コメディ・ライト小説(新)

恋敵になりまして。 ( No.0 )
日時: 2020/09/24 17:44
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12710

 どうも、初めまして。
数々の小説に圧し潰されながらも頑張って生きる雪林檎ゆきりんごです。 
 

いやぁ、完結していない小説をお読みになってくれていた読者の皆様にはお詫びします。
すみませんでしたっっ!!!



 今作も、ていうか……読んでくれると嬉しいです。

☆ 注意 ☆
この作品は『君はかわいい女の子』という小説スレを利用したものになっております。
けれども、全く新しい物語なので楽しんで頂けると思います。
 そして今作ではいくつか主人公による軽いいじめや傷害等が出てくると思います。
そういうのが苦手な方はお早めに読むことをおやめになってください。

☆ 概要 ☆
 恋する乙女で副会長を務める雪科ゆきしな 月奈つきなは生徒会長の事が好きなのだが会長の心を狙う女子達の排除で忙しい日々を送っている。
 ある日、同じような女子生徒一人と一緒にいる会長を見てしまう。その顔は見たこともない程、赤くなっていて……!!

恋の為に密かに脅し暴れ回る月奈と結ばれるのは、本命・会長か……それとも?

☆ 目次 ☆

一気>>0-

ぷろろーぐ>>1

登場人物>>2

第一章>>3


最後まで、温かく見守ってやって下さいな。

☆ コメントをしてくれた大切な読者様 ☆

・美奈様 >>5-7

有難うございました!!ヾ(≧▽≦)ノ

☆ お知らせ ☆

第一話投稿 _ 2020/09/14 17:10

ぷろふぃーる追加!登場人物紹介の欄に書き加えましたよ!

Re: 恋敵になりまして。 ( No.1 )
日時: 2020/09/22 14:11
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろろーぐ ☆

 __誰だって辛い恋なんてしたくはない________

出来るだけ、幸せで楽しい甘い恋をしたい。
けれど、そうはならない。
 彼と彼女が、こうなるなってしまうなんて誰が思ったのだろうか。
生徒会長と副会長。
お互いを支え合っていたかけがえのない関係。
 
 「まあ、おれとしてはラッキーだけどさ」

彼女の艶めいた左右に揺れる髪を見つめる。お似合いの2人が、壊れることは丁度いい。



 「……誰か、見てた?」
昔から視線には慣れているが、やはり恐い。何を見られているかわからない。
これから、自分のすることが会長にでもバレたらおわりだ。
胸を抑え、ふぅっと息を吐く。
 
 __会長と、結ばれるのは絶対、私なんだから______

恋敵は、排除する。決意を固めた雪科ゆきしな 月奈つきなは人目を気にしながら路地に向かう。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.2 )
日時: 2020/09/24 09:31
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 登場人物 ☆

雪科月奈 〈ゆきしな―つきな〉>>9
 副会長を務める完全無欠の少女。
実は、会長に恋する乙女で夢見がちで思い込みが激しい面がある。自己管理が出来ない質がやや目立つ。
恋敵達を陰で脅し排除している。

鳴海朔良 〈なるみ―さくら〉>>10
 生徒会長を務める生真面目な少年。
爽やかで優しい好青年な為、多くの生徒(半分以上は女子)に慕われている。
月奈の大好きな人。

園崎加恋 〈そのざき―かれん〉>>13
 派手なギャル女子生徒。
純粋無垢で天真爛漫な性格でリーダー格。
朔良と何だか親しい間柄のようで……。
月奈の最大の恋敵。

嬉野翔 〈うれしの―しょう〉 >>15
 雪科家顧問弁護士の息子。
将来有望、眉目秀麗と多くの令嬢から声を掛けられている線の細いスラリとした体格の長身イケメン。
夏や冬でも花粉症だからとマスクを着けていることが多いが本当はマスクをしていないと声を掛けられ面倒臭い事になるからだと言う。
飄々とした性格で何気に優しい。
真っ直ぐとしていて月奈を気に入っている模様。


花依澪 〈はなより―みお〉 >>17
 月奈の幼い頃からの従者。雪科家の代々従者の家に生をなした。
クールドライな性格の持ち主だが主人である月奈に忠誠を誓っている。
月奈の一途な朔良に対する恋心にも気づいており、翔の事を警戒している。
スラリと普通の女子よりも背の高く産まれながら桃色っぽい茶髪を持つ。
制服を着崩したゆるふわ系ギャル。ツインテールにしている。

今後も増える可能性あり! 

Re: 恋敵になりまして。 ( No.3 )
日時: 2020/09/26 15:27
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第一章 ☆

第一話>>4 第六話>>16

第二話>>8 第七話>>18

第三話>>11

第四話>>12

第五話>>14

Re: 恋敵になりまして。 ( No.4 )
日時: 2020/09/14 17:10
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第一話 ☆

 「……ほら、見て。鳴海なるみ生徒会長と雪科副会長よ!」
きゃあ、と黄色い歓声が上がる。
 私は髪を梳いてから、優しい皆の副会長の微笑みを浮かべる。
すると、歓声は大きくなる。

 「……雪科さんは凄いなぁ、僕は、何だか照れ臭くて笑顔なんか浮かべられないよ……」

 並んで歩く会長の眼鏡の奥の澄んだ瞳が左右に揺れる。
さらさらの髪が光に照らされ、靡く。柔らかそうで華奢なのにそれでいてスラリと高い背。
 本当、全てが可愛い……。
普段見せないその照れた顔に瞬きをするのも忘れてしまう。

 真面目な生徒会長として君臨する鳴海 朔良さくら君____副会長と生徒会長、お互いを支え合うかけがえのない関係。


 _________私は会長の事が好きだ。それに、会長の運命の相手は私に決まってる。

 だって、だってさ会長に憧れる当て馬の女の子や見るだけ嬉しくなるもはや通行人の女の子よりも、ずっと、ずっと傍にいるんだよ。
彼の結ばれる相手は私に絶対、決まってるでしょ。


 「ありのままの会長が私は、好きですよ?ええと、だから、その……皆……っ」
真っ赤になった頬を抑えながら、下手な微笑みを浮かべた。
 こんなに好きなのに、今更恥ずかしがってどうするんだろうと言い訳をぺらぺらと言う自分を心の中で殴る。
あ~!!!“好き”の言葉が言えたのにぃい、このままだったらもしかしたら会長にッッ!!!

