コメディ・ライト小説(新)

Re: ☆星の子☆ ( No.67 )
日時: 2011/11/05 19:42
名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: qRt8qnz/)

4章     28話「雨は嫌い」


 光聖君の階段を上ってくる音が徐々に近くなる。
 そのたびに私の心臓は強く脈打ち、今にも飛び出てしまいそうだった。

(あぁ、どう切り出せばいいんだろう。声上がっちゃいそうだし、顔真っ赤になるに決まってる!! そしたら、私が誘ってるみたいだし……)

 こんなことで悩むなんて、なんて勇気のない子だろう。と皆さんは思うかもしれない。
 でも私は人と接するの苦手だから、こういう風なのだ。どうか勘弁してほしい。

 そしてついにドアノブに手をかける音が聞こえた。
 光聖君は自分の部屋があるくせに、しょっちゅう私の部屋で過ごしている。その癖は直した方が良いとその度に私は思う。
 だってず〜っと一人で話してるんだもの。おかげで宿題もできない状態だ。

「空っ、また星見てたの。」
「光聖君こそ、また私の部屋に来たの。……夕飯よく食べてたね。」
「うん、だってハンバーグ大好きだから。」

 ニコニコしながら話す光聖君は、ちらっと横目で灰色の雲で覆われた空を見ながら「星……、見えないね」と呟いた。

「うん…。明日は雨が降りそう。」

 私は声が変じゃないかな、と気にしながらも当てずっぽうで返事をした。

「うえ〜、僕雨キライ。」

 光聖君は眉を寄せ、しかめっ面を作り呟いた。
 その姿が幼い子供を鮮明に連想させるので、私は苦笑しながらどう切り出そうか考えた。
 とその時、光聖君が心配そうに曇空を見る姿を見て私は突如案を思いついた。
 我ながらナイスアイデアと思いながら、私は光聖君に話しかける。

「ねぇ光聖君。今週の日曜日も雨降りそうなんだけど、ずっと家の中じゃつまんないよね。じゃあさ、お菓子食べながら映画はどう? うちのクラスのなつみちゃんが、ぜひ光聖君と一緒に見たいんだって。」

 思ったよりスラスラ言えた。違和感なんてもの、何も感じない。本当に軽く誘っているように繕えた。
 きらきら光るうすい茶色の瞳を見て、私はほっと一息つく。
 やった! 私の作戦大成功!
 心の奥ではそう叫びながら。
 でも光聖君の言葉を聞いてその叫びは一瞬にして凍りついた。

「勿論行くよ! 空も来るんでしょ?」

 空が来ないと行かない。
 そう語っていた瞳に押され、私はゆっくりと、でも確実に頷いた。
 ……何でいつもこうなっちゃうんだろう。