コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆  皆さんの意見お待ちしております! ( No.498 )
日時: 2012/04/14 17:43
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: J85uaMhP)
参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/

15章     97話「孤独な強敵」


南軍 空中レオ――

 おいおい、何故逃げない?
 俺はジオが俺達の力が融合した攻撃を前にして、じっと立っている事に不快感にも似た疑問を持っていた。
 執事服のイケメンさんよぉ、格好つけるのは良いが丸焦げになって死んじゃあ面目だって丸潰れだぜ? ほら、逃げられないんじゃ無いか。こんなんで終わっちまうとは期待外れにも程が――
 ジオが動く気配も無く俺達の攻撃を受けるのを見て、勝利を確信した時。
 俺等は信じられない光景を目の当たりにして、思わず目を見張った。

「「あ?」」

 煙が立ち込めていて良く見えないが、そこには確かに立ち続けている男の姿が。
 しかしおかしい。煙が立っているという事は、攻撃は当たり爆発したという事なのだ。
 では何故、敵は生きている?それも全くバランスを崩さずに。
 解ける事の無い疑問が悶々と脳内を巡る。
 と、ジオの影が煙から姿を消した。
 途端に背から感じる凄まじい殺気。

「!」

 俺は素早く後方からの攻撃を避ける。すると、さっきまで自分が立っていた場所目掛け雷が落ちてきた。一瞬遅れ、空から雷電と共に雷特有の音が轟く。
 俺は咄嗟に右腕を掴んだ。握った左手に力を込める。
 俺が、震えている……
 双子の最強戦士と謳われた、この俺が?
 
「ありえねぇ……」
「俺が無傷な事がか?」

 ぽつりと呟くと、自分が落とした稲妻が木々に吸い込まれ爆発する様子を楽しげに見ていたジオが聞き返した。自信に満ちた笑みを浮かべて。
 ウルはその反面顔を顰める。鼻を鳴らすが、否定しないところを見るとどうやら何故敵が無傷なのか俺以上に不思議なのだろう。
 俺はもう、他の南軍を気にかける余裕が無くなっていた。漆黒の犬も相当厄介なんだろうが、こっちの方がもっと危ない。

「はっ……こんなに強いなんて聞いてねぇぞ、ジジイ?」

 俺は悔し紛れに毒づいた。
 何だよ、最高執行部隊っていうのはグロさんが付け入る隙も見せないような所だったのか?
 俺は未だに動こうとしないジオを見る。そして意を決して口を開いた。

「教えろよ……お前の能力は何だ?」

 ジオはす、と目を細めた。そして俺を蔑む様に冷たい瞳で一瞥する。
 この台詞は聞き飽きている様な、そんな反応だった。

「あぁ、教えてやるとも。だが、教えたところでお前達の敗北に変わりは無い。」
「何だと?」

 ウルが怒りを精一杯押し止めながらも聞き返す。
 そんなウルを見て、ジオは感情のこもらない瞳で笑った。

「俺の能力は、そう、永遠なる命。外部からの攻撃に一切干渉せず、空腹などの要らぬ感情が体を満たす事も無い。
 そう、俺は死なない。例えこの星が滅び、宇宙の彼方へ飛ばされても!」

 俺は露骨に顔を顰めた。ジオの狂った様な高笑いが耳障りだった。
 そして何より、突きつけられた今の言葉が全て真実だとは、どうしても信じられなかった。
 俺は試しに軽く掌に力を込め、そこで小さく渦を巻く玉をジオに投げつけてみる。
 ジオは俺の目的がわかったのか、何も言わずにその場から動かなかった。
 その玉は空を滑るように飛んでいき、ジオの胴体へ当たって弾けた。赤みを帯びた光が迸る。
 しかしそれも束の間、その光は爆発時の煙たい空気と共にジオの体内に吸い込まれる。
 そしてそれと連動するように、先程まであったはずの傷が跡形も無く消えた。
 執事服までが新品のように小奇麗に修復されるのを見て、俺とウルは揃って絶句する。
 
「こんな事、ありえるのか……? ただでさえ強いのに不老不死だって?」

 ウルが呟いた。考え込む様に眉間に皺を寄せる。
 しかし、そんなに弱気ではいられない。俺達は反乱軍の戦闘指揮官。実際、あのジジイも俺達の戦闘技術は認めてくれている。
 そうやって自分を鼓舞し、俺は奮然と言い放った。

「俺達に倒せねぇ敵なんていねぇ!!」

 頭上の雷音に負けない位声を張り上げ俺は叫ぶ。
 すると黒い犬と戦っていた南軍まで振り返り、今の声が俺だと気付くと頼もしげに笑った。俺の自信に満ちた雄叫びを聞き、南軍の士気が高まったのだろうか。皆押され気味だった筈が、一気に形勢逆転したかの様に見えた。
 ウルも満足げに微笑み、目の前の強敵へと再度目を向ける。
 しかし、その宣戦布告にジオは恐れることも無く、醒めた瞳で俺を真っ直ぐ見据え笑う。

「はっ、今までだってそう言う強敵と何度も戦った事はある。だが結果は同じさ。皆俺を置いて消えていくんだ。好敵手も、仲間も、家族でさえも!
 お前達もどうせ、死ぬんだろう?」

 その顔には最早感情なんて存在していなかった。
 何を考えているのか窺えない、隙の無い表情。
 その表情はまるで仮面のようで。
 その姿はただ操られる、からくり人形のようで。
 しかしただ一つ、瞳だけは孤独な心を露にしていて。
 これが真のジオなんだと、不器用な俺にも納得がいった。
 そうか――こいつはずっと、
 一人だったんだ。