はぁっと我知らず肩を落としてしまう。

その表情の代わり具合に、
「……ぷっ……元気づけてくれてありがとう。僕は僕のまま、居ればいいってことでしょ?」
噴き出して小さく笑う会長に見惚れてしまう。

 この笑顔を、見る為に私は傍にいる。
ずっと、誰が何と貴方を言おうと隣に居るから。いつか、気付いてくれれば良い。
 ――――――想ってくれればいい。忠犬ハチ公のごとく、貴方が振り向くのを待ってるから。
会長の隣は、私の居場所だ。


 「……ってどうしたの、雪科さん」
きょとん、と犬のように目の丸くなった会長に微笑み掛けた。
「会長が笑顔になってくれて嬉しいです」




 「会ちょ――ッ」
華奢な身体つきの男子高生を見つけて、急いで駆けていく。

やった、お昼休みに会えた!
もしかしたら一緒にご飯を食べれるかもしれない、一緒に食べる光景を思い浮かべるだけで弾んでいた心が宇宙に行きそうになった。


 私は、近くに寄るが________一歩、後退りした。見たくはない、そんな場面だった。

 「……う、そ」

会長の隣、つまりいつも私のいるポジション。そこにいたのは_____派手な女子。
 会長の一ファン、当て馬タイプの女子だ。

 「園崎さんっ」
柔らかく聞くだけで胸をときめかせる声に自分が呼ばれていないのに、嬉しがってしまう私に「馬鹿」と呟く。
 絶望する_____あんな子に会長は、鳴海君は、そんな幸せな顔を浮かべるの?

今までの努力はどうなるんだろう、と乾いた笑みが漏れる。
 「……いや……違う。最後に、結ばれるのは私……あの子は過程であってゴールへの障害物役の子。いわば、恋敵」
 そうだよ、会長があんな子と結ばれる訳がない。だって、お似合いって言われる私が隣に居るんだよ。


 私は頬を叩く。
 障害物なら、排除するべき。下手に纏わりつかれても会長が迷惑になる。
なら、早めに手は打っといたほうが良いに決まってる。
 「待ってろ……園崎加恋……!!」

Re: 恋敵になりまして。 ( No.5 )
日時: 2020/09/14 13:35
名前: 美奈 (ID: cO3So8BN)

雪林檎様

突然のコメント、失礼します。美奈と言います。
以前、私の小説にコメント下さってありがとうございました!コメント下さった方の小説にもコメントをしよう、というのがマイルールだったんですが、本業の方でバタバタしていて...なかなか時間が取れず、今になってしまいました><
「恋敵」という言葉に惹かれてやってきてしまいました笑
生徒会長と副会長の恋路...私女子校だったのでこんな素敵な展開は1ミリもなかったです。なので、このお話を読んで私の青春を補完しようと思います笑
「月華のリンウ」とか、「先生の事が好きです。」も実は更新楽しみにしています!執筆頑張ってください(*´꒳`*)

Re: 恋敵になりまして。 ( No.6 )
日時: 2020/09/14 16:59
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

美奈様

 え、あ……え!!?
ま、まさか……尊敬なる美奈様が……私の小説にコメント何て……ッッ嬉しすぎますッッ!!!
コメントしてくれてありがとうございます!!
生徒会長と副会長、という関係性が大好きでして、いつもこのようなものになってしまいます。
それなのに素敵な展開とはお褒めの言葉、感激です!!。°(´∩ω∩`)°。
月華や先好きの方も読んで頂いているなんて……そんなことを知った今日は私の中で一番いい日です!

 それよりも受賞、おめでとうございます!!!!!
他人事なのに、とても、嬉しいです。ヾ(≧▽≦)ノ
美奈様の小説はキャラクターも濃いですし、私の方こそ見習って書いています。
描写表現も美しいですし、何より感情移入のしやすい小説なので「俺式」は大好きです!!
これからも応援しています。

 なので、また美奈様の小説の方にもコメントをしに遊びに行きたいと思っていますので、宜しくお願いします!(・・)ゞ

Re: 恋敵になりまして。 ( No.7 )
日時: 2020/09/14 19:46
名前: 美奈 (ID: cO3So8BN)

雪林檎様

尊敬だなんて、そんなそんな。笑
最初から恋敵の園崎さんが強烈そうなので、楽しみにしてます!がんばれ月奈ちゃんんん〜

うわぁぁありがとうございます!お祝いの言葉いただけて嬉しい・:*+.\(( °ω° ))/.:+
自分でも未だに現実なのか?ってなってます笑
またいつでも来てくださいね(*^^*)とりあえず新章頑張るので!

ではではっ。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.8 )
日時: 2020/09/21 15:04
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第二話 ☆

 「……園崎さんさ、誰にちょっかい出したかわかってるの?」
人気のない雑居ビルの間、路地に壁に追い詰められた園崎さんと追い詰めている私の図。
誰が見てもいじめの現場だ。早めに話は切り上げたいが、言われるだけじゃ食い下がらない眼をしている園崎さんに私は溜息を吐く。
 流石、校則破りを常習して教師に睨まれても我慢せずとやりたいことをしているだけにあって負けん気が強い。


 「朔良クンに決まってんじゃん、なぁに。雪科って感じイイ雰囲気出してたけどさ、本性はこっちな訳?」
 “朔良君”“雪科”という砕けた口調に怒りを覚える。
怒りと嫌悪が混ざった複雑な感情が火山が噴火したように怒涛の勢いで湧き上がってくる。
だけど冷静に装い、接する。
会長に相応しいのは私だ、貴女のようなギャルじゃない。
作り笑いを浮かべながら、追い詰める。

 「朔良君何て、気安く呼ばないで。貴女が呼んで良い程の相手じゃないのよ」

すると、ハッと吐き捨てるように声を漏らす。
いちいち、他人ひとを舐めたような仕草一つ一つがしゃくさわる。

 「へぇ……雪科って差別、するタイプの人間なんだ。というかさぁ、憧れの副会長サマだからって、朔良クンの傍にいるからってあんたがそんな事、言う権利なんてないだろ」

 「朔良クンはあーしといること望んでんだし」と言葉がすらすらと流水のように続き、耳に入ってくる。
 嗚呼。
朔良君何て呼んだこともないしお昼休みも一緒に過ごしたこともない。
誘われたことも。
ギュッとてのひらに爪が食い込むくらい強く、強く拳を作って握り締める。
 抑え込んだはずの怒りと嫌悪、そして知らん顔したはずの嫉妬心がまた、浮き上がってくる。
 「……、……何よ……、何よ……ッ」
ギリッッと言う石と石がぶつかって砕けたような音が口内に響き渡る。
歯が、ツーンと痛くなる。

 _______『園崎さんっ』

 『朔良クンに決まってんじゃん』
 
 『朔良クンはあーしといること望んでんだし』_______

 私だって、私だって頑張って来たわよ。
会長の隣で仕事上でもサポートした。
誰よりも会長の相談に乗って、理解もしてた。
……何で、私じゃ駄目なの?
 立ち竦んで固まっていたはずなのに、勝手に、身体が動いていた_______気が付いたら、園崎さんの制服の襟を強引に掴んでいた。
 「……えてよ……どっか行って、目の前から消えてってばッッ!!!!」
襟を力強く掴んで、言う。

