話更新(2/11) ( No.828 )
- 日時: 2020/02/13 00:03
- 名前: イレラ (ID: XLYzVf2W)
はじめまして。新人カキコ小説家、イレラと申します。
☆星の子☆、愛読させていただいております⭐️
作品を通して本当に尊敬します。
長きにわたって更新し続けられ、沢山のファン(?)を獲得していらっしゃるので、
まさに鑑といいますか…ね?(語彙力は宇宙の彼方へ)
僕もそのような素晴らしい作品を作ってみせます!
この作品は僕の中の何かを変えましたよ、ええ。
まあ、まずは言葉の知識の問題ですかね(笑)
これからも頑張ってください!陰ながら応援しています!
- Re: ☆星の子☆ 116話更新(2/11) ( No.829 )
- 日時: 2020/02/13 14:03
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@イレラさん
はじめまして! コメントありがとうございます(*^ ^*)
尊敬だなんて勿体ないお言葉です……ただ自分の書きたいものを書きたいときに綴っていたら、こんなに年月が経ってしまいました。4年ほど更新しなかった時期はあったんですが;
語彙力は私もまるで伸びません!笑 最近は本を積極的に読むようにしています^ ^
今後も地道に頑張りますっ。また遊びに来て下さいノシ
- Re: ☆星の子☆ 116話更新(2/11) ( No.830 )
- 日時: 2020/03/09 18:41
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
こんばんは、朱雀です。
なんと星の子が2019年度冬の小説大会で銀賞をいただきました!
投票してくださった皆様、誠にありがとうございます。
去年の10月に投稿を再開してから、なんとか月一投稿を目標に頑張りました。またこうして評価していただけたこと、素直に嬉しいです。
物語も佳境に入ります。
是非最後まで、空ちゃんと光聖くんの行く先を見守ってください^ ^
気が向いたら記念に番外編を書こうと思います(まずは本編をちゃんと進めます笑
ではまた。
今後もよろしくお願いします(*^^*)
- Re: ☆星の子☆ 117話「戦争の本質」 ( No.831 )
- 日時: 2020/04/02 17:32
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 117話「戦争の本質」
政府塔 光聖、空――
「はぁっ、はぁっ……――――」
したたる汗を拭う。ヒサメと対峙したあとは、その5階上まで誰もいなかった。下層ではグロさんとウルが善戦を尽くしているだろうが、いつ敵が追いかけてくるか分からない。僕と空は疲労が募る体に鞭を振るい、最上階を目指して階段を駆け上がっていた。
跳ねる心臓を掌で押さえる。目が眩み、滴る汗で視界が霞んだ。
「光聖君、体調悪い……?」
空が心配そうに覗き込んだ。
どうしてだろう。確かに政府塔に辿り着いてからというものの、僕の体は調子が悪いようだった。ただの疲労ではないことは薄々感じていた。耳鳴りと頭痛が酷く、ぎゅっと固く目を瞑れば途端に見知らぬ世界へ飛んでいきそうな、危うい浮遊感があった。胸の奥がざわざわする。
知ってはいけない、見てはいけない、開けてはいけない、そんな領域に足を踏み入れているような、いや、もう腰まで底なし沼に浸かっているような…………
「光聖君?」
「あー……、うん。ちょっと疲れちゃっただけ。心配しないで」
無理に笑って返したが、空は依然顔を曇らせたままだ。じっと見つめられると不覚にもどぎまぎしてしまう。
「なんだか……」
空が暗い顔で言いかけてやめた。
遥か上まで続くような階段が唐突に終わりを迎えた。最上階だろうか。唾を飲み込んで僕は足を踏み出した。
ヒサメと遭遇したバルコニーつきの大部屋はその隅に階段があったが、その上階は間取りが異なった。駆け上がった先には長い通路が伸び、壁の片側に幾つかの扉があるのみで、驚くほど静かで人気がなかった。
もう政府塔に警官はいないのかもしれない――
そう楽観したい自分がいる。そんな僕をたしなめるように、胸のざわつきはじくじくと僕を苛む。
「ここが、最上階……?」
通路の奥に黒くて大きな扉がある。幾重にも重ねた羽翼の模様が四角い扉を縁取っている。中央に彫られた鋭い鳥の目に睨まれているようで不気味だ。妙に禍々しいその扉は、一見してその奥に潜む得体の知れないものを予感させた。
どっと汗が噴き出す。先程から僕の心臓はドクン、ドクン――と不自然なほど規則的に、大きく拍動を繰り返す。
逼迫した状況の中、ここで尻込むわけにはいかない。グロさんが早くと背を押してくれたように、僕ら反乱軍に時間は残されていなかった。
(あれ、)
どうして時間がないなんて
――――《奴》が目醒める
夜明けまではまだ時間があるはずなのに
――――世界の再建
この扉の奥になにが
――――急げ少年
なにもかも
手遅れになる前に
「光聖くんっ」
力強く揺さぶられはっと我に返った。
「――――そ、ら」
空の黒目が不安に揺れる。
「っごめんね、僕なんだかおかしいみたいだ……。やっとここまで来たのに、こんな敵地ど真ん中で、空を不安にさせてごめん」
「私こそ……無理言って、ついてきちゃってごめんなさい」
「ううん、空がついてきてくれて助かったよ。まさかグロさんがいるなんて、気付かなかったし。塔に集まっているモノも――」
「それなんだけど……多分このお陰なの」
空は目を伏せて首からかけたペンダントを掌に包み込んだ。淡い蒼色に輝く楕円形の宝石が埋め込まれている。その儚い光に自然と目が奪われた。
「それはリンからもらった……?」
「ううん。これ、元はお義父さんの持ち物だったの。綺麗な宝石だなって子供の頃よく見せてもらったから覚えてる。お義父さん、肌身離さず持っていたから失踪した時に一緒に無くなったと思ってたんだけど……」
「そうか、輝さんの……。空の感覚が研ぎ澄まされているのはそれをかけたから?」
「そうみたい。感覚というよりは、うーん、もっと具体的な……視力が良くなったっていうか。物の本質がよく見えるような感じ、かな」
そして気遣わしげに、どこか寂しげな表情で僕を見た。二人の間に気まずい空気が微妙に流れる。
――――空は僕の本質を見抜いているんだろうか。
緊張しながら続く言葉を待ったが、数秒の沈黙ののち少女はふっと柔らかく微笑んだ。話題を逸らされたようだ。
「あともう少し、頑張らなきゃね」
再び、待ち構える漆黒の扉に目を向ける。緊張の面持ちで僕らは重い扉をぐっと押し開けた。
☆
「――っ、だれ⁉」
甲高い声が廊下に反響した。驚いて硬直した僕と対照的に、空はぱぁっと顔を輝かせ声の主の元へ駆け寄る。
「ちょ、ちょっと空!?」
「ムマっ!」
「わわっ! あら、さっきの……空、だっけ。なに、こんなところまで来ちゃったの?」
敵じゃないのか…………?
