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コメディ・ライト小説(新)
- Re: 鍵のない青 ( No.4 )
- 日時: 2019/12/15 18:13
- 名前: 柚 (ID: D.48ZWS.)
「ただいま戻りました。」
年季の入ったドアを音が鳴るまで開けると、隅に溜まっていた砂埃がブワッと際立つ。その玄関前にいたのは、千代。昔の言葉で言えば、侍女とか…奉公人とか。ただの召使いだけど。
「千代。ただいま戻りました。…その様にひざまづいてどうされたのでしょうか。」
「茜様、茶の間に旦那様と奥様がいらっしゃいます。“大事”な用事について茜様にお伝えおきたいと願っておりました。さぁ、荷物を預けて向かって下さいな。」
「大事…ですか。」
伏せられた千代の目には、心配の炎が宿っている。一体何を暗示しているのか…。
高ぶって神経を荒ぶらせる気持ち…好奇心をぐっと噛み締めて、鮮やかな回廊を無言で貫いて進んで行った…。
「父様、母様、失礼致します。」
茶の間には、先日生けられた花が嘲笑う様に垂れ下がっている。
2人は細長く開けた視界を、よく滲み出している。2人の顔は、私には全く似ていない。
3歳頃だろうか…。両親が戦争の戦火にされ手間もない頃。孤児院に居た私は、輪城家に何かを買われ、養子となった。今では『橘 茜』では無く、『輪城 茜』…。真剣そうに顔を歪めながら、父様は、口を開いた。
「茜。今日は伝えなければならない事がある。」
「伝えなければ…。私に話してもらえないでしょうか。」
「実は…あなたの両親は、戦争の戦火で焼かれたのでは無く、…虐殺されたんのです。
言うべきかどうか…。」
「…。」
「はぁ…。」
渋い顔をしながら、唇を歪めた。
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