 「はぁっ?何言ってんのあんた、……わーったよ、行くからコエー顔で見るんじゃねぇよ」
不可解そうに眉を寄せて、綺麗に脱色した長くしっとりとした髪をくしゃくしゃと掻き上げた。
 「ったく、勝手すぎるんだけど」と、私への愚痴を吐き捨てながら、とぼとぼと素直にこの場を去る園崎さんの後ろ姿を横目で見ながら溜息を吐く。

 らしくない事をしたと反省する。あんな大声を出し、不躾な態度を取った。
どんな相手だろうと皆が憧れる淑女の副会長として振舞おうと決めていたし、今回の事だって牽制するだけにしとこうと思ったのにというそんな私のかたくな気持ちを壊した恋の力はやはり、凄い。

 人を変え、いじめまでもをさせてしまう。

ある意味言って、そこまで来ると依存症なのかもしれない。
 俯いていた顔を上げ、雑居ビルの間に見える自分とは裏腹な青空をジッと見つめた。
 


 皆が憧れる家族の形。
専業主婦をしている綺麗な母様、そして名を上げている国会議員の父様。名門大学准教授をしている素敵な兄様に大学生の二番目の兄様。
そして、私。
 そんな良いものじゃない、国会議員の娘だからって出来ることは沢山あった方が良いって数々の習い事をしてきた。
 せっかくできた友達とも遊べず、自然消滅になることも多かったし……。

 そんな下らないことを振り返っていると木と木の間に屋根とクリームっぽい白色の外壁が見えてきた。
道は緩やかな上り坂で、カタツムリの殻のように、らせん状。
 その突き当りに、大きな玄関を備え、天井がドーム状に丸まって硝子張りをされた洋館が立っている。

 皆曰いわく「お洒落しゃれ」らしい。
 その時も今もちょっとセンスを疑ってしまう。だって、途中から丸まってるんだもん。
変な形の家だ。けれど、口に出せば母と父が黙っていないだろう。
 自慢顔で自分達が設計したのだと今も言っているのだから。

 玄関前には、優しい感じのする綺麗な花が二本植えられていて、片方の木の枝にはピンク、もう片方の木の枝には白色のつる薔薇が絡みついていた。
レモンとオリーブの柑橘類の地中海系樹木が植えられて、白色のガーデンチェアとテーブルの置いてある。

 ――――――――「……雪科 月奈。中学校では学級委員長、生徒会長。そして高校では副会長を一年から続ける最も信頼された者であり容姿端麗の万能天才、だって」

突然、自分の名前が後方から聞こえる。
 澄んだ、男の声。
もしかしたら私のことを好きで調べていたストーカーなのではないかと不安と恐怖が心を覆い、身体を強張らせ、毛穴から冷や汗が噴き出す。
 ロボットのように顔を少しずつ後方に向け、門扉に手を掛ける。

 「やっとこっち向いた。月奈ちゃん、おれさ、み――――」

 変出者が話し終わる前にバッと家に駆け込む。
靴を揃えず、リビングに走る。
 小姑のようにねちねちとしつこく、叱られると思っていても二人に、いや、四人に抱き締めて安心させて貰いたかったのだ。

 ソファでテレビを見ながらくつろいでいた父と母に身を委ねる。少し離れた机で勉強をしていた二人の兄が普段見せないこんな私を見て、驚きを隠せない顔で近づいてくる。

 「……月奈、どうしたんだ?何が、あった?」

そう訊かれ、私は口を金魚のように開閉し、声を絞り出す。兄様達はずっと頭を撫でてくれる。
 「変出者――――」言い終わる前にインターホンが鳴り、父様の隣で固唾を呑んで聴いていた母様が立ち上がり、玄関の方へ向かう。

 玄関の方で母と来訪者が何か喋り、騒がしくなるのを余所にリビングの方では重たいどんよりとしていた空気が流れていた。

 「あのね、……聴いて。うちの前に……変出者が……ッ」



  ________「月奈ちゃんってば変出者なんて酷いなぁ、全く、もう」


あの私を恐怖に陥れた声が聞こえ、私は眼を見開き、顔を横に向ける。
そこには、家の前で資料を見ながら私の経歴をすらすら言い、今も気安く“月奈ちゃん”と呼ぶ男が立っていた。



 来訪者は、まさかのこの男だった。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.9 )
日時: 2020/09/21 15:01
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろふぃーる ☆

名前:雪科月奈
性別:女
年齢:17(高校二年生)
外見の特徴:モデル並みの身長と体重。足が長い。姫カット。
口調と人称:一人称「私」、二人称「○○さんor○○君」、三人称「貴方達」
性格:冷静沈着なしっかり者と見られているが実は恋する乙女で夢見がちな性格。
自己管理が出来ない質で部屋は家政婦さんも嘆くほどの汚部屋。「我が侭女王」と称されている。
好きなもの:レモンなどの柑橘類、クリームソーダ(炭酸飲料)
嫌いなもの:辛い物、グリーンピース……etc
理系か文系orあるいは体育会系:理系
家族構成:父(国会議員)母、兄・雪科昴&翼(大学准教授&大学三年生)
座右の銘:「弱気は最大の敵」

Re: 恋敵になりまして。 ( No.10 )
日時: 2020/09/19 15:08
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろふぃーる ☆

名前:鳴海朔良
性別:男
年齢:17
身長や体重など外見の特徴:さらさらなショートに切った黒髪に眼鏡を掛けている。細く華奢な体躯。童顔。
口調と人称:一人称「僕」、二人称「○○さんor○○君」、三人称「皆さん」
性格:寛容さと慈悲の心を持ち合わせた優しい好青年。だが、人の好意には超が付くほど鈍感。
好きなもの:うどん
嫌いなもの:牛乳
理系か文系orあるいは体育会系:文系
家族構成:父、母、祖父母
座右の銘:「No pain no gain」痛みなくして何事も得られない

Re: 恋敵になりまして。 ( No.11 )
日時: 2020/09/22 15:08
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第三話 ☆

 「……え、まさか月奈と知り合いだったんですか?」
あの父が、自分より年下の男に敬語を使っているのが不思議で、違和感しかなかった。

 「お父様、この、男を……知っているんですか!!?」
 返された無言で大体の事を察する。
父にとって大切な方なのだと。

 着けていたマスクを外すと男は淑やかに一礼をした。
呆気に取られてしまう。
 「嬉野うれしのしょう君だ、ちなみに彼の御父上は雪科家顧問弁護士・嬉野さんだ」
そして――と言葉を続ける。
まさかあのメガネの弁護士の息子とは、父が厚遇するのも無理はないと思う。
 

 ___________「月奈の将来、夫になる相手だよ」

それまで和んできた空気が瞬間、凍り付く。
 兄達は驚きで固まった当人である私よりも激しく取り乱して二人で抱き合っている始末だ。
 知っていた母は翔を我が息子同然の温かい眼差しで見つめていた。