ぽかんと立ち尽くす僕のことなんかそっちのけで、女子二人できゃっきゃと騒いでいる。
大袈裟に恐怖を煽った扉の奥には拍子抜けするほど生活感のある部屋が広がっていた。小振りで洒落たスタンド式のランプが閉めきった部屋にぼんやりと明かりを灯している。黒を基調としたソファーやチェア、ピアノ、全身鏡……さらにはテーブルクロスのかかった机に焼き菓子まである。
家具と同様、漆黒のフリルに身を包んだ少女は純白のウサギを抱えて立っていた。大きな赤紫色の瞳と二つに結った長い髪は、派手な装束に負けず劣らず目をひいた。嬉しそうに彼女の方へ駆け寄った空に対して、困ったような嬉しいような複雑な表情で接している。「もうっ、ヒナはどこでなにしてるのよ……」と小さくぼやき、続いてぱっちりした瞳が僕へ向いた。口を尖らせ警戒心が滲む声色で尋ねる。
「で、貴方はなに? 女の子連れてこんな危ないところまでのこのこと」
「……君こそ誰なんだ? 政府塔の最上階にいるってことは敵じゃないのか?」
「最上階?」
ムマと呼ばれた女性は怪訝な顔をした。代わりに空が嬉々として答える。
「ムマは確かに政府軍の子だけど、次に会うときは友達だよって私と約束したんだ」
「ばっ……私は約束した覚えなんてないし! 空が勝手にそう言っただけなんだからっ」
「えー。でももう私に向けて攻撃してこないよ?」
「そ、それは」
頬を赤らめてあたふたするムマ。とりあえず害はなさそうなのでほっと息をつく。
大きな部屋をぐるりと一望するがさらに上へ続く階段は見当たらない。
「ここは最上階じゃないのか……? どこへ向かえば……」
未だガンガンと頭を打ちつける痛みに悩まされながら呟くと、赤紫の瞳が鋭くこちらを射貫いた。
「いい、これは忠告よ。この上へは行かないほうがいい。
……どのみちここへ来るまで遅すぎたわ。大人しく新世界とやらを迎える準備でもなさい」
「新世界?」
ムマはあっさりと重大機密であろう情報を漏らした。何も知らない空は小さく首を傾げる。
――――世界の再建
その言葉がぼうっと脳裏に浮かび上がる。しかし思惑が分からない。いったい誰が。世界を作り替えてどうするつもりなんだ。そして誰がそれに賛同するというのだろう。
「それを知っていて政府に加担したのか!?」
思わず糾弾すると、ムマは一層頬を紅潮させて喚いた。
「んなっ……そんな訳ないでしょっ! 私もついさっき知ったばかりよ。聞いちゃったの、偶然ね」
空の非難がましい視線を感じてうっと言葉を詰まらせる。ムマは苛々と言葉を続ける。
「最上階でもなんでも、勝手に行けば良いわよ。ただ私は親切で良い子だから忠告してあげてるのっ。貴方たち反乱軍がどうこうできる段階はとっくに終わっているわ。もうこの世界は終わりよ!」
「終わりって…………。今何が起こっているの? 私達どうなっちゃうの? この塔にどうして、亡くなった人達の欠片が集まっているの……?」
「欠片?」
堰を切って溢れた言葉のなか、ムマはその単語に反応した。眉を寄せてうーんと首を捻った数秒後、大きな瞳をさらに見開く。両腕のぬいぐるみをきつく胸元で抱きかかえ、震える声で呟いた。
「もしかして、それが燃料…………? ふんっ、やってくれるわね」
まさか。
嫌な予感が頭を掠める。胸の奥がざわざわと悪寒で掻き立てられた。
「まさかっ……空の言う通り魂を失った肉体が塔に集まっているとして、それが『アステリア』を作り変えるためのエネルギーになるのだとしたら……」
「そうね。きっと戦争を起こすことまで計画のうちなのよ。
――あははっ。結局警官も反乱軍も、特別執行部隊の私でさえ、ただの駒だったのね」
二人揃って絶句する。
空も僕も、戦争が始まる前――鍛錬の二ヶ月間は『アステリア』という世界の色々について簡単に学んでいた。僕らは、体力の消耗を伴うけれど自由自在に体を変化させることが可能だし、傷口から流れる血はすぐさま火の粉となって散る。絶命するとほんの数十秒で跡形もなく消滅することに空はかなりの衝撃を受けていた。本来なら魂は天界へ――『アステリア』ではその存在を信じる民が一定数いるようだ――、肉体は僕たちの母なる存在、偉大な《ホーリー・フェザー (Holy Feather)》の“母胎”へ還ることになる。今は、魂を失った肉体の残渣が間違って政府塔に吸い寄せられている状態だった。
僕らは《ホーリー・フェザー》から産み落とされ、最初の生は宇宙で過ごす。惑星を見守るなんていきなりご立派な仕事をこなし、任期を終えたら流れ星となって燃え尽きて、魂は故郷の『アステリア』へ帰還する。……まぁ僕はその過程を省いて故郷に来ちゃったわけだけど。故郷に還った魂が辿る第二の生は人間のそれと大差ない。ただ、どこの家の誰の子になるかは神の采配に委ねられる。人間よりゆっくり年老いて、やがて肉体は“母胎”に帰還する。そこから新たな生命が誕生する――とまぁ、こんなサイクルなんだそうだ。
二回も生死を経験するなんて、うんざりするような話だと思う。レオやウルに聞くと「宇宙にいた頃はあんまり覚えてねぇな」「退屈だったもんな」「光聖も早めに死んでこっちに来いよ」「『アステリア』のがよっぽど楽しいぜ!」「まぁたまーに戦争してるけど!」とおどけて返された。
「それでも……僕は最上階へ行くよ。ここでじっとしていても状況が変わるわけじゃない。反乱軍の皆に託されたんだ」
「わ、わたしも――」
「空はだめっ!」
ぴしゃりと一蹴されて空はたじろぐ。
「最上階へ行くにもセキュリティがかかっているだろうし、無事に行ける保証がないわ。私だって行ったことが無いんだもの、なにが待っているかわからない。ま、彼はそう言っても聞かないんだろうけど」
ムマの大きい瞳が胡乱げに僕を見る。
セキュリティ、か……。敵である僕がそれをパスできるとは考えにくい。引っかかるとどうなるんだろう。
行き方を問うと、ムマは扉から一番離れた部屋の隅を指差した。一見何の変哲もなさそうな冷たい床の上に、薄らと半径1 m程度の円が彫られている。
「あの上に立って目的地を告げるの」
「……それだけ?」
「セキュリティが作動した場合は塔の“最深部”に落とされるわよ」
最後は脅すように声を落として囁いた。最深部……ここが『銀河の警官 (ギャラクシー・ポリス)』の本拠地でもあることを考えると、拷問や処刑に使うような施設があるのだろうか。
ぶんぶんと頭を振って、脳裏によぎった最悪の結末を追い払う。
「空」
小さな肩に両手をおいて空と向き合った。澄んだ綺麗な瞳をじっと見つめて、言葉に力を込める。
「僕、行ってくるから。ここで待っていてほしい」
「光聖君……。私、……もう誰も失いたくないの」
「うん。大丈夫。僕を信じて」
「…………絶対、戻ってきてね」
両目に涙を浮かべながらもそれを決して落涙させず、今度こそ空は頷いた。
☆
大気が震える。
ズン、と全身が押し潰されるような圧迫感に支配されたのは、僕が床に彫られた円に足を踏み入れたのとほぼ同時だった。
まさかセキュリティが作動したかと錯覚したが、どうやら違う。悲鳴が聞こえた後ろでは空とムマが互いにしがみついて上からの重力に抗っていた。
なんだ? なにが起こった――?
僕の焦燥を掻き立てるように、続いて嗄れた男の声が『アステリア』全土に響き渡る。それは酷く恐ろしくて不気味な音声だった。
『我が名は《ホロウ・フェザー (Hollow Feather)》――』
『新たな神としてこの国を統べるもの』
『これよりアステリアを再建する』
聞いたことのない名だと考える一方、奥深くに眠る《 》はその正体を痛いほどよく知っていた。
「お前の思い通りにはさせない――――――――‼」
力の限り叫んで勢いよく円の内側へ踏み込む。瞬間酷く耳鳴りがしてこめかみが悲鳴をあげた。握り潰されるような心臓の痛み。ごふっと二酸化炭素が肺から吐き出る。
目的地を告げる前に脳裏が真っ白になり。
人も自然もなにもかも。
『アステリア』という一国は白くまっさらに塗り潰された。
- Re: ☆星の子☆ 118話「白濁と」(1) ( No.832 )
- 日時: 2020/04/01 10:36
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
18章 118話「白濁と」
シャイニア 空中 レオ――
『東の方角に光聖と空ちゃん発見! 塔までもう少しだ。陽動作戦は大成功だぜ、相棒!』
(よかった。ウルは腹の怪我どーなんだよ? 戦えるのか?)
『救護班に真っ先に診てもらったからな。まだ動ける。国の一大事に寝込んでいるような俺らじゃねぇだろ?』
(ははっ。じゃあそっちは任せたな)
警官との応戦の片手間でウルと“思念”を送り合ったのは数刻前。元気そうな相棒の声を聞いて内心ほっとした。
全軍への号令を聞いたウルはすぐさま陽動作戦であることを汲み取り、敢えて政府塔へ向かわせた光聖と空ちゃんの後を追っていた。『しっかし光聖早いなー全然追いつけねー』とぼやいて“思念”は途絶えた。鍛錬したとはいえ、光聖と空ちゃんはまだ戦闘に不慣れだ。グロさんに加え、ウルもサポートしてくれると知り当面は安心できる。
