コメディ・ライト小説(新)

Re: 溶けない星、枯れない妖… ( No.3 )
日時: 2020/04/04 12:23
名前: 紫音 (ID: j9SZVVec)

1話 逸話の化け狐



『4月12日は水星がよく見えるみたい。凪のとこで見えたら写真送ってね。』

スマホの画面には、星来からのメッセージが音を立てて送られて来た。

今は8:32分。群青色に染まった夜空には、北極星を中心とした星座達が微かに動いている。
4月の空もすっかり暗くなり、今まで目立たなかった星達が一斉に明かりを灯し始めており、その光景は何度見ても飽きないものだ。

(この調子だと、もうちょっとで来るみたい。)

すぐさま望遠鏡を構える準備はできている。
子供ではないが、やはりこのチャンスには興奮していた。
これはこれで、みっともない…少々思ったが、この自制心を裏付けるようにこの胸は強く高鳴っていた。

…するとその瞬間、水星の光と共に星来からのメッセージが送られてきた。



「っ!…水星だ…。」

ピカッと雲の隙間から、水星が現れた。
肉眼で見るとまったく動じないほどの点だが、この望遠鏡レンズを覗くと、まるで生きてる心地がしないほど…驚嘆するような気持ちになる。




ただ、“水星”という名の芸術品に夢中であった私はそのメッセージにまったく気が付かなかった。




『そう言えば知ってる?妖って星の化身だとか。
会うと幸運が宿るらしいけど、何か助けを要求されるだって。なんだろね。』