「は、はぁ?……ど、どう言う事……ッ」
一言も聞いていない。
私に相談もせず、有無言わせず、婚約を取り付けてしまったのか。
酷い。
すると、私の気持ちを察したのか慌てたように両親は撫で声に生温かい言葉をかけてきて擦り寄ってくる。
 
 「今日、説明して顔合わせをしようと思ったんだ、決して今、お前の考えることは母様も私も考えていないんだ」

 誤解しないでくれ、と言う体温の低い、けれど何だか安心さと優しさを持ち合わせた手を思わず握り返しそうになった寸前で振り払った。

 「ふざけないで、こんなの、認めないから……!」

 踵を返し、翔の右側を通り過ぎる。
自室のある二階に行こうとすると、グイッと強い力で腕を掴まれる。
引っ張ってきた相手は勿論、翔に決まってる。

 鋭い眼光を向け「何か用?」と訊いてみると怯えることもなく「うん」と素直に短く返事をしてくる。
その様子に調子が狂いそうになって何だか変な気持ちになる。
 母様はその様子に口を押え「まあ!」と声を上げ、何だかんだ言ってうまくいってるんじゃないかと勝手に満足げになっている父様に苛立ちを覚える。
唯一の味方である兄の二人は妹が取り付けられた婚約者と二人きりになるっていうのにも二人で悲しみを噛み締め合っていた。
 どいつもこいつも変だ。

 「話があるんだ、おれさ……月奈ちゃんがあの路地でしてる事、見ちゃったんだよね」

 微妙に息が掛かるくらい近づいてきて耳打ちしてくる。くすぐったさに思わず目をギュッとつぶってしまうがその内容を聞いてその恥ずかしさと心の高ぶりはすぐに覚めた。
 あんなにも確認したのに、見られていたのだと鳥肌が立つ。

 「……、……私の部屋に上がって下さい」

此処じゃ、話せないことだ。
私は拗ねたような声を出し、渋々受け入れる。
 自分のテリトリーに出来るだけ入れたくはなかったが仕方がないことだろう。 
断れば皆に報せる、彼は優し気に言っているが脅してきた。
せない。この男の望んだ私は何処にもいないのに、どうして?
 考えれば考える程、謎は深まるばかりだった。
顎に手を添え、翔を見つめた。

 


 「……、ごめん、少なくとも君の事をおれは理解しているつもりだったけど君がここまで――――――」

私の部屋を見た瞬間、翔は呆気にとられた表情を浮かべていた。
「何よ、これが私よ」とつっけんどんに返す。
 
 「ここまで、自己管理ができないとは思いもしなかったよ」

部屋は青系のもので統一されているが、ベッドには服屋のように広がったままの色とりどりの服。机にはまだ片付けのされていない参考書ひらっきぱなしで消しカスもある。

 これがあの、テレビに多々映る淑女のような国会議員自慢一人娘の本来の姿だとは思わないだろう。

 「……これでも、た、田村さんに言われて……直した方なんだから……」

小さくポツリ、と呟くとバツの悪そうにそっぽを向く。
田村―――と言うのは長年うちに勤めてくれている家政婦さんだ。いつも私の部屋を掃除するたび、泣き嘆くのだ。
 田村さんは自分に片付けの仕方を今もなお、指導してくれている。

 「片付けとか家事は、苦手なのよ……悪かったわね、自己管理が出来なくて」
もっと失望したでしょっという顔で翔を見ると翔は笑いをこらえていた。

 _________「いや、悪いとは言っていない。こんなだらしない婚約者を管理するのも未来の夫になるおれの役目だろ、少なくとも完璧な婚約者はおれは求めてないからね」

と言い終わると眼差しを甘やかにする。その美しいアーモンド形の煌めく黒真珠に魅せられ、見惚れていた私はハッと気が付いて、慌てて言い返した。

 「夫になるなんて認めてないし、勝手に決めないでよ!!」

何だか無性にむしゃくしゃした。
いつもの自分とは違う、そんな自分をこの男に見せるのが恥ずかしいのだ。
 ――――――弱みをまた一つ握られていたようで腹が立つ。

 「で、話って何よ」

私が話を切り出すと、今まで浮かべていた無邪気な笑顔はスッと消えていく。
真面目で聡明、そして、優秀な全てを兼ね備えた弁護士の息子の顔。
 
 「あの、路地でしていたことをさっきも言ったけどおれは見た。君のお父様にはいつだって報告が出来る状態だ」

 その脅し文句に私は眉を顰める。
絶対に今の私の顔は不細工だ。顔が怒りによって歪む感覚を覚える。
 「何が目的なの、こんなこと、脅すように言って」
組んだ足を入れ替える。
空気がピリピリ痛い。両肘を触れていただけの手が強張る。
 全身の毛が逆立つのも感じる。この男は、危険で関わってはいけないと本能が言っていた。
 「脅してるんだよ。月奈ちゃんはおれとの婚約を認めてないだろう、君もした牽制。下手に君のお父様に行動を促されても困るしね」

これは交換条件だ、と翔は勝ち誇った笑みを浮かべる。
その笑みは私にとって怒りを沸騰させるものだった。

 この条件に私は抗えない。何を言われても仕方がない、あんな路地でするんじゃなかったと今更ながら後悔と反省する自分に羞恥心が覆いかぶさる。
  
 「おれとの婚約を受け入れろ、それが条件。君の一途な恋心、否定する気もさらさらない。ただ、君は婚約者が出来た。それも顧問弁護士の息子、おれ達は世の注目の的になるだろうね」

 よく考えて行動しろ、君の恋心は無駄だと言われてはないのに言われているような気がした。
 ムカつく。ぎゅっと掌の肉に爪が食い込むくらい強く、強く、怒りを抑え込みながら握り締める。
 
 「話はそれだけ、じゃあまた――――――未来のおれの奥様」

その甘ったるい擦り寄ってくるような声に全身が強張るのが解った。
ぱたんっと部屋から翔が出ていくのを見届け、一息つく。
 身を縛っていた緊張感から自由になる。
 ―――――――「………こんな婚約、絶対に認めない」
愛おしい人がいる以上、怖がってちゃ私の名が廃れる。
諦めない。
 障害物役の人間が一人増えたって関係ない。乗り越えればいいんだ。
 きっと、きっと、その先には会長が待っているはずだから。
「打倒、恋敵!!!」
私はベッドに寝転びながら、拳を宙に突き付けた。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.12 )
日時: 2020/09/21 14:06
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第四話 ☆

 ――――――「じゃあ、行ってきます」
玄関を出て、門扉を開ける。
 すると、門扉の前に誰かが立っているのが解った。

表情の筋肉が強張るのを感じる。

 スラっとした体形で骨が浮き出た無駄の肉のない身体はまるで白いカラーの花のようで目を奪う。
着けているマスクから見える綺麗なアーモンド形の瞳が瞬いた。 
 「おはよう、月奈ちゃん」
 嬉野翔――――――私と彼は一応、昨日正式な婚約を交わした。

