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コメディ・ライト小説(新)
- Re: ♢訳ありな蒼い星 ( No.2 )
- 日時: 2020/03/29 17:20
- 名前: 霞 (ID: HPUPQ/yK)
episode1 横断信号
「風稜高校第一学年 友寄 柚音。…なんかピンとこないよね。」
切れ目の無い雑踏で賑わうスクランブル交差点。
アスファルトの上の水。それが時折、車のヘッドライトで輝く。
『新学期』…と言うのに、朝から降る雨が春の陽気を封じ込めていて鼻につく湿ったような臭いが、目蓋をこじ開けさせる。
そして、春の…アオい雨。
季節感がなく、冷たい。
この全てを無視したのか、躊躇なく雨は降り続ける。そして…限りなく透明に4月模様を消している。
この倦怠感に反応したのか、リュックの持ち手がすたれる。そして体を1回揺さぶると黒い地面と対照的に、透明な
糸がゆっくり雨傘に落ちた。
「そう言えば…茜元気にしてるかな?」
気になってスマホを取り出す。
_____懐かしいな…中学生時代。
少し地味なブレザーが、頭の中に浮かび上がる。
まぁ…灰色で、『ネズミ』みたいだったけど。
ピコン
『ユズ!制服見たよ。すんごい可愛ぇー。祝、ネズミ脱出!』
慣れたような文章が送られてきた。
そこに添えてあったのは、おどけたような…スタンプ。
「よかった。元気そうみたい。」
明るくて眩い画面を見ると、いつもの通りの茜。
高校は離れたけれど…。友達であることは変わらないだろう。
『こっちは今から入学式。茜の方は明日だっけ?今日も寝てたかった〜』
そっか。入学式。
既読が付くことを私は願って、足早に高校へ向かった。
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