コメディ・ライト小説(新)

あやかし町 第一期 #1 ( No.5 )
日時: 2020/12/13 00:15
名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)

第一期 #1[和菓子わがし

私は徒歩とほ五分のところにある『私立しりつ華ノはなのさき女子じょし大学だいがく』と言う大学に通う一年生の九十九つくも 咲奈さな
私が幼い頃に他界した両親の親代わりであった、お爺様が他界して半年。毎日何事もなく、時は過ぎていく。私には今も尚、人成らざる者…あやかし達の姿は見えている。
彼等…あやかし達は、自分達の姿が見える人間の私が珍しい様で、時折ときおり寄ってくる。寄ってくるあやかし達は、大体が害を与えようと寄ってくるのではない。ただまれに、人間をらうたぐいのあやかし達が寄ってくる時もある。襲ってくるあやかし達は空腹なのだ。私は成仏じょうぶつしたりなどする力は無い為、襲ってきたあやかしには、私が作った飴玉を渡している。どうやら私が作った飴玉には、あやかし達の『空腹を満たす力』と『陽の霊力』が込められているらしい、とお爺様が言っていた。
そんなことを思い出していると、ふといつも通る神社の鳥居のそばに誰かが座り込んで居るのを見つけた。だが、人間でないのは明らかに分かる風貌ふうぼうだ。お面を着けており、顔は分からないが、珍しい着物を着ているのだ。とてもぐったりしていて心配になり声を掛けることにした。
「あの…大丈夫…ですか…?」
そう声を掛けると[ソレ]は
「君には…私の姿が見えるのか…」
と小さく呟いたのが聞こえた。やはり人間では無いあやかしだったようだ。
すると[ソレ]はこう言った。
『君が…嶋哉とうやの……』と。
私はソレを聞いて耳を疑った。困惑していた。何故相手はお爺様の名を知っているのだろう、何故私のことも知っているのだろう。そんな事ばかり考えていると、
「咲奈…私に飴玉をくれないか…?咲奈が作った飴玉を食べてみたいんだ…」
私は考えるのを止めて、持っていた飴玉を2,3個相手に手渡した。すると相手は、静かにお面をずらし。個包装から飴玉を取り出すと、それを口にした。
私はそのお面の下から少し見える顔を見て目を見開いた。まさか会うとは思わなかったのだ。まさか…まさかかれ此処ここで会うなんて……

#1話 終  次回へ続く。

あやかし町 第一期 #2 ( No.6 )
日時: 2020/05/30 12:15
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

第一期 #2[再会]

まさか…こんなところで会うなんて……。


私は目の前にいる彼…あやかしに見覚えがあるのだ…。十年前の事…。
十年前、両親が事故で他界たかいした。私はそのショックで、毎日の様に泣いていた。そんなある日、私は夜家を抜け出して、両親とよく御参りに行った神社へ行った。夏だった為、外はそれほど暗くなく、明かりを持って行かなかった。神社に着き、御参りをして、帰ろうとまぶたを開けると、辺りは静まり返っていて、夏とは思えない程真っ暗だった。怖くて、私はその場にしゃがみこんで泣いた。そんな時、一人の若い青年に声を掛けられた。振り向くと其処そこには、珍しい着物を着て、頭には大きな耳、九本の尻尾が付いている青年…あやかしが居た。
『咲奈…大丈夫…?』そう声を掛けてくれた。その時私は何故彼が自分の名前を知っているのか、等と考えている余裕はなく、ただただ、彼に抱き付いた。彼は私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれて、帰るときに蝋燭ろうそくを持たせてくれたのを覚えている。今目の前に居る彼は、まさにその時の青年なのだ。少し大人っぽくなっているが、彼なのだ。あの時頭を撫でてくれたあやかし…九尾なのだ。私は無意識だった。気付いたら彼のお面を取っていた。彼は呆然ぼうぜんと私の事を見ていた。
自分でも何故そんなことをしたのか分からない。気付いたら取っていた。
「…え…?」
先に沈黙を破ったのは彼だった。
「ご、ごめんなさいっ…」
急いで謝り、お面を彼に返した。
「昔…この神社で会ったあやかしに似ていたので…つい…」
『似てた』ではなく同一人物だろう。
「大きくなったね、咲奈。君に会いに来たんだよ。」
彼はそう言った。私はこれまた無意識に、彼に抱き付いていた。ハッとして急いで離れようとしたが、彼が優しく抱き締め離さない。離れるのを止め、
私も優しく抱き締め返した。
「嶋哉との約束を果たしに来た。」
彼はそう言った。だが私は何の事なのか全く分からず、彼に問いかけた。
「お爺様との約束って…?」
すると彼はとんでもない事を言った。



