コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 2ヶ月ぶりの更新。遅くなってすみません; ( No.505 )
- 日時: 2012/07/21 14:17
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
15章 99話「気ままな戦友」
西軍 洞窟 リンVSトル――
敵の行動パターンを全て覚えているトル。
正直、どうすれば勝てるのかは全く分からない。
しかしその必勝法は思うより難しくない気がするな。
そう、例えば無心になってみたり――
「動かないのなら、私から行きますよぉ?」
突然、眼前に突きつけられた青いガン。その銃口から褐色の光が漏れだしたのを捕らえ、危機感から俺は身を翻した。しかしその行動も既に読んでいたかのように、トルは銃口の向きを即座に変える。
やばい――!
避ける事が出来ないまま、俺は攻撃を真に受けた。
ボフッ
その時、こんな戦場に似合わぬ間抜けた音がして俺は顔を上げる。すると目の前が何故か褐色の煙で覆われていたため、その煙たさに俺は大きく咳き込んだ。苦しさに涙を溜めて呻く。
「何なんだ、一体……」
すると敵も同じく激しく咳き込んでいるのに気がついた。
「ゲホッゴホッ……どうしてこうなったんですかぁ!?」
「それは俺が聞きたい」
どうやらこうなる事はとるにも予想外だったらしい。自分で煙幕を放ったくせに、あまりの煙たさに目を回している。
しかしトルはよろめきながらももう一度、銃口をこちらへ向けた。金属がキラリと妖しげに光る。
科学者は愛用のメガネを押し上げ、唇を引きつらせた。
「っふ、次は外しませんよぉ?」
確かに、今度ばかりは流石にまずそうだ。
銃口の奥では黄金色に輝く光が漏れていて、次はレーザー線だろうかと俺は呑気に考えた。ちなみに、俺はサイコメトラー(読心術とも言う)を使えるのだからトルの心を読めば良いんじゃないかと思う奴も多いが、俺の能力はまだ力が弱いから、敵が俺の能力を知っていてある程度警戒を強めていると使えない。あまり持っていても得をしない能力なのだ。
俺は無言で太刀を構える。そして地を蹴った。
本来ならばこういう時、俺は真っ向から攻めたりなどしない。しかしトルが俺の行動データを全て把握している今、常とは変わった行動をするのが一番だろうと俺は踏み込んだのだった。
銃口から閃光が迸っているにも関わらず向かってくる俺を見てどう捉えたのか、科学者は唇を歪め渋面を作る。しかし瞳は、同時に楽しげでもあった。
俺は青いガンに狙いを定め、刀を横に薙ぎ払う。
耳障りな金属音が鳴った。太刀と青いガンが擦れ合い生まれる不協和音。
俺は顔を顰める。金属音が気分悪くてでは無い。トルが俺の行動を、予測していたからだった。
やはり、常と反対の動きをしても駄目か……
俺は軽く舌打ちをする。トルは気味の悪い笑みを浮かべ、青いガンを持つ右手に力を込めた。人体改造をした事で得た怪力が、惨くも俺を弾き飛ばす。
洞窟の壁に当たる寸前、俺は脚に力を込めて何とか止まった。
そんな俺を見て、トルは満足げに喉を鳴らす。
「ンフフ、いつもと違う行動を取ろうとしたみたいですが、私は行動パターンを全て覚えている……少し突飛な事をしたとて、その後の動作は変わりませんよぉ? 大切なのは“どう考えるか”ではなく“どう動くか”なのですからねぇ。」
- Re: ☆星の子☆ 76話の回想がちょっぴり。 ( No.506 )
- 日時: 2012/07/21 14:16
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: 62e0Birk)
- 参照: http://ameblo.jp/suzaku-runa/
「――――――そうか。」
トル、お前は少し口が軽いんじゃないか?
