コメディ・ライト小説(新)

Re: 記憶屋、私です ( No.16 )
日時: 2020/04/20 16:34
名前: 桃花染 (ID: vpptpcF/)


何故、緋色が凝視されたのかその理由は近頃分かる…はず。

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6話

「昨日の子って誰だったんだろう。分かるのは同じマンションに住んでいることだけだけど…。」

帰り道。
浮かない表情でトボトボと歩く私の背中は、しがないアヒルのようにも見えるかもしれない。ただ夕暮れに染まった暁色の路地が、何となく心に響いていた…。

「緋色ちゃん、だよね?」

ふと振り向くと、太陽のような__女子の姿が。
スカートの丈は校則通り膝丈まであり、ブレザー
は少し大きい位だ。何より、肩に届かないショートカットはスポーティで憧れてしまう。

「あたし、時和ひよりって言うの。…もしかして、緋色ちゃんはこの近くに住んでたりする?」

「ええっと、このマンションに引っ越してきたんです。603。…高校に進学する為に、親から離れて今は1人で暮らしてます。」

住処を口に出すと、何故か彼女は驚きを隠そうともしなかった。…何かあったのだろうか?

「えっ、ウチのマンションに住んでたの?」

「“ウチの”?」

首を傾げる。
別に日本語が分からないというわけではないが、彼女は補足をし始めた。

「“マンション エル・テンプス”でしょ?其処、ウチの両親が経営してるんだ。…ほら、“時”ってカタロニア語で“エル・テンプス”でしょ?」

夕暮れ時にも関わらず驚愕のあまり、私は呆然と彼女の顔を見つめていた。