コメディ・ライト小説(新)
- Re: 人魚姫は5日まで ( No.10 )
- 日時: 2020/03/16 15:40
- 名前: シナメ (ID: XLYzVf2W)
🐠⒏ 門寺君の本気
翌朝。
いつものように支度した後、教科書などの、荷物の確認をする。
(今日は数学ないんだ。珍しい。)
そして数学のノートをバッグから取り出した。
すると、例の手紙も一緒に出てきた。
それを見た瞬間、記憶が蘇った。
ーそうだ。梨音のせいでこけた後、2人とも気まずくて手紙の差出人のこと忘れてたんだ。
梨音に教えなくて済む分、都合はいいかもしれない。
でも、まだ私も誰からのものなのかわからない。
そのまま鞄に入れたっきり、すっかり忘れていた。
封を開ける。
『羽田陽帆さんへ』
そこから10行あるかないかくらいの文章が綴られていたが、まず誰からのものなのか見るため、とばした。
いっちばん下の行。
『お返事ください。』その横に…あった。
『門寺凛斗』…はあ⁉︎
門寺凛斗……それはクラス1と言っても過言ではない位の…まあいわゆる『陰キャ』。
いっつもぼっちで、滅多に喋らないあの門寺凛斗?
告白なんて絶対しなさそうな門寺凛斗。
それに私の本命って依田君なんだよなぁ…。
まっ、返事、今日じゃなくてもいいよね。
私はラブレターをカラーボックスの更に中のレターボックスにしまい、荷物確認を再開した。
教室には門寺凛斗も、依田君も、横地君もいた。
それより、教室に入った瞬間、私は目を疑った。
その門寺凛斗が髪を切っているではないか。しかもばっさり。
今まで寝癖がついていてボサボサで、長くて顔もはっきり見えない位だったのに。
普通の男子くらいの長さになっている。
……‥こうみるとちょっとイケメンかもしれない。
さらにだ。
散髪のおかげだろうか。
第一印象も随分変わったのか、門寺君の周りに複数人の男子が集まって一緒に話している。
金曜日まではあり得なかった光景だ。
まさか、まさかだけど、私に『yes』って言ってもらうために?
その日の門寺君は絶好調だった。
挙手で発表もしたし、体育でも、もともと運動神経が良かったのもあるが、中3レベルの技を1番に成功させた。
そして何より、笑顔。
今まで門寺君の笑った顔を見たことがある人なんているのだろうかって位、いっつも真顔で笑わなかった。
門寺君の笑顔はとびっきり素敵だった。
今日も梨音のお誘いで、一緒に帰ることになった。
私達の前には、門寺君率いる男子5人組が一緒に帰っていた。
でも、5人組とは校門を出てすぐ分かれ道で別れる。
すると、校門を出る直前、タイミングを見計らって門寺君が突然振り向き、笑顔で手を振ってくれた。
『バイバイ』きっとそう言っているんだ。
そしてすぐに別々になった。
梨音はラブレターの差出人については、忘れたのか知らないが、聞いてこなかった。
そのかわりに、
「ねえ、さっき手振ってきたのって、もしかして門寺凛斗?」
門寺君に興味津々だ。そりゃそうか。
「うん。だいぶ変わったよね。」
「やっぱ、そうなんだ!1回『誰?』ってなったわ〜。イメチェンかな?」
「かなー。」
私達の下校トークは、全て門寺君の話題で終わった。
「ただいま。」
手を洗いながら思い出した。
ーあっ!門寺君への返事。
今朝は依田君一択で視野にもなくて…正直断ろうと思った。
でも、今は違う。
完全にあの笑顔の虜になった。
Thank you for reeding!