お陰で良い鴨になってくれたよ。
俺は再びトルを狙い刀を構える。そして左下から右上へ、勢いよく振り上げた。
勿論この程度の攻撃はトルも白衣を翻し、避ける。
俺はそれを一瞥し、すかさず刀を水平に持った。そして大きく弧を描き、トルを攻める。
これもトルは紙一重で避ける。しかし先程に比べ随分と余裕が無いように見えた。
――もう一息だ。必ずチャンスは来る……!
俺はそれだけを考え、動いた。意図など無い。何も考えずに、ただ本能で。
「――っ」
トルがよろけた。
俺は瞳を光らせる。これは昔からの癖でな、何年経ってもなかなか直らない。
俺の刃の先端がトルの頬に触れた。地に鮮血が飛び散る。しかしそれも束の間、その血はすぐに赤みを引き淡い緑の火の粉となった。
トルも流石にまずいと感じたのか、急に顔を強張らす。そして大きくジャンプし、俺との距離をとった。
その時。
甲高い笑い声と共に爆発音が聞こえた。それも幾つもだ。
乱暴なその攻撃を食らったこの洞窟の壁から、パラパラと破片が落ちてきた。
トルの充血した瞳が洞窟の先を捉える。そして情けない声色で嘆いた。
「あぁ、私のロボット達……」
それと同調するように、爆発を起こした獰猛な男が斧を振り回し駆けてくる。
「ひゃっはぁ――! おい、こらリン、そこを退け!
そいつは今から俺の獲物だ!!」
セルだった。
反乱軍の中で一番争いが好きで、乱暴で、見境の無い男。そいつが次なる戦いを求めやってきたのだ。
ふ、と笑いが漏れた。さっき、セルはトルに勝てないと思いロボ軍へ送り込んだが、その選択はどうやら誤っていたようだ。
セルはいきなり、斧を横に振った。風が切れる軽快な音がする。その攻撃をトルは成す術も無く受けた。鮮やかに火の粉が舞う。
完全に警戒心をなくしたトルの心の声が、脳内に響いた。
(くっ、セルの行動データは毎日一致しないから作れなかったんだが……これは痛いところを突かれた……!)
動揺を現したトルの本音だった。
しかし、こいつこんな喋り方だったか?
声は一緒だったからトルだと分かったものの、別の肌寒さを覚える。
――と、唐突に体が光った。そして紫の光に包まれる。
「なんだこれは……?」
「……!?」
トルがセルの攻撃から必死に逃げ、俺の方をキッと見た。その瞳は戸惑いと焦燥に揺れていた。
何かあると瞬時に悟った俺は、もう一度トルに神経を集中させる。
(あの光はムマの……! まさか、これが『エンドレス・ザムーン』の特殊能力のもう一つ、取り込んだものの所望をかなえる能力なのか!? しかしこれが外部で発動するのは難しいと考えていたんだが……ふむ、研究のし甲斐がありそうだ――っと! それよりもセルをどうにかする方法を考えなければ。)
一つ発見した事がある。本当のこいつは見た目よりも些か冷静で落ち着いているらしい。そう考えると色んな意味で虫唾が走るがな。
俺の体が少しずつ薄れてゆく。どうやらムマという敵の能力は、意識だけでなく身体までも異世界へ飛ばすらしい。
ふいにある少女の声が、鮮やかな花々で囲まれた庭園の風景と共に思い出された。
『――私達は、仲間だよ――』
“仲間”だから、呼んだのだろうか。では何故俺なんだ……? 迷い星は何をしている?
しかし俺は何となく、唇で弧を描き笑ってみた。
「仲間なら、行かなきゃな。」
「……ハッ、さっさと行け。ここは俺様だけで十分だ。」
セルも残忍な笑みを浮かべ、俺の背中を押す。
そして一人相手には少し大げさな爆発が起きた。それと同時に、内側から吸い込まれるような感覚が俺を襲い、周囲が暗くなる。
セルは相変わらず乱暴な奴だ。だがそんなあいつから、一つ教わった。
たまには無心で気ままに戦うのも良いとな。