でも。

お互いが笑顔で同意したわけじゃない。強制的だ。

 「………ニュース観た?おれと君の事、大事に取り上げられてる」
君の想い人も知ってると言わんばかりの顔でスマホを見せてくる。
翔のスマホをパシッと手で軽く叩き自分の顔から遠ざける。

 「……知ってる。父様が沢山の記者の前で言ったこと、母様に聞いたから」
通り過ぎようとした時、また腕を掴まれ引き留められる。

 「国会議員の御令嬢が一人で通学何て危ないよ、送ってあげる」
婚約者からの言葉を断れなくて、私は渋面で頷いた。




 「今度の土曜日、何処どこか二人で行かない?」
話を唐突に振られて私は「は?」と声を漏らし、目を丸くして不細工な顔をしてしまう。

 何であんたなんか、と呟くと翔はふっと息を漏らして微笑む。

 「良いじゃん、別に……ていうか良いの?おれに従ってくれないとバラしちゃうかもよ?」

その言葉に私は更に目を見開き、丸くしてしまう。

「話が違うじゃないッ、貴方は私と婚約したら……ッ」
「だからだよ、おれと休日を一日も過ごさなかったら怪しまれちゃうよ?」

 ………それもそうかもしれない。翔の言い分には一理ある。
一日くらい、良いかもしれない。
断る理由も見つからない、なら仕方のないことではないか。

 「……解った」
ギュッと鞄を持つ手に力が入る。
 あーあ、ムカつく。
主導権が握られて、対等な婚約関係じゃなくて、まるで主従関係じゃない。
私は従者でもないのに……。

 「本当に良いの?……やった」

よしっとガッツポーズをとる翔に魅入ってしまう。
出会ったのは昨日。
だけど、彼らしくない子供のような無邪気な笑み。

 とくんっと胸が脈打つ。
「……馬鹿みたい、男子って」
と強がりに呟いてみると翔は横目で微笑を浮かべる。
 「だって、嬉しいんだもん。月奈ちゃんと出掛けられるの」
鼻歌交じりに言う翔を見つめ、私は顔を背ける。
何故か、頬が熱い。

 ――――――「じゃあ、俺、こっちだから。午後も迎えに来るね、学校頑張れ」
とセットしたばかりの髪を撫でると颯爽と踵を返す翔の後ろ姿をわざわざ振り返ってまで見てしまった自分を心の中で殴る。

 ってか、アイツ……遠回りしてまで送ったの……?
変なおせっかい止めてよね、と後で言おうと思う。

 何か、私のせいで学校を遅刻されても困るし……って馬鹿みたい、何で変に心配してんだし。

 私が好きなのは会長でしょーが。

ふんっと声を漏らし、学校に入っていく。


 


 教室を入ると騒めいていた皆が静まる。
 ……何、コレ。
一言も喋らず皆は私を凝視する。

 「……お、おはよう。皆さんっ」
いつもの副会長として微笑みを浮かべ、挨拶する。

 すると、ほっと安心したのか一人の女子生徒が近づいてくる。
 「月奈ちゃん、えっと、婚約したんだって?」
「え?……ええ」
目線を逸らしながら曖昧に頷く。

笑顔で同意したのではなくて強制だし、対等な関係でもない。否定したい気持ちもあるが家の為、と何とか拳を握り締め、我慢する。

 「……相手の人は、どうなの?見た感じ、良さそうだけど」
探るような言葉。

 「副会長は鳴海会長の事が好きだと思ってたのに。憧れのカップルじゃなかったの?」と言われているようで居たたまれなくなる。

……ったく、あの男のせいで何で私が罪悪感を抱かなくちゃいけないのよ。

 相手はどうなの、だって?
 父の顧問弁護士の子供なんだから容姿も知能も運動神経も良いに決まってるでしょ。
それに、今日も送ってくれた人だよ。
 何を言えばいいの、自分の婚約者の。


 言葉に行き詰っていると、大好きな人の声が聞こえた。
 
 ――――「それ以上、聞くのはさ、止めた方が良いと思う。雪科副会長が困っているじゃないか」

目の前に居たのは鳴海君だ。
 私の、会長。
会長が助けに来てくれる。やっぱり、貴方は私の王子様なんだ。

 「か、いちょう……」
 「大丈夫?雪科副会長、顔色が悪いよ」
そう言われてみれば少し、少しだけ足元がふらついて見える。
頭痛もする。

 「保健室に送るよ」
そう言って皆の眼から私を遮るよう、隠しながら教室を二人で出る。

 また、言われるかもしれない。
婚約者がいるのに、二股をかけているとか。
園崎さんに告げ口をされてしまうかもしれない。
 
 今まで感じたことのない不安が襲ってきた。
だけど、もう少し、もうちょっとだけ。
 会長に甘えてもいいだろうか。
会長の肩に身を委ねてみる。
 
 温かくて、優しい体温が私を覆ってくれていた。
たとえ、離れることになっても、会長は________最後は私のことを選んでくれるに違いないから。
 心配を煽ろうとわざと、具合の悪そうに目を伏せてみた。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.13 )
日時: 2020/09/21 14:10
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろふぃーる ☆

名前:園崎加恋
性別:女
年齢:17
身長や体重など外見の特徴:
口調と人称:一人称「あーし」、二人称「○○(苦手な人は苗字呼び)or○○クン」、三人称「あんたら」
性格:経験豊富そうに見えるが実は彼氏いないイコール年齢の人。純粋無垢で天真爛漫の性格。上に自然と立っているリーダー格。言葉使いが荒い。
好きなもの:タピオカ
嫌いなもの:映えない物、野菜
理系か文系orあるいは体育会系:体育会系
家族構成:母、父
座右の銘:「命短し恋せよ乙女」

Re: 恋敵になりまして。 ( No.14 )
日時: 2020/09/24 09:32
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第五話 ☆

 「でも君が、体調を崩すなんて驚いたよ」
隣に歩く会長が苦笑交じりに話す。
 会長の肩に触れた顔の片頬と会長の左手と向かい合っている右手だけが、何故か、熱い。
ひゃあ……っ会長が、こ、こんなにも近い!!!!!
今日が命日じゃないのか、と私は一人で舞い上がってしまう。

 今まで自分の世界に入り込んで、会長の事をほったらかしにしていたことに気が付いた私は、取りあえず礼を言う。 
 「えと、……あの、ありがとうございます……あの時、助けてくれて」
髪の毛を耳に掛ける。
その言葉に会長はかぶりを優しくゆっくりと振る。
「ううん。僕だって訊かれたら嫌だと思ったから、つい、割り込んじゃったんだ」
逆に迷惑だったでしょ、と俯いている私の顔を覗き込んでくる。

 いや、違うよ。
貴方の事がもっと好きになった。
 なぁんて、面と向かって言う事も出来ず、恥ずかしさとトキメキを噛み締めるよう下唇を噛む。


 ――――――――――「……か、会長は、しゅ、す……すッ好きな人が、いるんです、か……?」


 あぁあああああああぁあッッしッ、しまったッッ!!!!!!
心の中で思っていたことが口に出ちゃったよぉぉお。
 失敗したと赤面した顔を両手で覆う。

 「……えと、……ぅ……あの、誰にも、言わない……で、ね……」
躊躇いがちにそっぽを向く。
 何だか女の子の会話みたいだな。
 “月奈ちゃんだから教えるんだよ?”って言われているみたいで我知らずにやけてしまう。口角が不自然に上がる。
会長に物凄く信頼されているってことじゃん……っ嬉しい……!

