コメディ・ライト小説(新)

Re: 星の詩 ( No.1 )
日時: 2019/12/29 20:25
名前: 雪 (ID: JGdWnGzk)

プロローグ  箱入り娘


一言で言う、
私は箱入り娘。

小さい頃から、一家の令嬢として育てられて来たからなのだろうか、母も父も、…さらに召使いも過保護だった…。

例えばテストで百点を取っただけなのに、「えらいえら〜い」とぎこちなく撫でられたり、「ただいま」を言っただけなのに、重苦しい玄関には虫を数えるほどうざったらしい召使いの群れが入り口を塞ぐ。

ー 側からみれば、羨ましいかもしれない。

でも、こんなにもウザったらしく死にかけた世話はこれ以上ないほどの痛みを広げる。
“行動”と言う名の凶器に、今日こんにちまでどれだけ神経を潰されたことか…。重いぬかるみが、袋の中にとんと詰まる家の中。左手には、とんでも無いほどの空虚感を掴み、右手には、切羽詰まった心を掴んだ毎日。
「綾香〜。」と人生経験が込められた野太い声を聞くだけでも身震いが立つ。

特に、修学旅行では召使いから涙を贈られたり、弁当箱にくっ付いていた燻んだ付箋に、注意事項が大量に書いてあった。それもあったからか、友達と一緒に話していると、つい号泣してしまった。

「うっわああああ!嫌々!思い出しちゃダメって!」

柔らかいベージュのベランダに寄っかかって独り言を吐き出す。
これではいつか崩壊するほどに。

…と思いきや、明日からはピッチピチのJKなのだ!
微笑みを隠しながら、カレンダーに向かう。

「4月9日、ついに高校…っと。」

祝福の赤ペンで、丸く書き込む。
…明日からは箱入り娘卒業。

期待を空に上げると、そのまま眠りに溺れていった。