コメディ・ライト小説(新)

Re: あやかし町【 第一期 第弍章 開幕!! 】 ( No.28 )
日時: 2021/03/20 22:27
名前: 鳴海埜 (ID: gF4d7gY7)

第弍章 #18[代償だいしょう


「いいや、大事に決まってるさ。そんな気軽に"はい、どうぞ"なんて、危険なあやかしに渡すわけがないだろ?」

__お爺様が鬼神様と契約した内容って…絶対私の事、よね…。でも…どうしてお爺様が…こんなこと…__

もしも、本当に契約の内容が"私を鬼神様の許嫁として渡す事"だったとしたら…御月の件は"嘘"になる。嘘の可能性は充分あるはずなのに、なぜか私は御月は嘘はついていないと思った。

「ならなぜそんな提案をする。まさか、この私と"契約しよう"などと言わないだろうな。…私と契約をする場合、代償はかなり大きくなるぞ。」

代償…また新しい単語が出てきた。会話の内容から、契約するには代償が必要ということは理解できた。がしかし、その"代償"が一体どんなものなのか分からず、もし生命に関わる重いものだったらどうしよう、という不安に私は押し潰されそうだった。

「…代償か。なるほどなぁ。なぁ、鬼神よ。もし、俺がお前と契約をする、と言った場合俺はなにを代償に払えばいいか、教えてくれないか。」

___私の声は二人には聞こえないと分かっているのに、一言一句聞き逃さぬように息を殺して耳を傾けている。

「契約の内容によって代償は変わるものだ。契約の内容に命が関わるようなものであれば、それ相応の代償が伴う。例えば…記憶あるいは寿命等。」
「なるほど。じゃあ、もし俺が"お前の全てを賭けて咲奈を守れ"と言ったら代償はどうなる?」

"全てを賭けて…鬼神様が私を守る"?

「私の全てを賭けるとなると…貴様の記憶または寿命が代償だな。ただ、私のせいで貴様が早死にするのは御免だ。そうだな…貴様が"和国に出入りしていた時の記憶"はどうだろう。」

出入りしていた時の記憶…今ここに存在し、鬼神様と契約の話をしている記憶が消えるということだろう。お爺様が和国の事を、契約の事を話さなかったのは"忘れていた"のではなく"記憶が消されていた"からだとしたら…。

「あー…てことは、今お前と話してる事もお前の存在自体も忘れるってこと…だよな。それは…寂しいな…。」

寂しいと呟いた後乾いた笑いを溢しただけで、それ以外何も言わなかった。
ただひたすらに静かで少し気まずい雰囲気のまま時間が経っていくのを眺めているしかない私は、見えるわけがない二人の間に無理矢理割って入った。


第弍章 第18話 終