コメディ・ライト小説(新)
- Re: あやかし町 #8 ( No.14 )
- 日時: 2020/02/09 00:11
- 名前: 鳴海埜 (ID: 4mrTcNGz)
紅蓮樣へ
この度は感想ありがとうございます!!
楽しみにしていただけているなんて…とても嬉しいです!!(嬉泣)
応援ありがとうございます!!
これからも頑張ります!!
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#8【休息】
私は彼_御月さんに連れられて、とある食堂に来ていた。店名は【夜会】という。その店は、とても落ち着いた雰囲気の和風な店構えだった。メニューはごくごく普通の家庭料理がメインで、その為か、さっきまでの不安が少し薄れた。安心すると、腹は減るもの。まさにその通りにきゅるるる~…とお腹の虫が鳴いた。
「あッ、えッと、あ、あのッ…」
私は恥ずかしくなり、お腹を抱えうつ向いた。すると彼は、決して笑ったり、冷やかしたりせず、優しく声を掛けてくれた。
「何でも好きなものを頼んで良いよ。僕の奢りだからね。」
少し悪戯っぽく笑って、彼はそう言った。私は彼の言葉にまた少し安心し、お言葉に甘える事にした。
「じ、じゃあ…親子丼を……。」
私は消え入りそうな程の声で言った。
きっと彼は、そんな私の声でも拾って仕舞うだろうから。案の定、彼は聞こえていた様で、優しく微笑んで、親子丼の他にも何やら注文してくれた。
注文の品はすぐに届き、早速頂こうと箸を手に取り、チラッと彼の方を見ては、こちらに気づいた彼が微笑むのを見て、『いただきます』と言った。
親子丼は思っていたよりもとても美味しかった。てっきり、あやかし好みの味かと思ったが、私には丁度良かった。黙々と食べ続けていると、ふと、彼がこちらに話掛けてきた。
「咲奈は鬼神樣に会うのは…やっぱり怖い…?」
私は目を見開いた。私は、そんなに分かりやすい顔をしていたのだろうか。
正直に言ってしまえば、とても怖い。今すぐにでも元の世界に戻りたいと思っていた。私は図星を指され、戸惑いを隠しきれなかった。
「え、あ、いや…別に…。」
彼は、そんな私の様子を見て『もっともな反応だ』とでも言うように、微笑を浮かべて、小さく頷いた。
「さてと…、腹拵えは終わったし…宿へ行こうか。」
彼はそう言って、ゆっくりと立ち上がった。私も慌ててその後へ着いて行こうと立ち上がった。ただタイミングが悪かっただけかもしれない。私は立ち上がった瞬間に誰か(他の客のあやかし)にぶつかった。『終わった』私がそう思った瞬間、ぶつかってしまった相手から声を掛けられた。まさかと思ったが、無視するわけにもいかず、そちら_相手の方を向いた。私は言葉にならない悲鳴を挙げそうになった。
「大丈夫かい?人間の娘。」
相手はそう言った。返事を、返事をしなければ。そう思うのに喉から声が出ない。なぜだ、どうして。理由なんてとっくに分かっている。
誰が予期なんてするだろうか。
ぶつかった相手が鬼神樣だなんて_。
私がそんなことを考えている間にも、相手_鬼神樣は話し掛けてきていた。
「おい、人間の娘?どうした?」
私にはその声は聞こえていなかった。いや_鬼神樣だけでなく、誰の声も。
御月さんが驚いて、駆けてくる声も、
他のあやかしの客達の驚きのこえすらも聞こえないほど、私は混乱し動揺していた。そんな私が一つ確かに思っていた事。
『あぁ…終わった。喰われる。』
私の意識はそこで途切れた。本日二度目の気絶だった。
[第8話終] 次回へ続く。