コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆    『戦争』遂に始動―― ( No.474 )
日時: 2012/01/01 11:27
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
参照: あけましておめでとうございます^^

14章     93話「炎と氷」


南軍 空中――

「なぁ、ウル」
「なんだ、我が相棒よ?」

 敵の攻撃を俊敏にかわしながらレオは言う。
 俺は何を言いたいのか察しながらも冗談交じりに聞き返した。
 レオは胸の高鳴りが聞こえてきそうなくらいに命一杯の笑みを作り、手の甲で額の汗を拭った。灼眼がキラキラと輝いている。
 今の俺も、きっとそんな顔をしているんだろうなぁ。

「こいつ、強い……!」
「あぁ」

 俺も口角をあげながら頷く。
 目に映るのは、スーツで身を纏った男と次々とこっちへ飛んでくる雷光弾。俺達相応の敵。
 肌がビリビリと感電したように痛い。これは戦争の緊張感からか、強敵と対面した喜びからか、はたまた圧迫するような敵が醸し出す雰囲気からか。
 あ? 敵の雷玉に当たっちまったんじゃないかって? しばくぞ、コラ。
 横にいたレオは唾をごくりと飲み込む。

「やべー、超楽しい。」
「俺もさ、レオ」

 と、そこで敵がしびれを切らしたようだ。
 あからさまに眉間に皺を寄せ執事のような風貌には似つかわない口調で、スーツ姿のイケメン男は話す。

「なぜ俺の攻撃を避けてばっかりなんだ?これが噂に聞いていた双子指揮官か? ふん、聞いて呆れる。」
「はっ、もう飽きちまったか? すまねぇな、俺等はやっとお前に興味を持ってきたところなんだ。」
「今までお前を試してたのさ。俺等相応の敵かどうかな!」

 それを聞いて敵は気分良さそうに笑みを作った。そんなもん見ても何の足しにもならんがな。

「君たちに認められたとは光栄だな。じゃあ一応名乗っとこうか。
 俺は政府軍『銀河の警官(ギャラクシー・ポリス)』最高執行部隊、ジオだ。」
「名前長くねぇか?」
「一回だけじゃ覚えられん。面倒な奴だ。」

 俺等はそろって文句を言った。
 ジオと名乗った男は苦笑混じりに肩を竦める。上から俺等を見下ろしているような態度をとる奴だ。癪に障る。
 しかし、名前は長ったらしいが“最高”とかいうワードが含まれているところを見ると、その強さはお墨付きらしい。
 つか『最高執行部隊』なんてのあったか?
 すると俺の心中を察したようにジオはす、と目を細めて言う。
 お前の作り笑いを見て肌寒く感じるのは、何も俺だけでは無いであろう。

「最高執行部隊が何なのか分からないんだろう? 当り前さ、裏機関だからな。『銀河の警官』でも俺の事を知っているのはほんの一握りだけだ。」
「ふーん……だから制服着てないのか?」
「つか俺等ってことは……その最高なんたらっていうのは他にもいるのか?」

 男は矢継ぎ早の質問を受け、苦笑いしながら言う。

「服は……そうだな、着なくてもあんまり厳しくはない。そして、名前は一度でちゃんと覚えてくれ。最高執行部隊、だ。これで3回目だぞ。」
「おい、質問に答えてない。他にも仲間がいるのか?」
「くっくっ……他の奴らはじき会えるさ。この俺を倒したら、なっ!」

Re: ☆星の子☆    『戦争』遂に始動―― ( No.475 )
日時: 2012/01/01 11:28
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 7hcYnd26)
参照: 微妙なところで区切ってしまった……;

 鳩のような笑い方をする奴だと俺が呑気に考えていると、ジオがいきなり高く跳躍する。そいつの手には紫の稲妻が迸り――

「っ!」

 身の危険を察知して俺達は瞬時に飛び退く。その瞬間、さっきまで立っていたところへ雷玉が飛んできて宙を滑空しながらそれは木々へぶつかった。紫色をした電光が四方へ飛び散り、衝突した大木は無残にも鈍い音を立てて倒れる。
 何故だか寒気が全身を走る。
 あの大木が倒れるなんて……!
 これは笑い事じゃないかも知れん。さっきの大爆発が発生したところも、俺等の本拠地らしいしな。じいさんと連絡が全く取れない。
 好き勝手やってくれるぜ。

「ウル」

 レオが静かに言う。こんな冷静なレオ、久しぶりに見るな。
 悪いがジオとやら、今のレオは恐いぜ?
 俺は頷いて灼眼を見つめる。燃えさかるレオの瞳に何もかも鎮静させてしまいそうな俺の碧眼が重なった。
 俺等は永遠不撓不屈、永久に最強だ!!

「「うおおおぉぉぉ!!」」

 俺はレオの左手を強く握り、レオは俺の右手を握り返す。握られた手からは赤と青の熱くて冷たい炎が沸き起こった。俺たちの体からは殺気にも似た覇気が漲り、それが全身を覆うまでに大きくなる。
 俺は左手、レオは右手にも力を込める。握られた手から迸る炎のエネルギーが全身を伝って左手に溜まるのを感じた。
 その手をレオと同時に上げ、敵――ジオの方向へ掌を向ける。握られた手から互いの存在を感じとって頼もしくなった。すると、より一層炎が激しく燃え上がる。
 ようやくパワー満タンらしいな。
 ジオはというと面白そうにニヤニヤ笑いを続けている。その笑みがいつまで持つかな。
 俺は目でレオに合図する。いわゆるアイコンタクトだな。レオも楽しげに顎を引き、ジオを鋭い眼光で睨む。
 蒼い炎が俺の掌で球状となった。
 「いくぞ」というレオの声を聴いて俺は左手にこれ程かと言う位の力を込めた。
 
 一度炎の球を潰すかのように拳を作ったレオが、
「紅蓮の炎で焼き尽くせぇ!!」
 拳を作ってその手の肘を後ろへ引いた俺が、
「冷獄の氷で凍て付くせぇ!!」
 拳を勢いよく開きもう一度ジオの方向へ掌を向けた俺達が、
「「はあああぁぁぁぁ!!!!」」
 掌から光線を発射する。
 赤と青が融合した色鮮やかな攻撃は、しかし優美だとはとても言えないであろう周りで果敢に戦っていた仲間もろとも弾き飛ばしながらジオの方へ一直線に進んでいく。
 しかしジオはと言うと、この凄まじい攻撃を目の前にしながらも凶悪な笑みで立ちはだかっていた。
 何故逃げない……?
 勿論、逃げようとしてももう手遅れだ。しかし、ジオは焦る素振りすら見せない。
 俺はこの時、今までの敵とはまるで違うその敵に知らぬ間に
 恐怖を感じていたのかもしれない。