コメディ・ライト小説(新)
- Re: 2日を呪う ( No.1 )
- 日時: 2020/03/19 12:33
- 名前: シナメ (ID: XLYzVf2W)
ー⒈ 青い雷
これは今から7年前、俺が小1の時の話。
「一斗、今日空いてる?」
帰りの会が終わったら、真っ先に俺の方に来て遊べるかどうか聞いてきたよな、颯。
まだ『キイチ』というあだ名が馴染んでなかった頃。
その時は自分が呪いを持っているだなんて知るはずもなかった。
…前例は1回だけあったんだけどな。
「うん。何時から?」
「今2時47分でしょ?…3時!」
「3時?3時ね、OK。越車南で集合いける?」
「りょうかーい!」
越車南っていうのは、校区内にいくつかある公園の1つで、
俺が転校前に通っていた、越車小学校の1年の遊び場は越車南公園が大定番だった。
俺が公園に着いたのは3時4分だった。
まあ、2時47分に学校を出て、13分間で下校、準備、出発、到着。
『OK』とは言ったが、早いとは思っていた。
でも、颯はすでにいた。どうなってるんだよ、あいつ。
そこから、門限の5時に間に合うように4時50分くらいまで遊んだ。
「一斗〜。帰んの?」
「おん。5時までだから。」
「そっか。じゃあまた明日なあ!」
そう言われて手を振ろうとした瞬間だった。
「わっ⁉︎」
その声にびっくりして振り返ると、颯が全身黒い服装に身をまとった男が、
颯の口を手で押さえ、そのまま連れ去ろうとしていた。
「ん〜ん!んー‼︎んー‼︎」
俺はパニックになり、怖くてその場を逃げ出した。
そして公園を出る階段を下ろうとしたその瞬間、時が止まった気がした。
〈俺、このままでいいの?颯を見捨てていいの?〉
脳裏にそんな事がよぎった。
俺はそれでも怖かった。
颯を助けなきゃ!そう思ったが足がすくんで動けない程だった。
『なんで?俺達友達じゃなかったの?助けるでしょ?友達なら。』
そんな事言われて絶縁されるかもしれない。
助けたい…助けたい…助けたい…助けたい…
時が動いた。
そう気づいた時には、既に颯の方へ走っていた。
「はやてええええ‼︎‼︎ はやてええ‼︎」
一心不乱に叫んだ。
男が颯を車に無理矢理乗せて、男も運転席に乗り込み、アクセルのかかる音がした。
「はやてっ‼︎」
そう叫んだ途端、確かに今までも曇り空だったが、不自然すぎる位の豪雨が急に降ってきて、
遠くで雷の音が連鎖して聞こえる。
そして、なんと男の車に雷が直撃したのだった。
でも、聞いていて分かるように、おかしすぎる。
まず、叫んでから、雨が降り、雷が当たるまでの時間は10秒もなかった。7、8秒。いや6秒位だったかも。
そして何より不思議な点。
車に当たった雷の色だ。俺は確かに見た。
あれはどう見ても青色だった。
夢…な訳ない。なんなんだろう。
…! それより、颯は…
「一斗っ!一斗っ!一斗っ!」
颯は俺の名前を連呼してボコボコに潰れた車から出てきた。
ぐしゃぐしゃに泣いた颯の様子から、その怖さがうかがえる。
気づけば、俺も泣いていた。
「逃げよう!颯っ!」
颯はうなずいた。そして2人ですぐに逃げ、公園の最寄りの知り合いの家、
心哉宅に向かい、インターホンで助けを求めた。
心哉の家、蒔田家は俺達を保護してくれ、事情を話すと警察、俺たちの家、学校に連絡してくれた。
ビショビショに濡れた俺達の服も替えを用意してくれた。
もちろんのこと、あの男は警察に御用となった。
雷のせいで、しばらく気絶していたそうだ。
そういえば、俺が叫んだ時のあの現象。
今では呪いのせい、というかおかげだったと思っている。
「キイチ、あの時は助けに来てくれてありがとな。」
「でも…俺じゃなくて雷が当たったから…」
「違うって。助けようとしてくれた事が俺は嬉しいんだよ。」
5年後、俺達は6年になり、あの時のことを話していた。
「…青かったんだろ?雷。しかも雨も急に降り始めたって。」
「本当だからな?」
「怪しんでるんじゃなくて…。お前、宇宙人なんじゃない?」
「はっは!なんだよ、それー。」
「違う、冗談じゃなくて!」
颯はマジの顔だった。
「ネットで見たんだよ、宇宙人はいるってアメリカの有名研究者が言ってたって。」
「…ふーん。」
「天気が操れるんじゃないか?だとしたら…水星人?」
小6の時には、もう自分が死神なんだと分かっていた。
だから宇宙人じゃない。
というか、颯ってそういうのすぐ信じるんだなぁって。改めて思った。
……‥。
俺は中1の秋、この津羅々市を出て、蒼蘭中学に転校してきた。
颯とは小学校で出会ったきり、毎日のように一緒にいた。
あの青い雷と同じくらい不思議なこと。
颯はなんで死ななかったの?