「花嫁…咲奈を貰いに来たんだよ。」



「……え…?」


第一期 第2話 終

あやかし町 第一期 #3 ( No.7 )
日時: 2020/05/30 12:17
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

第一期 #3 [花嫁はなよめ

「花嫁…咲奈を貰いに来たんだよ。」

「……え…?」


私は、彼が放った発言を何度も何度も頭の中で繰り返し読んだが、頭の中には未だに沢山のはてなマークが浮かんでいる。『…私を…貰いに来た…?…と言うか…そもそも花嫁って……』どんなに考えても、彼の発言を理解出来なかった。私は、呆然と彼の顔を見つめていた。沈黙が続いた。その沈黙を破ったのは彼だった。
「何のことか分からない。と言う顔をしているね。」
そう。私はまさにその通り何のことか分からないのだ。
「約束って?花嫁?お爺様と会ったことがあるの?何時何処でお爺様とその様な約束をしたの?」
私は彼に今思い付くだけの疑問を全て問いかけた。彼は、ちゃんと説明するよ、と言い石段の上に座るよう勧めてきた。私は言われた通りに彼の隣に座り、静かに話を聞くことにした。
「あれは…十年前の事…。」
彼はそう言って、懐かしそうに語り出した。


第一期 第3話 終

あやかし町 第一期 #4 ( No.8 )
日時: 2020/05/30 12:16
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

第一期 #4[約束やくそく

 「あれは…十年前の事…。」

僕はあやかし達が住む和国わこくで、のんびりと毎日を過ごしていた。そんなある日、一人の人間が和国にやって来た。和国に人間が来るのは何年ぶりだろう。昔はもっと沢山の人間が、僕達あやかしが見えており、和国を訪れていた。しかし、年月が経つ内に僕達が見える人間が減っていき、和国を訪れる人間が居なくなったのだ。
久しぶりの人間の訪問で、和国の皆はとても喜んだ。その人間は嶋哉とうやと名乗った。僕達は嶋哉を歓迎し、うたげを開いた。皆で酒を楽しみ、夜中まで騒いだ。いつの間にか皆その場で飲み潰れ、寝ていた。僕はふと目が覚め、辺りを見回すと、月を眺める嶋哉の姿を見つけ、側へ行った。すると嶋哉は、
「花嫁候補は決まったのか?」
そう僕に聞いてきた。和国の決まりに『上級あやかしはつきさいまでに花嫁候補を決める事。』と言うものがある。僕『九尾きゅうび』は所謂いわゆる上級あやかしの一種。100年に一度満月が2つ空に浮かぶ日その日をつきと言い、その夜に行う神聖な祭りをつきさいと言う。次の月ノ祭は十年後。僕はまだ花嫁候補は決まっていなかった為、決まっていない、と嶋哉に応えた。すると嶋哉は
「ならば十年後、私の孫、咲奈さなを迎えに来い。約束出来るか?」
と言った。僕は『はい。』と言い、嶋哉と約束した…。説明し終わり、咲奈の顔をチラッと見ると、彼女はうつ向いて呆然としていた。なんて声を掛ければ良いのか分からず、とりあえず
「…って事なんだ。理解出来た…かな…?」
と声を掛けた…。


第一期 第4話 終
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意外にも見てもらえてるみたいで、とても嬉しいです!もし、感想とかあったら、書いて欲しいです!これからも、自分のペースで更新していきます!

