ALLジャンルのオリジナル小説、ライトノベル、二次創作、ss小説やイラスト投稿なら「小説☆カキコ」

episode12　スカウト

「友寄　柚音さん。あなたを雇います。」



…事の発端は30分前。


とりあえずと茜に呼ばれた私。
とりあえずと言っても、もう夜なのだが。

新築めいた、モダンテイストの玄関に足を踏み入れると、微かに明かりが付いていた。
小学生から見てきたこの光景もまた、懐かしい。
表現しづらいが、生まれ故郷に帰ったような感覚が私の身に宿っていた。

「茜、入るよ。」

ドアをノックすると、…美少女。ではなく、
琴城先輩である。
それはともかく、なぜここに居るのだろうか…？

「あのぉ________」

「話は簡単に済ませるわ。」

いきなり風を裂くような声に、驚きそうだった。
上級生らしさを身に着けた、由緒正しき姿にも思わず圧倒されるぐらい。

まぁ、話は短いと…。
それで事が終わるのならいい。
変な倦怠感と共に、発される声に耳を傾けようとした。

「友寄　柚音さん。あなたを雇います。」

「えっ、いきなり何です？雇うって…裏商売か何かですか？というかっ、バイトは校則違反ですよっ。」

焦りを出すと、彼女は息を飲み強張った表情を見せてきた。そもそも、高校生が高校生を雇うとは
どんな悪趣味なのだろうか…？



「これは“冰岸”様の命令だわ。…とにかく月曜の昼休み。南校舎の4階左端に来てちょうだい。」

何なんだろう、この意味不明な発言。
頭の中が混乱し、宙に浮かびきっても解決など出来ないほど…。

ただ、気になるのが“冰岸”。
中性な名前で、性別は判断出来ないが…。
なにか偉そうな感じがした。