コメディ・ライト小説(新)
- Re: 転生と言う「拉致」 ( No.1 )
- 日時: 2020/01/18 18:14
- 名前: 赤坂 (ID: uFovKUbX)
序章 捜査
2016年 4月某日 東京都
――――1人の女子高校生が失踪。最後に確認されたのは都庁の前だ。
庁舎に設置されていた監視カメラに映っていた。最後の姿は制服姿。
現在も警視庁により捜査が続けられている。
…俺の名前は「津々良 啓二(つつら けいじ)」
警視庁に務めて三年目。刑事部に所属している。
最初は非行の一種として、軽く見られていたが捜索開始に早1週間の事件。
都庁の前に血痕があった事により事件性が感じられ、動機不明ながら誘拐又は殺人による遺棄の可能性が生じ始めた為、前線配備されている。
「さて、昼休憩も終わりか。」
都庁前のベンチに腰掛け、缶コーヒー片手に伸びをしている。この男が俺だ。
現在時刻午後1時。聞き込みと周辺捜査の仕事を再開。
「刑事って、こう、犯罪者との乱闘や、サスペンスものの様な謎解き明快解決ッ!て言うのとは違うんだなぁ‥」
もっと刺激が欲しいって言うのがホンネ。腰のホルスターの拳銃も使わないのかと思うと妙に重いから外したい。
そもそも俺が警察になりたいって思ったのがドラマや小説の「刑事職」って奴に憧れていたからだ。
甘かった‥‥
「津々良刑事!出発しますよ、早く乗ってください!」
後輩の一人「早稲場 國江(わせば くにえ)」に呼びかけられ、自分勝手な妄想から我に返った。
急いでクルマに乗らないと。
「今日も巡回捜査なのか。」
「いえ、本部から指示があります。捜索対象者の顔を見たと通報がありました。」
「マジか。とうとうロマンあふれる場面遭遇?」
覆面パトの狭い中、謎の期待感に心を躍らせた。
しばらく走らせ、ある商店街の入り口に停車させた。日本の警察宜しく準備が早い。現場では数人の警官が警備にあたっていた。
「ここか?その顔を見たって場所。」
「そうですね。」
「包囲網が敷かれてる中、虱潰し、袋のネズミだ。ラクショウラクショウ」
「行くぞ早稲場。」
「はい、津々良刑事。」
しばらく周囲をキョロキョロしながら、小走りで捜索対象の姿を探した。
大通りの端から端まで走ったが見当たらない。
「路地に行くぞ。」
「分かりました。」
適当な店の裏に入った。薄暗く、段ボール等のゴミが散乱している。
明らかに踏みつぶされた跡だ。
「きったねぇなぁ。」
「気を付けてください。この事件は実行犯がいる可能性が‥」
突然ガサっと音が鳴った。段ボールが踏まれる時の音だ。
…来る、来る? 俺の心臓は大きな音を立て鼓動している。
「(だとすれば犯人か?…)」
「捜索対象と同行しているかもしれん。静かに」
俺達は少しずつ足を進め、音の方へ向かった。
これ以上音がしないからか、対象も移動していないようだ。
「(いない?)」
少し歩いて、路地の曲がり角に着いた。
「二手に分かれろ。」
「え、危ないですよ…」
「いいから‥‥。」
その角で早稲場と俺は分かれた。
俺は曲がり、早稲場はそのまま進んでいった。
「(周囲警戒‥‥)」
その時だった。段々と大きな足音が近づく。走っている。
方向がつかめない。どこだ、何処からなんだ? 俺の緊張は最高潮を迎えた。
近づく、どんどん近づく。分からない。
「(ッ!?後ろか?)」
その気づく瞬間、私の脳内にはここに至るまでの、様々なシーンが浮かび上がった。
都庁前の血痕。分かれた早稲場の顔。
‥‥‥そして目の前にいる「捜索対象者」の笑顔。
「お、お前ッッッッ―――――」
その女は私に突進し、軽快な身のこなしで私の腹を刺した。
その痛みさえ、感じるには遅すぎた。
痛いと感じる頃には数か所の刺し傷。俺は腹に迫る温もり。恐らく血の温かさを感じ初めて痛がった。
「クソッ」
腰から倒れこむ音が静寂の中響く。
痛みは続き、その痛みが意識を刺激する。
その刺激で俺の意識を保たせた。 痛い、痛い――
「わ、早稲場―――
俺の意識は眠るように途切れた。
最後に感じたのは、腹の痛みと血の温もりだった。