あやかし町 第一期 #5 ( No.9 )
日時: 2020/05/30 12:20
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

第一期 #5[記憶きおく

「…って事なんだ。理解出来た…かな…?」


私が知らない間に、そんなことになっていたなんて…。しかも勝手に…。
ぐるぐると考え悩んでいると、隣に座る彼に声を掛けられ、ハッとし、彼の方を向いて、問いかけた。
「あなたは?あなたは私で良いの!?」
すると彼は、少しの間私を見つめた後、ふわっと柔らかく微笑み、
勿論もちろん咲奈さなで構わないよ。」
そう返されれば、もう何も言うことが出来なかった。あまりにも突然の事過ぎていた為、どう反応したら良いのか分からなかった。それに、まさかお爺様が勝手にこの様な約束をしているなんて、思ってもいなかった故に、混乱していた。すると彼は、
「…とりあえず…和国わこくへ行こうか。」
そう言って、彼は立ち上がり鳥居の真下の真ん中に立ち、私を呼んだ。私はとりあえず、彼の居る場所の隣に立った。彼の顔を見上げると、彼も此方こちらを見て、私の手を握り、
「目を瞑り、『和国に行く』という事だけを考えて。」
そう言われた為、私は言われた通り目を瞑り、和国へ行く事だけを考える事にした。
「和国よ…我らが立ち入ることを受け入れよ…」
彼が、何かを呟いた事だけは聞こえた。私は、和国に行く事だけに意識を集中させた。すると私達は暖かい光に包まれ、私はそこで意識が途切れた…

第一期 第5話 終

Re: あやかし町 お知らせ ( No.10 )
日時: 2020/01/19 23:55
名前: 鳴海埜 (ID: j9SZVVec)

あやかしちょう作者の鳴海埜なるみやです。
諸事情により、しばらくの間活動休止しておりました。その為、作品更新していませんでした。
作品を楽しみにしていてくれた読者様方へ、深くお詫び申し上げます。
この度は、報告も無しに、休止していたこと、誠に申し訳ありませんでした。

これからは、また自らのペースで、更新していきたいと思っています。どうか、応援よろしくお願い致します。

あやかし町 第一期 #6 (活動復帰報告) ( No.11 )
日時: 2020/05/30 12:22
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

この度は、活動休止の件、
まことに申し訳ありませんでした。
無事体調が万全ばんぜんになりましたので、
活動復帰していこうと思っています。
更新こうしんペースは不安定ではありますが、自分のペースで、皆様が楽しめる物語を書いていきます。何卒なにとぞ応援宜よろしくお願いいたします。  鳴海埜なるみや