陽動作戦と言えど、こちらも警官の防御網を突破して塔へ突撃すれば反乱軍が勝利の狼煙を上げるまでそう時間はかからないだろう。
しかし、だ。こちら戦闘司令官、双子の片割れレオ。先までは相棒と会話する程度に余裕があり、『銀河の警官』もたいしたことねぇなと胸の内で小馬鹿にしていたのだが。
「……さて、と。これをどう倒すかな」
そんな俺の呟きは、反乱軍の前に立ちふさがった女の高々とした咆吼で掻き消された。
先まで蹴散らしてきた敵と何ら変わらない、青い警官服を纏った女。しかし彼女の衣服は出会った時にはもうズタボロで、袖が千切れた右の肩口からは異色な腕が生えていた。異色な、というのはその腕が黒い毛並みに覆われており、短い指から金色に光る爪が伸びていたからだ。さらには茶色の短髪が静電気を浴びたように逆立ち夜風に靡いている。少しつり上がった瞳に感情は見えず、瞳孔が大きく開いたままかっと見開かれていた。赤い妖艶な唇から不自然に鋭い犬歯が覗く。彼女の全身から沸き上がる殺気に兵士達は気圧される。
まるで獣化したキラのようだ、と思う。これと交戦して分かったことは、僅かばかりに理性が残っていて咄嗟の機転が利くということ。動きは軽く素早いうえに拳銃や鋭い爪で攻撃してくるので非常に厄介である。
反乱軍は続く戦闘で疲弊している。目の前の半獣を倒して塔へ突撃することがかなり難しくなってきた。
正直不気味だが……素材はいいよなぁ。吊り目が可愛いし鼻も高くて顔は小さくて。こんな状況じゃなきゃナンパしてんのになぁー。
と、俺の煩悩を見破ったかのように女は再び絶叫した。両手で顔と喉を掻き毟る。
「 う、ぎ、ギャアァァああアアアアァァァッ―― 」
「あーあ。折角の可愛い顔が台無しだぜ? ちょっと黙ってくんねぇか、なっ!」
右手を標的へ突きだしそこから火炎を放つ。女はまるで猫のようなしなやかさでそれを避け、左手の拳銃に手をかけた。バビュン! と凄まじい速度で、俺の脇腹をめがけて銃口から青白い光線が放たれる。咄嗟に身を捩って躱したが、反応が遅れた左腕に攻撃が掠る。夜空に尾を引いた光の残像が視界に映った。
歯を食いしばって痛覚に耐え、疾走する。瞬時に敵と距離を詰め、右脚に力を込める。爪先から脛にかけて火を噴かし、赤く燃え上がった脚を折り曲げて女の胴体へと振り回した。僅かに柔らかい肉の弾力に手応えを感じる。
「 ガッ、 」
蹴り飛ばされた女は数メートル後方へ投げ飛ばされた。鮮やかな青が自慢の警官服はぼろぼろに焼け焦げ燻っている。
訪れた好機。「ピア!」と叫ぶと後方からか細い返事と共に金色に煌めく弓矢が弧を描いて飛んできた。暗殺部隊 風狼軍の長メトロをも貫いたそれは、目にも止まらぬ速さで標的へ向かう。女は放たれた光の矢を起伏の小さな瞳で一瞥し
ぐしゃり、と。
あろうことか黒く不気味な片腕でそれを握り潰した。
「…………………………はぁ?」
「ひぃっ」
そして腕を振りかぶり、小さな手の内で粉々に砕けた破片を反乱軍に向かって我武者羅に投げつける。もう無茶苦茶だ。
ばらばらと上から降ってくる破片は空中で不規則に小爆発を起こす。
「うわぁぁんごめんなさいごめんなさい! とっておきの弓矢だったんですぅ!」
ピアが目に涙を浮かべながら逃げ惑う反乱軍に平謝りしている。
爆発性の弓矢か……策は良いが相手が悪い。片腕で粉砕した際にも爆発が起こった筈だが、自分の負傷はお構いなしってか。ジオのようにみるみる傷が癒える様子はないけど……こりゃとんだ怪物だぜ。
「ピア、お前は悪くないから落ち着けって。攻撃は良かったから――っと、次が来るぞ!」
混乱を招いた元凶は眼前の爆発をものともせず、低い姿勢で飛びかかってきた。猫のように縦長の瞳孔が瞬時に俺を見つけ、慣れた手つきで拳銃を構える。
やはり先程から真っ先に俺を狙ってくる。兵士達の相手は片手間でどうにかなると踏んでいるのかもしれない。上等だぜ、と口の端を吊り上げた。高く跳躍し、突き出した掌から下方の敵へ炎の弾雨を浴びせる。
拳銃から放たれた光線と炎の散弾がぶつかり合い、夜空で派手に爆ぜる。熱風が吹き荒れる中、女は流れ弾を避ける素振りも見せずにひたすら引き金を引き続けた。放たれるレーザー光は恐ろしい威力だ。この散弾の中を突き破ってきたらひとたまりもないだろう。後ろに控える反乱軍も俺が守らなければ。
女が退かないのなら俺も引き下がるわけにいかない。
「うおおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
「 あ゛、あ゛ああアアアああアアアァぁぁァァッ――! 」
敵がくたばるのが先か俺の体力が尽きるのが先か。
下肢を踏ん張って耐える。轟、と燃え上がる火炎を放出し続ける。
広範囲に及ぶ爆発と吹き荒れる熱風。誰も二人に近づけない。意地がぶつかり合う。
激しい鬩ぎ合いはより苛烈を極めるように思えた、その時。
ズン、と空気が変化した。重力が何倍にも重くのしかかる。攻撃を続けることが適わず、それどころか宙に足場を形成して立っていることすらままならない。それは敵も同じだった。呻き声を上げた女の手から、図らずも拳銃が離れる。
今だ。今、倒さねぇと――――!
しかし身体は言うことをきかない。全身の平衡感覚が崩れ遂に地上へと落下する。その途中で急激に背を這う悪寒と恐怖に支配された。
『我が名は《ホロウ・フェザー (Hollow Feather)》――』
『新たな神としてこの国を統べるもの』
『これよりアステリアを再建する』
嗄れた老人のような、おぞましい声だった。不気味な抑揚がこの世在らざる怪奇を連想させた。
ホロウ・フェザーってなんだ、誰だ。政府軍の頭領は、反乱軍の敵は……、『アステリア』をおかしくしたのは、ホーリー・フェザーじゃねぇのかよ!?
あぁ身体が重い。気持ちわりぃ。こんな感覚初めてだ。何が起こっているんだ――――
ぐるぐると沸いて出る疑問を考えている余裕はない。
俺の意識が薄れるより前に、白濁と化した世界は唐突に“終わり”を告げた。
- Re: ☆星の子☆ 118話「白濁と」(2) ( No.833 )
- 日時: 2020/04/01 10:42
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
南軍 空中 ガル、セルVSジオ――
あぁ楽しい楽しい楽しい! やっと生きている実感がする。
そう、戦闘とはこういうものだった。強敵と交えたときの高揚感。細胞が活性化して血が巡って全身熱く燃えたぎって――そして気付くのだ。自分は神に愛された特別な子なのだと。
ぎりぎりの命を賭した戦い。最後に生き残るのは自分だ。最高に気分が良かった。
それは命が有限だからこそ感じられた興奮だった。
「くっ、くくっ、くはははっ」
笑っていた。久しぶりだった、戦うことにこんなに楽しみを覚えたのが。
やっと、やっとだ。不老不死の呪いから解放されるのかもしれない。
曇天を轟かせる。全力全霊で雷を叩き落とす。総司令官の正体不明な能力で跳ね返されるが関係ない。自分を中心に数百という数の雷撃の槍を空から放つ。
そんな中、感電などお構いなしに、無謀にも緑髪の男は急接近してきた。でかい図体の割に動きが早い。こちらの懐に潜り込み雄叫びと共に斧を振り回す。
俺に防御は不要だった。緩慢な動作で後ろへ飛び退いた。浅く腹を横一文字に切り裂かれ、飛び出た鮮血は瞬時に群青の火の粉へと変わる。それと同時に俺の傷も修復され、一瞬感じた痛みもすっとどこかへ消えていく。
「こいつまだ笑ってやがる。気色わりぃな、おい」
H・F様は俺の実力を見込んで素晴らしい力を与えてくださった。
“不老不死”。
誰もが羨む能力だ。人類が叡智を掻き集めても辿り着けなかった領域に俺は到達した。誰よりも強い。それは紛れもなく愉悦であり幸福だった。
…………だがその喜びは一時のものだった。
詰まらなかった。
端から勝敗の決まった戦闘に意味など見出せなかった。敵は俺の不死身を知ると恐れをなして逃げ惑う。本気の戦いなど無意味だから。俺は最大の愉しみを己の手で奪ってしまったのだ。
――しかし目の前の男は違う。
俺は出鱈目に雷撃を放ちながら笑う。
「くははっ! お前、俺と同種か!」
「ああ゛っ!?」
唐突で何の脈絡もない言葉に気が立ったのか、男はこめかみに血管を浮かせる。俺の攻撃など気にも留めず、体を捻って大きく斧を振り回した。一定の距離を保ったまま戦況を見守っていた総司令官が「セル!」と吠えた。途端、セルと呼ばれた男の斧が凄まじい迫力で俺の顔面に迫り来る。
「うらぁっ!!」
気付くと俺は数十メートル後方へ吹っ飛ばされていた。
ほんの僅かだが記憶がない。宙を飛んでいる間に回復したのか身体には掠り傷すらも残っていなかった。
首を切られた……いや胴体を真っ二つにされたか……?
