コメディ・ライト小説(新)
- あやかし町 第一期 #2 ( No.6 )
- 日時: 2020/05/30 12:15
- 名前: 鳴海埜 (ID: VHEhwa99)
第一期 #2[再会]
まさか…こんな処で会うなんて……。
私は目の前にいる彼…あやかしに見覚えがあるのだ…。十年前の事…。
十年前、両親が事故で他界した。私はそのショックで、毎日の様に泣いていた。そんなある日、私は夜家を抜け出して、両親とよく御参りに行った神社へ行った。夏だった為、外はそれほど暗くなく、明かりを持って行かなかった。神社に着き、御参りをして、帰ろうと瞼を開けると、辺りは静まり返っていて、夏とは思えない程真っ暗だった。怖くて、私はその場にしゃがみこんで泣いた。そんな時、一人の若い青年に声を掛けられた。振り向くと其処には、珍しい着物を着て、頭には大きな耳、九本の尻尾が付いている青年…あやかしが居た。
『咲奈…大丈夫…?』そう声を掛けてくれた。その時私は何故彼が自分の名前を知っているのか、等と考えている余裕はなく、ただただ、彼に抱き付いた。彼は私が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれて、帰るときに蝋燭を持たせてくれたのを覚えている。今目の前に居る彼は、まさにその時の青年なのだ。少し大人っぽくなっているが、彼なのだ。あの時頭を撫でてくれたあやかし…九尾なのだ。私は無意識だった。気付いたら彼のお面を取っていた。彼は呆然と私の事を見ていた。
自分でも何故そんなことをしたのか分からない。気付いたら取っていた。
「…え…?」
先に沈黙を破ったのは彼だった。
「ご、ごめんなさいっ…」
急いで謝り、お面を彼に返した。
「昔…この神社で会ったあやかしに似ていたので…つい…」
『似てた』ではなく同一人物だろう。
「大きくなったね、咲奈。君に会いに来たんだよ。」
彼はそう言った。私はこれまた無意識に、彼に抱き付いていた。ハッとして急いで離れようとしたが、彼が優しく抱き締め離さない。離れるのを止め、
私も優しく抱き締め返した。
「嶋哉との約束を果たしに来た。」
彼はそう言った。だが私は何の事なのか全く分からず、彼に問いかけた。
「お爺様との約束って…?」
すると彼はとんでもない事を言った。
「花嫁…咲奈を貰いに来たんだよ。」
「……え…?」
第一期 第2話 終