コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ 119話「建国神話」 ( No.837 )
- 日時: 2020/04/27 18:48
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: /FmWkVBR)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no
19章 119話「建国神話」
遥か遠い昔の話。
それは強大な力の塊だった。のちに人はそれを《神》と呼んだ。
まっさらな地に生命の息吹がかかった。
水を、緑を、動物を生んで育んだ。それらの運命は《神》の掌にあった。
やがて一つの惑星に文明が出来上がった。
《神》は考えた。一番素晴らしい国を創ろうと。
それはままごとで遊ぶように造作もない。
目まぐるしく発達する惑星。強く立派な国と、不思議な力を宿した赤子。
《神》は産み落とす。変幻自在な光の粉。広大な暗い宇宙で光輝く星のように。
《神》は銀河の海を見渡したい、隅々まで。
☆
還元する。運命は循環する。
魂は天へ、肉体は《神》へ。
豊富な資源と聡慧な光の子。その惑星は煌びやかだった。
それでも。それゆえに。
力を得て富を得た民はより多くを求めた。
《神》が創った自慢の国にたちまち戦火が広がる。
★
眼が焼けるような赤だった。火の海だった。
《神》は初めて、生んだ命を面倒だと感じた。
《神》への崇敬を忘れ私欲に溺れた民を罰する。剥奪する。
還元する。運命は循環する。
狂い始めた歯車は戻らない。
そして気付く。欲に塗れた哀れな命、それはどこから出ずるものか。
全ては《神》の驕りだった。
☆
排除する。蠢く闇を。燻る負の感情を。
高慢を強欲を嫉妬を悲嘆を怠惰を憤怒を肉欲を憐憫を憎悪を恐怖を焦燥を侮蔑を空虚を絶望を。
《神》は自身から摘出する。
そうして器は作られた。不出来で不要な感情を閉じ込めた、およそ概念のような存在。
豊かで正しい国を作り上げるための正当な犠牲だった。信じて疑わなかった。
負の感情の掃き溜めとなる器が
たとえ《神》の半身だったとしても。
★
《神》は名付ける。
国の名を『アステリア』。銀河の海で一層輝く星。
神の名を《Holy Feather》。邪悪な心の一切を淘汰した聖なる光。
奇しくも己の半身によって、悪の化身は封印される。
その名は《Hollow Feather》。虚像として彷徨い消失するはずだった闇。もう一つの神の名。
還元する。
運命は循環する。