ふむ、と適当に考えているとセルが弾丸のような勢いでこちらへ駆けてきた。不老不死の敵を貪婪な瞳が捉える。顔面に貼り付けた残忍な笑み。
「はっ。お前本当に死ねねェんだな!? 今のは即死だったろうがよぉ。もっと粉々に砕けばどぉなるんだ? 俺様に試させろッ」
「くくくっ。こいつ……警官よりよっぽど獰猛じゃないか」
適当に言葉を交わしながら紫電を巧みに操って迎撃する。乱暴に振り回される斧に気を配りつつ、セルの後方へ目をやった。
先程からじいさんは離れもしないが近づいてもこない。不自然すぎる……となるとやはり――っ
瞬時に身を屈めた。ブン、と頭上で勢いよく斧が振られる。大きい動作によりがら空きになったセルの懐へ入り込み、鳩尾へ肘打ちを食らわせる。荒い息を溢したその身体へ、俺は容赦なく頭上の暗雲から稲妻を落とす。
完璧な攻撃。勝ちを確信した、が。
「させんわい」
セルに直撃する寸前、またもや雷撃は弾かれた。
幾度となくこの繰り返しである。なかなか俺の電撃を浴びてくれない。
「まったく、総司令官さまは意地が悪いな」
だがそれでいい。すぐに死んでは詰まらない。
体勢を立て直したセルの攻撃を華麗に躱しながら俺は跳躍した。後ろから迫り来るデカブツに見向きもせず総司令官へ近づく。
まだだ。まだ楽しませてほしい。
「見事な攻防だよ。じいさんの能力は分からないことだらけだが……今度こそ電撃の餌食だ」
雷鳴が頭上で轟く。降り注ぐ無数の槍。
額に汗を滲ませた総司令官は、一気に距離を詰めた俺に苦笑を向けた。
攻撃の手は緩めない。ぐっと掌を握って開くとバチバチと放電する弾が発生する。不自然にねじ曲がる雷を器用に避けて総司令官の間合いに入り込み、雷光弾をありったけ投げつけた。やはり近距離で放たれた攻撃はこちらへ跳ね返る。
雷撃が止んだ一瞬の隙をくぐって、総司令官が動いた。鍛え抜かれた筋肉隆々の腕を俺の顔面へめり込む。鼻の骨が嫌な音を立てた。さらに反対側から拳が飛んでくるのが視界に入る。硬く握られた拳は大気をも味方して凄まじい勢いで迫り来る。
その間わずか数マイクロ秒。じいさんの意識が“防御”から“攻撃”へ振り切れる時。
今だ。
夜空がカッと眩しく光る。大地が割れるような音がした。
総司令官の拳に吹っ飛ばされ、さらにその先で待ち構えていたセルの斧でずたずたにされたらしい俺はやはり一瞬意識がなかった。
小綺麗に修復されるスーツをぱんぱんと意味も無く払いながら、負傷した総司令官へ目を向ける。縦に伸びる傷が特徴的なその男は背を丸めて荒い呼吸を繰り返していた。焼け焦げた軍服と爛れた皮膚が損傷の大きさを物語っている。攻撃の余波を受けたのかセルも思いの外負傷が目立った。緑髪がぼさぼさ乱れている。流石に疲弊したのかすぐさまこちらに飛びかかってはこない。
「あれだけの電流を浴びてまだ生きているのか」
「……そりゃこっちの台詞、じゃな」
「くっくっ……悪いな。誤解しないでほしいが、俺も好きで不死身の力を振りかざしているわけじゃない」
「はーーおっまえいい加減にしろよ! ぜってぇ手加減しただろうが。じゃなきゃあんなんくらってジジイが生きているはずがねェ」
「儂生きてちゃ駄目だった……?」
「くくくっ、俺を買い被りすぎだぞ。そこのじいさんは途中で弾いたのさ」
最初は重力操作系の能力者……と踏んだがそれで雷撃が弾かれるのか疑問が残る。未だに総司令官の力の正体が謎だが、分かったことは自身や味方を強化する“攻撃型”と外敵の攻撃を跳ね返す“防御型”の能力が混在していることだ。ただし効果範囲内でしか作動しないこと、この二つは同時に行えないこと――これが弱点だと思う。武器を持たずに素手で殴り合うのも効果範囲の側面を考慮しているのかも知れない。
「流石に見抜かれたかの」
総司令官は苦笑する。
「自身の強化と雷から身を守ること、同時には行えないようだな。無論、敵が強力であるほど攻撃が跳ね返った時のダメージもでかい。今までは防御に徹していれば勝手に自滅したろうが……不死身の俺と戦ってもじいさんが死ぬだけだ。大人しく負けを認めてくれないかな」
「その割に残念そうじゃな?」
「そう見えるか?」
すると比較的大人しくしていたセルがふーっと荒い息を吐いた。舌舐めずりして斧を振りあげる。
「早く続きを始めようぜ」
「お前、俺の話を聞いていたか? もう無駄だって言っているんだよ」
「ごちゃごちゃうるせェんだよ。ジジイはそこで立ってろ。能力は俺の強化に全振りだ」
「セル!?」
総司令官の言葉など届いてやしない。戦闘に異様な執着を見せる男は勢い良く宙を蹴った。血走った目は爛々と危ない光を放っている。
「くくくっ、くはははっ! 良いなぁお前。最高だよ!」
俺が不死身と知ると腰抜けどもはまるでやる気がなくなる。
心躍る熱い戦いがしたい、強者と戦い続けたい。そんな稚拙な願いを俺はこの手で粉々に砕いてしまった。
というのにこの男は……!
俺の満面の笑みをどう受け取ったのか、セルはふんと鼻を鳴らして不敵に笑った。
「同種といったなぁ。いいぜ、戦闘狂同士死ぬまで殺り続けようじゃねェか!!」
全身の血が騒ぐ。胸が躍る。
「手を抜いてくれるなよ? 全力で俺をぶっ殺しにこい――っ!」
稲光が夜空に裂ける。衝撃波が吹き荒れる。
血と悦楽を求めて狂った怪物は刃を交える。高らかな笑声が白濁と塗り潰されるその時まで。
- Re: ☆星の子☆ 118話更新(4/1) ( No.834 )
- 日時: 2020/04/01 12:42
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
こんにちは、朱雀です。
118話で18章は終わりです! やったー
ちなみに、118話は116~117話の空&光聖と大体同じ時系列で話が進んでいます。陽動隊と不死身に立ち向かう総司令官&戦闘狂、二つの戦いですね。あの子はレオと戦っています。実は空達が塔に忍び込んでいるのを知ってたりして……ごほん。
セルの口調がほんの少し変わったことにお気づきの方はいらっしゃいますでしょうか。キャラがぶれてしまった訳では断じてありません。強者との戦いに興奮すると喋り方も理性が欠けていく感じを出しました。心なしか幼く見えるような……口調で印象も変わるものですねぇ。
19章は怒濤の解説、伏線回収となりそうで怯えております。
自然な感じで文面に組み込みたいけれど出来るかなぁ。回収不足があったら申し訳ないです; なるべく頑張ります。
それではーノシ
- Re: ☆星の子☆ 118話更新(4/1) ( No.835 )
- 日時: 2020/04/04 13:10
- 名前: 美奈 (ID: hVaFVRO5)
朱雀様
こんにちは、美奈です。
先日は私の小説を見に来てくださり、ありがとうございました!
まだ途中なのですが、☆星の子☆、少し読ませていただきました!
壮大な物語...と思ったら、最初は本当にひょんなことから始まったのですね!話の流れや言葉選びがとても素晴らしかったです(語彙力欠けててすみません笑)!最新話まで早く読みますね!笑
それからこれは余談ですが、私もトワイライトすごく好きです。原作読んで映画見てストラップも持ってるくらいには好きです。笑
ではでは、失礼いたしました。
今後の更新も楽しみにしています♪
執筆頑張ってくださいp(^-^)q
美奈
- Re: ☆星の子☆ 118話更新(4/1) ( No.836 )
- 日時: 2020/04/06 09:55
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
@美奈さん
こちらこそ小説読みに来てくださりありがとうございます……っ!
まさか最初から読んでいただけるなんて、とても光栄です。100話前後までは中学生の頃書いたものなのでところどころ文章が破綻していると思います。それでも褒めていただき嬉しいです(>_<)
トワイライトとても面白かったと記憶しています。細かい内容は忘れてしまいましたが……笑 美奈さんも読んでいたのですね。親近感v
星の子はなかなか長いので、暇があるときにゆっくり読みに来てください。感想もお待ちしております^ ^
コメントありがとうございました!
- Re: ☆星の子☆ 119話「建国神話」 ( No.837 )
- 日時: 2020/04/27 18:48
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
19章 119話「建国神話」
遥か遠い昔の話。
それは強大な力の塊だった。のちに人はそれを《神》と呼んだ。
まっさらな地に生命の息吹がかかった。
水を、緑を、動物を生んで育んだ。それらの運命は《神》の掌にあった。
やがて一つの惑星に文明が出来上がった。
《神》は考えた。一番素晴らしい国を創ろうと。
それはままごとで遊ぶように造作もない。
目まぐるしく発達する惑星。強く立派な国と、不思議な力を宿した赤子。
《神》は産み落とす。変幻自在な光の粉。広大な暗い宇宙で光輝く星のように。
《神》は銀河の海を見渡したい、隅々まで。
☆
還元する。運命は循環する。
魂は天へ、肉体は《神》へ。
豊富な資源と聡慧な光の子。その惑星は煌びやかだった。
それでも。それゆえに。
力を得て富を得た民はより多くを求めた。
《神》が創った自慢の国にたちまち戦火が広がる。
★
眼が焼けるような赤だった。火の海だった。
《神》は初めて、生んだ命を面倒だと感じた。
《神》への崇敬を忘れ私欲に溺れた民を罰する。剥奪する。
還元する。運命は循環する。
狂い始めた歯車は戻らない。
そして気付く。欲に塗れた哀れな命、それはどこから出ずるものか。
全ては《神》の驕りだった。
☆
排除する。蠢く闇を。燻る負の感情を。
高慢を強欲を嫉妬を悲嘆を怠惰を憤怒を肉欲を憐憫を憎悪を恐怖を焦燥を侮蔑を空虚を絶望を。
《神》は自身から摘出する。
そうして器は作られた。不出来で不要な感情を閉じ込めた、およそ概念のような存在。
豊かで正しい国を作り上げるための正当な犠牲だった。信じて疑わなかった。
負の感情の掃き溜めとなる器が
たとえ《神》の半身だったとしても。
★
《神》は名付ける。
国の名を『アステリア』。銀河の海で一層輝く星。
神の名を《Holy Feather》。邪悪な心の一切を淘汰した聖なる光。
奇しくも己の半身によって、悪の化身は封印される。
その名は《Hollow Feather》。虚像として彷徨い消失するはずだった闇。もう一つの神の名。
還元する。
運命は循環する。
- Re: ☆星の子☆ 120話「神の邂逅」 ( No.838 )
- 日時: 2020/07/08 20:11
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
19章 120話「神の邂逅」
空――
(いったい、なにが…………)
視界がぐらぐらする。四肢に力が入らない。
ムマと一緒に、最上階へ赴く光聖君の背中を見届ける時だった。空気中の密度が何倍にも膨れあがったかのように重く変質し、息苦しくなった。どこからか響く声の禍々しさに身体が硬直した。
『アステリア』の再建。
確か声はそう言って、それから……?