・・・・・・・・・・・・・キリトリ線・・・・・・・・・・・・・
第一期 #6[和国わこく

「.......な.......さ.…な……咲奈さな...」

誰かに名前を呼ばれている気がする…
若い…男の人の…声…?誰だろう…。

「…….ん...」
呼ばれる声にかれる様に、薄らと瞼を上げれば、そこには、ぼんやりと誰かの人影が見える。徐々に意識を取り戻し、目を見開いては、そこには心配そうに此方こちらを見つめるせいねんの姿があり、辺りを見渡しては、全く知らない場所に居ることに困惑を隠せず、不安そうな顔を浮かべて。
「こ、此処が…和国わこく…?」
そう彼に問い掛けると、彼は そうだ とコクリと頷いた。私は戸惑っていた。本当に、あやかしの国[和国]などあるのか、そこへ行けるのか、と。
だが実際に、今私は和国に居る様だ。
「あ、あの…今更なのだけれど…」
ふと、彼の名前が気になり問い掛けてみた。すると彼は
「僕の名前は御月みつき。九尾の御月だ。」
そう名乗って、にっこりと優しく微笑んでくれた。とても優しく、暖かい笑みだ。自然と此方も笑みを浮かべた。
改めて辺りを見渡すと、お面を着けている者、馬頭、獣の耳と尻尾が生えている者、様々な者達が行き交っていた。そして、見て分かるように、その者達は皆『あやかし』だ。やはり此処は、あやかし達が暮らす世界【和国】の様だ。
「何故私を…此処へ連れてきたの?」
そう御月に問い掛けた。すると彼は、


「ここ…和国の存在を信じてもらう為。そして…この世界の支配者…鬼神きじん様に会って貰う為だよ。」


そう言った。私は血の気が引いた。


第一期 第6話 終

あやかし町 第一期 #7 ( No.12 )
日時: 2020/05/30 12:23
名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)

第一期 #7[鬼神きじん

……彼は今なんと言った…?

「ここ…和国わこくの存在を信じてもらう為。そして…この世界の支配者…鬼神きじん様に会って貰う為だよ。」

そう彼は言ったのだ。だが私は、大変困惑していた。そして何より、不安を抱いた。私が困惑しているのは、和国の存在についてではない。彼が言った鬼神……つまりは『鬼』について、戸惑い、不安になっているのだ。

『鬼』とは、数百年…数千年…いや、それ以上古くからかもしれない、旧い『あやかし』。角が生えており、紅い瞳に、長い爪。冷徹れいてつ残虐ざんぎゃくであり、慈愛じあいに満ちている。鬼は人間を好む(おいしい)。矛盾している様に思えるが、実際は矛盾していない。鬼からすれば、人間は実に美味びみであり、最高の興味の対象でもある。愛しいが故に喰えず、だがやはり、喰ってしまいたい。葛藤かっとうの様な感情を抱く。飽き性のあやかしにとって、人間は_特に、あやかしが見えるたぐいの人間は最高なのだ。鬼は、今も尚その容姿や性格から恐れられ、子供を仕付ける際にも、たとえとして、用いられる。

昔…お爺様じいさまに『鬼には気を付けろ。鬼にだけは絶対に気を許してはならない。』と言われたのを思い出したのだ。その『鬼』に会って欲しいと言われても…。私は、戸惑とまどいを隠しきれない表情で彼を見詰めた。すると彼は、私の視線に気付き、
「大丈夫ですよ。鬼神様はとても良い方です。」
と、安心させるかの様な笑顔を向けてきた。だが、残念ながら、私は安心出来なかった。ふと、彼は思い付いた様に立ち上がり、此方を向いて手を差し出してきた。きょとんと見上げると、
「鬼神様に会いに行く前に、今日はとりあえず、腹拵はらごしらえを済ませて休みましょう。」
そう言われ、私は彼の手を取り立ち上がり、不安を抱きながらも
「え、えぇ…。そうね…御月みつきさんがそう言うのなら…。」
と、渋々と言った様に同意した。

彼は、少し安心した様な表情をした。

「行こうか、咲奈_。」

彼はにっこりと、私に笑い掛けた_。



第一期 第7話 終
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※2月中は更新ペース遅めです。
 予めご了承下さい。

Re: あやかし町 ( No.13 )
日時: 2020/02/07 19:52
名前: 紅蓮 (ID: D.48ZWS.)

鳴海埜さん、初めまして〜。紅蓮と申します!

