コメディ・ライト小説(新)

あやかし町 第壱章 #9 ( No.19 )
日時: 2020/12/13 23:56
名前: 鳴海埜 (ID: 0rBrxZqP)

第壱章 #9[偶然ぐうぜん


「おい、聞いているのか?人間。」

私はわれてしまうのだろうか。そんなことを、ぼーっと立ったまま考えていたが、その一言でハッとした。
「ご、ごめんなさい、…ぶつかってしまって…命だけは……」
私は咄嗟とっさに謝った。すると、鬼神様あいては、ぽかーんと呆気に取られた顔をして、こちらを見つめていた。かと思うと、突然笑いだした。
何が起きているのだろう。笑われている…一体なぜ…?私は呆気に取られ、またぼーっとしてしまった。慌てて我に返り、なぜ笑っているのか不思議に思い、聞いてみた。
「お前が、…ふふ…突然謝ったと思えば、いのちいをしてきたのでな…」
くっくっと笑いを堪えながら、鬼神様はそう言った。そんなに面白かったのだろうか。私はさっぱり分からず、再びぼーっとしてしまった。

『何がなんだか…全然分からないわ…頭が痛い…意識が朦朧もうろうとする…。』
御月さんが嬉しそうに鬼神様と話している声が聞こえる…食堂の客のあやかし達の騒がしい声がする…。
私の意識はそこで途絶えた。とても暗い…闇の…奥深くに落ちていく_。何度目だろう_。

「…咲奈さな?!」
咲奈の体がぐらりと傾くのが見え、咄嗟に駆け寄ろうとすると、いつの間にか鬼神様が咲奈を抱き抱えていた。
側に駆け寄り、声を掛けるが返事はない。何やら…今までとは違い、嫌な予感がする…そんな気がした。

同じく…鬼神もそう感じていた。
それと同時に、鬼神は懐かしさも感じていたのだった_。


第壱章 第9話 終