私は倒れ込んでいた。眼を薄く開くと真っ白な光が飛び込んでくる。暗闇の中でずっと戦っていたために、その眩しさに慣れるには酷く時間がかかった。手探りで這わせた両手は虚空を掠める。
「うぅ……こ、光聖君? ムマ?」
返事はなかった。ぞっと、胃に冷たい氷が滑り落ちたかのような恐怖と孤独に支配される。
視界がようやく開けて私はよろよろと立ち上がった。身体を支えるため地につけた掌からは、冷たく硬い政府塔の床と打って変わりじんわりとした暖かさが伝わった。浜辺の砂を連想させる柔らかい感触に、少し心が落ち着く。
光聖君と合流しないと。
考えて顔を上げた私の瞳に映ったのは“白”だった。
「え、………………!?」
見渡す限り何もない。
吃驚して自分の両腕を持ち上げた。健康的な肌色と暗緑色の軍服。白く変貌を遂げたこの世界で私の身体は変化がない。なんとも奇妙な状況だが一旦胸を撫で下ろす。
改めて周囲を見渡す。
上下左右、やはり白く塗り潰された世界が広がっている。
どうやって自分が足場のない空間で立っていられるのか全く不思議だった。
そこでふと、政府塔へ近づくにつれて肥大していた胃の奥から込み上げるような不快感が綺麗さっぱりなくなっていることに気がつく。何気なく首にかかった紐を掴みペンダントを持ち上げた私は、言葉を失った。
楕円形の装身具に埋め込まれた宝石から、鮮やかな碧の輝きが失われていたのだった。
くすんだ石に、中から何かが飛び出てしまったような錯覚を抱く。
「……さっきまでの嫌な感じは、政府塔に国民の肉体だったものが不自然に集まっていたから。それを感じなくなったってことは、ここが政府塔……ううん、『アステリア』とは全然違うどこか別の世界、なのかな。問題が解決した、ってことはないよね……? それとも……ペンダントの力が、失われた?」
一人呟いた言葉に返事はない。
光を失った碧の宝石をよく観察する。このペンダントは、光聖君と同じ迷い星クズだったお父さんの形見だ。埋め込まれた宝石は先程まで、琥珀の彼のように心温まる優しい光を放っていた。
胸の前でぎゅっとペンダントを握り締めると僅かに石から温もりが伝わり、微弱ながらくっと前方へ引っ張られた。白い世界に置き去りにされた私の、たった一つの道標のように。
微々たる動きだ。気のせいかもしれない。疲労からきた幻覚かも。
――それでも。
確かに私の胸に希望が宿る。
ペンダントが……お父さんが、導いてくれている。同じ気配を辿った先に、きっと光聖君がいる。
「私はまだこの国のこと、ほんのちょっとしか知らない。でもここはお父さんや光聖君の大切な生まれ故郷なの。
どこの誰だか知らないけど……、『アステリア』の再建なんて……、世界を創り変えるなんて。そんな重要なこと、勝手に決めるなんておかしい!」
一歩、力強く踏み出す。ふわりと体が持ち上がった。
「この戦争の――反乱軍のゴールは。『アステリア』の住民がみんな、幸せを獲得するためには。
政府を正すだけじゃきっと解決しない。倒す相手はヒナさん達警官や政府じゃない。
もっと大きな、強大な力そのものなんだね」
まるで私の気持ちに同調するように軽くなった体は、白く広大な空間を一歩で数メートルも飛び越える。
彼の元へ真っ直ぐ駆ける。
光聖――
夢を見ていたのだろうか。
輪郭が朧気で、ぼんやりとした色彩だけ頭に残っている。僕は両の眼で青い海と緑の大地を眺めていた。きらきらした光の子。たちまち赤が燃え広がり、《誰か》は《誰か》を責め立てて。
幽かな黒い影。
悪性を詰め込んだ、《 僕 》の半身――――
『やはり来たか、ホーリーめ』
ざらざらと掠れた声が聞こえ、どきりと体が硬直した――ような感覚がした。続いて心と裏腹に、恐れも躊躇もなく声が発せられた方へ目を向けた自分に奇妙な違和感を覚える。
(こ、こいつがH・F……いや、《ホロウ・フェザー》なのか……?)
頭二個分低い位置にそれはいた。腰が折れ曲がった、黒い老人だった。まっ黒な肌に枝のように細い手足。ぎょろりと動く目玉は赤く充血している。煤けた灰色の布を身に纏ったそれは、頭を精一杯持ち上げてくすんだ黄色い瞳で僕を見上げていた。ひび割れた唇の端が不格好に持ち上がり、そこから真っ赤な舌が覗いて―――
恐怖で喉が干上がり思わず後退ろうとするが、適わなかった。この不気味な生命体 (と表現していいのだろうか?) から一刻も早く離れたいのに僕の体はてこでも動かない。そこで初めて、この体が僕のものでなくなっていることに気がつく。
(っ、今までで一番の恐怖体験中なのに、体が言うことをきかない……! どうすればいい!?)
何者かに操られている感覚。
さらには空やムマと政府塔にいたはずが、いつの間にか一面真っ白な空間に放り出されていることにようやく気がつく。僕と目の前の老人以外、人も物もなにも見当たらない不気味な空間だ。
狼狽する僕を余所に、前の老人は嗄れた声を発する。
『世界を創り変える。燃料の残りは戦争で掻き集めた。あとは貴様から母胎の権限を奪うのみ』
「――この莫大な力が貴様に扱えると?」
(……………………?)
自然と口が動いた。凜とした音色が老人の言葉を遮る。
滑らかに言葉が紡がれると同時、果てしない単語の波がどっと押し寄せた。
文字の羅列。
本来の僕であれば到底扱いきれず、脳が破裂しそうな程膨大な情報が何故か綺麗に整理整頓され、詰め込まれていく。
混乱の中、不思議と思考が洗練されるのを感じていた。
(僕と、輝さんは迷い星クズだった……なぜ僕らは故郷に帰れなかった? なぜ、警官に追われていた? 警官が守りたがった世界の平衡ってなんだ? 僕の中に眠るものは……、目の前の黒い生き物は……)
如月光聖を苦しめていた数々の疑問が容易く紐解かれていく。
(そうか……僕の中には《ホーリー・フェザー》がいる。アステリアを創った神、僕ら生命の源――――)
“如月光聖”が《ホーリー・フェザー》へと。上書きされていく。
神は素晴らしい国を創り上げるために、あらゆる負の感情――悪性を排除した。自らを二つに分かち、悪性の塊を《ホロウ・フェザー》と名付け永遠の刻の中で幽閉した。実際にそれは途方もない時間、形も意思も持たない虚像だった。一方で、長い年月が経ち人々の信仰力が徐々に弱まるにつれ、《ホーリー・フェザー》の神としての力は衰えていった。
幾千の光の子を産み落とす母胎は、果てしない輪廻の中でいつしか巨大な宇宙のサイクルに組み込まれ、ただ機能し続けるシステムとなった。最早、独立したシステムに《ホーリー・フェザー》は必要なかった。もっともホーリーはその循環機能を編み出した神である。“命のゆりかご”である特性を応用する権限はホーリーにあった。幾多の生命エネルギーを利用した『アステリア』の創造は、その権能の一つだった。
ホーリーは自身が弱体化しいずれ忘れ去られる存在であったとしても、それがこの国の、国民の辿る形であればそれで良いと考えた。
まさかこの隙をついて《ホロウ・フェザー》が台頭するなど、微塵も想像しなかった。
摘み取った悪性は国のあちこちで少しずつ芽生え始めていた。徐々に消えゆくはずだったホロウの自我は目覚め、遂に民衆の暗い感情を喰らう。かろうじて糧を得たホロウは世に留まり、ホーリーを引きずり下ろす機会を虎視眈々と狙った。
そしてほんの数百年前――二つの立場は逆転する。
『私は貴様の半身。貴様に出来て私に出来ぬ道理などない!』
「……《ホロウ・フェザー》に渡った命は黒に染まる。産まれる子は力もなく寿命もない。そんな世界に救いはあるのか」
『はッ、私の創る国が、易々と神の座を奪われた貴様に劣るだと? いつまでも偉そうな口をきくなよ』
「ほう。確かに私は、少年の力添えがなければ貴様との邂逅も果たせなかった……その程度の神かもしれぬ。だが現に私はここにいるぞ」
『……』
「私の精神を母胎と同期させてアステリアを再生させる。その前に醜い悪性を永久凍結させねばなるまいが――」
『そこの依り代がなければ満足に活動できぬほど失墜した神に、なにができる!!』
血走った両目を見開いてホロウと呼ばれた老人は掴みかかった。
『ギャッ!?』
しかし光聖――もといホーリーに触れた瞬間、バチィッ!! と電撃のようなものが奔る。凄まじい衝撃を一身に浴びたホロウは数メートル後方へ跳ね飛ばされた。
白い世界で、視えない地面に打ち付けた体を起こそうとするも、やつれた細い腕は力なく震える。虚弱な様を一瞥して“善性”は言葉を続ける。
「これが力の差だ。分からぬのか。所詮ホロウは薄汚れた悪の塊。どう足掻いたところで聖なる光の前に平伏する運命よ」
『貴様……!』
ホロウは今度こそ激昂する。
『私を排除した《ホーリー・フェザー》こそが! 汚れた神だ! 落ちぶれた神だ!!
