コメディ・ライト小説(新)
- Re: ☆星の子☆ ( No.85 )
- 日時: 2011/11/26 20:53
- 名前: (朱雀*@).゜. ◆Z7bFAH4/cw (ID: MMm5P7cR)
5章 33話「夢の花畑」
あたりは真っ白。ぼんやりと花畑が見える。赤、白、黄色……色とりどりの鮮やかな花たちが僕を包み込んでいる。
そしてその真ん中に人が立って僕に何かを言っていた。必死に口を大きく開けて何かを訴えている。
でも、もう少し大きい声で言って。聞こえないよ……。
すると、急に花畑が消えて次に僕は真っ白い雪が積もった山の頂点にいた。やっと視界も晴れてきたころ相手の輪郭もようやく見えるようになった。
そしてさっき僕に何かを伝えていたのは……
<輝さん?>
ピントを合わせるようにどんどんくっきりと見えてくる顔をじっと見つめながら僕は呟いた。
でも、声が出ない。
<輝さん。輝さんなんでしょ。ねぇ返事をしてよ。僕のところに来て……!>
声が出ないもどかしさに加え体も動かせない。
あぁ、その胸に飛びつきたいのに!
でもその代わり、聴覚はどんどん良くなっていくようだった。ところどころ言葉が聞こえる。
『…は目の……にあ…。ぜったいそ……もれ!』
<何? もう少しはっきり言って。絶対…何なの?>
そうこうしているうちに、またぼんやりしてきた。
もう黒いシルエットにしか見えない輝さんはどんどん僕から遠ざかってゆく……。
<待って! 待ってよ、ねぇ。僕の正体は何なの? 輝さんはどうして消えたの?!>
僕は泣きそうな思いで叫んだ。いや、実際声は出ていないけれど。
僕は必死で手を伸ばした。伸ばせる限り長く。足は動かないのに手は動くみたいだった。
手を伸ばして空中を掴む。でも、輝さんは戻ってこない。僕の手は何も無い空中をもがく様に引っ掻いた。
そして遂に白い雪しか見えなくなったころ、僕の頭に懐かしい声が鳴り響いた。今までよりもはっきりと。脳内に文字が浮かび上がる。
『答えは目の前にある。絶対に空を守れ!』
その声を最後に僕は飛び跳ね起き上がった。
僕の身体は、全身汗で濡れていた。
(なんだ……夢か。…あれ? 何の夢を見ていたんだっけ?)
起きた時にはもう、少しも夢の内容を覚えちゃいなかった。
ただ……何か大切なことを思い出した気がする。