コメディ・ライト小説(新)
- Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.25 )
- 日時: 2021/01/06 00:24
- 名前: 鳴海埜 (ID: PNMWYXxS)
第弍章 #15[黒霧]
『__あーあ。楽しく和国を観光してる最中だったのによぉ…たかが異形の分際で…よくも俺の邪魔してくれたなぁ?あ"ぁ"?__』
怒りに満ちた若い男の声が響き渡る。
「おいおい、黒霧。お前ら一体何様のつもりだ?この俺が!和国を!楽しく!観光してたんだぞ?!邪魔したからには…覚悟は出来てるよなぁ?」
雷鳴のような大きな音と共に現れた男が黒い何かに対して怒りの言葉を投げ掛けていた。ふと、何かの気配を感じ周りを見渡すと、逃げ遅れていたあやかし達はいつの間にか消えており、代わりに1つの人影が見えた。
『…人…影....?いや...でも…気配はあやかし…それに…知っている様な気がする…あの人影は…一体……?』
私がそんなことを考えていると、また雷鳴が落ちたような大きな音がした。
私は、その音にハッとし、男が先程まで居た方向を見ると、そこに姿はなく土煙が立ち昇っているだけだった。周囲を見渡すと、男の姿を見つけた。男は屋根へ屋根へ飛び移りながら、黒霧と呼んでいた黒い何かを、華麗に次々と斬り裂き浄化していたのだった。
その様子を眺めていた時、私のすぐ側で、着地する様な足音と男の声が聞こえた。
「…よっと……。さぁて、お前で最後だ。そうだ、俺は優しいから一つ忠告してやるよ。……お前らがここにいる資格はねぇよ…。じゃあな。」
男が地を這うような声で言った後、ザンッと斬り裂く様な音がした。
「すまん、鬼神。俺が来るのが遅れたせいで被害がデカくなった。すまん。」
男がそう言うと、少し離れた所に居た人影が、こちらへ歩み寄りながら苦笑混じりにこう言った。
「いやいや、これで充分さ。それ以上謝らないでくれ。」
青年のような声だが、あまり感情の読み取れないような声にも感じた。それに"鬼神"という名前が聞こえたが、まさか…と考えていたその時、丁度顔が露になった。そして私は目を丸くした。
__その顔は…私の知っているあの鬼神様にそっくりだったのだ__。
第弍章 第15話 終