今日ここで雪辱を果たす……その驕りと共に粉々に散れぇ!!』
おどろおどろしい風貌の老人は声を張り上げる。やせ細った貧弱な腕が振るうには酷く不釣り合いな、立派な杖がその手に握られている。黒光りする丈夫な柄の頂点に嵌合した紫の石が強い光を放った。
一方で。
神様の操り人形と成り果てた光聖は、眩い剣を重々しく構える。
激突する。
- Re: ☆星の子☆ 121話「彼らの秘密」 ( No.839 )
- 日時: 2020/08/05 18:05
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
19章 121話「彼らの秘密」
迷い星クズとは。
いわく、故郷へ還ることができない半端者。
いわく、世界の平衡を乱す犯罪者。
いわく、大義名分を振りかざした『銀河の警官』に追われる逃亡者。
いわく――――。
☆
また、同じ夢を見ていた。
より鮮明で衝撃的な風景。遥か昔の《ホーリー・フェザー》の記憶が、フィルムを高速で巻くように僕の頭を駆け巡る。おびただしい時間と情報の波に溺れそうになる。
迷い星クズが生まれた背景。その運命。
『アステリア』の創造神《ホーリー・フェザー》。
その信仰はいつの間に《H・F》に据え置かれていたのだろうか。
永遠の刻の中で消え去る運命だったはずの《ホロウ・フェザー》は、《ホーリー・フェザー》の弱体化に応じて自我に目覚めた。自らを不出来で不要な悪因子として排除した半身への怒りは治まることをしらなかった。そもそも、暗い思想から構成されるホロウはそのような感情しか持ち合わせない。
気の遠くなる年月、水面下で着実と力を蓄えたホロウは遂に半身を征伐した。
ホロウは民の信仰力をその身に受けるため、不服ながらも己の名を《H・F》と伏せた。尊大に振る舞えば、実直な民はそれを《ホーリー・フェザー》であると無意識に信じて疑わず、警官は忠誠を誓った。
ホロウの野望。
それはホーリーが建国した現在の『アステリア』をホロウの理想郷へと創り変えること。
成し遂げるためにはどんな犠牲も厭わない。悪政を強いて民の怒りを煽り、政府軍と反乱軍を衝突させた。燃え広がる戦火はホロウの暗い感情を焚きつけた。
虚空の存在から実体を得て、創造が施行されるまでに。
神の手により一体どれだけ多くの命が失われただろうか。
虚しくも《ホロウ・フェザー》に奪った命の重みはわからない。
永劫の刻へ幽閉されるその間際、負った傷は深く、《ホーリー・フェザー》の魂は無数に砕けた。それぞれがホロウの支配下から辛うじて逃れた。
『アステリア』の生命循環機能――光の子を産み落とす“母胎”へと。
連綿たる生命の歯車は回り続ける。
それが“天野輝”“如月光聖”ら、迷い星クズの正体。
心の深層に《ホーリー・フェザー》が住まう、選ばれし光の子。
ホロウは異変に気がつく。
逃げ隠れた半身――善性の神が、幽閉から奇しくも逃れたこと。
広大な宇宙を訳も分からず彷徨っていること。
ホーリーの依り代である光の子に神の記憶はない。それほどまでにホーリーの魂は粉々に砕けていた。
通常光の子は、役目を終えれば流れ星となり燃え尽きて、その魂は故郷へ還る。
しかし故郷『アステリア』の支配者はホロウである。
善と悪。光と影。太陽と月のように、全くの対極。
結果、依り代は還れなかった。
正しくは不思議な斥力が働き、半身が支配する故郷に弾かれてしまったのだった。
神と対等に渡り合えるのは神である。
《ホーリー・フェザー》を内包する迷い星クズらにその自覚はない。永遠に彼らは故郷へ還れず、神の自我は目覚めない……。そのように楽観視できればどれだけ良かったことか。
しかしホロウはどこまでも神経質で臆病で。
自身の野望が、覚醒した迷い星クズ――すなわち、ホーリーに打ち砕かれることを最も恐れた。
そして忠実な下部である『銀河の警官』に命令する。
迷い星クズは世界の平衡を乱す悪因子。即刻排除せよ、と。
――それが僕の……迷い星クズの正体。
(ああ……)
全ての事象が繋がった。自分が何者であるか、終わりの狭間でようやく理解した。
僕の中で覚醒を遂げた《ホーリー・フェザー》の意思が絶え間なく流れ込み、心がぐちゃぐちゃに混ざり合う。
《 神 》の記憶。途方もない時間の奔流に身体が押し潰されそうになる。
僕の体は今も《ホーリー・フェザー》の好き勝手に動いているようで、いつの間にか僕の精神は遠く追いやられた。深海から地上を見上げているようだ。どこまでも続く白いノートに黒いインクを滲ませたような、朧気な風景がゆらゆら揺れる。音は反響し重なり合って、誰が何を言っているのかまるで分からない。
きっと、残った意識を手放せば、僕はもう光聖に戻れない。そんな予感があった。
その必死の抵抗を知ってか知らずか、《ホーリー・フェザー》の記憶の奔流は止まらない。
何度も何度も。
古の軌跡を繰り返し辿る中で、突如見覚えのある風景が映った。
無機質な病室と真っ白な少年。青い警官服を纏ったナツとリンとヒナ。初めてできた友との別れ。偶然で運命的な、迷い星クズとの出会い。浮かぶのは柔らかい笑みと澄んだ眼差し。富士から一望した山麓と静かな町。そして――――
天野空との出会い。
小柄で快活な少女。得体の知れない僕の話を真剣に聞いて、漆黒の瞳で真正面から向き合ってくれた。空と過ごす中学生活、部活動が新鮮で楽しかった。ナツ達に囚われた時。絶体絶命のピンチを一緒に乗り越えた。聞こえた不思議な声の主は、きっと僕の中の《ホーリー・フェザー》だったんだろう。
(これは……走馬灯なのかな…………)
さらに意識が朦朧とする。光聖君、と僕を呼ぶ幻聴まで聞こえてくる。
反乱軍に寝返ったリンとの再会。故郷の大戦に空がついてきたときは本当に驚いたし心配した。その反面、彼女とまだお別れしなくていいと。心の隅で安堵した、狡い自分。
(空は……、僕と知り合ってから怖い思いをいっぱいしたよな。ついてきてくれてありがとうって、最後まで守れなくてごめんって。伝えたいことが山ほどあるのに――)
僕がたゆたうこの真っ白な世界は、二神の邂逅により生まれた共鳴世界だ。世界の裏側、強大な力の奔流にいる。こうしている間にも『アステリア』は刻一刻と、新しい世界に塗り潰されているのだろう。
《ホロウ・フェザー》の目的は、この惑星に全く別の文明を築くこと。そこに勿論、僕が憧れた故郷の面影はなく、知り合った皆はいない。
《ホーリー・フェザー》の目的は、『アステリア』をこの危機から救うこと。ホーリーが再び頂点に立ち、正しく民を導いて煌びやかな惑星を取り戻す。そのために、ホロウを今度こそ再起不能になるまで叩きのめすつもりだ。
しかし《ホーリー・フェザー》は完全じゃない。多くの迷い星クズが捕らえられ、その度に力を失い続けた。今の状況は、半身であるホロウに近づいたことで共鳴が起こり、僕の表面まで引っ張り出されたというほうが正しいだろう。未だ僕の体を操っているのは、ホーリーがまだ実体化できないことを意味する。
目的を成し遂げるには僕の力――否、僕の肉体が必要な筈だ。
どちらの味方をするべきか……そんなのわかりきっている。
でもそれでいいのか? 本当に《ホーリー・フェザー》は今までも、これからも、正しいのだろうか?
脳裏に浮かんでは消える幻影。
元はただ一つの神であったそれが、善と悪に分かち、ともすれば兄弟喧嘩のような――『アステリア』の命運を握る壮大な喧嘩を何万年と続けている。
僕と空、輝さん、琉、学校の皆。
ナツやリンにヒナ。故郷を護る警官達。
ホロウの強いた悪政に反旗を翻した反乱軍。
皆が皆、神のいがみ合いに巻き込まれた被害者だ。
(ふざけるな……)
光聖君、と僕を呼ぶ少女の声。
空の笑った顔、怒った顔、困った顔――ころころ変化する愛くるしいその表情が思い出され、どうしようもなく胸がいっぱいになる。
故郷を取り戻す。空をまっすぐ家へ帰す。
そのために、この馬鹿馬鹿しい喧嘩を終わらせてみせる。
溺れ墜ちてゆく記憶の海で一筋の光を掴み取る。
“如月光聖”を名乗り、僕が僕として生きたたった数十年の思い出。
絶対に、絶対に手離すものか。
- Re: ☆星の子☆ 121話更新(8/5) ( No.840 )
- 日時: 2020/10/18 18:28
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
こんばんは。お久しぶりです、朱雀です^^
この度閲覧回数100000突破しました……!