『あやかし町』閲覧させていただきましたが、見るたびにスケールが大きくなっていくと言うか…
後が楽しみなってきます(^^)

毎回毎回楽しみにしてます!ぜひ更新頑張ってくださいね〜。それではまたの機会に!(私が偉そうに言うことではないですが…。)

Re: あやかし町 #8 ( No.14 )
日時: 2020/02/09 00:11
名前: 鳴海埜 (ID: 4mrTcNGz)

紅蓮樣へ
この度は感想ありがとうございます!!
楽しみにしていただけているなんて…とても嬉しいです!!(嬉泣)
応援ありがとうございます!!
これからも頑張ります!!
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#8【休息きゅうそく

私は彼_御月みつきさんに連れられて、とある食堂に来ていた。店名は【夜会よかい】という。その店は、とても落ち着いた雰囲気の和風な店構えだった。メニューはごくごく普通の家庭料理がメインで、その為か、さっきまでの不安が少し薄れた。安心すると、腹は減るもの。まさにその通りにきゅるるる~…とお腹の虫が鳴いた。
「あッ、えッと、あ、あのッ…」
私は恥ずかしくなり、お腹を抱えうつ向いた。すると彼は、決して笑ったり、冷やかしたりせず、優しく声を掛けてくれた。
「何でも好きなものを頼んで良いよ。僕のおごりだからね。」
少し悪戯いたずらっぽく笑って、彼はそう言った。私は彼の言葉にまた少し安心し、お言葉に甘える事にした。
「じ、じゃあ…親子丼を……。」
私は消え入りそうな程の声で言った。
きっと彼は、そんな私の声でも拾って仕舞うだろうから。案の定、彼は聞こえていた様で、優しく微笑んで、親子丼の他にも何やら注文してくれた。

注文の品はすぐに届き、早速頂こうと箸を手に取り、チラッと彼の方を見ては、こちらに気づいた彼が微笑むのを見て、『いただきます』と言った。

親子丼は思っていたよりもとても美味しかった。てっきり、あやかし好みの味かと思ったが、私には丁度良かった。黙々と食べ続けていると、ふと、彼がこちらに話掛けてきた。
「咲奈は鬼神きじん樣に会うのは…やっぱり怖い…?」
私は目を見開いた。私は、そんなに分かりやすい顔をしていたのだろうか。
正直に言ってしまえば、とても怖い。今すぐにでも元の世界に戻りたいと思っていた。私は図星を指され、戸惑いを隠しきれなかった。
「え、あ、いや…別に…。」
彼は、そんな私の様子を見て『もっともな反応だ』とでも言うように、微笑を浮かべて、小さく頷いた。
「さてと…、腹拵はらこしらえは終わったし…宿へ行こうか。」
彼はそう言って、ゆっくりと立ち上がった。私も慌ててその後へ着いて行こうと立ち上がった。ただタイミングが悪かっただけかもしれない。私は立ち上がった瞬間に誰か(他の客のあやかし)にぶつかった。『終わった』私がそう思った瞬間、ぶつかってしまった相手から声を掛けられた。まさかと思ったが、無視するわけにもいかず、そちら_相手の方を向いた。私は言葉にならない悲鳴を挙げそうになった。
「大丈夫かい?人間の娘。」
相手はそう言った。返事を、返事をしなければ。そう思うのに喉から声が出ない。なぜだ、どうして。理由なんてとっくに分かっている。

誰が予期なんてするだろうか。

ぶつかった相手が鬼神樣だなんて_。

私がそんなことを考えている間にも、相手_鬼神樣は話し掛けてきていた。
「おい、人間の娘?どうした?」
私にはその声は聞こえていなかった。いや_鬼神樣だけでなく、誰の声も。
御月さんが驚いて、駆けてくる声も、
他のあやかしの客達の驚きのこえすらも聞こえないほど、私は混乱し動揺していた。そんな私が一つ確かに思っていた事。

『あぁ…終わった。喰われる。』


私の意識はそこで途切れた。本日二度目の気絶だった。


[第8話終] 次回へ続く。

Re: あやかし町 ※アンケート実施中※ ( No.15 )
日時: 2020/02/11 12:59
名前: 鳴海埜 (ID: 8.g3rq.8)

 読者様方へ_。
毎度、あやかし町を閲覧していただきありがとうございます。

2/14バレンタインに、バレンタイン特別編を書こうか迷っております
その為、読者の皆様に特別編に関しての希望調査を行おうかと思います。

アンケート締切【4/13 23:00 まで】

希望の方はコメントをよろしくお願い致します。

Re: あやかし町 ※アンケート実施中 ( No.16 )
日時: 2020/02/11 13:47
名前: 紅蓮 (ID: D.48ZWS.)

