コメディ・ライト小説(新)
- Re: ♢訳ありな蒼い星 ( No.11 )
- 日時: 2020/03/21 11:07
- 名前: 霞 (ID: Ft4.l7ID)
episode9 止めた手
「雅。本当に辞めんの、ピアノ?」
「ええ。私が決めた選択肢だわ。これだけは理解してもらいたい。」
「親御さんは?」
「まだ…。話してないわ。」
優しく鍵盤に触れても、ただ突き刺さるような音しか鳴らなかった。そして自然と、黒鍵に指紋が付いていた。
本当はピアノを辞めたい。
いや、辞めなきゃ。
でも…名残惜しくて、手が離せない。
「あんなに頑張ってたのに?勿体無いでしょお。あたしみたいなのが言えるもんじゃあないけど、駄目だと思う。雅はねぇ。」
_________でも…。
幼い頃だっけ。
教養として、ピアノを習っていた。
黒くて反射する大きな曲面は今でも忘れられない。…ずっと思ってた。
「“仕事”の為にぃ?」
「まぁそんなとこ。練習に身が入らないっていうか、このままじゃ音色も感じなくなりそうで。」
何故かやたらと、好戦的な目使いで彼女は私を見た。前からの可愛らしさからはかけ離れていて、こんな言動誰も想像できないだろう。
「アタシに任せてよッ。」
「任せるって、何を…。」
「まだ“子供”、そーでしょお?」
「まぁ。そう言われてるわね。」
________いきなりどうしたのだろう。
それより…。
こんなにも事を広げたくなかった。
当初は私一人で任命されたモノ…でもまさか、あの人がこんなにも自由人とは…。
放課後の夕日が、二人しか居ない音楽室を指す。
少し黙ると、「どうした?」なんて言われそうで
いつも機嫌の良い彼女にもやはり申し訳ない。
「子供にしかできない事がある。…あの人も十分知ってるはずっ!だからさぁ、多分辞めてほしくないんだよ。アンタに。」
思考が少し大胆過ぎるが、これが彼女らしいと言うのか…。どうも言えなくて、胸の中から湧き出てくる感情に深く蓋をした。
また振り返ると、彼女はいつも通り、
柔らかく笑った。
「そうよね…。」
______本当はウルサイと思った。カレンの事。
だって人間なんか嫌いだから。
本当は、人間関係なんか辛い。
でも“アレ”のせいだから、もう取り返しなんて…つかない。
でも、この関係は私達の為だから。
嫌でも仕方が無い。
そうでしょ?…カレン。