コメディ・ライト小説(新)
- Re: 恋敵になりまして。 ( No.18 )
- 日時: 2020/09/29 18:42
- 名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: w1UoqX1L)
☆ 第七話 ☆
「えと、じゃあ、お隣をどうぞ」
ぱんぱん、と優しくベンチを叩いた会長の顔は驚きなどが入り混じった複雑な顔をしていた。
それも、そうか。
いつも冷静沈着な私が取り乱し自分の目の前で泣いて逃げ去って、そのままだと思っていたら雰囲気をぶち壊しに話がしたいと言ってきたのだから。
「すみません。あの、楽しそうに話をしていたのに……邪魔してしまって」
そう一礼してから、音を立てないように、気を付けて座る。
会長の手元にはクリームパンと焼きそばパンがあった。
焼き目が付いてて美味しそう……っ!
そういえば、お昼食べてないなぁ……、お腹、空いたし話が終わったら購買に行かないと……。
「……あ、ごめん。君が真剣そうなのに僕、パンをまだ食べてて……今、片づけるから」
慌て出した会長に何て返そうか迷っていたその時_____返事の代わりにお腹が鳴り出した。
_____________ぐぅううぅううううううう……っ!
「ヒッ」
短い悲鳴を上げてしまう。
愛しの会長の目の前でお腹を鳴らしてしまった。誤魔化しても無駄、だって解っているのに顔を逸らして黙り込む。
会長、どういう顔してたっけ。驚愕?笑いをこらえてた?はしたないって思った顔?
どちらにせよ、物凄く恥ずかしくて嫌だ。
「……、あの、……雪科さん」
あぁ……きっと罰が当たったんだわ。二人の仲を邪魔するから神様が……っ。
ブルっと震えていると肩を優しく叩かれて、振り返ると微笑を浮かべた会長がクリームパンを差し出してきた。
「食べる?えっと焼きそばパンの方は二口くらい食べちゃったけど半分こにすれば大丈夫、だと……思うし……あ、嫌なら良いんだよ!」
何でこんなに優しいんだろう?もしかすると会長は天使なのだろうか?
思わずうるっとしてしまう。
「え、えと……ご厚意に甘えさせて頂きマス……」
クリームパンを掴むと、会長の指先と私の指先が触れてしまった。
ッッッ!!!!!!!!
電流が流れたように私と会長は慌てて手を離す。
すると、当然クリームパンが落下するようになり、私は間一髪のところでキャッチした。
「「……っ、ごめんなさいっ」」
謝るタイミングも一緒で増々、私は顔を赤くしてしまった。
……やっぱり、これだけ息ピッタリってことは……私と会長って、……赤い糸で……繋がってる!!
きゃあっと叫びたいところだがグッと押し殺す。乙女的思考、停止!!停止!!
「えっと、気を取り直して………お話したいことが、あって……っ」
その、と口ごもる私は急いで脳を回転させる。
話したいことって何?
何て言えばいい?
泣いてしまったのは会長のせいじゃないってどうすればいい?
ぐるぐると目が回ってしまうぐらい、迷いに迷っていた。
ヒィイ、会長のことを待たせてるぅう!!!こんな私、らしくなぁああい!!!!!!
「あのッ、僕が先に言ってもいいかなッ!!」
急に大声を出したかと思えば会長は真っ赤に染まっていた。
え??えっ、な、何を言いたいのッッ!!!!!
――――「僕、あの時、無神経に、具合の悪い君のことを扱いすぎたと思ってて……本当、ごめん!!!」
は?ハテナが私の頭を埋め尽くす。
「え、えぇ、いやあのッ!そんなに気にしてないっていうか、私、その……私もごめんなさい!!!」
何で君が謝るの、という顔をされ、困ってしまう。私は両手を重ね「……会長のプライベートな部分に触れ、ちょっと驚いてしまって……」と口ごもってしまう。
貴方のことが好きだからって言いたかった。けど、勇気はやっぱり出なくて。
「……あー、うん、僕も答えちゃって……雪科さんが、そんなにもデリケートだって……」
デリケートではないけど、いや、合ってるのか?
取りあえず貴方の事だからショックを受けたんだけど……なんか、違うし……でもここで否定すると面倒臭いことになるし……。
細かいことは気にしなくていいか。別に。
「良かった、すぐに解決できて。雪科さんみたいに僕は勇気出せないし、……好きな子にも、……だから、来てくれて嬉しかった」
照れ臭そうに顔を俯かせた会長に私は沸騰したやかんのように赤くなる。
勇気なんか、出ない。出てない。本当は意気地なし。
そう思っているのに、そう思っているのにも、嬉しくなってしまう。
頭から湯気出てるみたい……っ!
______________「ありがとう、本当」_____
お礼を言われ、私は眼を見開いてから大きく笑って見せた。
この気持ちがどうなるかなんて、まだ、気にしなくていい。不安に思わなくていい。
その時が来るまで、この関係を楽しもう。