コメディ・ライト小説(新)

Re: ♧共同体魔術♧    ( No.24 )
日時: 2020/03/03 14:06
名前: 紅蓮 (ID: D.48ZWS.)

episode3 ジエル編

「姉様、心配はいらんけん。私がこの世ば治めて見せんね。」

ジエル・アマーリエ…いや、ジエル・グローリア4歳。
彼女は部屋の中で誰かに囁いている。

「…本当に出来るか?私は心配やけんよ。」

グローリア家。
古くから一流の魔術師として名高く、数々の実績を得ていると。
グローリアの血が流れるライオタウンには、独特の言語が用いられている。

長女のアクアエル。18歳。
そして次女のミロエル。14歳。
そして末娘のジエル。4歳。

長女のアクアレルは、他の地方生まれだったら紋術師として認められていた…との実力であり、その威厳さにこうべを垂れる人は何人もいた。



そんなある日。
…今から12年前、穏やかな大地に戦争が勃発した。
街にはいくつもの戦火。何もかも焼き払われ、もはや生命の息吹も萎れていた。

「…っ!」

ジエルは見渡した。
____私の他に、誰も…いない。
唖然としても、この思いが誰かに届くわけでもない。
…しかし、彼女は戦火の近くに人影を見つけた。

まだ子供らしき、小さな体でロッドを抱えている。
その先端には、青白い炎が宿っている…。

「…見てたのね。」

「…。何しに。来たんさ…。」

幼女とジエルに重い隙間風が流れる。
誰かを思うと…つい悲しくなってくる。
でも…ここで泣いてたまるか、と彼女は深く唇を噛みしめた。

「あなた。きっと私と同年代だし、身の丈も…身分って言うのかしら。特別に教えてあげるわ…。」

「特別に…と。早く教えね…。」

「“新魔術軍”。この戦争の元締のようなものよ…。それが私の所属地。どう?あなたもどうせ、“魔術政府”として対抗するのかもしれないわね。…『一族の末裔』として。」

大人びた口調。
銀色の髪。
…思い出した。

この娘は…ヒヴェール家の娘。
『カフカ・ヒヴェール』…。

そんな事を悟った時点で、私は戦火に飲み込まれる…運命か。

容赦のない悪夢な戦火は、一気に私を呑んだ。