 そして、会長は怯みながらも耳に、囁いてくる。
耳が擽ったい。微かに唇が当たる。
 ヒィイイイイ………ッ!!


 ――――――――「……………ぃ、る……よ」

小さくか細い声。
 
 え―――?

 両手を耳に当てて、後退りをしてしまう。
 
 自分で聞いたはずなのに、ショックが大きくて。
だってさ、私に言ったってことは私じゃないから、言えたんじゃないって思っちゃって。
 少女漫画でもこういう場面あるけど大体は好きな子じゃないから言えるんでしょ?
 その仮定が正しかったら会長と親しくしてる女子って園崎さんくらいしかいないし……。

会長の顔を凝視してしまう。
 さらさらの黒髪が彼の手でくしゃと歪められていて、眼鏡の奥の瞳は、恥ずかしそうに左右に何度も揺れている。
 鼻先から耳まで真っ赤に染まっている。
 
 「………え、と………だ、誰を、ですか……?」
まさか、本当に、園崎さんを好きなの?
会長の目が更に見開く。

 身体がよろけてしりもちをつきそうになった。
 慌てて駆け寄ってくれた会長に支えられ、私は涙を流してしまう。
 「え。えっと、何で泣いて……ッ!!」
「眼にゴミが入ったんです。授業も始まりますから、戻って下さい」

 返事を聞かずに、私は保健室へ走っていく。
何が何だか分からなくなってしまった。
 どうして、どうして……園崎さんなんですか。
何が良いんですか。

 会長への気持ちが流れ込んで来る。
 くそぉ………出会った時からずっと好きなのは、私なのに――――――――



 「何々、失恋?雪科ちゃんが泣いて保健室へ来るなんて初めてじゃないか」
興味津々の顔で私に近づいてくる保健教諭を睨み付ける。

 わざとらしい白衣に口に入れた苺味の飴の匂い。
まともにセットもされていない髪に、机には煙草を吸った形跡。
 
 「煙草臭いから近づかないで下さい」
涙をすべて拭いきったはずなのに、どうしてわかるのか疑問だったが私は鏡を見て目を丸くしてしまう。
 目頭が赤く腫れていた。
馬鹿みたい、これで会長にゴミが入っただけという言い訳が通じるわけがない。

 「相変わらず雪科はキツいなぁ」
「話しかけないで、今は一人になりたいんです。ベッド借ります」
これまた返事を聞かず、私はカーテンを広げてふかふかのベッドに横たわる。
硬いけど柔らかいビーズの枕が顔にフィットして気持ちが良い。
 ゆっくりと瞼を伏せていく。
今は本当に、一人になりたい。

 ――――――そんな時、ポケットにしまってあるスマホの着信音が鳴る。
こんな時間に誰だと思えば最悪を引き起こすことになる元凶からだった。
瞼を上げ、ぼんやりとしていた視界がやがてくっきりとした輪郭を取り戻していく。

 「……何……ほんと」
スマホの電源を付けてメッセージの内容を見てみれば、清々しい程の青空とにこにこと笑ってパンを食べる翔が映っていた。
 面白くもないのに、私は微笑を浮かべていた。
 自撮りとかするんだ………意外だし、なんか変な感じ。

そういえば、騒がしくなり始めたかと思ったらもう、昼食か。
皆、購買に行ったりご飯食べるところに移動したりしてるからか……。
 直後、お腹の虫が鳴る。
 「お腹空いた………午後の授業もやる気でないけど……やるしかないよね……」


 寝癖のついた髪の毛を手櫛である程度、かしたら私はベッドから立ち上がって背伸びをする。
ボキボキボキと凄まじい音がして目を丸くしてしまう。一度、ベッドに座り、背中を摩ってみる。

 ______『大丈夫?』

 『朔良クンはあーしといること望んでんだし』______

 不意に、会長と園崎さんの顔が脳裏に過ぎる。
園崎さんが高笑いして私を馬鹿にする図も自然と想像してしまう。
 あーあ、私、馬鹿みたい。
 起こってもないことを想像して会長の好きな人は園崎さんだってまだ、決まった訳じゃないのに。

 好きな相手が出来ても、その二人が結婚する訳じゃないし……付き合ったって言われたってさ、だって、高校生活もあと一年あるじゃん??
 人の気持ちは簡単に変わるって言うくらいだし。
何とかなるでしょ、奪うことはいくらだって出来る。

 ふぅっと深呼吸をし、頬を叩く。
ポジティブな思考に、一度、切り替えよう。

 ――――――――『……午後も迎えに来るね、学校頑張れ』

………別に、期待してるわけじゃないし!!
何だか変な気持ちになって自分自身で頭を撫でてしまっていた自分を心の中で殴り倒す。

 今決めたばっかじゃん、ていうか私が嫌な気持ちになったのもアイツのせいだし。
午後、迎えに来たら愚痴って怒鳴ってやる。

 ふんッと声を漏らした私は異様に話し掛けてくる保健教諭を無視してお昼を食べる為に、午後の授業を受けるために出ていった。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.15 )
日時: 2020/09/22 15:05
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろふぃーる ☆

名前:嬉野翔
性別:男
年齢:18
身長や体重など外見の特徴:線の細いスラリとした体格の長身イケメン。
口調と人称:一人称「おれ」、二人称「○○ちゃんor○○くん」、三人称「君ら、君達」
性格:飄々とした性格で何気に優しい。ちやほやされすぎて冷めた考えを持っている。手に入れたいものの為なら脅しに掛かることも。策士家なのだが無意識のうちに女性の心をくすぐる言動をしている天然プレイボーイ。
好きなもの:ケーキ
嫌いなもの:魚
理系か文系orあるいは体育会系:体育会系
家族構成:父、母、兄
座右の銘:「他人のために尽くす人生こそ、価値ある人生」

Re: 恋敵になりまして。 ( No.16 )
日時: 2020/09/24 09:35
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ 第六話 ☆