読者の皆様、本当にありがとうございます。
続きの更新はもう少々お待ちください。11月末までにはなんとか仕上げたい……笑
今後もよろしくお願いします。それではノシ
- Re: ☆星の子☆ 参照10万突破記念「富士の山頂にて」 ( No.841 )
- 日時: 2021/02/01 09:18
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
番外編 「富士の山頂にて」
天野輝は優れた迷い星クズだった。
故郷への帰還――――
何十回の失敗の末、彼は己の境遇を悟り、心の深層に住まう者と向き合った。
二神の誕生と決裂、『アステリア』の危機、己に託された運命。それは彼の予想を遥かに超えた壮大な物語だったはずだ。
それでいて、天野輝はけろりと言ったのだ。
「馬鹿馬鹿しい」
「俺は貴方の我が儘に応える気はないよ」
「だって地球に、守りたいものができたから」
☆
冷たい風が吹き抜ける。
初夏とはいえ、標高2500メートルまで登れば冷える。麓の雪は溶け出す頃だろうが山頂近くの山肌は未だ白く覆われ、とても登山が出来る様子ではない。幻想的な霧が時折辺りを覆い隠す中、鮮やかな青を纏った影がにわかに現れた。
つんとした女の声が静寂に響く。
「本当に迷い星クズがここにいるのかしら?」
「うん、数週間前、流星群に紛れて一際大きな光がこの町に落ちたようだ。あいつに間違いないさ」
「あいつって、……如月光聖?」
「あぁ。真っ先に私達G-チームに指令が下ったんだから――」
今度こそ、という言葉を男はぐっと飲み込んだ。それを横目に金髪の美青年は小さく息を吐いた。白い息が漏れる。
「それで。なぜ奴は山に登った」
「知らないさ……こんなに寒い中登山だなんて、よっぽどの阿呆だ。ううう、追うこっちの身にもなってほしい!」
「ナツうるさい」
じろりと睨まれ、ナツと呼ばれた青年は不服そうに口を噤む。
彼らは『銀河の警官』Gトップチームの三人組。はぐれた星クズを捕らえるために、遙々地球の島国まで出張中である。正しくは迷い星クズの内に隠れた《ホーリー・フェザー》の欠片を抹消するための重大な任務中なのだが、彼らは真の目的を知らず、数年に渡り迷い星クズといたちごっこを繰り返している。
失敗続きでそろそろまずい、と思っている割に緊張感がやや欠如しているのはリーダーのナツであり、頼りないリーダーを叱咤激励するのはいつもヒナだった。
ナツは一度大きく咳払いをして、ふんぞり返りながら「それでは今後の流れを確認する」と途端リーダー風を装う。リンはちらりと感動のない瞳を向け、ヒナはじろりと睨めた。
それでも二人は、お調子者で明るいリーダーがどこか憎めなかった。
代わり映えのない日々が尊いものであったと、彼らが気付くのはまだ先の話。
「迷い星クズの探索は俺が請け負う」
「光聖を見つけたら状況確認。一人だったらすぐに捕まえるわよ。誰かと一緒だった場合は離れた隙を見計らうか、あるいは夜が更けた頃を襲って」
「ヒナは卑怯だなぁ……」
「ナツが甘いの!」
瞳をさらに吊り上げて恐ろしい形相で睨まれたナツは口を尖らせる。
「奴は一人のはずだ。雪も溶け残っている。人間が登山するには時期が早いだろう」
当の二人はリンの言葉に耳を貸さず毎度の言い合いを始めていた。
仲が良いのか悪いのか。
やれやれと肩を竦ませ、騒ぐ同僚をよそ目にリンはそっと双眸を閉じた。周囲の空気を掴むため感覚を研ぎ澄ませる。
彼にはサイコメトリー能力がある。他人の考えを読み取ることが出来るが、心にそっと忍び込めるような警戒心の薄い者にしか効果がない。稀に聞きたくもない声を拾うことがあるので、リンはこの能力を良いものと思えなかった。
一方で、皮肉にもこの能力は重宝された。他人の思うことが聞こえる他、生物の僅かな気配を察知することにも長けていた。追跡にうってつけなサイコメトリー能力は、リンを『銀河の警官』のトップチームという位まで押し上げたのだ。能力が使えなければ用なし、厳しい世界では即刻切り捨てられてしまう。
「――――、確かに。少し登ったところに迷い星クズの気配があるな」
「さすがリン!」
「日が暮れる前に進みましょう」
霧が深くなる。
先までの喧噪が嘘のように、辺りは再び静寂に包まれた。
★
「よし、今日はここで野宿にするかあ」
朗らかな声が響いた。
人の良い笑みを浮かべた男性が立派な鷲へ恐れもせずに近づく。
「光聖も上手に変身できるようになったな。よーしよし」
「わっ、ちょ……! もう戻るから離れてよ」
乱雑に羽毛を撫で回され、黄色い嘴から不平が漏れる。鳥と人間が流暢に言葉を交わす異様な光景だが、彼らの他に人の姿はない。
おっと悪い、と男が一歩退く。周囲がぱっと光に包まれ、代わりに美しい少年が現れた。光聖と呼ばれた彼は口を尖らせてくしゃくしゃになった琥珀の髪を撫でつける。
「あ~、つかれた! 輝さん、なんで僕を置いて飛んでっちゃうの? 追いつくのに必死だったよ」
「ははっ、ごめんな。空気が気持ちよくてさ、速度が出ちゃって、つい。光聖もいい運動になったろう?」
「まぁ……」
柔和な笑顔でそう返されれば素直に頷くしかない。
光聖と行動する男は天野輝。二人は宇宙の監視という壮大な使命を終えても故郷に還れない、半端な星クズだった。光聖はそれでも毎年果敢に挑戦していたのだが、天野輝はとうの昔に帰還を諦め、蒼の美しい地球で第二の人生を謳歌している。
二人が出会ったのはほんの数ヶ月前。出張中の小さいアパートに転がり込んできた光聖に、輝は迷い星クズの先輩として変身術のコツから勉学まで指南している。
師弟関係の二人は黙々とテントを建てる。
(輝さん、出張が終われば家へ帰るよね。奥さんと子供も待っているし……。そのあと僕は、どこへ行けば良いんだろう)
考えて、しゅんと項垂れる。
光聖は輝を心から尊敬していた。弟のように可愛がってくれた。物腰が柔らかく大人びた雰囲気が大好きだった。
しかし想いを上手く伝えるのは難しい。光聖は人とまともな関係を築いたことなど片手で数えられる程しかない。
(いつも恥ずかしくて、はぐらかしちゃうけれど……次こそ、感謝を伝えよう)
折悪しく。彼ら迷い星クズのもとに刺客の手が伸びる。
光聖の想いが言葉になる日はついぞ来ない。
☆
宵闇の中。青い警官服に身を包んだ三つの影が、天野輝と対峙する。
「それで? 『銀河の警官』が俺になにか用かな?」
輝は柔和な笑顔を崩さず、現れた警官に語りかけた。
言葉を失ったのはGトップチームの方だ。内輪で口早に意見を交わす。
「誰だ? 『銀河の警官』を知っているなんて――、」
「如月光聖とは別人のようだけど」
「纏っている雰囲気は瓜二つだ……同じ迷い星クズと見るのが妥当か」
「迷い星クズってそんなによくいるものだったか?」
「……いいわ。世界の平衡を乱す者はなんであれ、排除するのが私達の使命よ」
そんな三人の様子が可笑しくて、からからと笑う声が響いた。
「なにが可笑しい」
「はは、一生懸命で可愛らしいと思ってね」
「っ、随分と余裕のようだけれど。貴方は私達が何をしに来たのかお分かり?」
「いやぁ、俺も迷い星クズをやって長いから。とはいえ、その青い警官服を見るのは久しぶりだよ。俺の担当は君たちと違ったはずだ。たしか……つばの広い帽子を被った男と、強面と、全身黒いローブの三人組。知らないか?」
指折り数えられる大雑把な特徴。しかし彼らにはある姿が浮かぶ。リーダーは殉職したと伝えられ、残る二人は政府塔から前触れなく姿を消したことで有名な、最上のチームだった。風の噂では反政府の民間組織を立ち上げたのだとか。
輝の口ぶりはかつてのCトップチームと何度か対峙したことがあり、その度彼らから逃げおおせたことを暗に告げていた。
輝の表情から笑みが消え、瞳は鋭く細められる。
「ご苦労なことだね。君たちはただ良いように使われているだけだよ。迷い星クズの正体すら知らないだろうに」
「な、」
「大人しく故郷へ帰りなさい。そこで半端な迷い星クズを笑っていればいいさ。
俺は、この地球を愛しているんだから。君たち警官に邪魔されたくないんだよ」
「わ、私たちの使命は迷い星クズの拘束。当初の目標とは違ったが――ここで出会ったからには責務を果たすっ」
「やめておけ、何のための行為かすら分かっていないだろう」
輝の言葉に当惑するリーダーを、「しっかりしなさいよ」とヒナが小突く。冷ややかな厳しい視線を天野輝に向けた。
「ごちゃごちゃうるさいわよ、半端者。大人しくその首を差し出しなさい!」
言い終わる前に、素早い動作で拳銃を構えた。
乾いた発砲音が静寂を破る。
★
得意の変化で燕の姿になった天野輝は木々の隙間を縫うように飛行する。敵が追っているのを横目に加速させた。
(俺は囮だ。光聖の居場所からなるべく遠くへ……敵を離さないと)
冷静に状況を判断する。
(彼らはきっと光聖を追ってきた。向こうには優秀な追跡役がいるだろう。俺一人逃げたとして次に見つかるのは光聖だ。彼らは今度こそあの子を捕まえてしまう)
以前輝を追っていた三人組は政府の在り方に疑問を抱いていた。たまに輝の前にふらっと現れては遊びのような追走劇を繰り返したが、決して輝を無理矢理連れ去り処分することはしなかった。
(だが今回は違う。彼らは至って本気、大真面目だ。迷い星クズの真相は知らないようだ、が……捕まればきっと、俺と《ホーリー・フェザー》の欠片は抹殺される――――っ!?)