鳴海埜さん、またまたコメント失礼いたします〜。

2/14の特別編…いいのではないのでしょうか!
ぜひぜひ期待してます〜。

Re: あやかし町 ( No.17 )
日時: 2020/02/18 12:12
名前: 鳴海埜 (ID: Ga5FD7ZE)

*バレンタイン特別企画について*

バレンタイン編の件についてですが、
只今、体調不良が続いており、掲載出来て
おりません。誠に申し訳ありません。
※体調が整い次第、すぐ掲載する予定です。


バレンタイン編と共に、第9話も掲載する予定です。



読者の皆様、
もうしばらくお待ちください。





       鳴海埜なるみやより

Re: あやかし町【バレンタイン編】 ( No.18 )
日時: 2020/02/28 16:44
名前: 鳴海埜 (ID: u5fsDmis)

だーいぶ遅いバレンタイン編です((
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
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[バレンタイン編]※御月と再会前


__ピピピッ……ピピピッ…ピピッ…。

__2月14日6時30分_。

「んん……久しぶりに見たわね…」
昔の夢を見ていた様だ。目覚ましの音で目が覚め、欠伸を溢すと、ふと頬に手を当てると、薄らと湿っていた。

「そっか…今日は…バレンタインね」
そう呟いては、身支度を始める。


バレンタイン_それは一番の思い出。

_お爺様がまだ生きていた頃の話_。


「_ッとと、できたぁ~!お爺様ぁ~!」
今日はバレンタインだ。朝早くから起きては、チョコを使ったお菓子作りをしていた。作っていたのは[ミルク][ビター][抹茶]の三種類の生チョコだ。
出来上がったチョコをいくつか手に取り、お爺様の元へ駆けていく。するとお爺様は、嬉しそうに笑って、ありがとうと言った。そして、『御月にもあげてやってくれるか?』と言った。
私は、元々あげるつもりでいたため、
『もちろん!』と言い、御月を探しに家を飛び出した。
何分かして、いつもの神社に着いた。
鳥居の近くに彼は座っていた。私は、嬉しそうに彼の元へ駆け出した。しかし、足元を見ていなかった為、あと少しという所でつまずいてしまった。私は、『転んでしまう』そう覚悟し目を瞑った。だが、いつまでたっても痛みは来ない。その代わり、体を何やら暖かいもので包まれている事に気付き、慌てて瞼を開くと、私は彼に抱き止められていた。彼は優しく笑うと、心配そうに顔を覗き込んできた。
「大丈夫?ちゃんと足元見ないとダメだよ?咲奈。」
怪我をしていないと分かり、ほっとして、私は彼に抱き付き顔を埋め、少し恥ずかしそうに頬を染め礼を言った。
「ありがとぉ…みつきくん、…」

その後、無事チョコを渡せた。私は、満足そうにほくほくとした笑みを浮かべ、『またね』と彼に手を振り、帰った。その日が、お爺様が生きていた時の最後の思い出だ。そして__


_初めて異性にチョコをあげた日だ。


「_行ってきます、お爺様。」
玄関の写真立てのお爺様に笑顔を向け、玄関扉を開け、私はまた、新たな1日のスタートを切った_。

まさか、後に和国に行く事になるだなんて、この時は知りもしなかった_。



[バレンタイン編終]




