コメディ・ライト小説(新)

Re: 人魚姫は5日まで ( No.8 )
日時: 2020/03/14 21:23
名前: シナメ (ID: XLYzVf2W)

🐠⒍下向きの親指
とっさに私は、「電池切れ」のコメント欄をタップした。
そして、『マーメイド』。と、ユーザー名を入力…っと。
『マーメイド』。思いつきの名前だけど、気に入った。
何しろ、実際『マーメイド』だもんね。

っしゃ。ここからが本番だよ。ね。
私は狂ったように手当たり次第、悪口、批判コメントを文章につづった。
『下手』『中2が何してんの?』『でしゃばり』『お前、その声じゃどうせブスなんだろうなあ』『消えて』
自分でもひどいと思った。一瞬だけね。
でも、もうかわいそうなんて微塵にも思わない。
送信、完了。
コメント欄の1番上に『1秒前』の私のコメントがある。
2番目からは、『透き通った歌声ですね!』『中2ってまじ?』『うらやましいいい〜〜!!!』
なんてコメント。明らかに私のだけ浮いてるんだよな。

もちろん低評価だってした。
高評価8909、低評価数39。すごい比率だ。
さて、40個目の低評価を貰いますかっと。

…なんだろう。なんかすっごく気持ちいい…。
清々しいというか勝ち誇った気分というか。
謎の爽快感を覚えた。
『正体がバレたらどうしよう…!』
頭の片隅にもなかったよ、そんなこと。
それに、少なくとも私以外に39人以上はいおんを批判したってことでしょ?
同志がいるからね。

他のいおんの動画にも文句つけに行こうかな、と思ったジャストタイミング、
「ひなー、ご飯ー!」
お母さんの呼び出し。はああ。つまんないのっ。
まさかね、お母さんも娘が同級生をいじめてるなんて思わないでしょ。

その日の夕食はグラタンだった。
人魚なら絶対食べられない、絶品料理の1つ。
チーズなんて水中栽培できる訳ないでしょ。
…スマホだって人間だからある訳だし。

翌日、いつものように…と言いたいところなんだけどね。
今日から、いおんに陰湿な「いじめ」って程でもないけれど、ちょっかい?か何かかけてやろうかなぁなんて。
そんなこと考えるなんて知る由もなく、梨音のご登場。
「おはよ、陽帆!」
「っ!おはよー。」
そのまま2人で登校した。
学校に着いて、門で見守る先生に挨拶。
そして石畳の道を通り、校舎で靴を履き替える。
まあ、これがルーティーン…なんて教えなくてもいいんだろうけどね。

…‥‥⁉︎ は⁉︎
私が目を疑った原因。それは、ラブレター。
私の下駄箱に『羽田陽帆さんへ』なんて改まった言葉遣いの手紙が入っている…。
「陽帆ー?どしたの?」
!! ヤバイ、梨音に見つかったら…ヤバイ!
でもこのまま置いとくのはもっとヤバイ!
早めに来たから、これから来る人に気づかれるよ絶対!
「あ、いや、石が入ってて。」
「え?」
ひゃ!やめて!
…なんて抵抗したらもっとまずい事態になるよね。
梨音は『え?』と言いながら私の下駄箱を覗いてきた。
……もうダメだ。終わった、終わった。
「?え⁉︎ちょっと待って!これラブレターじゃないの⁉︎え⁉︎」
あー、もう予想通り。
「そうだよ、もー。黙っといてよ?みんなに。だっれにも言わないでよ、絶対!」
「いや、うん、誰にも言わないから、誰からなのかだけ教えてっ!お願い!」
嫌すぎる。けど梨音の『お願い』はほぼ『脅し』なんだよ。選択肢は『見せる』ただそれだけだ。
その時だった。

校舎に続く道、その奥から誰かは分からないけど、確かに男子の3、4人組が歩いてくるのが見えた。
ヤバイ、あっちいこ!
そういう前に体はもう動いていた。
「あーっ!陽帆待って!」
って!私は廊下に身を投げ出すようにドーン!と思いっきりこけた。
「キャ!ごめん、ごめん!大丈夫?本当ごめん!」
そう、一瞬だったけれどわかった。
私を追いかけようとした梨音が私のスカートの端を引っ張って、こけた。
はっず。恥ずかしすぎる。

そう言っている間にも男子軍はやってくる。
「大丈夫、あっちいこ。」
私は早足で廊下を歩いていった。
梨音は「え、うん。」
と困惑した様子で私に着いていった。
それからは沈黙が続き、もう何も話さなかった。

Thank you for reeding!