 廊下をゆっくり、歩いていると足音が前方から聞こえてくる。パッと俯いていた顔を上げればそこには、ツインテールを揺らした少女が居た。

 「……頭痛は大丈夫ですか、お嬢様」

校則違反にならないぐらいに丁度良く着崩した制服に、染めてるって思われがちな彼女の地毛である桃色っぽい茶髪。
スラリと高い背はまるでモデルのようだ。

 「別に。もうおさまったから」

 そうですか、と安堵した顔になる彼女は花依はなよりみお。住む世界が違うように思われるが一応、一緒に育った信頼できる従者だ。
 
 …………嗚呼、そうだ。会長はどうしたのだろうか。
あの時、傷付けてしまった、その事が気に掛かる。

 「鳴海、会長は……?」

すると、澪は訝し気な顔になり、声を潜める。

「彼が午前から落ち込んでいるのはお嬢様が原因ですか?帰って来た時は酷く思い詰めたような苦しんでいる顔でした」

 本当は人前に立つのがあまり得意じゃない私だけが知っているあの顔が思い出される。
あんな、顔をさせてしまっているのか。
 
 きゅぅうっと縄で縛られるような痛みが胸に走って、胸ぐらを掴む。

「そ、そう……」
何だかバツが悪くなって、顔を背けてしまう。すると、澪は息を呑んでから、肩に手を乗せて摩ってきた。

 「彼に、会ってきた方が良いと思います。余程のことがあってずっと、落ち込んでいるみたいですから」

優しく微笑んで、私の顔を見つめてくる澪の肩に乗せられた手を握る。澪も握り返してくる。


 ―――――「私、行ってくる……っ」


そう言って、澪は頷いてからてのひらを私に突き出してくる。
 

 ぱちんっ!


澪とハイタッチを交わした私は廊下を走ってはいけないと知っていても走っていた。



 _________いつもの、中庭。花壇横ベンチ。
チューリップの赤、ピンク、黄色、オレンジ、白、紫、色とりどりの色があって目を奪われるが、かぶりを振って意識を取り直す。

 あはは、と笑い声が聞こえてきて、息を呑む。この小煩こうるさく私の神経を逆なでするこの、声は______


 「朔良クンってば、笑ってひどぉいッ!!」

 また、園崎さん、だ。
ギュッと、ギュッと、ただ黙って声を押し殺して木陰から見つめる。
 

 ――――――――『……………ぃ、る……よ』

痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……!!!
 手も、足も、心も、何もかもが針に刺されてるようで痛くて堪らない。

 「………、……ぁ」

下睫毛したまつげからこぼれた涙が一筋、一筋だけ私の頬を伝う。

 止めよう、止めよう?
こんな、こんなに苦しんで泣くのは……強きに行こう。
真っ向勝負だ、正々堂々と奪いに行こう。

 涙を拳で荒々しく拭って、はあっ、と深呼吸をする。強く強く瞑った眼をカッと開く。

 _________こつ、こつ____________

 
 「あの……鳴海、会長……お話が、あるんです……っ!」

邪魔するなって言う二人の世界を私の一言でぶち壊してやった。

 会長はポカンとした顔をし、園崎さんは私だけを見つめて、睨み付けてくる。

 でも、そんなの構わない。
私の瞳に見えているのは会長だけだから。
 貴方だけなんだ、園崎さんだけじゃない、私はもっと前から貴方だけを見ていた。
 
 「てめぇ……っ」
怒りの呻きが聞こえる。
 だけど、知らない、見えない、聞こえない振りをし、無視する。

 「………、解った。話を聞くから、園崎さん、ごめんね?」

席を外してくれるかな、と優しく訊く会長に、流石の園崎さんも彼の前では恋する乙女なようで渋々、受け入れ、頷く。

 すれ違いに園崎さんは立ち止まって、耳に囁いてくる。


 ―――――「ホント、雪科ってあーし達のお邪魔虫だね」


そう言われ、左耳を思わず、塞いだ。ふんっと通り去っていく園崎さんの後ろ姿を横目で見た。

 お、じゃま、むし……か。
そうか、そうかもしれないね。
両想いの園崎さんや会長から見たら“お邪魔虫”だろう。だからあんな顔をしたんだ、園崎さんだけじゃなくて会長も。
 
 耳に、いくら経っても残る。

気持ち悪い。
恐い。
苦しい。
もう、嫌だ。

パニックになる自分の心を、深呼吸をして、落ち着かせた。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.17 )
日時: 2020/09/24 09:29
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)

☆ ぷろふぃーる ☆

名前:花依澪
性別:女
年齢:17
身長や体重など外見の特徴:スラリと普通の女子よりも背の高く産まれながら桃色っぽい茶髪を持つ。制服を着崩したゆるふわ系ギャル。ツインテールにしている。
口調と人称:一人称「わたし」、二人称「○○さんor○○」、三人称「貴方達」
性格:クールドライな性格。
好きなもの:激辛、しょっぱい物、塩辛ラーメン等
嫌いなもの:甘い物
理系か文系orあるいは体育会系:文系
家族構成:父、母、妹、弟
座右の銘:「命は鴻毛より軽し」





Re: 恋敵になりまして。 ( No.18 )
日時: 2020/09/29 18:42
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)


☆ 第七話 ☆

 「えと、じゃあ、お隣をどうぞ」
ぱんぱん、と優しくベンチを叩いた会長の顔は驚きなどが入り混じった複雑な顔をしていた。

 それも、そうか。
 いつも冷静沈着な私が取り乱し自分の目の前で泣いて逃げ去って、そのままだと思っていたら雰囲気をぶち壊しに話がしたいと言ってきたのだから。

 「すみません。あの、楽しそうに話をしていたのに……邪魔してしまって」
そう一礼してから、音を立てないように、気を付けて座る。

 会長の手元にはクリームパンと焼きそばパンがあった。
焼き目が付いてて美味しそう……っ!

そういえば、お昼食べてないなぁ……、お腹、空いたし話が終わったら購買に行かないと……。

 「……あ、ごめん。君が真剣そうなのに僕、パンをまだ食べてて……今、片づけるから」

 慌て出した会長に何て返そうか迷っていたその時_____返事の代わりにお腹が鳴り出した。



 _____________ぐぅううぅううううううう……っ!



 「ヒッ」

短い悲鳴を上げてしまう。 

 愛しの会長の目の前でお腹を鳴らしてしまった。誤魔化しても無駄、だって解っているのに顔を逸らして黙り込む。

 会長、どういう顔してたっけ。驚愕?笑いをこらえてた?はしたないって思った顔?
 どちらにせよ、物凄く恥ずかしくて嫌だ。

「……、あの、……雪科さん」

 あぁ……きっと罰が当たったんだわ。二人の仲を邪魔するから神様が……っ。

ブルっと震えていると肩を優しく叩かれて、振り返ると微笑を浮かべた会長がクリームパンを差し出してきた。

 「食べる?えっと焼きそばパンの方は二口くらい食べちゃったけど半分こにすれば大丈夫、だと……思うし……あ、嫌なら良いんだよ!」

 何でこんなに優しいんだろう?もしかすると会長は天使なのだろうか?
思わずうるっとしてしまう。

 「え、えと……ご厚意に甘えさせて頂きマス……」

クリームパンを掴むと、会長の指先と私の指先が触れてしまった。

 ッッッ!!!!!!!!

