コメディ・ライト小説(新)
- Re: 制服とおれんじジュース。 ( No.4 )
- 日時: 2020/10/08 18:15
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)
orange1「知ってるよ」
他の誰よりも君だけが凄く、煌めいて見えるんだ。
「た、たたた、た、ち……ばな、く、くん……っ」
夜の買い物。
母に頼まれ、醤油と片栗粉をカゴに入れて、そして自分の好きなお菓子を店員さんに出したところ_______それは、立花君だった。
「ふ……っ。キョドリ過ぎだっつーの、てか、こんな時間でも微笑さんが出歩くなんてね。クラスの奴に会わないようにこの時間帯でバイトしてんだけど……まあ、微笑さんだからいいか」
そんなようなことを苦笑交じりに話す立花君を私は凝視していた。
「な、なななな、何で、私の名前……っ」
学年一の人気者の貴方様のような世界の違う人間が地味で陰気臭いこちらの世界の闇と化した万年ボッチの私の名前を知っているなんて可笑しいでしょ!!!?
_________「……知ってるよ、微笑 芹香でしょ?」
私を目を見開いてしまう。
我知らず、両手を握り締めていた。
商品を袋に入れ終わった立花君は優しくにこっと微笑みを浮かべた。
「ご会計、980円です」
瞬きを繰り返して、会計をしていることに気が付いた私は慌ててお財布からお金を出す。
「丁度、980円をお受け取りました。レシートと商品です、ご来店ありがとうございました」
「どうぞ」と渡されたレシートとコンビニの袋を受け取る。
このまま、帰るのかぁ……結局、何にも変わらず、今までと同じく明日も普通に、隅で過ごすんだよね。
……何だろう、凄く、苦しい……。
目尻が、かあっと熱くなる気がした。
ぎゅぅうっと胸が縮んで締め付けられる感覚がまた、する。
星々に負けない輝きを目の前で見てしまったら、こんな気持ちになるんだ。
________「微笑さん、待って……!」
腕をグイっと掴まれ、咄嗟に身構えてしまう。そして、恐る恐る振り返ると息を切らした立花君が立っていた。
額から首筋にはうっすらと伝った汗の跡が。
そして、いつものように屈託のない太陽みたいな笑顔を浮かべた。
「はい、これ。奢り、ね」
手に渡されたのは、果汁100パーセントのオレンジジュース。
「お菓子には、ジュースが必要でしょ?」
不思議そうにしていた私の顔を見た立花君はそう言って、じゃあねと手を軽く振ってレジへと戻っていく。
「………っ」
………、………優しいか。きゅんと来たよ、もう!!!
くしゃくしゃっと自分の髪を触って、頬を叩く。
手に持ったオレンジジュースを見つめる。
カチカチ、と蓋を回して開ける。
口へとオレンジジュースが入ったペットボトルを運ぶ。
「……美味しいし……」
甘くて、苦い__________矛盾した味。
何故か、笑顔になれるそんな魔法の飲み物だと私は思った。
だってオレンジジュースを見る度に心が温かくなる気がする。
一歩一歩、立ち止まることもなく歩く。恐くて不安だと思っていた暗い道も堂々と歩けた気がした。
何だか、立花君が居るみたいで。
彼は、陽介と言う名前の通り、明るくて周りを惹き付け巻き込む才能がある。
……いつもカッコいい彼は、どんなことも屈託のない笑顔を浮かべてする。
今さっきだって「お菓子にはジュースが必要でしょ?」って言って小さな気遣いをしてきたし。
________『知ってるよ』
誰も、私のことなんか見てないし知らないと思ってたのに。
きっと、私のことなんか影としか、と言うか壁としか見てないって思ってたのに。
「どこまで、カッコいいんだろぉ……」
はあ、と私は一人、夜空を見上げ溜息を吐いた。