硝煙の匂いが鼻腔を刺激した。
横腹が焼けたように熱い。
撃たれた。そう認識したときには既に、散った鮮血が純白の火の粉となって空へ還っている。
負傷した部位を庇うように重心を左へ傾ける。急旋回して敵の視界から外れると、燕はその小さな体をぐっと垂直に起こした。あらん限りの力を振り絞りぐんぐんと高度を上げる。
バサバサっと乱暴に枝葉を揺らし、負傷した燕は樹林を抜けた。さらに山頂を目指して飛翔を続ける。
(もっと上へ。遠くへ……!)
しかしそれは突然やってきた。
くらり、と目眩が襲う。
思えば輝は朝から晩まで変化術を使っていた。
それだけでない。使命を終えてから、家族ができてから。宙で同胞と合流せず何年も人の姿を保ってきたのだ。
迷い星クズは何にでも変化できるがその本質は鳥でもなく人でもない。
着実に蓄積していた疲労がここにきて馬脚を現わす。無理な飛行のせいで腹部の傷が開いた。
全身が悲鳴をあげる。
遂に小さな燕は平衡感覚を失い、風に煽られなすすべもなく急降下する。
(しまった! 変化が解ける……!)
残った力を振り絞り両翼を羽ばたかせた。墜落の勢いを殺して残雪で湿った山肌に近づき、人の姿に戻った天野輝はどさりと倒れ込む。
空気が薄い。
浅い呼吸を繰り返す。薄い酸素を必死に吸い込んでも息は上がるばかりだ。視界は霞み体温は奪われてゆく。輝は両腕を使って重たい身体を無理矢理押し上げる。ゆらりと立ち上がると脚を引きずりながら山頂を目指す。
天野輝は優秀な迷い星クズだ。心の深層に住まう神と意思疎通ができた迷い星クズはここ数百年の間で彼ただ一人。
しかし。
(……肉体が限界、か。俺としたことが、無茶をしたな)
『――アステルよ』
(あー……ちっぽけな神様? 今度こそ俺に力を貸してほしい)
『――其方に私の力は使役できぬ』
『ましてこれ以上の無理は其方の体が持たない』
(はは……、よく言う! さっきまで俺の体を使って、光聖に余計なことを口走ったろう。答えを明かすも何も、娘は俺の正体を知らない。関わらないでくれ……)
『――。私も其方もここで終いだ』
(……視たのか? それで光聖に希望を託したって? はは、あの少年は目醒めないさ……俺が異端中の異端だったんだ)
『――』
(《ホーリー・フェザー》。貴方の願いは俺が叶える。だから……………)
返事はない。
(初めから素直に神様の言うことを聞けば……事態は好転したのか?)
意識が混濁する中、浮かぶのは愛しい母子の姿。
(ちっぽけなのはどっちだか)
愛する者と添い遂げる。そんなささやかな夢さえ叶わない。
人として暮らし、人を愛した。許されるのなら、この幸せな時間をまだ噛み締めていたかったが。
「ぐ、っ――!?」
肩に鈍痛が走った。いつの間に距離を詰めていた追っ手が容赦なく射撃する。
振り返らない。輝は歯をきつく食いしばり前を向く。懸命に足を踏み出す。
満身創痍な全身に突風がびゅうと吹き付け、その凍てつく寒さに朧気だった意識が明瞭になる。
汗と涙で滲んだ視界に光が差し込み、両の瞳は彼を取り巻く世界をようやく捉えた。
「――――――あぁ」
映ったのは黎明。
東の空が白み荘厳な陽の目が辺りを照らし始める。
列島の太平洋沿いに高く聳える富士の山。その頂きから迎える朝焼けは涙が出るほど眩しく暖かい。
「……なにが、いけなかったかな」
警官から、神から、使命から。逃げずに向き合えば、未来は変わっていたろうか。
「それでも、選んだ選択肢に後悔はないよ」
輝は肌身離さず持ち歩いていた“お守り”をおもむろに取り出す。金色の装身具に埋め込まれたベニトアイトが、燦々と降り注ぐ陽光を浴びて鮮やかな光輝を放った。
すっかり冷たくなったそれを固く握ると珍しく焦燥の滲んだ声が脳髄に響いた。
『なにを――』
(神様なら物に移り住むことくらい造作ないだろう? これは喋り相手にはなれないけど)
『アステルよ』
(このまま俺が捕まって貴方まで抹殺されてしまっては癪だからね。最後の我が儘だ。敵を欺くお手伝い、してもらうよ)
☆
(――あぁ、)
(永く美しい旅だった)
★
「今日の任務は完了ね。久しぶりの手柄だわ」
「はあ、やっとH・F様にお褒め頂ける……。よしっ、それを連れて協会へ向かうぞ。――リン? どうかしたか?」
「いや、…………。先に行ってくれ。俺は少し辺りを探索する」
「わかった、早めに戻れよ」
獲物を担いだ青の刺客は音もなく姿を消した。それを見送った長身の男は、鋭い眼光で周囲を観察する。
(どうも引っかかるのは何故だ。まだなにか……本質的なものが、あるような)
長い指で顎をさすりながら、うまく言語化できない違和感にリンは目を細めた。
しかし自然の厳しさが広がるここでは植物の息吹すら感じられない。肌を刺すような冷気に身震いする。
(やはり思い違いか。ここは空気が薄くて思考が鈍るな。俺も帰還するとしよう――む)
考え身を翻したところで、リンは雪の絨毯に埋もれたなにかを発見する。丁度仲間が天野輝を連れて消えた辺りだ。陽光がそれに反射され、地表近くの水蒸気が光を浴びてキラキラ瞬く。
「あれは……」
残雪を踏みしめ近づくと、碧い石が埋め込まれた首飾りがそこにあった。
「迷い星クズが落としたか」
同僚がこのような装飾品に頓着しないことをリンはよく知っていた。新手の罠だろうか、と用心するが特に異変は感じない。
リンはおもむろに、冷えた装身具を拾い上げた。
ほう、とため息が零れる。その力強い耀きに不思議と魅入られ、リンはそれを自然と懐に滑り込ませた。すると体が柔らかい暖かさに包まれ、羽が生えたかのように軽くなる。その心地良い気分に酔いしれる前に、高鳴る心臓を抑えた。
(――ふ、良い趣味をしている)
珍しく口元を緩めた青年は、美しく流れる金色の髪を翻す。
そうして本来の目標が目を醒ますより前に、刺客はその場を後にした。
- Re: ☆星の子☆ 番外編更新 (2/1) ( No.842 )
- 日時: 2021/08/22 07:42
- 名前: りゅ (ID: B7nGYbP1)
素敵な小説ですね!
応援しているので執筆頑張って下さい!^^
- Re: ☆星の子☆ 番外編更新 (2/1) ( No.843 )
- 日時: 2021/10/21 09:41
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
皆様、お久しぶりです。朱雀です。
この度、2021年夏の小説大会にて、管理人賞 (副管理人賞) を頂きました…!
気づくのが遅れてしまいましたが、この場を借りて管理人様・副管理人様にお礼を申し上げます。ありがとうございます。
そして、今年はまだ番外編のみの投稿ですが、閲覧数がじわじわと増えていて、新しい読者様もいらっしゃるのかなと思い嬉しい限りです。
続きはもう少々お待ちください……
(去年の今頃には2000字ほど進んでいたのですが、展開に納得がいかず再考と修正を繰り返しています泣 番外編に手を付けると楽しくて先にそちらができあがってしまいました)
相変わらずのマイペース投稿ですがこんな作者と ☆星の子☆ を今後もどうぞよろしくお願いしますm(__)m
@りゅさん
コメントありがとうございます! 返信大変遅れました…
なかなか話が長いので、ゆっくり読んで楽しんでいただけたら幸いです。
執筆頑張ります! また感想お待ちしております^^
- Re: ☆星の子☆ 番外編更新 (2/1) ( No.844 )
- 日時: 2021/10/23 21:58
- 名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY (ID: GN2HjPM7)
ご無沙汰してます、友桃です。
めちゃくちゃ久しぶりにカキコを覗いてみたら、「☆星の子☆」が受賞されていて感激して飛んできました。
管理人賞 (副管理人賞) 受賞おめでとうございます!
最近カキコ自体から離れていましたが、こうやって見てるとまた読みたくなってきますね…!
続きの執筆もがんばってください^^
(コメントを書くのが久しぶりすぎて名前のトリップが合っているか不安です…笑 合っていますように…)
- Re: ☆星の子☆ 番外編更新 (2/1) ( No.845 )
- 日時: 2021/10/27 18:33
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 3t44M6Cd)
@友桃さん
友桃さん! お久しぶりです~!
お祝いのお言葉もとっても嬉しいですv
私ももともと雑談版や他の版には顔出さないので、カキコ開くの久しぶりです。
でもふらっと戻ると見知った方のお名前を発見できたり新しい作品に出会えたりして、嬉しいですよね^^
友桃さんにコメント頂けるとパワーもらえます…! 修論執筆の合間に頑張ろうかなぁ笑
トリップ合ってますよb
また覗きにいらしてください。コメントありがとうございました!
- Re: ☆星の子☆ 番外編更新 (2/1) ( No.846 )
- 日時: 2025/03/21 14:28
- 名前: べっぷん (ID: IGUMQS4O)
- 参照: https://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
段落の最初を一字下げたり、疑問符と感嘆符の後は1字分開けるなどして、工夫しているところが凄いです! (朱雀*@).゜.さん、これからも頑張ってください!