コメディ・ライト小説(新)

Re: 君に染まってしまえば―――伝えてしまえ。 ( No.6 )
日時: 2020/02/20 16:50
名前: 雪林檎 ◆iPZ3/IklKM (ID: FCVTIPcN)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

Valentine5 「失敗。」

「なーに、チョコレートなんか見てニヤニヤしてんの?」
スマホの中のチョコレートの資料を見ていた私を拗ねたような声の人に訪いかけられる。

「……うぇ!!ち、千耀!?」

驚いた私は椅子から転げ落ちそうになったけれど、その寸前で手を掴まれ起こされる。
「あ、ありがとう……。」
カッコ悪いところを見せてしまったようで恥ずかしくなりながらもお礼を言った私はチラッと千耀の顔を見る。
何故か解らないが珍しくムスッとした顔をしていたから私は心配になった。
千耀、何か嫌な事でもあったのかな?
好きな人が元気ない時は誰だって心配になる。
「えっと、どうしたの?」
そういった瞬間、遮られるように言われる。
「チョコ、誰に渡すの?」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
でも、渡す相手は千耀だって言えないし……。
「な、ないしょっ。」
と言って、チョコレートの資料を隠すようにスマホの電源を切った。
「ふーん。……好きな奴でもいるのかよ。」
ふーんは聞こえたけど、後の方は聞こえなかった。
「千耀……っ!」
機嫌が悪いようだったから謝ろうと呼び止めると、
「呼ばれてるから。」
と、教室を出て行ってしまった。
あぁ……、絶対怒ってる。
秘密にした上に見せられないって拒絶したからだ。
謝らなきゃ――――嫌われる。
ってか、ちゃんと謝ったり話をしたりしたいのに!!
「ちあき……。」
「お~蒼真ッ!」
そう言って、近くに居た幼馴染である三澄君に声をかける。
よし、もう一回と思って声を掛けようとしても……。
「ちあ……。」
「あ、知ってるよ!結構好きなんだよ、俺ッ!!」
他の男子グループの話の輪に入っちゃうし。
「ちあきぃ……。」
絶対に避けられてる!!二時間前に戻りたいよぉ~!!
「はぁ―……。」
頭痛くなってきたなぁ。
「どうしたの?高見沢さん。」
そう穏やかな声で声をかけてきたのは三澄君だった。
「あ、えと……。」
「いつも元気いっぱいな高見沢さんが溜め息って千耀と何かあった?」
じょうろを片手に花の世話をしている三澄君は心配そうに私を見上げる。
「なん、でそこに千耀がくるの?」
そう訪いかけると、
「千耀も溜め息ばっか吐いてるから。喧嘩でもしたの、そうだったら千耀と気持ちは一緒だと思うな。」
「!」
それ、本当なのかな?
「千耀なら、まだ教室に残っているよ。」
「……ありがとう、ごめんね。心配かけて!!」
そう言って、千耀の元へ私は走る。

「高見沢さんみたいに頑張ってみたいけど、世界が違うからなぁ……。」
悲しげに呟いて、蒼真は生徒会室の窓の近くに居た髪の短い女の子を見上げる。

たったたた……!!
私の足音が廊下に響く。
教室のドアに着いて、深呼吸をする。
ドアを開けようとしたけど、手が震えて出来なかった。
赤く染まった教室。
ここに千耀が居る。
 ドクン、ドク……!!
「―――千耀。」
そう呼びかけてみると、ガタッと大きな音が響いた。
「みつ……。」
「千耀!!あのね、ごめんなさい……っ。」
謝ると、返事が返ってこない。
「――――うん、俺の方こそさ、、、その。」
その直後、下校のチャイムが鳴る。
最後の方が聞こえなかった。
「こらッ!!高見沢、こんな時間までに残っているんじゃないっ!!帰れ!!」
怒鳴り声が聞こえ急いで私は昇降口に向かう。
あーあ。返事聞きそびれちゃった―――……。

「まーだ、居たのか!!早く帰りなさいッ!!―――……って桐ヶ谷どうしたんだ。」
蹲って顔を伏せている俺に駒田先生がヒステリックな声を上げてくる。
「先生さ……タイミング悪すぎでしょ。」
不貞腐れたような声で言い、駒田先生を睨み付けた。
駒田先生はそのことに対して、何を言っているんだ!!とさらに声を荒げる。
だって、充希と仲直り出来なかった。
……しかも、明日はバレンタインだし。
誰に渡すのかも聞きそびれた。
「ほんと―――……サイヤクだ。」
誰もいなくなった教室には教師の怒鳴り声と千耀の恨めしそうな声が残っていた。