如何でしたでしょうか。
楽しんで頂けましたでしょうか。
楽しんで頂けたのなら、幸いです。
では、また9話でお会いしましょう。

あやかし町 第壱章 #9 ( No.19 )
日時: 2020/12/13 23:56
名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)

第壱章 #9[偶然ぐうぜん


「おい、聞いているのか?人間。」

私はわれてしまうのだろうか。そんなことを、ぼーっと立ったまま考えていたが、その一言でハッとした。
「ご、ごめんなさい、…ぶつかってしまって…命だけは……」
私は咄嗟とっさに謝った。すると、鬼神様あいては、ぽかーんと呆気に取られた顔をして、こちらを見つめていた。かと思うと、突然笑いだした。
何が起きているのだろう。笑われている…一体なぜ…?私は呆気に取られ、またぼーっとしてしまった。慌てて我に返り、なぜ笑っているのか不思議に思い、聞いてみた。
「お前が、…ふふ…突然謝ったと思えば、いのちいをしてきたのでな…」
くっくっと笑いを堪えながら、鬼神様はそう言った。そんなに面白かったのだろうか。私はさっぱり分からず、再びぼーっとしてしまった。

『何がなんだか…全然分からないわ…頭が痛い…意識が朦朧もうろうとする…。』
御月さんが嬉しそうに鬼神様と話している声が聞こえる…食堂の客のあやかし達の騒がしい声がする…。
私の意識はそこで途絶えた。とても暗い…闇の…奥深くに落ちていく_。何度目だろう_。

「…咲奈さな?!」
咲奈の体がぐらりと傾くのが見え、咄嗟に駆け寄ろうとすると、いつの間にか鬼神様が咲奈を抱き抱えていた。
側に駆け寄り、声を掛けるが返事はない。何やら…今までとは違い、嫌な予感がする…そんな気がした。

同じく…鬼神もそう感じていた。
それと同時に、鬼神は懐かしさも感じていたのだった_。


第壱章 第9話 終

あやかし町 第壱章【最終話】 ( No.20 )
日時: 2021/01/02 14:10
名前: 鳴海埜 (ID: s/G6V5Ad)

第壱章  #10[悪夢あくむ


__ここはどこ・・・・暗い・・・・怖い・・・嫌だ・・・・・誰か・・・助けて・・・・・!!!__

私は、暗闇の中をゆっくりと、下へ下へと落ちていく…。暗く、かすかにひんやりと冷たく、何もない空間。暗闇は嫌いだ。昔の…悪夢を…彷彿ほうふつとさせるから。もう何も知りたくない…思い出したくない…。そんな事をぼんやりと考えながら、私は落ちていく__。

なんとも言えない様な胸騒ぎが止まらない。なんだろう。なんだか懐かしいような、恐ろしいような、身に覚えがある…ような気がする。ぐるぐると同じ様な事を考えじっとしていると、九尾の青年『御月』に声を掛けられた。
「あの…鬼神様…。嫌な予感がするのは気のせいでしょうか…。」
そう言った御月の顔は少しばかり冷汗が伝い、青ざめているように見えた。
「お前もか…。」
やはり、同じことを思っていたようだった。何年か前だろうか。いつだったかは曖昧だが、似たような事が起こった時があった。その時は『やつ』が居た。だがもう奴は居ない。あの時のように、うまくはいかないだろう…。今ここに『奴』が居れば…。



_それはそれは…古からの言い伝え_

いにしえより、陰陽おんみょう血筋ちすじ、十八とり和国へ踏み入れし時、その者、心魔こころま歩み寄り、闇へと引き込まれん。あらがわぬば、永遠と眠りけり。
(古くから、陰陽師の血筋に当たる者、分家の者が18歳となり、和国に足を踏み入れた時、その者の心の奥深くに眠る陰の情が、姿を現して闇へと引きずり込むだろう。あらがわなければ、永遠の眠りへ就くだろう。)


第壱章 第10話 終