電流が流れたように私と会長は慌てて手を離す。
 すると、当然クリームパンが落下するようになり、私は間一髪のところでキャッチした。

 「「……っ、ごめんなさいっ」」

謝るタイミングも一緒で増々、私は顔を赤くしてしまった。
 ……やっぱり、これだけ息ピッタリってことは……私と会長って、……赤い糸で……繋がってる!!
 きゃあっと叫びたいところだがグッと押し殺す。乙女的思考、停止!!停止!!


 「えっと、気を取り直して………お話したいことが、あって……っ」

その、と口ごもる私は急いで脳を回転させる。

 話したいことって何?
何て言えばいい?
泣いてしまったのは会長のせいじゃないってどうすればいい?

 ぐるぐると目が回ってしまうぐらい、迷いに迷っていた。
ヒィイ、会長のことを待たせてるぅう!!!こんな私、らしくなぁああい!!!!!!

 「あのッ、僕が先に言ってもいいかなッ!!」

急に大声を出したかと思えば会長は真っ赤に染まっていた。


 え??えっ、な、何を言いたいのッッ!!!!!


 ――――「僕、あの時、無神経に、具合の悪い君のことを扱いすぎたと思ってて……本当、ごめん!!!」

は?ハテナが私の頭を埋め尽くす。

「え、えぇ、いやあのッ!そんなに気にしてないっていうか、私、その……私もごめんなさい!!!」

何で君が謝るの、という顔をされ、困ってしまう。私は両手を重ね「……会長のプライベートな部分に触れ、ちょっと驚いてしまって……」と口ごもってしまう。

 貴方のことが好きだからって言いたかった。けど、勇気はやっぱり出なくて。

 「……あー、うん、僕も答えちゃって……雪科さんが、そんなにもデリケートだって……」

 
 デリケートではないけど、いや、合ってるのか?
取りあえず貴方の事だからショックを受けたんだけど……なんか、違うし……でもここで否定すると面倒臭いことになるし……。
 細かいことは気にしなくていいか。別に。

「良かった、すぐに解決できて。雪科さんみたいに僕は勇気出せないし、……好きな子にも、……だから、来てくれて嬉しかった」

照れ臭そうに顔を俯かせた会長に私は沸騰したやかんのように赤くなる。

 勇気なんか、出ない。出てない。本当は意気地なし。

そう思っているのに、そう思っているのにも、嬉しくなってしまう。

 頭から湯気出てるみたい……っ!


 ______________「ありがとう、本当」_____

お礼を言われ、私は眼を見開いてから大きく笑って見せた。
 この気持ちがどうなるかなんて、まだ、気にしなくていい。不安に思わなくていい。
 その時が来るまで、この関係を楽しもう。

Re: 恋敵になりまして。 ( No.19 )
日時: 2020/10/19 17:14
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)


☆ 第八話 ☆

 会長と仲直りが出来たし、パン半分貰ったし、何だかんだ言って今日、良い日だったなぁ。
思い出せば自然と笑顔になれた。

 鼻歌交じりに支度を終わらせ、教室を出る。



 「あ、雪科さんっ!」

!!!こ、この声はッッ_________会長!!?

 サッと振り向くと可愛らしく歩いて満面の笑顔を浮かべた会長が居た。
あぁー、会長、激かわ……癒される……。

 「偶然だね、今から帰り?」

こッ、このパターンはまさかの一緒に下校できるチャンスですか??
 「一緒に帰ろうよ」

 キッッッッッキタァアアアアァァァアア!!!!!!

 心の中で思わずガッツポーズを決めてしまう。
嗚呼、明日は私の命日かもしれない。

 会長はにこにこ微笑んでいる。
貴方は天使ですか?いえ、天使を通り越して神ですか?神ですね??
 そう問いかけそうになり慌てて口を塞ぐ。

 「えと、会長がい、……っ」

待てよ……今日って確か……??
 
  ――――――――『……午後も迎えに来るね、学校頑張れ』

そうだ、そうだ、そうだッッ!!!
 あの男が迎えに来るんじゃん、こ、こういう場合ってどうしたらいいんだろう???

 頭をフル回転させても答えは出てこない。
それもそうか、こういう事態に遭遇したこともないんだから知識がないんだから。

 額から冷や汗が噴き出す。

ココで行けませんって言ったらどうなるんだろう??

 会長が悲しむんじゃ……、ひぃいと眼を瞑った時、着信音が鳴る。
 
 「あ、あのさ、……雪科さん。携帯、鳴ってるよ」

え?と気が付いて開いてみると、奴からの電話だった。

 出やがったな、コイツ……ッ!!
会長と私の仲を婚約者として邪魔するだけでなく間接的に障害物として役立つなんて。
クソかッッ!!

 あからさまに嫌な顔をしていたらしく会長が心配そうな声を上げる。
 「え、と……例の婚約者さん?」
そう訊かれ、私はあははっと作り笑いを浮かべる。

 「……何?」
『ふっ、今どこ?』
 いつも以上に冷たい声で言うと翔はくすっと笑ってから声を発する。
突然、電話してきて何だと思ったら位置訊いてくるし。
私は答えず、質問で返す。

 「……、あんたは?」
『校門』

 そう聞き私は、窓を見ると、校門で真剣な顔をして電話をする翔が見えた。
何だよ、会長との事、断るしかないじゃんか。
 口を尖らせてしまう。

「はぁ……そ、そう」
『学校の中に居る?待ってるから』

 ピッと機械的な音が響き、電話が切れる。
 
 少し離れたところで待っていた会長に近づくと私は一礼する。
「ごめんなさい。あ、あの……先約がいまして……そのぉ……本当に……」

 そう謝ると会長は両手を振り、苦笑交じりに話す。
「あ、うん……、僕こそごめんね。突然、言い出して……迷惑だったよね……」
しょんぼりと子供のように項垂れる会長を目の前にして私は口を開く。
「迷惑じゃなくて、全然、嬉しかったですよっ」と言うと「本当?」と首を傾げ微笑む。

 ――――――「じゃあ、良かった。あのさ、図々しいけど校門まで一緒に居て良い?」
捨て犬のように上目遣いで言われ、私のハートは当然、撃ち抜かれてそれはそれは笑顔で頷いたのだった。

 こういうことに弱い駄目な婚約者でごめんっっと心の中で翔に謝った。きっと、解ってくれるだろう。

 一途な私の想いを邪魔するつもりはないって最初に会った時も言ってたし、と私は完全に安心しきっていた。

 翔が不機嫌になることも思ってみなかった。