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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 鍵のない青 ( No.2 )
- 日時: 2019/12/14 15:38
- 名前: 柚 (ID: D.48ZWS.)
1話 正体なんか…
「茜さん。絶対に知られないように。」
「はい。」
生徒会室に響く声。それは薔薇とともにハラリと落ちる。その横の黒い縦板には、無情に、
『生徒会長 姫崎 花音』。わずか2年生ながら生徒会長となった人間…。
「…知っての通り、あの戦争が終止符を打った途端…。魔法族は人間族に駆逐されています…。もし私たちの存在がバレたら、命の保証はないと思ってください。」
「命の保証…ですか…。えっと、あのぉ!もしかして学園にもいるのでしょうか?」
「知っての通り。10名くらいは居るでしょう。」
細長い睫毛がゆっくりと開く。真剣な眼差しを帯びながら、私の神経を支えているかのようにも…思えた。窓のブラインドを見つめ、紅色に踊り散らす桜が歌っている様子をあちらこちらに見る。橘 茜…。魔法族…。駆逐…。そして…。運命に争いながらも、自分の形がなくなりそうなのに、なぜ、生徒会長は平穏を保てるのだろうか…。ただ、見ても、端正な雪白い指先が、わずかに震え…。私たちを象徴しているのだろうか。
「茜さん。あなたには、『文芸部』に入部して貰います。この秘密を守る為…。もちろん、全員が魔法族です。」
「文芸部…。分かりました。」
この度シリアスな空気を、重苦しいドアでバタン!と封印すると、羽を伸ばして深呼吸を一つ吹いた。
「はぁ…。」
孤児院で育った私には、人間関係という言葉は、辞書に入ってないのだろうか。肉親がいない私…。あの事件が原因で…。
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