コメディ・ライト小説(新)

Re: ♧共同体魔術♧    ( No.26 )
日時: 2020/05/03 20:23
名前: 紅蓮 (ID: ET0e/DSO)

episode3 シェンネ編

「姉様は何故あんなに冷たいのでしょうか…。」

シェンネ。
シェンネ・ヒヴェール。
ヒヴェール家の次女である。

ヒヴェール家は、家族全員が魔術師である事で有名である。__私の家を説明するのも違和感があるが__今の当主は78代目のエミルダ・ヒヴェールであり、性別は女。私の父は一家の婿養子として迎えられたのである。

この頃、シェンネは4歳。私は6歳であった。
私は早くから魔術の才能に目覚め、「家の後継ぎはカフカに任せよう」と私の身の回りには称賛の声が飛び交っていた。


そして運命の日が近付く。
悟っている者は多いと思うが、あの『戦争』の日である。

運命の日の一日前、シェンネは熱を出した。
そんな彼女がふらつく足取りで向かったのは、母エミルダの部屋。扉を開けると本棚で埋め尽くされた壁が見え、図書館が家に吸い込まれたような…錯覚を感じる事が出来る。

「…母様。頭が火照っています…。」

「…シェンネ。ごめんなさい、少し忙しくてあまり看病をする事が出来なかったわ。」

申し訳無さそうに、エミルダはシェンネの頭を撫でた。手の奥から母の愛情が伝わったのか、シェンネは安心したように頬を緩めた。

「母様、忙しいって何事なのですか?」

幼すぎる彼女が、母に尋ねると彼女は切羽詰まった。彼女は少し戸惑いながらも、口を開き話し始めた。

「“悪い人をやっつけるの”。正義の味方と同じよ。」

「じゃあっ、魔術を使ってやっつけるのですが?」

「…ええ。そうよ。」

気まずいながらも、答える母親の様子は子供の目にとっては何も感じない。それは本当の事だった。






一日後。
ヒヴェール家の館は、母親が生み出した戦火によってあっという間に包まれるのであった__。